往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていたシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していくブログ

宇宙市場/宇宙機製造に参入するに場合、どうやって製品を出していけばいいのかまとめました

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宇宙業界で活用されていた技術を日常品(宇宙業界では民生品)に活用していくというのが大きな流れでした。

 

2010年代後半から、逆に民生品の技術を宇宙業界に取り入れるような流れになってきました。

 

問題は、宇宙品がとても厳しいという話が広がりすぎて、新規参入する組織が少ないということなのです。

 

今回は、宇宙機に使用する製品。いわゆる宇宙市場に参入するにあたり、どのように宇宙用の製品を製造したり、営業に掛ければいいのかまとめていきます。

 

まとめ

  • 宇宙機の構成から攻める分野を決めよう
  • 類似技術を利用するにはコンポーネントやパーツの分野で挑戦しよう
  • JAXAに相談してみよう
  • 今は革新的衛星実証プログラムという機会を利用しよう
  • 展示会に出てみよう
  • 直接、営業をかけてみよう
  • JAXA共通技術文書を読み込んでみよう

 

宇宙機システムの構成から確認してみましょう

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宇宙機、主に人工衛星や探査機の構成を簡単に述べていきますので、どこに参入していけばいいか、見つけてもらえればと思います。

 

宇宙機は主に次の構成になります。

  1. 宇宙機システム(完成品)
  2. サブシステム
  3. コンポーネント(モジュール、ユニット)
  4. パーツ
  5. マテリアル

 

この中で、宇宙機システムは、製品としての最終的なシステムインテグレーターとしての立場となります。

 

宇宙機で何をやりたいのかを実現するポジションとなるため、人工衛星をとりあえず製造したいではなかなか難しいポジションとなります。

 

2020年、2021年あたりで小型人工衛星を打上げたデブリ対策衛星を製造しているアストロスケールや人工流れ星サービスを実施しているALE(エール)といったベンチャー企業があるのですが、何をやりたいかありきで進んでいた気がしますね。

 

人工衛星を製造する技術を持っているから、人工衛星で何かできることを始めてみようというところは、おそらく東大ベンチャー企業アクセルスペースになるかと思います。

カメラの大手メーカーであるキヤノンの子会社であるキヤノン電子人工衛星ありきでできる分野に参入してきているように思えますね。

 

キヤノン電子は違いますが、大学時代に人工衛星を製造していた、いわゆる大学衛星を製造していた人たちは人工衛星ありきで考えているようですね。iQPS研究所もそうかな。

 

iQPS研究所と同じレーダー小型衛星を製造しているSynspectiveあたりは、企業色が強いので前者の何かやりたいこと、市場を見据えて参入しているように見えます。

 

ここ数年で話題のスペースXのスターリンク衛星などは、自社の保有技術が使用できるから参入してきたように思えますね。

宇宙業界ではないのですが、先に出ているキヤノン電子も自社の保有技術が使用できないかということで、似た流れに乗ってきています。

 

このように宇宙関連の技術がなくとも、参入してきている企業があります。

細かい所を上げれば、まだ数社はあるのですが、とりあえず最近話題のメーカーだけあげておきます。

 

 

また、日本では黎明期から脈々と製造している三菱電機NEC人工衛星のシステムメーカーとしては大手となります。

 

いわゆる大型衛星を製造しているメーカーですね。

大型衛星は、動く金額の桁が1~2桁ほど上がり、失敗した時の損失も大きいため、日本では正直新規参入が難しいところです。

 

そもそも大型衛星を製造してほしいという企業も国内では見つけることが難しく、政府の持つ気象衛星JAXAの実用衛星、深宇宙探査機という方面になります。

 

現存の企業が宇宙業界で最終製品である宇宙機を提供するには、キヤノン電子のようにトップを含めた勢いと、類似技術を持っている強みがなければ障壁が高くて難しいようですね。

 

サブシステムについてはどうでしょうか?

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宇宙機システムと密接につながるため、システムメーカーと同じ組織内で組むことが多いようです。

小型衛星や超小型衛星では、一人あるいは二人となるところも少なくありません。

 

さらに下位構成のコンポーネント自体が少ない場合は、サブシステム=コンポーネントとなり、別会社にお願いすることも難しくはありませんね。

 

その場合は、依頼される側が宇宙事業部とかスペース事業部、一品物開発専門チームであることが多いですね。

 

民生品より特殊な条件で試験や機能を積むことがあるので、特殊チームで組み、専門的に取り扱っていくというところが多いのでしょうね。

 

正直、新規参入を考えると、宇宙機システムよりハードルが高くなります。

 

コンポーネントとの調整と、宇宙機システム側との調整が必要になり、人数が少なければ自転車操業に近くなる可能性が高そうだとだけ言っておきます。

 

宇宙機システム側からとしては、コントロールが効くようにしたいために、自社内でサブシステムチームを構築していく方がよいので、参入が非常に難しいかと思います。

 

コンポーネントとパーツから入るのが近道

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もっとも参入しやすいのが、コンポーネントとパーツですね。

 

各企業がもつコア技術から派生して宇宙製品に取り組むことは十分に可能性です。

 

姿勢制御系サブシステムのくくりでは、慣性計測装置と呼ばれる加速度センサとジャイロセンサを内蔵した装置があります。この装置で、搭載された装置の姿勢や速度、方位や位置を計測することができます。

船舶や飛行機、ドローン、おそらくはミサイルなどに使用されています。

 

姿勢をコントロールするために使用される、フライホイールリアクションホイールなどに転用することが可能です。

この装置は自動車にも使用されています。

 

電磁石も姿勢制御系に必要になります。

人工衛星の場合は、周回する惑星の重力を利用して姿勢を制御したり、人工衛星内部に発生したベクトルを打ち消すために使用されます。

電磁石はモーター駆動に始まり、スピーカーなどさまざまなものに使用されます。

もちろん、人工衛星の姿勢を制御することになるため、それなりの磁力を発生させる必要があります。

 

モータ自体も、太陽電池のパネルを展開させるパドルやアンテナを駆動させるために使われます。

モータは、大気の有無で性能が変わるため、真空の宇宙空間では大抵性能が変わります。

 

通信系サブシステムのくくりでは、携帯電話などに使用されているパッチアンテナをはじめとした、アンテナの類が転用することができます。

無線通信機器も同様に宇宙機に必ず使用されます。

 

通信機は発熱により性能に影響を受けることから、宇宙に転用するには、熱的な観点が他の機器よりも重要になります。

 

そのほかには、データ処理系サブシステムでしょうか。

データ処理系は、いわゆる組み込み系といわれ、ミドルウェア、広義的な意味でOSが対象となります。

この制御技術も必要になってきます。

 

制御技術で、データ処理系の外に上げられるのは、先に上がった姿勢制御ともう一つは電力制御です。

 

電力制御あるいは電源制御とまとめられることがあります。

組織によっては電力分配機も電源系サブシステムか計装系サブシステムに含まれます。

設備設計がこのあたりの技術に関係してくるのではないでしょうか。

そもそもの電池あるいは電力制御技術で活用することができます。

 

電源系サブシステムは、電力消費の多いヒータの制御を行うことがあり、熱制御系と組み合わせて開発することがあります。

 

電力を保持する電池ももちろん転用可能です。

電池の民生品としての利用は結構古いです。

 

計装系サブシステムは、ボトルやハーネスが採用されることがあるため、あえて宇宙品とて区分けされることは少ないです。

その中でもハーネスは耐熱耐候性でさらには真空時に被覆からガスが生じにくい材料を必要とします。

クリーンルームで使用される装置のハーネスが転用されることも少なくありませんね。

 

コネクタも、ロスを減らすため抵抗値が低いコネクタを使用することになります。

コネクタの樹脂部分からのガスにも気を付ける必要があります。

各種部品の樹脂部分は、素材から発生するガスの存在が宇宙品の評価の中で厳しい項目になるかと思います。

 

ボルトは強度の問題からSUSが使用されることが多いようです。

チタンというイメージもあるかもしれませんが、チタンは高価であるため、現在ではSUSのボルトを使用することが多いです。

もちろんアルミ合金のボルトを使用する場合もありますが、強度の問題で使用場所は少ないですね。

 

続いて熱制御系サブシステムですが、前述したヒータの外に、ヒートパイプを使用することがあります。

宇宙でのヒートパイプに封入される材料の主流は水あるいはアンモニアですね。

 

代替フロンの研究も進んでいますが、多くは水とアンモニアですね。

凝固点がかなり低く、粘性が低く、沸点が高い材料が選択されます。

 

地球を周回する人工衛星はだいたい40分~50分ぐらいで昼夜が変わります。

昼夜で-100℃から+100℃近くに変化することから、流体で安定な部材を使用せざる負えないのです。

 

熱交換効率が高くても、極端な温度変化で安定しなければなりません。

最近の開発材料は、地上の気温か高めの温度で安定なものが選択されることが多く、急激な温度変化に耐えられることが制約条件になります。

 

あとはバッテリですね。リチウムイオン二次電池です。

 

はやぶさ(1号機)では、ほぼ初めてリチウムイオン電池が採用された事例でもあるようです。

 

一通り上げていますが、さらには推進系サブシステムで推薬弁もあります。

推薬弁自体は宇宙機で軌道制御用の機器ですが、弁機構についてはエンジン類で使用されています、

 

だいたい挙げられたでしょうかね。

 

パーツとコンポーネントを採用するにあたる基準

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宇宙用製品を売り出すにはどうすればいいでしょうか?

そんなことを考えている企業があるかもしれません。

 

宇宙用には、温度のサイクルが大きく、放射線に影響を考えなければならず、強い振動や重力加速度に耐えなければならなず、高信頼性と回答する人が多いのではないでしょうか。

 

この回答では具体的のように見えて、定量的ではありません。

まずは、定量的に回答してもらえる組織に聞いてみるのがとても早いです。

残念ながら、早々回答してくれる組織は少ないでしょうね。

 

最初に確認されるのは実証あるいは実績となり、二の句を告げられなくなることも多いのではないでしょうか。

 

正直、一番早いのはシステムメーカーから宇宙製品を開発してみないかと提案をしていただくことです。

 

宇宙開発に必要な情報や試験内容、仕様を知ることができます。

 

次はJAXAに直接問い合わせるですかね。

今であれば、民間企業からの参入に力を入れていますから、協力してくれる可能性があります。

最近であれば、革新的衛星技術実証プログラムが動いているため、実証するチャンスがとても高いです。

この革新的衛星技術実証プログラムですが、どこまで続くのか分かりませんので、今の時期はとても機会に溢れています。

 

革新的衛星技術実証プログラムは、JAXA側からの技術支援を受けることができ、最終的に成功するかは分かりませんが、宇宙機としては実用レベルまで引き上げてもらえます。

 

プログラムは、だいたい2年間で完成(試作品ではなく、完成品)させる計画ですので、宇宙機の計画としてはとても速いサイクルです。

 

大型衛星の場合、5年や7年、10年以上もかけていますので、慎重にノウハウを蓄積することができるのですが、担当が変わることも少なからず発生してしまいます。

 

この革新的衛星技術実証プログラムの場合は、短時間でノウハウを蓄積することが可能です。

もちろん、すべて大型衛星のような評価ができるわけではないので、JAXA支援側との調整が重い物にはなります。

 

革新的衛星技術実証プログラムに採用されなくとも、ときおり実施している宇宙×民間の協業のような場を設けていますので、そこを紹介される場合があります。

 

その次は展示会で公開することです。

 

宇宙開発系の展示会あるいは、JAXAが出展している展示会に足を運ぶというのも有りですね。

 

メーカー営業の経験がある人は実感があるかもしれませんが、案外、展示会のつながりで引き合いに繋がることは少なくありません。

 

その場で直接打合せや情報交換も行うため、必要な情報のポイントを知ることができます。

狭い業界ですのでアナログなつながりが強かったりします。

 

最後に売り込みですね。

マーケッティングして、情報を公開していくことです。

人工衛星を製造しているメーカーや大学に問い合わせて、買ってもらえないか、営業をかけることになります。

 

実は数年前に、経済産業省で小型衛星用のコンポーネントのWEBカタログのような物を公開しています。

 

Makesat

https://makesat.com/ja/products

しかし、あまり積極的ではないようなんですよね。

 

せめて、宇宙系の商社が管理していればいいのですが、「株式会社インフォステラ」が管理しているようで、これが現在、宇宙系の地上局関連ソフトウェアを提供している企業と同名で関連性があるのかよく分からないんですよね。

いまいち活かしきれていません。

 

実際のところ、各組織内の商流ネットワークや宇宙系商社、直接の売り込みによるところが多いように思えます。

 

まだまだ障壁があると感じる人向けの公開されている宇宙仕様

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売り込みや引き合いを経験して、まだまだ足りないといわれたり、門前払いされてしまいつつも、宇宙業界に参入したい場合はどうしましょうか。

 

宇宙機システム経験者を中途採用するのが早いです。

といっても、製造期間が長いため、すべての開発フェーズを経験した人は少ないかと思います。

 

初期設計(概念設計)で考えるべきことと、完成品で考えることは、一般製品・工業製品と同じく違います。

 

その取っ掛かりとなるのは、JAXA共通技術文書です。

宇宙航空研究開発機構~安全・信頼性推進部

 

このJAXA共通技術文書ですが、JAXAの人が思っているほど広まっていません。

 

宇宙機システムメーカーでは、このJAXA共通技術文書を読んでいることが多いのです。

 

しかし、宇宙機システムメーカーが開発品をサブシステムメーカーやコンポーネントメーカーに依頼する場合は、必要と判断した部分を抜粋して仕様書にまとめているため、全貌を知ることはないですし、知る必要はないとして「見る」こともほとんどありません。

 

正直、このJAXA共通技術文書を読み込み、製造まで落とし込めれば文句はないでしょう。ただ、小型衛星や大型衛星共通の部分があるので、過剰な要求なことがあります。

 

この時に、JAXAの支援や経験者により、バランスをとらないといけないのが難しい所ですね。

 

技術文書であるので、各人工衛星に適用される固有の情報のロケット環境(振動や電磁波)や軌道条件、運用条件が定まらないと具体化できないところもあります。

 

それでも、インターネットの情報を使えば補完することは十分に可能です。

 

 

本気で宇宙業界参入を進めるのでしたら、今回紹介した方法で色々進めてみることをお勧めします。

 

業界としては、狭い業界といわれるため、最近流行のSNSでのマーケティングよりも、実際に動いてぶつかっていく営業の方が、キーパーソンに繋がることは多いです。

 

長すぎて、あまりまとまりがなかったな

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する | Lessons Learned、失敗学、事故事例

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する

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スマホや携帯、PCの電源のコネクタは、取付け・取り外しがし易い形状をしています。

 

宇宙では逆にコネクタが外れないようにしなければなりません。

一番の理由はロケットで打ち上げた際の振動で、コネクタが緩みます。

 

軌道上でも、寒暖差が激しいため、コネクタが収縮して緩むことがあります。

 

宇宙機で姿勢や軌道を変更する際に、人工衛星内でいくらかの振動が発生して緩む可能性があります。

 

コネクタだけではなく、コネクタが付いているワイヤのテンションが強ければ、もっと緩い振動で外れてしまいます。

 

宇宙だけではありません。

 

日常製品でも同じことが言えます。

 

PCを使用しているのでしたら、映像用のコネクタが分かりやすいかと思います。

 

衛星用のコネクタが緩んでいれば、時折、ディスプレイの映像の色が出てこなかったり、映らなかったりします。

 

宇宙機に限らず、様々な電子機器で発生します。

 

今回はコネクタの話です。

 

概要

新しく製造された電子部品の電気的な受入検査を実行しているときに、不規則な大電流が計測されました。

 

その際に、ある技術者は、何か焦げたような匂いを感じていました。

 

他のトラブルシューティングのためにコネクタを取り外したときに、コネクタのワイヤが緩んでいることに気づきました。

 

コンタクタを保護するカバーを取り外した後に、ワイヤの緩みとナット/ボルト接続部が高温特有の変色があり、過熱が確認されました。

 

ワイヤーは、銅線部分を金属金具と共に固定されており、金属金具が抜けないようにボルトに溶接されていました。

 

ボルトで溶接されているため、ネット側から取り外すことも、締めることもできず、結局コネクタ本体を交換することになりました。

 

根本原因

コネクタの製造工程内で、ボルトナットを十分に締結しているか確認されていなかったことが原因でした。

 

しかも、ナットを回転させることまではできたのですが、緩みなく締めることができなくなっていました。

 

無理にナットがハマったことによるカジリが発生したのか、ナットあるいはボルト自体が不良品であったのか、ボルトと金属金具を固定した際に溶接材が付着したのか、いくつかの要因が考えられます。

 

Lessons Learned

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。


組立時に、すでに接続済みのコネクタを外す際には、細心の注意を払って、無理な負荷を掛けることなく外し、再接続が問題ないようにする必要があります。

 

推奨事項

宇宙機の最終組み立て時、コネクタのボルトを含むトルクを掛けた部品に対して、ナットやコネクタが接続されている筐体側にも「トルクマーク、あるいは合マーク」を適用すること、検討してください。

 

宇宙業界では合マークより、トルクマークの方が通じることが多いです。

トルクマークは、ペンの場合もあれば、色付きの接着剤を塗布する場合があります。

 

次に、「トルクマーク」の目視検査することで、最終的な組立ができているのか確認することができます。

 

もしボルトが緩んでいたり、なんらかの理由で取り外した場合は、接合部のトルクマークがずれていたり、塗布した接着剤に亀裂があれば、十分な締め付けができていないことに気づくことができます。

 

接続が緩いんでいる場合は、緩んだ接続部にタグをつけるなどして、作業をするマークをつけ、トルクマークを外します。

 

処置が終わり、接続部のトルク掛けが完了し、組立て終わったら、再度、「トルクマーク」を付けます。

 

高電力が流れるコネクタは、電子機器を最初にONし、電力を供給する前に、トルクマークを含む接続の確認することが必須です。

 

今回は、目視検査を実施していましたが、コネクタカバーに隠れた緩みまでは確認できなかった事象であることも注意が必要です。

 

終わりに

コネクタ接続による失敗は、すべてを破壊する可能性があります。

 

電子機器だけではなく、最悪、作業者にダメージを受ける可能性もあります。

 

最初の試験や慣れてきた最後の試験など、十分に気を付けていきましょう。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

High electrical resistance from loose connectors

https://llis.nasa.gov/lesson/1229

 

ものづくりにおけるリバースエンジニアリングについて

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リバースエンジニアリングは、パーツ、既存のモデル、およびアセンブリを使用することで、3Dデータを生成できるプロセスの一つです。

 

簡単に言うと、スキャンしたデータを元に製品を再現することができます。

 

 

リバースエンジニアリングは、既存の形状から正確なデータ及び設計意図を読み解くために必要な工数を大幅に削減することができます。

 

リバースエンジニアリングが、ユーザーのニーズに見合う価値があるかどうか判断する前に、どのような要素があり、最終結果として何がどうなるかを理解しておく必要があります。

この記事では、どのような流れで行われ、何がアウトプットされるのかなどの情報を提供し、価値があるのかどうか判断ができるように説明しています。

 

リバースエンジニアリング:知っておくべきこと

#1 関与するステップ

リバースエンジニアリングのプロセスは、元の図面、モデル、またはマニュアルやドキュメントがない場合、既存のコンポーネント、サブアセンブリ、または最終プロダクトそのものを複製するために使われます。

 

既存のコンポーネントと接続するために、対応する新しいコンポーネントを作成する場合にも使用できます。

 

リバースエンジニアリングを使用して、製造業、航空宇宙産業、自動車産業、さらには原子力産業の企業で使用されています。

ゴルフボールのような小さな部品から小さな製造施設全体までデータをスキャンすることができます。

最近では、ロケットの部品もスキャンできます。

 

最初のステップは、プロジェクトに適しているツールであるか、どうかを判断することです。

リバースエンジニアリングが効果的であると判断したら、部品をリバースエンジニアリングする手順に進みます。

 

1.まず、スキャンする必要があるデータと最適な機器を選択します。

2.最適な機器を選択したら、元の製品をスキャンします。

3.出力ファイルは、ポイントモデルまたはメッシュとしてoutputされます。データは、手動と自動化された技術の組み合わせて、最終部分にさらに絞り込みます。

4.CADモデルが完成すると、製造または3Dプリンタを実行します。

 

この手順はどの3Dプリンタでも似た流れとなります。

 

#2 所要時間

リバースエンジニアリングは、完成した3Dモデルをすぐに受け取るのと同じくらい簡単だと考えています。

 

スキャン技術が進化し、さまざまな部品や材料をスキャンすることができ、最終的な精度も数ミリ単位で正確に製造することも可能です。

 

しかし、製造する材料により数時間から何十日も時間が掛かる場合があります。

 

1.スキャン時間

部品または機器の複雑さは、スキャンにかかる時間に影響します。

 

さらに、スキャナーごとに、異なる速度で動作するのです。

製品をを分解して各パーツを個別にスキャンする必要があると、時間もかかります。

このプロセス全体には、数時間から数週間程度かかります。

 

2.CAD時間

モデルの修正にかかる時間は、スキャンされるアイテムの複雑さとサイズに影響されます。

すなわち、必要な量に応じて、数日から数週間程度かかります。

 

#3 使用機器

部品または製品を効果的にリバースエンジニアリングするために、さまざまな特殊機器が使用されています。

 

3Dスキャナー

主なものは、リバースエンジニアリングされるアイテムをスキャンするために使用される機器です。

適切な選択は、必要な価格と精度、および最終製品に必要なサイズと詳細レベルに依存します。

 

3Dスキャナーには、ハンドヘルドまたは自動レーザースキャナー、座標測定機(CMM)、CTスキャナー、長距離スキャナーなどが含まれます。

 

ソフトウェア

スキャナーによって収集されたデータを分析できる専用のソフトウェアが必要です。

ソフトウェアは、データポイントのクラウドを取得し、正確に取得できます。

終結果は、さまざまな異なるCADに取り込めるモデルを作成します。

 

オペレーター

機器やソフトウェアを操作するために訓練されたオペレーターが必要になります。

ソフトウェアは、エラー分析を実行し、部品を完全に理解するために最善の仕事をします。ただし、訓練を受けた技術者は、追跡と調整が必要または有用である可能性のある領域を解釈および特定できます。

 

#4 一般的な用途

リバースエンジニアリングが必要になる事象。

  • 元の製造元で廃盤となった。
  • 元の文書が残されていない。
  • 元の製造元が廃業した。
  • 故障している部分があり、再設計する必要がある。
  • パフォーマンスとベンチマークのために競合製品を分析する。
  • 競合他社が製品を発売した場合に特許を保護するため。
  • 元のCADモデルない場合に、製造プロセスを変更するため。
  • 元の代理店が代替品を提供できない場合。
  • 時代遅れの材料または時代遅れの製造プロセスを更新するため。
  • 手作りの部品やアセンブリを再現するため。
  •  
#5 部品詳細

パーツをスキャンして3Dモデルを作成する際に実行することは、外部の製品をスキャンすることです。

多くのスキャナーは、数千または数百万ものデータポイントを作成します。

最初に表示すると、レンダリングは非常に抽象的なように見え、スキャンされた製品が、オブジェクトのように見えない場合があります。

 

特定のソフトウェアによってデータを処理すると、データを分析することで、サーフェスやメッシュなどが生成されます。

通常、メッシュは、スキャンされた元の部品に対して、数ミリ単の精度を持っています。

 

ソフトウェアは、メッシュ上の各ポイントでエラーと分散の分析も行います。

最終的なモデルは、プログラムにロードされて操作されるため、ソフトウェアがエラーの可能性が最も高いと検出された領域で正確な測定値を使用して修正を行うことができます。

 

#6 制限事項

ほぼすべての種類のオブジェクトをデータに変換して、3Dスキャナーを使用してコンピューターに入力できます。

私たちはゴルフボールから製造施設全体までの小さな物体をスキャンしました。

 

金属、プラスチック、木材、粘土など、さまざまな素材をスキャンすることもできます。

 

基本的に、スキャン中にオブジェクトが静止したままであれば、デジタル化できます。

これには、機械の単一の部品、物理モデル、さらには個々のボルトのすべてが含まれます。

 

リバースエンジニアリングがニーズを満たすかどうかを判断する際に考慮すべき最も重要なことは、オブジェクトの複雑さです。

スキャナーには軽微なエラーがあり、ソフトウェアまたは人間の介入により修正する必要があります。大きく複雑なオブジェクトは、修正に時間がかかります。

 

最大の制限は、特許技術または独自技術です。

部品を複製する前に、適切な権利と許可があることを確認する必要があります。

 

#7 ファイルタイプ

スキャナーから取得した3Dデータは、元々、ポイントクラウドまたはポリゴンメッシュとして作成されます。スキャンソフトウェアは、SolidWorks、Pro Engineer、Inventor、およびSiemens機器に対応する完全にネイティブなモデルにデータを変換できます。

また、IGES、STP、X_T、DXF、DWG、および他の多くのような非独占的なファイルタイプを生成することができます。

点群データを使用して、正確な防水メッシュを作成することもできます。結果のメッシュを3Dプリンターで使用して、正確なプロトタイプを作成できます。

 

参考情報

https://www.engineeredmechanicalsystems.com/reverse-engineering-everything-you-need-to-know/

Jim Anderson

定期メンテナンスの連絡不十分で宇宙向けのサンプルが失われた事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

定期メンテナンスの連絡不十分で重要な試験で宇宙向けのサンプルが失われた事例

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定期メンテナンスは、設備の寿命を効果的に伸ばすことに役立つ。

定期メンテナンスをしないと、設備が突然壊れた時に、最初から致命的になりかねない。

 

私たちの知らないところで、ビルの管理で定期メンテナンスをしていますし、日本では5月の大型連休、8月のお盆時期、12月の年末年始の人が比較的少ない時期に大規模なメンテナンスを行います。

 

計画停電やサーバーのシャットダウンなども行われます。

 

かなり余裕のあるインフラ設備の場合、2系統以上あり、片方を落としてメンテナンスを行っている最中は、もう片方を稼働させるという手法が取られます。

 

最近はデジタルデータが増えたことで、サーバーに保存されるデータが増え続けることで、2系統運用していたのに、データ保存領域を増やすために1系統運用に変更したというところも多いのではないでしょうか。

 

今回は、定期メンテナンスで陥りやすい事例がありましたので紹介します。

 

概要

試験施設の保守作業者による日常メンテナンスを実施していたのですが、事故が発生し、サンプルの寿命試験が予定より早く終了、すべての試験サンプルが失われた。

 

施設を使用するユーザーと、施設の保守作業者の組織間のコミュニケーションを行うこと。

試験サンプルや人員が危険な状態となる状況を認識できるようにユーザーに対して情報を共有すること。

試験設備が適切に運用されるようなレベルを設定すること。

 

技術情報

NASA /カリフォルニア工科大学のジェット推進研究所(JPL)によって設計されたほとんどの宇宙機は、太陽光を電気に変換する太陽電池のパネルを動力源としています。

ただし、深宇宙ミッションでは、放射性同位元素発電機を使用する場合があります。

 

太陽光を必要とせず、放射性崩壊により発生する熱を電気に変換することができますが、太陽電池よりも複雑な技術です。

 

発生タイミング

事故が発生したのは、その特性評価のための施設でした。

 

2014年2月1日に毎年実施している予防保全(定期メンテナンス)が実施されました。

この定期メンテナンスには、落ち葉の除去やその他の日常的なメンテナンスも実施していました。

 

土曜日は、ほとんどのスタッフが不在になるため、施設の保守業者が、特性評価を行う試験設備の冷却システムを停止するには都合のよい期間でした。

 

問題は、この作業がJPLのエンジニアと調整されていなかったことです。

 

重要な試験機器が保護されず、冷水が不足したことで、試験チャンバー内の温度が上昇し、水冷システムのろう付け継手が故障しました。

 

土曜日の午後には定期メンテナンスが完了し、冷却システムを稼働し始めたのですが、ろう付け継手が高温で割れたため。冷水が漏れ、試験室内の試験サンプルエリア内に侵入しました。

結果、試験チャンバーの圧力が失われ、水が試験チャンバーの施設の床に漏れ出てしまった。

 

翌朝、エンジニアが試験施設内に入ったところ、試験室室の床が0.5インチも使っていることに気づきました。

 

エンジニアは水漏れをチェックするために試験室内に入ったが、リークの原因を特定できなかったので、検査技師に電話をかけました。

 

エンジニアが到着すると、試験チャンバーから水が出ているのを発見しました。

 

2人のJPLのエンジニアは、掃除機で水を取り除き、天井に取り付けられたクレーンを使用して、試験チャンバーを開き、チャンバーで封じられていた約190リットルの水を排出しました。

※この時、2人のエンジニアは、実験室の床に多数の活線の電気ケーブルがあるため、水が通電される可能性があることに気づいていませんでした。

 

アンチモンゲルマニウム、銀などの18種類の試験サンプルの寿命試験は、2012年6月から試験チャンバー内で継続的に実施され、合計16,000時間も試験していました。

 

寿命試験の目的は、放射性同位元素熱電発電機(MMRTG)の出力の劣化を予測するために、高温時の熱電特性をより正確に定量化することでした。

 

試験サンプルは6つのチャンバーで試験していたのですが、水に浸されたことで試験サンプルが急冷され、想定より早く試験を終わらせることになり、すべての試験サンプルが失われ。

 

また、メンテナンス後に冷却システムが稼働しなかった場合、施設内の試験チャンバーと試験サンプルだけでなく、バッテリーラボで試験中のバッテリーセルが危険にさらされた可能性がありました。

 

また、この事故で試験機に大きな損傷があり、施設のクリーンアップには50時間かかりました。

 

この事故は「NASA​​の事故タイプC」に分類され、事故の直接費用の合計は5万ドルから50万ドルほどかかりました。

 

保守業者に対して作業許可を得ていたのか不明ですが、作業前に試験施設の担当者に連絡することをしなかった。

 

保守メンテナンスにより、施設内の設備が停止されること、稼働しないことを即座に伝達するべきです。

 

漏水は翌日の日曜日の朝に発見されましたが、JPL警備サービス、研究所の所有者、JPL施設組織のいずれも日曜日に事件について知らされていませんでした。

 

また、試験施設がバッテリーラボの地下にあるにもかかわらず、「クリティカル施設」として登録されていませんでした。

しかし、保守業者またはJPL施設の担当者が、シャットダウンの影響を理解していたかどうかは不明です。

 

事故の原因は、アラームや機器の自動シャットダウンに対して、十分に試験に対する保護がされなかったことです。

 

Lessons Learned

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。


施設内の操作で、利用する試験設備に影響を与えるすべてのイベントについて、施設を利用するユーザーと他の組織(緊急対応、施設のメンテナンス、安全性など)との間で十分な情報共有ができる体制を構築することです。

 

施設内で重要な設備リストを定期的に確認し、重要な設備リストに対して行われるサービス(電力、水、暖房、空調、バッジの読み取りなど)の潜在的なリスクが反映されているか確認することです。また、警備サービスや施設管理部門とも共有したリストを作成することです。

 

実験室および試験施設を利用するユーザーは、緊急対応の引き金となる危険な状態であることを認識できるように、情報を共有し、トレーニングしてください。

また、重要な運用のために、緊急時の対応マニュアルを作成し、トレーニングを実施してください。

 

また、重要なハードウェアの冷却システムに対してアラームを追加し、シャットダウンによって主要な担当者への通知されるようにしてください。

 

終わりに

事故が起きた時は、事象を分析して、個人や個々の事象に対応するのではなく、根源の事象に対してシステムとして防ぐ仕組みを作る必要があります。

 

恐らく保守業者は、毎年実施していることから、施設管理者が施設利用者に、通例として通告していないとは思っていなかった可能性があります。

 

ただ、施設管理者は通例ではあるものの、実は今までこの時期に定期メンテナンスを実施しているとは知らずに、年間の報告書で初めて知ることもあったのかもしれません。

あるいは、どこまで設備を停止させて定期メンテナンスをしているのか知らないので、影響度合いを知らなかった可能性があります。

 

影響の度合いを考え、事前に連絡すること、調整することが必ずしも当たり前とは思ってはいけません。

 

当たり前が続くと、通例や慣例となり、本来するべき作業が抜け落ちてしまう可能性があります。

 

今回の教訓にあるように、連絡体制をシステム化したり、重要度の高い作業を共有することで、定期メンテナンスの時期に連絡を忘れないようにすることは大事です。

 

立上げ当初は、各人員が十分に気を配っているため、抜け落ちるということは少ないのですが、担当が変わったり、業者が変わったりすることで、気を配るところが変わっていったときに、今回のような事例が発生しやすくなります。

 

気を付けましょう。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Poor Coordination of Routine Maintenance Spoiled an Important Test

https://llis.nasa.gov/lesson/10401

 

小型振動試験設備の長期間使用のためのクリティカルなパーツ

各種環境試験(振動試験、熱試験用真空チャンバー、電波試験、電磁適合性試験)の保守

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試験装置の保守メンテナンスは、装置そのものを長期間使用させることと同時に、新たに設備投資をすることなく、一定の成果を出すためにコスト面でも非常に重要な要素となります。

 

近年、日本各地で人工衛星開発をする企業が出ています。

 

人工衛星及び人工衛星に搭載される機器の開発には環境試験が付いて回り、衛星機器関連メーカーと試験機は切り離せない存在となっています。

 

一部の試験装置は、地方自治体の管理する試験装置を使用することで、各機器の評価を行っていますが、各組織で試験装置を保持することも多くなっています。

 

今回、近年の小型衛星での使用はもちろん、大型衛星でもコンポーネントで使用される小型振動試験設備を運用保守してきた宇宙航空研究開発機構JAXA)から、保守管理に関するレポートを軽くまとめていきたいと思います。

 

振動試験機のクリティカルな部分

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振動試験機は、いくらか小型化していますが、次の要素で構成されています。

  • 振動発生器
  • 水平振動台・垂直振動台
  • 電力増幅器
  • 冷却装置
  • クーリングタワー
  • 制御装置
  • データ計測。解析装置
  • 計算機

 

この中から特に故障および修理・保全コストが掛かるものを上げました。

 

振動発生器:分解点検

  • ベアリング
  • アマチャ/テーブル
  • 励磁コイル
  • 消磁コイル

水平振動台:機能点検・試験前点検

垂直振動台:機能点検・試験前点検

  • ベアリング
  • 空気発条

冷却装置:機能点検

  • ヒートエクスチェンジャー水漏れ
  • 空冷用ブロワ

冷却塔:隔週日常点検

  • 密封型水冷棟

冷却塔:機能点検

  • 冷却水ポンプ

 

分解点検は、通常の作業メンバーでは対応不能ですが、日常点検や試験点検で発見できることも多いです。

 

故障が発生すると、試験が止まり、大抵、連続稼働しているときに故障が発生します。

多くはベアリングやポンプといった駆動部分が故障することからも、日常点検から劣化を確認しておく必要があります。

 

施設の装置の場合、ベテランの操作メンバーが対応することが多いです。

ベテランの操作メンバーの場合は、新品で故障が発生していない正常な状態を知っていることから、異常な挙動に気づきやすいです。

 

こういった保守メンテナンスで重要なのは、何が正常で、何が異常であるか気づくことです。

 

作業点検リストに、「異常がないこと」といったあやふやなチェックリストを作成していないでしょうか。

 

定量的な数値を示せない場合は、写真などを使用してチャックすると効果的です。

 

新たに入ったメンバーが対応しても、異常な状態を判断する基準を作っておく必要があります。

 

故障した時に、「なぜ異常に気付かなかったのか」と問ても満足な答えは返ってきません。

常時異常な値であっても、ギリギリ動いていたなんていうことはよくあります。

 

もちろん、上記に上げられるように、分解点検しないと気づかないポイントもあります。

 

案外こういった試験は、連続して実施することが多く、十分な検査・点検の時間が取れないこともあります。

 

現在、新たに振動試験装置などの環境試験装置の導入している組織では、年間の試験回数を想定し、点検間隔などを考慮しましょう。

 

まとめ

これらの情報は、試験機器製造メーカーに対して、設置時や初期動作確認時などに、事前に故障した場合に聞いておくポイントリストとしても使用できます。

 

もちろん、製造メーカーが保全・メンテナンスをしなければ十分に修正できたのか判断できないこともあるので注意が必要となります。

 

逆にメーカー保証として事前に聞いておくには有用な情報となるのではないでしょうか。

 

Ⅰ(破局) 供試体の破損もしくは深刻なスケジュールインパクト(復旧まで 6 日以上)
Ⅱ(重大) 重大なスケジュールインパクト(復旧まで 2 日以上 5 日以内)
Ⅲ(局所的) 軽微なスケジュールインパクト(1 日以内に復旧可能)
Ⅳ(無視可能) 機能制限等により試験続行可能

 

参考資料

宇宙機環境試験設備の保全有効性評価による費用対効果最大化に向けた取り組み

https://jaxa.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=46756&item_no=1&page_id=13&block_id=21

 

人工衛星に使用されている太陽光発電はグリーン電力証書を使用できるのか【宇宙ビジネス】

グリーン電力証書というシステムがある

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資源エネルギー庁が打ち出した政策でグリーン電力証書というシステムがあります。

 

再生可能エネルギーによる電力をエネルギーとしての価値ではなく、環境保全への貢献としての価値(環境価値)を取引可能な証書としたものがグリーン電力証書です。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

人工衛星も、再生可能エネルギーといわれる太陽光発電を使用しているため、グリーン電力証書の対象となるのか、確認してみました。

 

人工衛星の発電をグリーン電力として設備認定できるのか?

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グリーン電力証書の中身は、第三者機関の一般財団法人 日本品質保証機構が認証した発電設備で発電した電力量を証書化したものです。

 

さて、人工衛星に適用できるのか設備認定申請書から洗っていきます。

 

設備認定申請書

認証手順 | グリーンエネルギー認証制度 | 地球環境に関する審査・評価・支援 | 日本品質保証機構(JQA)

 

 

申請書は2つあるのですが、太陽光ファームは土地に太陽光発電システムを構築しているので、通常の申請書となるでしょう。

 

  1. 発電所在地は、軌道上とかになるのかな。
  2. 発電方式から、太陽光発電になるから、適合説明は可能。
  3. 発電電力量の測定は、電力系統に供給されており、測定できるから可能。
  4. 追加性要件は、グリーン電力の取引により確実に、運用を維持しているといえるので可能。
  5. 環境価値の帰属に関しては、各組織・事業者により異なるので省きます。
  6. 環境の影響評価は、軌道上なので生態系にへ影響がなく、おそらくデブリ対策を記載しておけばよい気がしますね。ただ、宇宙業界でない人がスペースデブリに対しての理解があるかは不明ですが。
  7. 社会的合意については、近隣住民が居ないので影響はない。あえて書くとすれば、電波法上で電波発信ができるか否かですかね。いわゆる周波数の国際調整になりますかね。
  8. 情報公開は、もちろん可能です。

 

あれ、意外といけますね。

 

問題は関係法令ですかね。

フォーマット上での関連法令は、該当なしに成り得ますね。

 

もちろん、電気を発生させつつ事業化とも読み取れるため、電気事業者となるかは注意が必要です。

宇宙空間であるので関係ないとも言えますが、この場合は、運用している組織の所在地での自治体がどのように判断するかによるかもしれません。

 

フォーマット以外では、先に述べた電波法と宇宙活動法とリモセン法になりますね。

 

その他は、景観などは該当なしなので難しいですね。

設置後の有効期限は、電波法と同じく、何年電波を発信するかによります。

意外と真面目に行ける気がしたけど、どうなんでしょうね。

 

人工衛星の価値を増やす

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これを調べた理由は、いくつかあります。

 

古くから環境に良いといわれる太陽光発電を使用している人工衛星グリーン電力の塊ではないか。それを宣言できるところがないかと思いました。

  • 国内では全然財源が厳しく、赤字と隣り合わせの宇宙業界での第二の収益になるのではないか。

人工衛星を複数基所有していればその分グリーン電力の「環境価値」が売買できるので、運用や保守管理維持費用を軽減できるのではないでしょうか。

絶対知っている人はいない。

将来的に軌道上での太陽光発電グリーン電力とするための前例が必要ではないかな。

  • 脱炭素に向けた技術と宇宙業界両方の業界を盛り立てることができる。

 

課題となるのは、3つほどあります。

  • 従来からグリーン電力を使用してきたので、EV自動車のように化石燃料の代替ではなく、過去から今でも主要な電力源にあるということ。
  • 発電所ではなく、発電設備であり、電気事業法上どうなるのか分からない。
  • 発電量が圧倒的に少ない。

 

ただ、政府資金での補助が出ているわけではないので、理論上は可能だと思います。

 

WEBサイトで投資家に向けて堂々と環境保全の活動をしているといえるので、いくつかの投資上では楽になるかもしれません。

 

 

今のところ、グリーン電力発電設備認定一覧に宇宙機はないですけど、どうなのかな。

そんな労力を掛ける人もいないかな。

 

 

参考資料

認証手順 | グリーンエネルギー認証制度 | 地球環境に関する審査・評価・支援 | 日本品質保証機構JQA

https://www.jqa.jp/service_list/environment/service/greenenergy/flow.html

グリーン電力証書について説明します。脱炭素やカーボンニュートラルとの関係

グリーン電力証書とは

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太陽光や風力などで発電した電力を化石燃料原子力を利用して発電している電力と区別し、消費することなく永続的に利用できる再生可能エネルギーグリーン電力としています

太陽光発電風力発電などの再生可能エネルギーは、発電システムの構築やメンテナンスが必要になるため、一度構築しても永久に発電し続けるものではありません。

 

グリーン電力は脱炭素社会のため貢献しているということが多いのですが、定量的にどのぐらいの電力量(何ワット分)貢献して、同じ電力量を発生させるのに化石燃料原子力発電ではCO2がどれくらい発生するのか、決めることにしました。

 

その仕組みがグリーン電力証書システムです。

 

脱炭素にどれくらい(定量的に)貢献しているのかを、日本国内では政府の資源エネルギー庁(2021年8月現在)により第三者機関が「認証」することで、貢献分の電力量を「環境価値」と称して事実であることを証明する文書をグリーン電力証書といいます。

 

グリーン電力証書の証書発行事業者の認定は、第三者機関は一般財団法人 日本品質保証機構JQA)が対応しており、過去、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所とグリーンエネルギー認証センターが「認定」及び「認証を2018年4月1日付で譲渡されているため、古い資料だと上記2つの機関で認定されていることがあります。2021年8月現在。

 

グリーン電力証書と同様に、非化石証書とJクレジットも環境価値を証書化したものがあります。

 

今回グリーン電力証書を取り上げたのは、宇宙機では太陽光発電を行うため、適用できるのではないかと考え、調べてみました。

 

[目的]

  

なぜ、注目が集まりつつあるのか

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一つは脱炭素社会が世界中に各産業界に向けて言われるようになったからです。

 

一つはカーボンニュートラルがあります。

過去世界各地で行われた地球環境について考える会議において、地球温暖化に影響があるといわれているCO2発生の削減が言われてきました。

しかし、実行不可能であることに気づき、目標を変更してCO2を発生させる一方で、CO2を減らす対策を行い、減らすことができずとも、足し合わせてゼロにすることを考えました。それがカーボンニュートラルです。

 

一つは2015年に国連で合意されたSDGsと言われる2030年までにSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)を達成させるが展開されているからです。

各国で言われていたのですが、2019年頃から企業がSDGsについてどのように取り組んでいるのか、情報を公開し始めました。

 

その前提にあるのが、2006年に国連事務総長であるアナン氏が金融業界に向けて、機関投資家が投資する際に、ESG[環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)]の取り組みも評価することを提唱した責任投資原則(PRI)を提唱したことです。

 

ESGがジワジワと浸透してきた結果、SDGsが広まってきたことで、企業側も明確に投資家向け情報により具体的に書かれるようになっていきました。

 

SDGsやESGは比較的知られているようですが、SBTやRE100というのもあります。

 

SBTは、Science Based Targetsの略称で、パリ協定による世界の気温上昇を産業革命前より2℃を下回る水準に抑え、1.5℃に抑えることを目指すものとして、5年~15年先を目標として、企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。

環境省資料参照)

 

RE100は、事業を100%再エネ電力で賄うことを目標とする取組のことです。

環境省資料参照)

 

 

 このように、いくつかの国際的な取組みに投資家向け情報を始め展開しており、人の目に着くようになったようです。

 

グリーン電力証書における取引の始まり

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グリーン電力証書やJクレジット制度、非化石証書は、取引が可能です。

 

グリーン証書の場合は、発電する設備の持ち主に対して、グリーン電力証書発行事業者がグリーン電力証書を発行します。

 

グリーン電力証書は電力としてのエネルギーの価値ではなく、再生エネルギーを発電している価値となります。

 

では、この価値が何のために役立つのかというと、先述した国際的に環境保全あるいか環境改善活動に貢献していますといえます。

 

どうやら、グリーン電力を発電している場合、電気としての価値を電力会社に販売することが可能で、他の脱炭素のために活動している企業に販売することが可能です。

 

グリーン電力証書 売買」や「グリーン電力証書 販売」で検索するといくつか出てきます。

いくつかの情報を確認すると、十数円~数円/kWhで販売されています。

 

さらに、グリーン電力証書価格は、ブロックチェーンを利用して決めるという動きもあります。

 

 

ブロックチェーンは、グリーン電力証書(に限らす暗号通貨など)を電子化し取引を行う際に、取引自体を公表して共有し記録する技術です。

 

取引を記録するため、台帳技術ともいわれます。

 

取引記録データが一定量集まると、1つの塊(ブロック)となり、新たに塊が作られるのですが、それぞれの塊が継続して鎖のようにつながり共有し記録します。

 

全てが繋がっているため、最初の取引記録からすべての取引記録が公開されています。

 

また、ブロックがたくさん作られるのですが、一元管理(1つのサーバー上で管理)されておらず、定期的に不正検証・検算を行います。

 

定期的に不正検証・検算作業を行うことをマイニングといい、マイニングを行うことで取引記録を確認し承認していくことになります。

 

暗号通貨ではこの作業を実施している協力者が検証・検算作業が成功すれば、報酬を与える仕組みがあるのですが、この辺は各グリーン電力証書のプラットフォーム事業者が実施しているのでしょうかね。

 

ブロックチェーンでの利点は、マイニングによる不正を防止する対策と、すべての取引記録がブロックチェーンの中に記録されているので、個人のアドレスを確認すれば、すべての取引履歴を洗い出す(トレーサビリティする)ことができることでしょうかね。

 

次回予定:宇宙機グリーン電力証書が適用できるのか?

 

 参考資料

グリーン・バリューチェーンプラットフォーム 国際的な取組

https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/intr_trends.html

SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説|日本の取り組み事例あり

https://miraimedia.asahi.com/sdgs-description/

「ESG」「SDGs」「RE100」「SBT」…環境経営の“必修用語”をまとめて解説

https://www.sbbit.jp/article/cont1/36239

グリーン購入ネットワーク

https://www.gpn.jp/guideline/green/

再生エネルギーとは

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/index.html

ブロックチェーンベースの電力取引プラットフォーム「Electrowise」の発表

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000030542.html

デジタルグリッドが電力と環境価値をネット上で売買――脱炭素への後押しになるか?

https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1195645_1534.html

ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2排出削減価値創出モデル事業

http://www.env.go.jp/earth/blockchain.html

 

サーファーの技術がロケットの問題をどうやって解決したのか

サーファーの技術が宇宙開発を救った

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1960年、サーファーの技術が宇宙開発での大きな課題を解決しました。

今回はその話を調べましたので紹介します。 

 

[目次]

 

それはロケット開発で起きた問題だった

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活かされたのは液体燃料多段式ロケットであるNASAのサターンV型ロケットの開発でした。

 

ことの始まりは、1960年代初頭の有人宇宙飛行計画のアポロ宇宙船の搭載重量が増えていったことにあります。

 

アポロ宇宙船を目標とする軌道に投入させるため、NASAのエンジニアはアポロ宇宙船の重量を維持しつつ、ロケット側を軽くさせる必要がありました。

 

重量の問題が発覚した時点で、ロケットに搭載されているいくつかの部分の製造がすで終わっており、燃料タンクを搭載するS-IIの開発が残っていました。

 

開発に時間が掛かる対象にしわ寄せが来るのはメーカーではよくあるので、このS-IIでも同じことが起きていました。

 

困ったことにS-IIは、この重量問題以外に、溶接が長い点、S-IIのステージに搭載する燃料タンク自体が大きく薄い厚さで高い精度で溶接しなければならないことなのがあげられました。

 

S-IIはさらに大きな課題、それが燃料タンクの断熱材に使用されたハニカム構造をもつ材料の問題が発生したのです。

 

従来のロケットからの新要素として、酸化剤と燃料タンクの間の隔壁を大きくすることで、タンク構造及び支持するステージの全長を短くして、余分な重量を削減する設計にしました。

 

S-IIの構造はこちらが詳しいです。

S-II Overview

Engineering Course for Saturn S-II Stage Systems

 

そして、従来より大きな隔壁と共に、燃料タンクの低温断熱を行う必要があり、そこにアルミニウムのシートを挟んだフェノール樹脂のハニカム構造が選定されました。

 

ハニカム材料自体は同型のロケットの外装にアルミニウムによるハニカム構造が使用されていましたが、このフェノール樹脂にウレタンを充填する構造の採用は初めてでした。 

 

ハニカム構造の断熱材は燃料タンクに接着するのですが、低温の燃料が入っているタンクにより液体水素が断熱材側に付着し、接着力を低下させ、断熱材の一部がはがれてしまったのです。

 

対策として、断熱材に切り込みを入れ、液体水素を逃がす構造に変更しました。

しかし、、液体水素はタンクに燃料が充てんされ打上げの瞬間まで溝を通って行ったのですが、打上げ後に断熱材の接着が弱くなり、何度も剥がれ落ちる結果になったのです。

 

さらに、いくつかの代替案を試したのですが、どれも失敗しました。

 

アメリカの雑誌Defense Acquisition Research Journal July-August 2019に記載がありました。

 

Insulation on the hydrogen fuel tanks was failing. Engineers applied a vacuum-sealed honeycomb insulation material to the exterior of the hydrogen fuel tanks used to power the five J-2 and single J-2 engines on the second and third stages, respectively. 

This kept the hydrogen from boiling in the Florida heat. Try as they might, the honeycomb insulation kept popping off the tanks. They knew they were doing something wrong, but they were not sure what. With the manufacturing facility located on California’s Seal Beach, the engineering team, capitalizing on their geographic proximity, recruited some improbable experts that just might be able to help:
Surfers! Surfers used honeycomb cores to create and repair their surfboards because of the lower weight and higher strength than traditional foam and fiberglass boards.
They were hired—and they did a great job applying their unique expertise to resolve the problem. The only drawback was high absenteeism when the surf resources and capabilities available to contribute to the overarching objective, and then devised and communicated a plan to execute those resources.


You cannot change reality, but you can change your plan.

 

Defense Acquisition Research Journal July-August 2019

https://www.dau.edu/library/defense-atl/DATLFiles/Jul_Aug2019/DEFACQ_Jul_Aug2019.pdf

 

(意訳)

燃料タンクの断熱材が劣化した。燃料タンクの外壁面に真空にして接着した断熱材を貼り付けた。 

これでフロリダの暑さで(低温)水素が沸騰しないようにできた。しかし、何度やってもハニカム構造の断熱材がタンクから外れてしまう。 

間違ったことをしているのは分かっている。

分かっているけど、何が間違っているのか分からない。

エンジニアリングチームは、製造拠点であるカリフォルニア州のシールビーチに近くて、助けてくれそうな専門家を募集した。

それがサーファーだった。

サーファーたちは、炭素繊維製のボードよりも軽量で強度が高いハニカムコアを使って、サーフボードの製作や修理を行っていた。

彼らにメンバーに入ってもらい、独自の専門知識を駆使して問題を解決してくれた。 

ただ、唯一の難点だったのは、彼らは欠勤が多く加工するためのリソースが不足していたのです。

限られたリソースで実行するため、計画を変更することにはなりました。

 

現実を変えることはできませんが、計画を変えることはできます。

 

(意訳終わり)

 

また、NASAのChief HistorianであるBrian Odomのインタビューからも読み取れます

 

MOON LANDING SPECIAL 1 – THE APOLLO SPACE PROGRAM

https://livinghistorytv.com/moon-landing-special-1-the-apollo-space-program/

 

このサーファーの知恵と技術を用いて考えた方法は非常に簡単で経済的でした。

 

従来、ハニカムコアを図面通り燃料タンクに合うように成形し、スキンと呼ばれる板材で挟んで接着・硬化させた後に貼り付けていました。

 

サーファーの知恵と技術により、ハニカムコア部分をすでに製造しているタンクの壁面に直接貼り付けて成形し(また液体水素を逃がす溝もなくし)、スキンで挟んで接着・硬化させてから、適切な輪郭に加工するプロセスに変えました。

 

製造誤差により密着した貼り付けが難しい部分を、いわゆる「現合合せ」で製造したのです。

 

なぜこんなことが起きるのか

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宇宙開発に限らず、製品は図面をもとに製造され組み上げられます。

タンクや隔壁など各地の工場や別会社で製造されているので、各製造精度を管理していく必要があります。

 

タンクはロケットに限らず宇宙機にも使用されるのですが、重量の問題からタンクの厚みを薄くし、強度も必要なため厚みに対して高い精度が必要になります。

 

タンクの精度は加工や研磨により出すことができるのですが、断熱のために貼り付けるハニカムに対しては、同じ精度を出すことがとても難しいのです。

 

ハニカムパネル構造は炭素繊維の板やアルミニウムシートといったスキン材をハニカム構造のコア材に挟んで成形します。

その後、スキン材を接着し、加熱して掛けて、形状を固めます。

加熱した際に、圧力を加えたり、真空下にすることもあります。

 

精度としては接着剤による厚みや、スキン材そのものの加工精度、コア材の歪みが合わさり、どうしても別々に製造しているタンクとの間にすき間が発生し、真空で接着してもうまくいかなかったのでしょう。

 

どこにも記載はないですが、おそらくはこのすき間を埋めるために、断熱材側やタンク側の両方を加工や研磨で調整していたのかもしれません。

 

 

現代にあるような高精度のレーザー検査機もないため、手作業での調整をしていたのかもしれません。

 

また、フェノール樹脂材によるハニカム構造のコア材というのも、調べた限りではNASAで採用されたことが初めてであったため、あまりノウハウが蓄積されていなかった可能性もあります。

 

これが理由で失敗していたのだろうと想像できますね。

 

 

宇宙は複合技術です。何が役に立つのか分からない、そんな事例ですね。

 

映像で見る

このハニカム構造体ですが、その後、アポロ宇宙船でも使用されています。

同じハニカムコアであるかは不明ですが、成形方法から、おそらく今回で得たノウハウが活かされているようです。

 

固まった状態のハニカム材を貼り付けるのではなく、アポロ宇宙船に合わせてハニカムのコア部分を成形し、加熱・加圧して、製造する様子が映されています。

 

アポロ宇宙船のハニカム成形(サターンVとほぼ同時期の製造)

www.youtube.com

ドキュメンタリーからサターンVの熱問題

youtu.be

ドキュメンタリーからサターンVの熱問題

youtu.be

アポロ宇宙船の熱シールド対策について、ハニカム材料を採用した内容

www.youtube.com

 

参考資料

SP-4206 Stages to Saturn

https://history.nasa.gov/SP-4206/ch7.htm

S-II OVERVIEW

http://heroicrelics.org/info/s-ii/s-ii-overview.html

ENGINEERING COURSE FOR SATURN S-II STAGE SYSTEMS

http://heroicrelics.org/info/s-ii/s-ii-stage-systems.html

S-II INSULATION

http://heroicrelics.org/info/s-ii/s-ii-insulation.html

Saturn V

https://web.archive.org/web/20150326211327/http://history.msfc.nasa.gov/saturn_apollo/documents/Second_Stage.pdf

アポロ計画 - Wikipedia

Saturn V - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/S-II 

Design - Decision - Contract October/November 1961

https://www.hq.nasa.gov/office/pao/History/SP-4009/v1p2e.htm

Lunar Orbit Rendezvous: Mode and Module April 1962 through June 1962

https://www.hq.nasa.gov/office/pao/History/SP-4009/v1p3c.htm

SP-4206 Stages to Saturn  IV. Building the Saturn V

https://history.nasa.gov/SP-4206/ch6.htm

Roger Hanson: How Surfers Saved the Moon Mission

https://www.stuff.co.nz/taranaki-daily-news/news/108263730/roger-hanson-how-surfers-saved-the-moon-mission

木製サーフボードの軽量化技術

ウッドサーフボードの作り方 – protoplastico surfboards and designs

quarter_isogrid

https://sheldrake.net/quarter_isogrid/

 

MOON LANDING SPECIAL 1 – THE APOLLO SPACE PROGRAM

https://livinghistorytv.com/moon-landing-special-1-the-apollo-space-program/

The Amazing Handmade Tech That Powered Apollo 11’s Moon Voyage

https://www.history.com/news/moon-landing-technology-inventions-computers-heat-shield-rovers

The Space Age in Construction

https://www.ncptt.nps.gov/blog/the-space-age-in-construction/

50th Anniversary of Apollo 11 – Mission to the Moon Made Possible with Aluminum

https://www.lightmetalage.com/news/industry-news/aerospace/50th-anniversary-of-apollo-11-mission-to-the-moon-made-possible-with-aluminum/

Space Launch Report . . . Saturn Vehicle History

https://www.spacelaunchreport.com/satstg5.html

The Apollo Flight Journal S-II Insulation

https://history.nasa.gov/afj/s-ii/s-ii-insulation.html

 

試験前に地上試験装置の配線も確認しないと供試体が破壊される | Lessons Learned、失敗学、事故事例

試験前に試験機器の機能を確認しておく

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試験前の事前確認は重要です。

 

例えば地上試験装置(GSE)を外注し、外注の検査結果をもって試験に挑んだとしても、データが取れなかったなんて言うことはよくある話です。

 

出荷時点で問題なかったとしても、試験コンフィギュレーションを組んだ時に、ヒューマンエラーが発生してしまうことがあります。

 

特に一度しか行われない試験の場合や試験機器のスケジュールがタイトな場合が宇宙機ではよく、本当によくある(あった)のですが、再試験に時間が掛かります。

 

最悪再試験できないことがあります。今回の事例は、再試験ができない事例でした。

 

 

概要

Mars Science Laboratory(MSL)であるCuriosity Roverにあるロボットアームのシステムシステム試験が失敗した理由は、地上試験用装置内部の配線間違いによるものでした。

 

失敗の原因を調査した際に、地上試験用装置の機能を確認した際に発見できました。

 

ミッションインテグレーション試験とも呼ばれるAssembly, Test, and Launch Operations(ATLO)のシステム試験として熱試験を実施していました。

 

熱試験は筐体の環境を真空(低圧)状態にするチャンバーのドアを閉める前に、使用する地上試験装置の計装部(ケーブル)を接続した状態で、地上試験装置の機能が動作することを確認しておくこと。

 

  

発生タイミング

2011年3月、NASAカルフォルニア工科大学にあるジェット推進研究所(JPL)でMars Science Laboratory(MSL)である Curiosity Roverの組立、試験、ミッションインテグレーション試験を含めた、システム熱試験が実施されました。

 

システム熱試験の1つとしてCuriosity Roverの前面部分にあるロボットアームに搭載されているコンポーネントの火星の岩石サンプル採取用のパーカッシブドリルの低温低圧試験が行われました。

 

ロボットアーム含めたパーカッシブルドリルは複雑なシステムで合計16個のアクチュエータで構成されています。試験の概要はドリルに加わる応力を動作温度で検知・検出することです。

 

温度をドリルの応力に変換する検出器の検証は、パーカッシブルドリルに接続されているロードセル(質量やトルクを検出するセンサ)によるドリルビット部分のたわみとドリルの重力ベクトルの計測を行う加速度センサを地上試験装置(GSE)に接続することで実施しました。

 

 

システム熱試験としてCuriosity Roverのロボットアームは、50N刻みで300Nまで加圧することを実施しました。

 

しかし、予圧プレートに埋め込まれたロードセルは力の増加を検出できませんでした。

納品前、ロードセルは校正され、機能が検証されていました。

 

システム熱試験の失敗の主要因は、ロードセルに付属のアンプユニットへのAC電源のリード線の誤接続でした。

結果、ロードセルは地上試験装置と接続していたのですが電力が送らませんでした。

 

根本的な原因は、システム熱試験前の試験コンフィギュレーションを組み付けた時に、不適切な手順と指示によって引き起こされました。

システム熱試験前に、すべて接続された状態で、地上試験装置を使用したロードセルの機能が動作されるか確認されないまま試験を実施されたことです。

Lessons Learned

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

地上試験装置が試験対象のフライト品に接続され試験環境に供するときに、ケーブルなどが誤接続されてしまい、試験中に気づいたとしても、中断して試験のコンフィギュレーションを変更することが不可能な場合があります。

 

本試験では、実試験ができずシミュレーションによる分析を行いましたが、実機を利用した試験より精度が落ち、満足できるものではないところで終わっています。 

 


 

最後に

真空(低圧)下の熱試験は、宇宙機を熱真空チャンバーに搭載し熱真空チャンバーはチャンバー内を一度真空(低圧)にしつつ温度を下げていきます。

 

チャンバー内が低圧状態ですと外部の大気圧によりチャンバーのフタを解放することが難しくなります。

 

チャンバーに低圧状態を解放する機構があっても、チャンバー内に一気に空気が入り込み空圧によりチャンバーに物理的に影響を及ぼします。(一気に空気が入り込んできちんと固定されていない個所などがぐちゃくぐちゃになります)

 

さらに低温状態になっている場合、外部との温度差によりチャンバー内部が結露します。すなわち、宇宙機の電子機器が一度水を浴びる状態になります。

 

こうなった場合の対処は少なく、可能な限り水分を拭き取り、可能であれば電子機器内部も開けて水分を拭き取ります。

 

その後、ベーキングを行います。ベーキングというか機器自体を加熱して水分を蒸散させます。

熱真空チャンバーで実施すれば、余計な水分も吸出し排出させるためより効果的です。

最初に水分を拭くのは、蒸散の時間を減らすためですね。

 

経験者のいない宇宙機開発の場合は、こういう失敗を起こしていたと聞いたことがあります。

経験者が居たとしても、ヒューマンエラーであったり、試験後の熱真空チャンバー開梱時に十分に大気圧に戻っておらず、圧力差と湿度により結露します。

 

材料ベースでベーキングしていたところ無駄になってしまうこともあり、水分に敏感なミッション機器を熱真空試験に供する場合は十分な注意が必要ですね。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

 

https://llis.nasa.gov/lesson/6696

熱試験での白金温度センサー実装する際に熱応力を考慮して固定しないと異常値に成り得る(2003) | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙環境試験の温度センサー

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-MSFC-202100027

 

画像は熱真空試験を実施するために、人工衛星を熱試験治具で囲んで、チャンバーに入れるところです。

 

あの黒い物体が熱試験治具になります。これはヒーター方式ですね。

黒色にしているのは熱放射を一定にするためで、安定して熱放射することができます。

 

今回は熱真空試験に使用される温度センサーのLessons Learnedです。

 

温度センサーは白金温度センサと呼ばれる種類のセンサが使われます。

 

金属が温度変化により電気の抵抗が変化する特性を利用して温度センサの抵抗値を測定することで温度を測定することができます。

 

熱真空試験は、宇宙空間上の熱を含んだ環境条件で問題なく機器が動作するかを確認するとともに、熱シミュレーションのコリレーション値、キャリブレーションに必要になります。

 

温度センサーでどの程度の精度が必要になるかは、機器の動作精度やコリレーション値の精度に関わってきます。

 

量産機でない場合、一度取得すると二度と取得できないデータにもなります。

 

概要

熱衝撃あるいは熱応力による温度センサーの故障は昔から発生していました。

 

温度センサーの取付方法によって、検知する温度が敏感に応答する。

 

発生タイミング

マーズエクスプロレーションローバー(Mars Exploration Rover, MER Mission)のシステムレベルの熱真空試験中に、ミニ熱放射分光計(Miniature Thermal Emission Spectrometer, Mini-TES)の温度校正(キャリブレーション)のための2つの白金温度センサーのうち、1つが故障しました。

 

故障した白金温度センサーは、比較的脆いセラミック体で、貼り付けには硬質接着剤を十分に塗った状態で貼り付けられ、機械的な応力が掛かり故障しました。

 

白金温度センサーの貼り付けは、認定された方法がなく、以降のクーポン試験でも同様の故障が発生しました。

 

影響

Mini-TESの温度センサーが失われると、Mars Exploration Roverの科学データの大部分が使用できない可能性があります。

 

対処

故障した白金温度センサーの一部は作成し直し交換されました。

 

他の白金温度センサーは、キャリブレーションのデータが無効となるために交換することなく打上げられました。

 

ミッション結果

MER Missionのために、火星に着陸してから3か月後、交換しなかった白金温度センサーの一部が壊れ、キャリブレーションが失敗しました。

 

一方で、交換した温度センサーは壊れることなく使用することができました。

 

発生原因

システムレベルの熱試験での故障は、Mars Exploration Roverを周囲温度に戻すためにヒータを使用していたのですが、ヒータの電源がオフになった直後に発生しました。

 

白金温度センサーを貼り付けるための過剰な硬質接着剤(エポキシ接着剤)がセンサーからリード線の方まで移動し、白金線との熱膨張係数の違いにより破損した可能性があります。

 

 

温度センサーは、宇宙機のと機器の状態に関する重要な情報を提供し、サブシステムの機能に不可欠な場合があります。

 

過去の事例では温度センサー取り付け方法が故障の大部分の原因となっていました。

 

貼り付け後に、温度センサーに対して適切なストレスリリーフ(応力が分散あるいはかからないような方法)がない場合、熱試験により、温度センサーの筐体(セラミックなど)、検出部、リード線、接着剤といった異なる膨張および収縮率で熱応力が掛かる可能性があります。

Lessons Learned

NASA内の過去の事例を確認すると、温度センサーの形状及び表面実装材料により、機械的応力が掛かりやすいかが識別できます。

 

認定品やある程度の実績品を使用することで、同様の白金温度センサーが故障しにくい可能性があります。

 

これは通常の宇宙用適合製品を選定するにあたる選定及び設計ガイドラン(たとえば、200サイクルで155℃の範囲)に適合した製品よりも、適した製品を選択することができます。

 

新たに標準の選定部品を選ぶ際に、変更点と認識して、影響の有無を分析する必要があります。

推奨事項

熱真空試験を実施、あるいは十分に検討、分析、検証を行った製品のパッケージを選定してください。

白金温度センサーの選定基準、実績品、取付け手法の確立、取付け手順の明確化を行ってください。

 

温度センサーなどのデバイスを取り付けるための接着剤によるボンディングおよびポッティングコンパウンドの使用に関して、手法や手順を確認し、使用する接着剤の特性や、貼り付け時の機械的応力緩和の必要性を注意喚起してください。

 


 

最後に

白金温度センサーは、試験にのみ使用する場合と、機器の基本データであったり、今回のような温度のキャリブレーションに使用されます。

 

試験のみに使用予定の白金温度センサーも、アクセス性の問題から試験後にはがせずに軌道上に運ばれた事例は複数あります。

 

試験に使用する温度センサーだからといって、不用意なものを使用すると内部で破損したり、貼り付けた筐体側に影響したりするので、可能な範囲で宇宙品質のセンサーを使用した方が良いでしょう。

 

また試験に使用する場合は、筐体保護のためにポリイミドテープ(カプトンテープ)を貼り付けた上で、温度センサーを接着剤で固定する場合があります。

 

ポリイミドテープは断熱性が高いので、アルミテープを使用した方がより現実に近いデータが取得できるかもしれません。

 

Lessons Learned

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Thermal Sensor Installation Failures Remain a Problem (2003) 

https://llis.nasa.gov/lesson/1739