往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

品質保証部

モーダルサーベイと呼ばれる共振周波数/共振点探査/振動応答検査のための試験と分析の基礎

モーダルサーベイ試験 モーダルサーベイ試験は、試験する物体に対して低レベルでの加速度を振動試験機で負荷させ、得られ加速度応答データから物体の固有値周波数(振動数)や物体の振動による変形(振動モード)を得る試験のことをいいます。全機振動試験/…

宇宙業界用語「宇宙交通管理(STM)」について

宇宙交通管理こと、STM:Space Traffic Managementとは、宇宙機の打上げ、軌道投入、軌道変更、軌道離脱、地上への落下までの活動を管理することをいいます。 [目次] 宇宙空間の交通事情 宇宙交通管理の簡単な経緯 日本の宇宙交通管理 今後の宇宙機同士の接触…

アンテナやコンテナなどの工作物の風荷重、風圧、風速による設計検討のヒント【構造設計者向け】

目次 工作物の風荷重は規制がない? 工作物とは 風荷重の設計検討 設計風圧(N):W ピーク風力係数:Cr ピーク内圧係数:Cpi ピーク外圧係数:Cpe 設計用速度圧(N/m2):q 設計用基準風速:V0 平均風速の高さ方向の分布を示す係数:Er ガスト影響係数:Gf 用途…

信頼性と品質保証は違う、最近影薄めな信頼性と宇宙機

[目次] 信頼と信頼性 信頼性と品質保証 参考サイト 宇宙業界は高信頼性であるといわれています。 ただ、高信頼性といっても決して特殊な設計方法をしているのではなく、自動車や家電、パソコンと同じ設計方法を取っています。 宇宙業界で有名なロケットは千…

宇宙開発の信頼性の設計では何を確認しているのか?

宇宙業界は高信頼性で成り立っているといわれています。 宇宙業界の高信頼性といわれても特殊な手法を取っているわけではありません。 もちろん、他の製品と比べてグレードが変わることはありますが、手法そのものは高い技術を要するものではありません。 JA…

H3ロケットの点火信号が自動停止し打上げが中止 | Lessons Learned

H3ロケットの点火信号が自動停止し打上げが中止 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はH3ロケットの試験機が、打上げ直前までに打上げシーケンスが進んだにもかか…

ロケットの打上げ延期の時の人工衛星の対応は?

ロケットの打上げ延期の時の宇宙機(人工衛星など)の対応とは いくつかの場合分けになるとは思いますが、打上げ直前のカウントダウンフェーズの場合、次のようになります。 フェアリングに搭載されたまま、次の打ち上げまで保管 フェアリングから外して、衛…

ロケット打上げ環境がある施設での地上支援装置(GSE)の設計に必要な環境要素 | Lessons Learned

ジョン・F・ケネディ宇宙センター(John F. Kennedy Space Center, KSC)にはロケット発射場があります。 過去、スペースシャトルと呼ばれる宇宙機が現役であった時にもケネディ宇宙センターで製造され、打ち上げられていました。 今回は、ロケット打上げ環…

航空宇宙光学システムの超精密ダイヤモンド切削・研磨技術 | Lessons Learned

ダイヤモンド切削とは、ダイヤモンド工具を利用して物体を削る技術のことを指します。 ダイヤモンドは炭素により構成される構造であることから高い熱伝導率を持ち、削る対象に対して熱を拡散させながら切削することができます。 切削により発生する物体間の…

振動低減に利用するワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 | Lessons Learned

ワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はワイヤーロープアイソレータについてです。 ワイヤ…

システムズエンジニアリングを活用する前にチラ見する記事

システムズエンジニアリングはNASAの宇宙開発で活用されてきました。 ゆえに、システムズエンジニアリングとは宇宙開発に対して実施するものであるという誤解をしている人がいるかもしれないがそうではありません。 一方でMBSE(Model-based systems enginee…

ハーネスが損傷する機械的理由 | Lessons Learned

ハーネスが損傷する機械的理由 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はハーネスが損傷する理由です。 抜粋した資料の情報が少ないため、「終わりに」が本題ですね…

初心者から一歩先へ!宇宙機の振動音響試験の考え方 | Lessons Learned【機械設計者向け】

宇宙開発は難しいことをしていると思っていませんか? 一見難しいように思えますが、理由を知れば、開発者が必要なことをシンプル化して試験をしています。 Lessons Learnedでは宇宙業界という技術力の高いエンジニアである人たちでも盲点となり起きてしまっ…

代替の経済性(economies of substitution):再設計するコストは新規のシステムを構築するコストを上回る【基礎から知りたい】

代替の経済性(economies of substitution) 代替の経済性(economies of substitution)とは、最初から再利用や交換を考えて設計した製品の開発コストは、製品を再設計するよりコストが低いことを示す概念です。 生産までに時間がかかる製品 人工衛星は、いま世…

民生品を宇宙機に利用した際に寸法が許容できずに発覚した不具合事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例【機械設計向け】

民生品を推奨して、人工衛星の価格を下げるというのが小型衛星開発の設計の流れがあります。 しかし、民生品を利用するということはいくつかのリスクを含んでいます。 少し時間がたっている事例ではありますが、民生品を使用した際に発生しうるリスクを簡単…

宇宙機のポンプ技術は補助人工心臓である心臓ポンプに応用されている【宇宙の技術は役に立つ】

credit:NASA https://images.nasa.gov/details-jsc2004e26519 NASAのテクノロジーが命を救う 宇宙機(人工衛星、探査機、宇宙船)の技術は、宇宙だけではなく地上でも使われています。 病気が原因での世界で確認されている最大の死因のひとつに「虚血性心疾…

静電放電(ESD)による人工衛星破壊を最小限にするための設計手法 | Lessons Learned【電気・機械設計者向け】

静電気でパソコンが壊れるという話を聞くことはありますが、あまり人工衛星で壊れるという話は聞いたことがないかもしれません。 人工衛星も電子機器であることから静電気で壊れます。 人工衛星は軌道上に上がると故障の原因を調査することがかなり難しいで…

あっさり解ける!転倒角の計算方法【機械設計者向け】

転倒角を計算しよう 最初に言います。転倒角には総重量は関係ありません。 転倒角は地面や床に置いたときに何度傾ければ倒れるかを計算したものです。 床と固定していれば転倒角の計算は必要なく、固定している素材(ネジや接着剤)の強度に依存していきます…

金属3Dプリンタで使える部品とロケット【機械設計者向け】

今回は金属3Dプリンタにより製造する部品を使用するうえでの考え方をまとめました。 目次 金属3Dプリンタで許容できないもの それでも金属3Dプリンタ自体の製造公差が発生します。 ロケットと金属3Dプリンタ 3Dプリンタで推進薬タンクを製造する 参考文献 金…

宇宙業界用語「JAXA認定品」とは

JAXA認定品とは、人工衛星、宇宙ステーション、ロケットなどの宇宙機に使用可能な品質レベルを満たしていること部品に対して、製造する設備も含めて認定した対象の電気電子機器及び部品のことをいいます。 また、JAXAでは電気電子機器及び部品のことを認定品…

宇宙機の電力システムの過電流による障害 | Lessons Learned【電気設計者向け】

宇宙機の電源制御システム障害 放射線による過電流での障害は発生します。 mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com 過電流は、突入電流やインラッシュカレント(インラッシュ電流)と様々な呼び方があります。 今回は放射線による過電流ではなく、回…

火星の未知の環境でNASAが直面した着陸時の衝突回避方法 | Lessons Learned【機械設計者向け】

宇宙開発は数年掛かりで開発します。 しかも、打上げロケットや打上げ軌道が決まっている場合は、スケジュールをずらすことが難しいのが現状です。 数年掛かりといえど、かなりタイトなスケジュールを強いることが多いんですね。 そのスケジュールの中で、機…

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する | Lessons Learned、失敗学、事故事例【組立作業者向け】

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する スマホや携帯、PCの電源のコネクタは、取付け・取り外しがし易い形状をしています。 宇宙では逆にコネクタが外れないようにしなければなりません。 一番の理由はロケットで打ち上げた際の振動で、コネクタが緩みます…

【設備管理者向け】宇宙向けのサンプルが失われた設備の管理ミス事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

定期メンテナンスの連絡不十分で重要な試験で宇宙向けのサンプルが失われた事例 定期メンテナンスは、設備の寿命を効果的に伸ばすことに役立つ。 定期メンテナンスをしないと、設備が突然壊れた時に、最初から致命的になりかねない。 私たちの知らないところ…

【設備管理者向け】小型振動試験設備の長期間使用のためのクリティカルなパーツ

各種環境試験(振動試験、熱試験用真空チャンバー、電波試験、電磁適合性試験)の保守 試験装置の保守メンテナンスは、装置そのものを長期間使用させることと同時に、新たに設備投資をすることなく、一定の成果を出すためにコスト面でも非常に重要な要素となり…

【機械設計者向け】サーファーの技術がロケットの問題を解決した海外では有名な事例

サーファーの技術が宇宙開発を救った #TIL that engineers had issues with the honeycomb insulation on the #SaturnV second stage, so they ended up hiring local surfers from #SealBeach CA, who had experience in working with the material, to app…

【試験作業者向け】試験装置の配線も確認せずに供試体が破壊された後の今後の対策 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

試験前に試験機器の機能を確認しておく 試験前の事前確認は重要です。 例えば地上支援装置(GSE)を外注し、外注の検査結果をもって試験に挑んだとしても、データが取れなかったなんて言うことはよくある話です。 出荷時点で問題なかったとしても、試験コン…

熱試験で白金温度センサーに異常値・トラブルが発生した理由(2003) | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙環境試験の温度センサー Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-MSFC-202100027 画像は熱真空試験を実施するために、人工衛星を熱試験治具で囲んで、チャンバーに入れるところです。 あの黒い物体が熱試験治具になります。これはヒーター方式で…

導電性のある炭素繊維(カーボン)/樹脂複合材でも宇宙空間で空間電荷の影響を受ける | Lessons Learned

導電性のある炭素繊維(カーボン)複合材でも宇宙空間で空間電荷の影響を受ける 宇宙機開発において注意するべきものは、グランドという考え方です。 既製品や一般製品の場合、アースという考え方があり、グランドはアースに似て異なる考え方です。 アースは…

放射線遮蔽対策せずに国際宇宙ステーションで使用された市販のコンピュータについて

放射線遮蔽対策を真っ向から否定した宇宙用コンピュータ 電子機器が宇宙空間に曝されたときに問題となるのが放射線です。 放射線は電子部品のデジタル信号を狂わせ、運悪く半導体部品に衝突すると使えなくなります。 放射線の種類によっては長時間されされる…