往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋はのたもうた

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

品質保証部

ラッチ・ヒンジ部の応力解析と寿命設計について

1. 代表式 ラッチ・ヒンジ部は、展開構造や可動機構の中でも特に応力集中が生じやすい箇所です。 繰返し荷重や衝撃荷重が作用するため、設計では静的強度だけでなく、疲労寿命(fatigue life)の評価が不可欠です。 代表式は以下の通りです: σmax=Kt⋅σnom\s…

小型衛星の選定基準はどう違う?国内4社の技術的アプローチを比較

はじめに:選定者と技術者が共有すべき視点 人工衛星の導入は、単なるスペック比較ではなく、打ち上げ実績、納期の確度、製造能力、運用支援体制、解析機能、契約形態など多面的な要素を踏まえた判断が求められます。 本資料は、各社の公開情報・報道・技術…

マイルズの式と振動応答の設計応用について

1. 代表式 振動環境下での構造応答を定量的に予測するために使われるのが、マイルズの式(Miles' Equation)です。 特にランダム振動(PSDベース)に対して、ピーク応答加速度を推定するための代表式として、宇宙機・航空機・精密機器の設計で広く用いられて…

QPS研究所の宇宙戦略:九州発SAR衛星で拓くリアルタイム観測網

はじめに:地方から世界へ QPS研究所は、九州大学発のベンチャーとして2005年に設立された。創業当初から掲げていたのは、「小型SAR衛星によるリアルタイム地球観測網の構築」という壮大な構想だった。だが、2017年から2019年にかけては、技術的にも資金的に…

熱応力(σ = EαΔT)と構造変形の補正について

1. 代表式 構造部材が温度変化を受けると、膨張または収縮が生じます。 この変形が拘束されると、内部に応力が発生します。これが熱応力(thermal stress)です。 代表式は以下の通りです: σ=EαΔT\sigma = E \alpha \Delta T ここで、 σ:熱応力 [Pa] E:ヤ…

宇宙機器設計やコンポーネント製品における制振・減衰・共振応答の技術ガイド

1:共振応答とQ値の基礎理解 1.1 Q値とは何か? Q値(Quality Factor)は、共振系の鋭さや選択性を示す無次元量であり、以下の式で定義されます: Q=ω0ΔωQ = \frac{\omega_0}{\Delta \omega} また、減衰比 ζ\zetaとの関係は: Q=12ζQ = \frac{1}{2\zeta} Q値…

Synspectiveの宇宙戦略:SAR衛星で描くスマートインフラの未来

はじめに:都市を見守る目としてのSAR 2018年に創業したSynspectiveは、宇宙から都市の変化を捉えるという明確なビジョンを掲げてスタートした。創業初期から注力していたのは、小型SAR衛星StriXシリーズの開発と、AIによる地上インフラの変化検出という二つ…

小型衛星の“向き”を支える技術:姿勢制御装置の構造・課題・比較

1 リアクションホイール:姿勢制御のトルク源 リアクションホイールは、人工衛星の姿勢を制御するためのトルク生成装置である。内部に搭載されたフライホイールを高速回転させ、その角運動量を変化させることで、衛星本体に反作用トルクを与える。これはニュ…

電源系の設計が衛星ミッションを左右する:故障事例に基づいて

はじめに:電源系の構成と脆弱性 人工衛星の電源系(Power Subsystem)は、宇宙機の全機能を支える基盤である。太陽電池パネル(Solar Array)による発電、バッテリー(Battery)による蓄電、電力制御ユニット(Power Control Unit, PCU)による電圧・電流の…

設計は1つのシステムで終わらない—System of SystemsとNASAのSystems Engineeringの違いを読み解く

1. はじめに:あなたの設計は、誰かのシステムとつながっている ある若手エンジニアが、都市交通のセンサーを設計していた。彼はそのセンサーが、信号機と連携して車の流れを制御するだけだと思っていた。ところが、ある日そのセンサーが、災害時の避難誘導…

推進系の失敗はなぜ起きるのか:事例に学ぶ設計と運用の盲点

1. はじめに:推進系の役割と設計上の課題 人工衛星の推進系(Propulsion System)は、衛星の軌道投入、姿勢制御、軌道維持、そして最終的な離脱操作(deorbit)までを担う、いわば「宇宙機の生命線」である。推進系が正常に作動しなければ、衛星は所定の軌…

モーダルサーベイと呼ばれる共振周波数/共振点探査/振動応答検査のための試験と分析の基礎

モーダルサーベイ試験 モーダルサーベイ試験は、試験する物体に対して低レベルでの加速度を振動試験機で負荷させ、得られ加速度応答データから物体の固有値周波数(振動数)や物体の振動による変形(振動モード)を得る試験のことをいいます。全機振動試験/…

宇宙業界用語「宇宙交通管理(STM)」について

宇宙交通管理こと、STM:Space Traffic Managementとは、宇宙機の打上げ、軌道投入、軌道変更、軌道離脱、地上への落下までの活動を管理することをいいます。 [目次] 宇宙空間の交通事情 宇宙交通管理の簡単な経緯 日本の宇宙交通管理 今後の宇宙機同士の接触…

アンテナやコンテナなどの工作物の風荷重、風圧、風速による設計検討のヒント【構造設計者向け】

目次 工作物の風荷重は規制がない? 工作物とは 風荷重の設計検討 設計風圧(N):W ピーク風力係数:Cr ピーク内圧係数:Cpi ピーク外圧係数:Cpe 設計用速度圧(N/m2):q 設計用基準風速:V0 平均風速の高さ方向の分布を示す係数:Er ガスト影響係数:Gf 用途…

信頼性と品質保証は違う、最近影薄めな信頼性と宇宙機

[目次] 信頼と信頼性 信頼性と品質保証 参考サイト 宇宙業界は高信頼性であるといわれています。 ただ、高信頼性といっても決して特殊な設計方法をしているのではなく、自動車や家電、パソコンと同じ設計方法を取っています。 宇宙業界で有名なロケットは千…

宇宙開発の信頼性の設計では何を確認しているのか?

宇宙業界は高信頼性で成り立っているといわれています。 宇宙業界の高信頼性といわれても特殊な手法を取っているわけではありません。 もちろん、他の製品と比べてグレードが変わることはありますが、手法そのものは高い技術を要するものではありません。 JA…

H3ロケットの点火信号が自動停止し打上げが中止 | Lessons Learned

H3ロケットの点火信号が自動停止し打上げが中止 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はH3ロケットの試験機が、打上げ直前までに打上げシーケンスが進んだにもかか…

ロケットの打上げ延期の時の人工衛星の対応は?

ロケットの打上げ延期の時の宇宙機(人工衛星など)の対応とは いくつかの場合分けになるとは思いますが、打上げ直前のカウントダウンフェーズの場合、次のようになります。 フェアリングに搭載されたまま、次の打ち上げまで保管 フェアリングから外して、衛…

ロケット打上げ環境がある施設での地上支援装置(GSE)の設計に必要な環境要素 | Lessons Learned

ジョン・F・ケネディ宇宙センター(John F. Kennedy Space Center, KSC)にはロケット発射場があります。 過去、スペースシャトルと呼ばれる宇宙機が現役であった時にもケネディ宇宙センターで製造され、打ち上げられていました。 今回は、ロケット打上げ環…

航空宇宙光学システムの超精密ダイヤモンド切削・研磨技術 | Lessons Learned

ダイヤモンド切削とは、ダイヤモンド工具を利用して物体を削る技術のことを指します。 ダイヤモンドは炭素により構成される構造であることから高い熱伝導率を持ち、削る対象に対して熱を拡散させながら切削することができます。 切削により発生する物体間の…

振動低減に利用するワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 | Lessons Learned

ワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はワイヤーロープアイソレータについてです。 ワイヤ…

システムズエンジニアリングを活用する前にチラ見する記事

システムズエンジニアリングはNASAの宇宙開発で活用されてきました。 ゆえに、システムズエンジニアリングとは宇宙開発に対して実施するものであるという誤解をしている人がいるかもしれないがそうではありません。 一方でMBSE(Model-based systems enginee…

ハーネスが損傷する機械的理由 | Lessons Learned

ハーネスが損傷する機械的理由 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はハーネスが損傷する理由です。 抜粋した資料の情報が少ないため、「終わりに」が本題ですね…

初心者から一歩先へ!宇宙機の振動音響試験の考え方 | Lessons Learned【機械設計者向け】

宇宙開発は難しいことをしていると思っていませんか? 一見難しいように思えますが、理由を知れば、開発者が必要なことをシンプル化して試験をしています。 Lessons Learnedでは宇宙業界という技術力の高いエンジニアである人たちでも盲点となり起きてしまっ…

代替の経済性(economies of substitution):再設計するコストは新規のシステムを構築するコストを上回る【基礎から知りたい】

代替の経済性(economies of substitution) 代替の経済性(economies of substitution)とは、最初から再利用や交換を考えて設計した製品の開発コストは、製品を再設計するよりコストが低いことを示す概念です。 生産までに時間がかかる製品 人工衛星は、いま世…

民生品を宇宙機に利用した際に寸法が許容できずに発覚した不具合事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例【機械設計向け】

民生品を推奨して、人工衛星の価格を下げるというのが小型衛星開発の設計の流れがあります。 しかし、民生品を利用するということはいくつかのリスクを含んでいます。 少し時間がたっている事例ではありますが、民生品を使用した際に発生しうるリスクを簡単…

宇宙機のポンプ技術は補助人工心臓である心臓ポンプに応用されている【宇宙の技術は役に立つ】

credit:NASA https://images.nasa.gov/details-jsc2004e26519 NASAのテクノロジーが命を救う 宇宙機(人工衛星、探査機、宇宙船)の技術は、宇宙だけではなく地上でも使われています。 病気が原因での世界で確認されている最大の死因のひとつに「虚血性心疾…

静電放電(ESD)による人工衛星破壊を最小限にするための設計手法 | Lessons Learned【電気・機械設計者向け】

静電気でパソコンが壊れるという話を聞くことはありますが、あまり人工衛星で壊れるという話は聞いたことがないかもしれません。 人工衛星も電子機器であることから静電気で壊れます。 人工衛星は軌道上に上がると故障の原因を調査することがかなり難しいで…

あっさり解ける!転倒角の計算方法【機械設計者向け】

転倒角を計算しよう 最初に言います。転倒角には総重量は関係ありません。 転倒角は地面や床に置いたときに何度傾ければ倒れるかを計算したものです。 床と固定していれば転倒角の計算は必要なく、固定している素材(ネジや接着剤)の強度に依存していきます…

金属3Dプリンタで使える部品とロケット【機械設計者向け】

今回は金属3Dプリンタにより製造する部品を使用するうえでの考え方をまとめました。 目次 金属3Dプリンタで許容できないもの それでも金属3Dプリンタ自体の製造公差が発生します。 ロケットと金属3Dプリンタ 3Dプリンタで推進薬タンクを製造する 参考文献 金…