アメリカの原子力電池の原材料事情
https://images.nasa.gov/details-KSC-2011-6743
原子力電池は、1960年以降宇宙船に使用され、電力を供給し続けています。
アメリカでは過去、独自にプルトニウム238の供給していました。
プルトニウム238よりも質量の重いプルトニウム239が核兵器に使用されてはいたのですが、アメリカとロシアの冷戦が終結したことにより、1988年より生産を停止していました。
アメリカでは原材料を入手できないため、ロシアから入手していました。
ただ、ロシアでも生産を停止し、貴重な資源となりしばらくの間、原子力電池を使用した人工衛星が製造されなくなりました。
近年で情勢が変わり、2015年からNASAの資金提供によりアメリカのオークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)でプルトニウム238の生産が再開されています。
人工衛星の電池として、オークリッジ国立研究所でプルトニウム238と筐体を作成し、ロスアラモス国立研究所でプロとニウム238を精製し、カプセル化まで行います。
最後に、アイダホ国立研究所で組立て、試験、検証を行う流れで電池を製造しています。
2020年の現在、NASAではプルトニウム238は約35㎏しかありません。
多くはマーズ2020の火星探査ローバーで使用することになっているようです。
2026年に木星の衛星を探査する宇宙船にも使用されることが計画されています。
50年以上、不具合知らずの原子力電池の電力システム
原子力電池は長持ちでき、頑丈で比較的コンパクトな設計であるため、何十年も使用されています。
原子力電池が使用することで、太陽電池パドル(太陽電池セルを貼り付ける展開パネル)を搭載する必要性が減り、宇宙船の形状をよりシンプルにすることができます。
太陽電池パドルは構造面から考えると、非常に脆い構造をしています。
打上げ時の振動で破損するリスクと、軌道上へ放出された直後にパドル展開をする必要もあります。
パドルが展開できなければ、必要量の電力を確保できず、人工衛星の製造ンに関してかなりクリティカルな装置でもあるます。
軌道上でも、重量もあり慣性能率にも悪影響を及ぼすために、必要性がなければ搭載したくはない代物となっています。
地上で交信することで、微調整をする必要のない設計がされており、1977年に打上げられた探査衛星であるボイジャー1号、2号は現在でも運用されています。
その後、アポロ計画や火星へのバイキング、土星へのカッシーニ計画など多く使用されています。
太陽に遠ざかる人工衛星に使用される原子力電池はもちろんなのですが、地球の衛星である月は、昼と夜が2週間ごとになるため、通常の二次電池の使用が困難になります。
ただ、通常の二次電池も並列して補助電源として使用されることもあります。
現在のところ原子力電池が宇宙船の事故の原因となったことはありません。
原子力電池を搭載しつつ失敗した3つの人工衛星の計画では、電力システムが十分な機能を発揮していたことが確認されています。
ただ、直接の失敗ではないのですが、原子力電池の放熱に偏りにより、減速しているしていることが明らかになりました。
それまでは減速が最初に観測された惑星探査機パイオニア10号と11号にちなんで、「パイオニア・アノマリー」と呼ばれていました。
熱放射の方向から推進力が発生し、人工衛星の軌道に影響されていたことは驚きですね。
参考資料
What is a Radioisotope Power System?
https://www.energy.gov/ne/articles/what-radioisotope-power-system
Ideas for new NASA mission can now include spacecraft powered by plutonium
Power Systems
https://rps.nasa.gov/power-and-thermal-systems/power-systems/current/
Radioisotope Thermoelectric Generators (RTGs)
https://solarsystem.nasa.gov/missions/cassini/radioisotope-thermoelectric-generator/
NASA Radioisotope Power Systems Program Next-Generation RTG Study: Summary 2017
From a Source of Heat Comes the Power to Explore
https://rps.nasa.gov/technology/
http://spacenuclear.jp/nuclear/rtg0.html
熱電対とは
https://www.hakko.co.jp/qa/qa_0_04.htm
熱電対の基礎