往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

熱構造部

見て学ぶ!振動試験の動画一覧【宇宙機、人工衛星と振動試験】

以前、展開機構のYOUTUBEをまとめていたのですが、今回は振動試験物の動画を集めてみました。 mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com 振動試験をはじめて実施することになった方へ何かしら参考になればと思います。 動画紹介なので、ちょっと重い。 …

NASA施設内でのリチウムイオン電池の火災は数日間施設が停止する惨事となった | Lessons Learned、失敗学、事故事例

リチウムイオン電池の火災 リチウムイオン電池の爆発事故は、世界各地で発生していますが、宇宙船のエネルギー貯蔵システムとしてリチウムイオン電池を使用しているNASAでも発生しています。 今回は地上設備で発生したリチウムイオン電池の火災についてまと…

振動試験時における「オーバーシュート」(目標値を越える振動の負荷)の注意 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

振動試験時における「オーバーシュート」(目標値を越える振動の負荷)の注意 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-AFRC2020-0012-13 振動試験装置にはオーバーシュートと呼ばれる事象が発生します。 オーバーシュートは、振動の入力レベルを越えた…

電子機器内部では振動試験により基板のリード線が破損、切断される | Lessons Learned、失敗学、事故事例

電子機器内部では振動試験により基板のリード線が破損、切断される Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-PIA24024 NASAの基準(スタンダード)の中には、リード線、ハーネスやケーブルの設計に対する規定があります。 ロケットの打上げ振動によりリ…

サーマルストラップに使用される純アルミニウム(A1100)の結合部の低温時に発生するクリープ現象でのボルト緩み | Lessons Learned

サーマルストラップに使用される純アルミニウム(A1100)の結合部の低温時に発生するクリープ現象でのボルト緩み サーマルストラップと称していますが、金属の帯状の物です。 電気回路を取り扱っている方であれば、電気の流れるバスバー(ブスバー)の熱版とい…

人工衛星等の軌道上熱解析におすすめな入門書「はじめての熱制御」

入門書 結論から言うと「はじめての熱制御」です。 はじめての熱制御 自然エネルギー活用のための熱技術 現場の即戦力 [ 田中清志 ] 楽天で購入 書籍では数少ないThermal Desktopを使用した人工衛星の熱設計の概要が分かります。 本当でしたら、〇選としたか…

不良メッキにより導波管及びマイクロ波機器が汚染され故障した | Lessons Learned、失敗学、事故事例

導波管及びマイクロ波機器のフレーク状の銀メッキ処理の汚染 導波管とは、電磁波を伝送するために用いる中空(ちゅうくう)の構造体のことを指しています。 イメージとしては、特殊な表面処理を行い、電磁波が外部へ逃げたり損失量を減らす金属パイプを想像し…

分析機器のイソプロピルアルコール(IPA)の洗浄による注意 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

分析機器のフライトアイテムのイソプロピルアルコール(IPA)の洗浄 宇宙業界で洗浄と言えば、イソプロピルアルコール(IPA)を使用します。 アルコール洗浄と言えば、IPA洗浄を指します。 ウィルス対策のための洗浄では、エタノールが知られていますが、また構…

精度の高い結合に接着剤を使用するか?ボルトを使用するか? | Lessons Learned、失敗学、事故事例

機械的結合に接着剤を使用するか?ボルトを使用するか? 宇宙業界では放射線や急な温度サイクルによって劣化する可能性がある接着剤(高分子材料)を使用することは多くはありません。 それでも接着剤を使用するメリットがあるため、いくつか使用されます。 ボ…

設計と解析で絞る!ステンレス、チタン、黄銅のボルト選定時の機械的特性と熱的特性と光学的特性

ステンレス、チタン、黄銅のボルト強度と特性をまとめた 人工衛星にはオーステナイト系のステンレス鋼のネジが比較的使われています。 チタンのネジを使う場合もありますが、単純に値段が高いのです。 人工衛星に限らないかもしれませんが、ボルトの選定に使…

マイルズの式について(Miles' Equation) | ランダム振動の実効加速度への変換式【宇宙機と構造】

マイルズの式について(Miles' Equation) マイルズの式は、人工衛星をロケットに搭載した際に、人工衛星に加わるロケット打上げ時に発生する音圧の加速度を算出(近似)することができる方程式です。 人工衛星で使用する場合は、概念検討~詳細設計までの構造解…

構造と観測機器の関係-温度変形編-【宇宙機と構造】

光学観測機器の構造系の重要性 Credits: NASA 人工衛星の構造系において、構造系自体の性能を上げるという問題はなかなか起きません。 人工衛星の構造系の山場の一つは、ロケット打ち上げによる振動環境にあります。 ロケットの振動から、人工衛星内部機器を…

ステルス航空機は宇宙上空のレーダー衛星で検出できるか?

ステルスを検出するとは レーダ衛星でステルス航空機を検出することは可能です。 ステルス航空機は、レーダで検出しにくい航空機のことを言います。 レーダに検出しにくいかを示す値としてレーダー反射断面積(Rader Cross Section、RCS) が使われます。 この…

SpaceX社が放出し続けるスターリンク衛星の機械的構造を考察【宇宙機と構造】

60機同時打ち上げた人工衛星の構造を考える SpaceX社はロケットの製造能力を持ちながら、人工衛星の製造能力も持つ、世界的にも数少ない企業です。 通常は、60機も人工衛星を同時に放出することが困難と考えるところ、その考えをうち破りました。 今回は同時…

Starlink deployment ーSpaceX社が放出し続けるスターリンク衛星の放出機構の機械的構造を考察ー【宇宙機と構造】

60機同時打ち上げから色々考える SpaceX社はロケットの製造能力を持ちながら、人工衛星の製造能力も持つ、世界的にも数少ない企業です。 通常は、60機も人工衛星を同時に放出することが困難と考えるところ、その考えをうち破りました。 今回は同時60機の打上…

宇宙開発で原子力電池が使われなくなったのは放射線問題のせいじゃない【宇宙機と電池】

アメリカの原子力電池の原材料事情 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-KSC-2011-6743 原子力電池は、1960年以降宇宙船に使用され、電力を供給し続けています。 アメリカでは過去、独自にプルトニウム238の供給していました。 プルトニウム238よ…

単純が難しい!人工衛星の白と黒の配色から見る熱バランスの考え方【宇宙機とデータベース】

黒と白の役割 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-KSC-08pd2979 人工衛星が白かったり黒かったりする理由がちゃんと存在します。 白は明るかったり、綺麗そうに見えるから。 黒は重く見え、高級そうに見えるから。 決してそのようなイメージ戦略…

ハニカム構造はあらゆるところに使われている【設計と構造】

ハニカム構造の使用実例をまとめてみました 以前、ハニカム構造の歴史をまとめました。 mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com まとめたのですが、まとめるのに時間がかかり息切れしたので、今回は使用されているところをまとめました。 [目次] ハニ…

赤外光学観測機器を冷やして性能を上げろ!!【検出器と温度、熱雑音】

カメラを冷やしたことはあるでしょうか? 宇宙に使用される観測機器の中には冷却機が含まれていることがあります。 宇宙の温度はマイナス270度と言われています。 これはマイクロ波による宇宙電波雑音の観測によって明らかになったのですが、宇宙がこれほど…

バランスが大事!人工衛星で重心を測定する理由【人工衛星とロケットのユーザーインタフェース関連】

重心が必要になってくる理由 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-VAFB-20180614-PH_AMT01_0015 重心と言われて何を思い浮かべるでしょうか。 ものを持つときに、重心が偏っている、持ちにくい、運びにくいという経験をしたことがあると思います…

高精度観測機器を取り付けるときの公差設計の悩み【少数生産品、機械設計と時々宇宙機コンポーネント】

公差設計と設計サイクル Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-KSC-2013-2351 近年では短いサイクルでの設計開発が加速しています。 そのため公差設計が既存製品の公差であったり、JIS規格にある寸法公差や幾何公差をそのまま流用していることが多…

放射線で故障して止まらないようにする原子力発電所や人工衛星で使用する電子部品の対策【宇宙機と放射線】

放射線対策と電子部品 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-0200146 1970年に打上げられた地球観測衛星エクスプローラー1号機と後続のエクスプローラー3号機に搭載された放射線量を測定するガイガーカウンターによって、地球の放射線帯であるヴァ…

システム設計の5つの考え方をまとめました【宇宙機とシステムエンジニアリング】

システム設計とは Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-S68-34582 システム設計の役割は大きく2つあります。 (実物の)試行錯誤を極力減らし、合理的に論理的にまとめ上げていくこと 目的に対して最適なものにすること ということで、システム設計…

衛星画像のキャリブレーションをしよう!輝度較正の手法と必要な理由【宇宙機とミッション】

人力で挑んでいる較正手法 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-ED04-0056-065 画像の補正を行うためにリフレクター、あるいは反射板と呼ばれるものを使います。 今回の画像は反射板と呼ばれるものです。 衛星画像の補正には幾何学的キャリブレー…

人工衛星の質量の決まり方と考え方【宇宙機と質量】

人工衛星の質量はどこで決まるでしょうか。 最近小型衛星という話が出てきていますが、サイズだけではなく質量も小型になっています。 この人工衛星の質量はどこで決まるのでしょうか。 大きさ? コンポーネントの数? ミッションの規模? ロケットの種類? …

宇宙カメラのレンズというかセラミックの安全率【宇宙機と構造物】

金属の安全率の計算はよくありますが、セラミックの安全率は知る人が少ないのではないでしょうか。 セラミックは表面上の傷が多くクラックが発生しており、不確定要因が多いのです。 そもそも不確定要因を補償するために安全率を決定するのですが、セラミッ…

ガンプラ小型衛星「G-SATELLITE」で機動戦士ガンダムとシャアザクは宇宙で動く【人工衛星と耐環境性】

機動戦士ガンダムとシャアザク、ハローキティが宇宙にいる件 今回は2020年3月7日に打上げられた小型衛星「G-SATELLITE」についてです。 Liftoff! pic.twitter.com/0Z4dCIu5Hw — SpaceX (@SpaceX) 2020年3月7日 CRS-20 MISSION | SpaceX

人工衛星とロケットのアンビルカルケーブルとホット/コールド・ローンチ方式【人工衛星のアンビリカルケーブルと打上げ方式】

アンビリカルケーブルとその周辺 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-s65-30427 この写真は、1965年の船外活動の写真です。 今回の表題であるアンビリカルケーブル(Umbilical cable)ですが、写真に映っている宇宙飛行士のエドワード・ヒギンズ…

人工衛星のシステム設計-まずは人工衛星の機能から知ってみよう-【宇宙機とシステムエンジニアリング】

システム設計について、なんとなく書いてみる Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e001387 今回のこの写真では、人工衛星が回転テーブルの上で1秒に約1回転の速度で回っています。扇風機が1秒間に50か60回転するので、扇…

構造と温度変形に影響する観測機器【宇宙機と構造】

光学観測機器の構造系の重要性 Credits: NASA 人工衛星の構造系において、構造系自体の性能を上げるという問題はなかなか起きません。 人工衛星の構造系の山場の一つは、ロケット打ち上げによる振動環境にあります。 ロケットの振動から、人工衛星内部機器を…