H3ロケット試験機1号機の打上げが2023年3月7日の行われ、失敗した。
2023年度中ごろに打ち上げ予定(2022年12月23日の宇宙基本計画工程表)であった試験機2号機を次の打上げのために準備している。
H3ロケットは政府関連ミッションを達成するための宇宙空間への輸送システムであり基幹ロケットと呼ばれている。
この基幹ロケットの開発を完了させるべく、試験機1号機の原因究明と試験機2号機の打上げ構成を検討している最中である。
ロケットに関する検討状況は、他の人に任せるとして、今回は問題となっている試験機2号機に小型衛星あるいは超小型衛星を搭載して打ち上げるための検討が始まっている。
試験機2号機の打上げ構成は、現在も検討中である中で主とする人工衛星を搭載しない方向でまとまりつつある。
主とする人工衛星を搭載しない代わりに、小型衛星を搭載する案が出てきている。
主とする人工衛星を搭載しない利用は単純にリスクが高いめである。
さて、H3ロケットは精密に作られている。
どの程度の大きさでどの程度の重さを搭載するのか想定しており、物体の重心なども考慮して設計している。
試験機1号機で打上げたALOS-3(だいち3号)は、サイズ5.0mx16.5mx3.6m(太陽電池パドル展開時なのでロケット搭載時はもう少し小さい)、質量約3000kg(3トン)である。
3m以上で、重さ3トンの物体が突然抜けた場合、H3ロケットの重心も変わり打上げに必要な質量パラメータも変更される。
さらには、実際の打上げ想定とは別の品物をロケットと称して飛ばすことになってしまい、実証試験としても不十分な条件になってしまう。
そこで従来は想定する宇宙機相当の模擬質量となる金属の塊であるダミーウェイト、ダミーペイロードなどと称する物体を搭載して、実証試験に臨んでいる。
最近有名なSpaceX社もFalcon Havyロケットで、テスラ・ロードスターという車両を打ち上げている。
日本でも北海道でロケット開発を行っているインターステラテクノロジズでもコーヒー豆や大吟醸、ハンバーガーなどを搭載して打ち上げています。
このようにエンタメ性のあるダミーペイロードを搭載できるのは、民間企業だからできたのかもしれません。
大部分が公的資金であるH3ロケットの場合は、実用性・実証性の低いがエンタメ性の高いダミーペイロードを搭載することは内外からの反発を考えて難しいでしょう。
おそらく巨大な金属の塊となり、もしかするとメッセージボードぐらいは搭載することになりそうですが、エンタメ性は皆無でしょう。
そしてこのダミーウェイト、最低限重量と重心を調整する必要があるため、巨大な金属の塊を加工するなり、複数の塊を結合させる必要があります。
金属価格の上がっているこのご時世な上に、ちょうどよい重さの金属加工はなかなか時間が掛かります。
そこでビギーバック衛星とよればる小型の人工衛星を搭載してはどうか、という話が上がっても不思議ではありません。
メインの宇宙機に相乗りするため、相乗り小型衛星とも呼ばれます。
これにもいろいろ呼び名があり、相乗り衛星、ライドシェア(相乗り)衛星、ビギーバック衛星、小型副衛星などと呼ばれ、少し混乱するものになります。
2016年に打上げられたASTRO-HことX線天文衛星ひとみに、名古屋大学の衛星ChubuSat-2、三菱重工業の衛星ChubuSat-3、九州工業大学の衛星鳳龍四号が打上げられて以降、日本のロケットからは相乗り衛星が打ち上げられていません。
いや、調べきれてないかも。
相乗り事業は2019年にJAXAからスペースDB株式会社に事業移管されています。
スペースDBは、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」からキューブサット級の人工衛星を放出しているのですが、機会がなかったのか事業移管後にロケットによる相乗り衛星を放出していません。
というのが現状です。
今回、H3ロケットの搭載可能としている人工衛星の条件は次の通りです。
(1) 50kg 級の超小型衛星、または、3U サイズ(または、6U サイズ)の キューブサット であること。
(2) 情報提供の時点で、衛星の開発が完了していること。
(3) 総務省への無線局免許取得にあたっての事前調整がなされていること。
(4) 2023 年秋頃の衛星引き渡しを想定し、事前の準備作業に対応可能なこと。
いくつかの条件はありますが、応募締め切りである2023年06月12日時点で、人工衛星本体が完成していること。
多少の時間調整はあるかもしれませんが、試験もすべて終わっていることを条件としています。
また、人工衛星開発より時間が掛かるかもしれない総務省への無線局免許取得もすでに事前調整まで終わっていること。(人工衛星の免許取得は、通信可能な状態、すなわち軌道投入後に通信出来て免許を取得でき、それまでは仮免状態となります。)
総務省へのということから、国内事業者のみ対象としていることが読み取れます。
例えば、海外などで打上げる予定で、人工衛星自体完成しており、延期や打上げ待ちの状態、あるいは継続的に人工衛星を製造しており、打上げ待ちの人工衛星というなかなかシビアな条件となっています。
一方で、無線局の問題が解決しているのであれば貴重な打上げ機会でもあるので、試作・試験用に製造している地上保管・検証用のエンジニアリングモデル(EM)を打上げまでにリファービッシュするという手段も考えられます。
というのも、以下の条件をあらかじめ了解していることを応募本文に記載しているです。
(1) 衛星の開発(追加で発生する試験等の経費を含む)・搭載までの事前準備(衛星側作業)・運用等打上げ後に必要となる作業に係る経費については、情報提案者側で負担頂くこと。
(2) H3 ロケット試験機 2 号機の打上作業が優先となるため、不可抗力もふくめて衛星側を原因とする一切の理由による作業遅延により搭載準備作業が完了しない場合は、マスダミーでの打上げとなることについて、合意可能なこと。
(3) 打上げにおいて、万が一衛星を喪失した際でも、JAXA は再打ち上げ機会の提供、衛星の開発経費等の補償処置を取らないことについて、合意可能なこと。
人工衛星は打ち上げロケットを想定しつつ開発を進めます。
それは、ロケットの振動条件は個々のロケットで全然違うためです。
すなわち、今回のロケット変更により、再び振動試験を実施する可能性があります。
この半年はその試験の実施か、すでに実施している試験でカバーできるものなのかの確認になることでしょう。
ちなみに、衛星のサイズや質量が決められていますが、これはおそらくロケット側の都合で、過去実績ある衛星とロケットインタフェースを使う想定なのかもしれないですね。
問題なく作動する放出機構の製造が間に合うことを考慮すると、これらしか厳しいのかもしれないですね。
海外の放出機構とか半年で調整して製造は、すでに製造済みであるものを融通しなければいけませんから。
逆に、自前のロケット側含めた放出機構があれば、1m級とか、100kg以上とかできるかもとは思っています。
ただ個人的には、多少エンタメに入ってもいいかなぁとは思います。
それこそ、ガンダムなり、神社なり、観測機器や簡易的なリターンカプセル実証モデルとかね。
参考サイト
H3ロケット試験機2号機への「超小型衛星相乗り」に係る情報提供要請(RFI)
H3ロケット試験機2号機への「超小型衛星相乗り」に係る情報提供要請(RFI) | 公募 | 新着情報 | JAXA新事業促進部
令和 4 年度 ロケット打上げ計画書
https://www.jaxa.jp/press/2022/12/files/jaxa20221223-1-1a.pdf
だいち3号(ALOS-3) – JAXA 第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/alos-3/
SpaceXがテスラ車を打ち上げて5年。いま宇宙のどこにいる?
https://gadget.phileweb.com/post-29913/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52959460U9A201C1000000/
Space BD、JAXAより我が国基幹ロケットH-IIA/H3を用いた相乗り超小型衛星打上げ機会の提供事業における民間唯一のサービス事業者に選定