往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

アマゾンの最強の働き方の自分用まとめ 年間計画及び会議、6ページ資料

「アマゾンの最強の働き方」のまとめを書き出してみました。

 


 

 

全ての土台となる「年間計画」を考える

全社的に目標を打ち出されたのちに、部門や課、係といった数人規模のチームの自律性を担保するために、各チームの目標を全社の目標と整合させる詳細な目標設計のプロセスが存在します。

 

目標は1~2週間程度のやっつけではなく、1~2カ月の時間をかけて検討していきます。

 

全社一斉にこのプロセスに取り掛かり、会社全体の「期待」や「目標」を設定したのちに、各グループは詳細な業務計画の提案を行ことになります。

 

詳細な業務計画を策定する場合、各チームでボトムアップ型の提案を打ち出していく。

 

  • 過去の実績(達成できた目標、できなかった目標、得られた教訓など)
  • 翌年に向けた重点項目
  • 詳細な損益計算書
  • 経営資源の要求、およびその理由(新規採用、マーケティング費用、設備、その他固定資産など)

各チームはその規模に応じて財務および人事グループの担当者と連携して計画を練り、提出していきます。

 

各チームをまとめるリーダーは、ボトムアップの提案と、そのチームに対して上位レベルで課された(トップダウン)目標との間に乖離があれば調整していきます。

 

トップダウンの目標とボトムアップの計画が整合するまで、計画の再検討と再提出を繰り返していきます。

 

計画を実行し、その四半期の結果を受けて、計画の調整を行い、事業の軌道修正を図っていきます。

 

軌道修正では、各チームが会社全体の目標と足並みをそろえるように計画を調整します。

 

この際に数字化された目標まで落とし込み、各チームの成果物のレベルまで分解していきます。

 

目標はSMARTでなければならない

目標は、具体的で測定可能(Specific)、達成可能(Mesurable)であり、関連性(Relevant)と期限(Timely)があることが欠かせません。

 

上位の目標は数百個近くに上りチャレンジングであることから、年度末までに達成できる目標は75%程度を見込んでいます。

チャレンジングであることを考慮に入れており、ひとつ残らず達成されるようなことがあればハードルが低すぎるといえます。

 

目標は四半期ごとに厳しく検証されます。

 

目標と追跡する際は、「順調」「目標を達成できない可能性あり」「有意義な変更を加えない限り目標を達成できない可能性大」と仕分けしていきます。

 

業務計画の立案は、その他制すべき本当に重要な項目について、会社全体の合意を形成していくフローとなります。

 

現状をデータでとらえられる仕組み

アマゾンで行っている定期的に経営分析を行う「週次ビジネスレビュー」を行っています。

 

週次ビジネスレビューには、小さなグループから10億ドル規模のビジネスに至るまで、さまざまな状況に適用できます。

 

週次ビジネスレビューの構築には、シックスシグマを参考にしています。

 

①定義

コントロール可能なインプット指標の組み合わせが、重要なアウトプット指標に弾みをつけます。

 

アマゾン・フライホイールという循環型のモデルを構築しています。

どの指標から取り組み始めることができ、一つの指標を向上させると、どこかの指標も併せて向上していき、最終的にすべての指標が増加していくようなモデルとなります。

 

週次ビジネスレビューで議論されるほぼすべての指標は、フライホイールの要素のいずれかに分類され、週次ビジネスレビューの最初のページには、このフライホイールの絵が描かれています。

 

何をインプット指標とするかは、「コントロール可能なインプット指標」を選択することが重要となります。

 

失敗した事例の一つに、品ぞろえに着目したインプット指標の選択がありました。

 

品ぞろえの指標の一つに「追加された商品詳細ページの数」を挙げたのだが、週次ビジネスレビューで検討していくに連れて、商品詳細ページが増えても売上に貢献していないことが分かった。

 

商品数が増加すると、需要のない商品も仕入れており、在庫保管費に影響し、需要の高い商品のために確保していた保管スペースを奪ってしまっていることに気づいたからでした。

 

週次レビューの中で次のように変更していきました。

  • 商品詳細ページの単純な追加数に着目することをやめた。
  • 商品ページの閲覧回数に着目した。
  • さらに、1歩進めて、在庫がある商品が閲覧された割合に着目した。
  • さらに進めて、最終的に、在庫があって注文後2日で届けられる商品の詳細ページの閲覧割合を目標として採用された。

最初から、適切な指標を選択して実行することは難しい。

 

大切なのは不具合を見つけるたびに粘り強く分析し、議論することにあります。

指標も範囲が狭すぎると懸念することもあるが、チームしいては事業全体の体系的な改善をもたらします。

 

指標が決まったら、チームの活動状況を評価する具体的な基準を設けていきます。

 

不適切なインプット指標や、的が絞り切れていない指標を用いたのでは、アウトプットの改善につながりません。

適切なインプット指標であれば、組織全体が最も重要な仕事に集中できます。

適切な指標を確実に選択することは、あらゆるインプット指標について繰り替えるべきプロセスです。

 

また、最大の過ちは行動を開始しないことだ。

週次ビジネスレビューの大半はささやかなことから始まり、時間をかけて大きな変化と改善を実現しています。

 

②測定(省略)

 

③分析

データが発するシグナルからノイズを取り除き、その上で問題の根本的な原因を突き止め、対処することです。

 

データに想定外の数値や理解しがたい問題であることに気づくと、根本的な原因を突き止めるまで決してあきらめない。

アマゾンでは「なぜなぜ分析」をベースとして分析していく。

 

「なぜなぜ分析」は故障分析としてではなく、あくまで異常値の分析ツールとして使用しています。

 

④改善

やみくもに改善しようとしても、不十分な情報を頼りに、自分でもよくわかっていないプロセスを手に付けることになります。

そんな方法でうまくいく可能性は低くなります。

 

週次ビジネスレビューを続けていると、時間の経過とともに有益な情報を伝えれれなくなった指標に気づくかもしれない。

 

時間をかけて、各指標が発するシグナルの強さや質に基づいて、指摘の修正、追加、削除を行う必要があります。

 

指標の数については決まった個数や公式はなく、適切な指標を探し当てるのは時間を要する作業であり、継続的に改善に努めなくてはなりません。

 

週次ビジネスレビューでトレンドを分析し、課題が浮上した時点で検証していきます。

 

⑤管理

管理では、プロセスが正常に機能していることを確認するとともに、業績が徐々に悪化していないか確認することが目的となります。

 

週次ビジネスレビューでは個々の指標の改善を議論する定例会議ではなく、例外的事象に対処する会議になっていくのが一般的です。

 

このステップでは、自動化できるプロセスの特定も行います。

プロセスが十分に理解され、意思決定の原理がソフトウェアやハードウェアによって構築できるなら、それは自動化の候補になります。

 

週次ビジネスレビューは極めて効果的だが、迷走することもある。

 

週次ビジネスレビューの重要なの目的は学習すること、そして問題が起きれば責任を負い、解決することの2つです。

 

ひどい会議となると大きなチャンスを逃し、参加者全員の多くの時間を無駄にしています点です。

原因として、出席者の数がどんどん膨れ上がった。会議の雰囲気が恐ろしく悪い。

 

週次ビジネスレビューに進行役はいません。

テーマごとに担当者が引き継ぐ流れです。だとしても、職位が最も高い出席者は良い雰囲気を演出し、基本的なルールを設けるべきです。

 

「6ページ資料」で提案する

6ページ資料はどんな議題にも適用できます。役に立つ資料を欠くには練習が必要となります。

基本的な構成は次の通りです。

  • はじめに
  • 基本的指針
  • 特筆すべき達成事項
  • 特質すべき非達成事項
  • 時期に向けた提案
  • 陣員数
  • 損益計算書
  • FAQ
  • 添付資料(6ページ外の資料、集計表、データ、チャート、試作品などの補足情報を含む)

 

検討すべき議題が示された資料は、会議に参加する全員が、会議室で、会議の冒頭で一斉に黙読するのが最も効果的だ。

 

1ページを読むのに約3分はかかるので、文書の長さは6ページまでとした。30分の会議なら3ページの文書が適当で、会議時間の3分の2は検討時間に充てるのが良いとされています。

 

参加者のフィードバックについては、クラウドで文書を共有し、お互いのコメントを閲覧する方法もありますが、紙にコメントを欠く人も居ます。

 

なれていないと「まず資料の概要を説明します」とやってしまいがちだが、その誘惑に負けてはいけません。

 

文書を作成したのは、論理を明快に示し、口頭での提案にありがちが弊害を取り除くためで、時間の無駄になるからです。

 

参加者にとって、有意義なフィードバックやインサイトを伝えることは、提案文書を準備するのと同じくらい難しい。

 

正しいと証明できるまで、すべての文が間違っていると疑いながら読み進めること。

 

批判的な視点によって、的確に状況を把握できているか、根本的な事実を見逃していないか、といった検証が可能になります。

 

以上、個人的なまとめでした。

 


 

ロシアの撤退で国際宇宙ステーションに何が起こっていくのか

credit:NASA

https://images.nasa.gov/details-9802668

 

あまり時事ネタはやらないのですが、浮かんでしまったのでまとめました。

 

2022年4月30日、以前より、国際宇宙ステーションISS)の撤退を表明していたロシアの国営宇宙機関のROSCOSMOS(ロスコスモス)のCEOであるドミトリー・オレゴヴィチ・ロゴージン(ロシアの元副首相)がロシアの国営テレビ(日本でいうNHK)で、1年間の契約義務を果たしたのちに撤退することを話しました。

 

本当に撤退するかはロシア政府の決定が必要になるため、まだどう転ぶかはわかりません。

 

この国際宇宙ステーションは、2020年まで運用されることとなっていたのですが、アメリカの宇宙機関であるNASAの計画で、2030年まで運用することが計画され、各国に呼び掛けておりロシアも検討中でありました。

 

NASAでは民間の宇宙ステーションの計画も進めていたのですが、まだ先になる見通しから延期していたという背景があります。

 

 

国際宇宙ステーションは政府間協定( International Space Station Intergovernmental Agreement)により、国際宇宙ステーションの設計、開発運用、および利用における各機関の役割と責任を明確にしています。

 

ロシアは国際宇宙ステーションに燃料を供給することで軌道を維持することで衛星の寿命を延ばすスペースデブリを回避する推進系の機器をはじめ、インフラや研究設備、収納設備を担当しています。

さらには国際宇宙ステーションを構成するところ以外では、地上と軌道上での通信を行う地上局なども担っています。

 

またこの政府間協定には、各国の法律に反しておらず、合意が取れれば移管することが可能で迅速に対応することが求められています。

特に安全を求められる対象に関しては基本は制限がないものとしています。

 

この前提で撤退を考えてみます。

 

ロシアの所有設備をどうするか

正直、撤退側のロシアがやるべきことを単純に書き出すと3つになります。

 

  • ロシア人員の撤収
  • ISS内で実施されて研究データの撤収
  • 地上からISSに向けての電波送信/受信の国際免許を停止

 

撤退ということですので最低限にとどめておくこれぐらいになります。

 

残った側で考えなければいけない方がいくつかあります。

ロシアの設備をどうするのか?が大きな課題になります。

 

一つはロシアが管轄していた設備(モジュール)である「ズヴェズダ」をどうするのか考えなければなりません。

それぞれ推進機能やロシアの居住スペースを担っています。

 

このロシアの所有設備を廃棄するのか、買い取るのか、残った側が選択することになります。

買い取るにしても、老朽化が激しいことから買い取り手がいるのか、そもそも売りに出されない可能性もわずかにあります。

 

代替機を用意するまでの間、それが期限の1年を超えてしまう場合は、残った側の交渉で引き延ばしを発生させるか、一時的な設備レンタルという形で進めていく可能性があります。

 

代替機は結合場所から課題はありますが、アメリカのシグナス補給船の実験を始め、商用有人宇宙船スターラーナーなどで実験も行われています。

 

交渉の引き延ばしの場合は、ロシアの設備はISSの寿命に大きくかかわってきており、前述の政府間協定に記載のあるISSを維持するため、安全目的のためにお互いに協力していく必要があることから、ロシア側が権利を放棄するか可能な限り協力体制をしていくことにはなると思います。

 

一時的なレンタルの場合では、ロシア側での特有の作業に対しての引継ぎが行われることになります。しかし、多くの事業撤退企業がそうであるように簡単なマニュアルを提供するのみで有効なマニュアルの引継ぎが行われないこともあり、難しいところです。

 

マニュアルなどの引継ぎを考えるのであれば、早々に新しくロシアの設備の機能を補うことのできる宇宙機を打ち上げることが早くて、資金もかからないように思えます。

 

ISSのロシア撤退はISSの運用計画(更新計画)が公開されるたびに話されており、最近では2021年の春ごろにも話題に上がりました。

 

このことからロシア特有の作業に対しても共有の準備がされているといいなとは思います。

 

残った側からすると、新たな実験設備を接続できる空間ができたと考えれば、現在宇宙業界で広まっている新興企業(new space)が購入する可能性が高いかもしれないですね。

 

国家間の取り組みであるため責任の所在を考えると、アメリカがロシア側の設備の所有権を購入して、国家や企業に対して一部を売り出すという可能性の方がありそうな気がします。

 

民間での次世代宇宙ステーションの話も上がっていることから、宇宙空間での試験設備提供することを権利として販売し、new spaceが購入して、次世代宇宙ステーションが完成するまでの実験場にする可能性の方が高い気がします。

もちろん、ロシアの設備は廃棄して、新たに自社製の設備を結合することが目的とはなります。

 

残った側の手間を考えると、ロシアが撤退する前に廃棄を行ってもらい残されたところに対して権利を販売するというのが楽ですが、経験値的には廃棄もすべて購入した側で実施してしまった方が良いと考えてしまいますね。

 

運用資金やリソースをどうするか

ロシア所有の設備をどのように扱うかという問題もありますが、運用資金の分担も考えなければなりません。

 

推進系の推薬補充のほかに、現在はいくつか他の居住スペースの予備機能となっていた部分の維持など当配分していくのかもしれないです。

 

前のデータではありますが、2014年時点で、NASA約4,300億円、ESA約490億円、日本約357億円となっていました。

日本の2020年のデータを見ると約349億円とオーダーが変わっていないことから、他の組織も同等と考えてもオーダーは大きく変わらないと思います。

 

日本としては負担額が増えるかという点と、おおよそ350億円規模で日本企業(運用、実験、製造など雇用も含めて)にも損失が発生する可能性があることも考えておかなければなりません。

 

ISS内部のリソースや推進系などからESAよりは多いとは思いますが、NASAよりは少ないという見通しは立ちます。

 

この負担がどのようにISSの運用に関わるか注意が必要です。

 

あまりに負担額が多い場合、国家間で維持できる財布事情がなければ、ロシア撤退とともに国際宇宙ステーションの廃棄も進めなければならないことも考えていかなければなりません。

 

新たに代替機を開発して打ち上げるコストと、現状維持とするか、どちらにせよ残っている組織に負担がかかるのか、選択しなければなりません。

 

まとめ

まとめてみると、次のような感じです。

  • ロシアの撤退は口頭レベルでロシア政府の決定はされていない。
  • ロシア所有の推進系モジュールが使用困難になることからISS自体の寿命の問題が発生する。
  • ISSに滞在している宇宙飛行士の安全の観点から急にロシアの設備が廃棄されることは政府間の取り決めにより可能性がかなり低い。
  • 計画を維持するには、ロシア所有の設備をどのように維持するか廃棄するか、廃棄の場合は代替機能を持つモジュールが必要になる。
  • 代替機としてアメリカのシグナス補給船や商用有人宇宙船スターラーナーがあるが、結合場所の問題でロシアの推進モジュールよりもスムーズではない。
  • 想像ですがロシア側の設備部分の権利が売り出されるかもしれない。
  • ロシアが担ってきた運用資金を考える必要がある。

 

参照文献

Russia set to end collaboration on International Space Station

https://www.brusselstimes.com/world-all-news/220976/russia-set-to-end-collaboration-on-international-space-station

International Space Station legal

https://www.esa.int/Science_Exploration/Human_and_Robotic_Exploration/International_Space_Station/International_Space_Station_legal_framework

International Space Station Intergovernmental Agreement

https://www.state.gov/wp-content/uploads/2019/02/12927-Multilateral-Space-Space-Station-1.29.1998.pdf

国際宇宙ステーション開発に必要な経費

https://judgit.net/projects/2796

各極の役割分担

https://www8.cao.go.jp/space/comittee/dai22/siryou2-3.pdf

宇宙エンジニアの「失敗する機会」を許容する文化 | Lessons Learned

エンジニアに「失敗する機会」を提供する

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宇宙業界は失敗してはいけない文化だと聞いたことはありませんか?

 

失敗しないように試行錯誤を繰り返すのは事実ですが、それでも失敗はおきます。

 

Lessons Learnedシリーズでは宇宙業界という技術力の高いエンジニアである人たちでも盲点となり起きてしまった事例を紹介し、宇宙業界関係なく他の製品開発や運用にも応用できそうなものを紹介していきます。

 

さて、今回記事では実際に開発視点ではなく、現場から離れて管理者視点となったときにどのように宇宙開発のチームをまとめ上げていけば良いかのヒントを示したいと思います。

 

組織の文化として、失敗したとしても素早く共有でき、解決できるような組織であることのほうが、より挑戦的でミスが起きたとしてもすぐにフォローでき、致命的な失敗を起こさない組織を作ることができます。

 

宇宙開発の組織とは失敗をしないのではなく、成功するために試行錯誤し続ける組織と言えます。

 

確実に成功するような試験や開発からは経験値が少ない

宇宙のエンジニアがリスクを冒すことに臆病になってしまうような風土は、挑戦し続ける宇宙飛行ミッション※の壁になってしまいます。

※宇宙開発の場合は最終的に得られる成果や目的に対してミッションと呼ぶことがあります。

 

NASAでの取り組みは積極的な研究発明と挑戦的な宇宙探査のために突き進んでいます。

 

宇宙開発では、膨大なコストと犠牲の上にあり、大きな成果を生み出してきました。

 

NASA /カリフォルニア工科大学のジェット推進研究所(JPL)が管理する宇宙飛行プロジェクトは、日々複雑さを増していき、まだ確立されていない技術も活用していることから、多くのリスクが潜んでいます。

 

それでも宇宙機の設計プロセスでは、リスクが顕在化し失敗したとしても、失敗を評価し、止まることなく経験値を蓄積していっています。

 

JPLNASAにある組織の中でも、誰も挑戦したことがない高リスクのミッションに着手することが求められています。

 

NASAのエンジニアが考える失敗しても許容する組織文化(風土)の重要性

JPL Engineering&Science Directorate(ESD)のチーフエンジニアは、従業員に「失敗する機会」を提供するエンジニアリング文化の重要性について次の項目を挙げています。

 

  • 十分にプロジェクトを支援できる体制のある組織文化が根付いていること。
  • 「失敗する機会」はプロジェクトの管理者や組織の上長が組織としても失敗することを受け入れるような制度であること。
  • 従業員も「失敗する機会」があるという考えが根付いていることも重要であること。

 

JPLでは、いくつかの盲目に実施していた標準的な分析、評価、および試験を再評価することで削減していくことで、低コストかつ高リスクの宇宙飛行ミッションの成功を進めています。

 

そんな環境で宇宙開発を進めているため、一人一人の心理的ストレスが高く、リスクを避け、挑戦的な技術を避けてしまう可能性があります。

 

学術的な科学の世界では、既存の理論に対して否定する実験結果が出たとしても、しっかりと証明されれば、受け入れる風土があります。

しかし、エンジニアは否定する結果が出たとしても、簡単に受け入れられるような風土があまりありません。

 

あなたの組織には「失敗する機会」が与えられていますか?

「失敗する機会」が与えられるというJPLでは、次の質問に全て「YES(はい)」と答ええられます。

 

  • 会議の中で(まるであなたに全責任があるかのように)「間違った」考えをあなたに言わせるようなことは無いと言えますか?
  • 失敗が(組織外の)他の誰かに見つかることを恐れずに、組織外の人間と仕事や製品の情報を共有することができていますか?
  • 失敗したとき、再度チャレンジできる機会が与えられていますか?
  • 懲戒処分を受けたり、組織から追い出されることもなく、失敗から学ぶことが奨励されていますか?
  • 組織外で自分のアイデアを積極的に挑戦することが推奨されていますか?
  • イデアを考えたり、行動するために、十分な時間が与えられていますか?
  • 心理的なストレスがなく、失敗を教訓として学び、組織全体で共有できる風土がありますか?
  • 「失敗はあなたが課題を解決するために必要な兵器庫の弾薬であり、悪いストレスを与えるものではない」と考えることができる文化ですか?

 

「失敗する機会」が提供されていた火星探査ミッション

ESDチーフエンジニア(および元MSLチーフエンジニア)は次のように言っています。

 

エンジニアも人間であり、人間は間違いを犯すにもかかわらず、24億ドルのローバー(MSL)が火星に着陸することに成功したのはなぜか。

 

ローバーは、非常に複雑な設計の上で開発されており、たった1回のミスでミッションが失敗するようなポイントが何千か所もありました。

 

ではチームのメンバーは間違いを犯さない人間なのか?

 

そんなことは決してない。

 

それでは、設計から開発、さらには打上げ後に至るまで、何千か所もの致命的なヒューマンエラーを犯す可能性があります。

 

それでは、MSLは運が良かったのか?

 

いいえ、決して運が良かったわけでもありません。

 

メンバーが自由に自分の失敗を共有することができる機会や風土が提供されている必要があります。

 

多くの失敗が起きても、心理的に悪いストレスがなく、間違いをすぐに共有し修正することは、ミッションの成功を確実に進めるためによい兆候といえます。」

 

最初の火星探査機ミッションは、必要なコストを可能な限り、劇的に減らしたい考えがあり、そのうえで失敗のリスクを許容する方針でもありました。

 

火星バイキングミッションでは、1976年に従来のロケットを使用して表面に着陸し、1997年にマーズパスファインダーを使用しました。

 

30メートル以上上空から落下しても、エアバックを搭載することで、火星表面を跳ねることで着陸するという新しいシステムの実証を行った。

 

このシステムは、考え方としては存在していましたが実証されておらず、今回の実験で有益な知見を蓄積することができました。

 

結果、マーズパスファインダーは火星に関する23億bit以上の情報を地球に送ることができました。

 

"The boldness of my colleagues is inspirational -- the scape of the questions they want to answer, and the courage by which they go about tacking these big questions"

(意訳)「この実証に取り組んだメンバーは、刺激的で勇気がある。

 欲しい結果に対して、大きなカベに怯まず挑戦する勇気があった」

ー Ian Fenty、JPL海洋学

 

"We shouldn't do something because it is safe and easy. we shouldn't do the thing that everyone knows how to do. We might fail, we might succeed too."

「安全で、簡単な課題に取り組むべきではない。

 誰もが知っていることに挑戦するべきではない。

 その結果、成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。」

ーJennifer Rocca、JPLプロジェクトシステムエンジニア

 

"It's a very liberating kind of environment to be in because you don't have don't have to be so afraid of mistakes."

「間違いを恐れる必要がない、とても自由な環境だ」

ーTracy Drain, JPLシステムエンジニア

 

JPLは、かつて到達できなかった場所にいける道具を開発した。

 

JPLは、設計の課題を解決するためには、詳細な技術分析と試験を実施する場合、慎重なリスク回避をしていきます。

 

宇宙のエンジニアがリスクを冒すことに臆病になってしまうような風土は、挑戦し続ける宇宙飛行ミッションのカベになってしまいます。

 

推奨事項

宇宙開発にはリスクが伴う。失敗の回避は、リスクの回避につながる。

Audentes fortuna juvat. (幸運は大胆な者に味方する)

 

自分自身を含めて「失敗する機会」を許容する組織文化を作ることです。

JPLで実施している2つの制度を紹介します。

  • Openness of our people and processes. We use candid communication to ensure better results.

【意訳】個人のプロセスを許容します。コミュニケーションを重視して結果を保証することです。

  • Innovation in our processes and products. We value employee creativity in accomplishing tasks.

【意訳】プロセスや製品開発に常に革新をもたらすように挑戦すること。ミッションを完遂するため創造性を大事にする。

 

まとめ

宇宙開発は息の長い活動です。

 

プロジェクトの雰囲気、組織の文化によって、個人の体感として難易度が大きく変わります。

 

宇宙用の製品を製造する組織の課題の一つとして失敗にどのように対応していくのかという風土や制度作りです。

 

失敗を最終的に致命的なものにさせないための風土作りが、最終的に宇宙開発の成功のカギになります。

 

風土を作るには各メンバーの取り組みとともの管理者の理解や組織の制度がかかわってきます。

 

どれか一つを欠いてしまうと、メンバー個人への悪いストレスになり、結果挑戦的な開発が「継続して」できなくなってしまいます。

 

紹介した質問から、一度組織を見直して取り組むことで、失敗を公開し、教訓を蓄積し、大きな成功を得られるカギになっていきます。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Give Engineers ‘Space to Fail’

https://llis.nasa.gov/lesson/21601

Ian Fenty @ianfenty

https://mobile.twitter.com/ianfenty

NASA - Project Manager

https://www.nasa.gov/mission_pages/deepimpact/team/rocca-bio.html

Tracy Drain

https://en.wikipedia.org/wiki/Tracy_Drain

【基礎から知りたい】代替の経済性(economies of substitution):再設計するコストは新規のシステムを構築するコストを上回る

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代替の経済性(economies of substitution)

代替の経済性(economies of substitution)とは、最初から再利用や交換を考えて設計した製品の開発コストは、製品を再設計するよりコストが低いことを示す概念です。

 

生産までに時間がかかる製品

人工衛星は、いま世の中に広まっている製品に比べて、一部の例外であるスペースXのスターリンク衛星やOneWebの人工衛星を除いて、それほど製造されてもいません。

人工衛星としていますが、一般に生産までの時間が短縮できない製品やユーザー数が圧倒的に少ない製品と読み替えても問題ありません。

 

圧倒的に製造数が足りないにもかかわらず、長期間の運用になります。

その際にいくつかの心配事項はありますが、その一つに部品の製造停止があります。

 

電子部品や電子機器は、通常ずっと提供されるものと思われるかもしれませんが(笑)突然製造停止になります。

 

正確には突然ではなく、2,3年前に連絡があるのですが、宇宙機開発は長期スパンであることから、開発側からすると突然製造停止と感じるわけです。

 

実際大手企業であれば連絡があるかもしれませんが、ベンチャー企業、中小企業ではその連絡が突然と感じることもあるでしょう。

 

製品の製造停止

製品が製造停止となる理由はいろいろです。

 

もっと儲かる製造ラインを拡張するために従来の製造ラインが縮小されたり、工場が倒産したり、本当にいろいろです。

 

さらに部品だけではなく、電子機器も突然製造停止になります。

 

理由の一つとしては、製造していた技術者や設計者が会社から退職してしまい、十分に引き継がれることなく技術が消失してしまうこともあります。

 

あるいは十分な利益を見込めないことから会社判断で受注しないこともあります。

 

人工衛星の製造サイクルは、通常の製品よりも長く、同型品を製造するにも選定した部品や機器がマイナーチェンジをしている可能性があります。

 

宇宙業界の世界ではまだまだ過去に宇宙で使用されたという「実績」が大きなウェイトを占めています。

 

そのため、このマイナーチェンジをどの範囲まで許せるのかは各プロジェクトの方針によるところが大きいです。

 

過去と比較しても、許容する範囲は広がっていますが、一部の放射線に弱い電子部品はどこもほかの電子部品と比べて厳しい基準であることが多いです。

 

その中でもマイナーチェンジを受け入れて、振動試験を実施した結果、構造が弱くなり破損したり故障が発生することも少なくありません。

 

この微妙な違いによって発生した原因追及を含む不具合対応や、不具合が起きなくとも1台目より厳しい再確認を実施することもあります。

困ったことに1台目の設計開発者が現場から離れたことにより、よりトラブルが深みにはまることもあります。

 

そして、次号機以降も設計し直す(再設計する)ことになり、コストが積み重なっていきます。

案外、2号機目のシステム開発の方が苦労することが多いのではないでしょうか。

 

結果、タイトルの代替の経済性(economies of substitution)に繋がるのです。

 

トータルコストを減らす

人工衛星は、1台目は実証という側面が強いのですが、2台機目以降は「電子部品や電子機器が以降交換する可能性があるもの」として設計を進めた方が、トータルコストが安くなっていきます。

 

既存部品の再利用を前提とした製品システム開発コストが、システム全体を再設計するコストより低いことを示す概念です。

 

では実際何をしたらいいのか?

 

試作機をどこまで仕上げるかによりますが、すでに世界中で並走している宇宙機の電子機器(コンポーネント)の特徴を調べ、ある程度適合していくように設計していることです。

現在は小型衛星市場が活発であることから、電子機器の小型化が進んでいます。

それに伴い、その小型化に適合できるような拡張性のあるインターフェースを設計していくことになります。

参考情報として、この考え方はスケーラビリティ(scalability)といってシステムの拡張性を指すときに使用されたりしますが、今のところ宇宙業界ではあまり使われていません。

 

構造面からいうと、インターフェースといえば、設置する固定穴だけではなく、排熱や蓄熱の設計、信号や電力の流れるケーブルの配線位置、電磁波の影響を考慮した配置、振動の影響を考慮した設置部などを考えた上で、現在採用している機器以外も適用される可能性を考慮して設計していかなければなりません。

ちなみに、発熱だけではなく蓄熱を考慮する必要がある理由は、中・大型衛星ではそれなりに巨大な構造物となるため熱が逃げにくいため排熱を考える必要があり、超小型・小型衛星では熱を留まらせるほどの構造物ではないため蓄熱を考える必要があります。

 

これは電子機器側だけを標準化などといって設計の制限をするのではなく、電子機器の設計が変わったとしても対応できるようなメインとなるシステム側も拡張性を考慮した設計にしなければ、後続のベンチャー企業や途中参入してきた大企業にあっという間に技術面で追いつけなくなってしまう可能性を留意しなければいけなくなることでしょうね。

 

これは、1台目の設計にかかる設計者への負荷が大きいかもしれませんが、プロジェクト全体のトータルコストや後続の参入者に対して優位性を示すことができるのではないでしょうか。

 

もちろん、限られた資金や計画の中で成立させるのは非常に難しいのですけどね。

 

システムエンジニアのジレンマ:コストとリスクとパフォーマンス

最後にNASAで公開されている「Systems Engineering Handbook」からシステムエンジニアのジレンマを紹介します。

 

At each cost-effective solution:
• To reduce cost at constant risk, performance must be reduced.
• To reduce risk at constant cost, performance must be reduced.
• To reduce cost at constant performance, higher risks must be accepted.
• To reduce risk at constant performance, higher costs must be accepted.
In this context, time in the schedule is often a critical resource, so that schedule behaves like a kind of cost.

https://www.nasa.gov/seh/2-5-cost-effectiveness-considerations

それぞれの費用対効果の高いソリューションで:

  • 一定のリスクでコストを削減するには、パフォーマンスを低下させる必要があります。
  • 一定のコストでリスクを軽減するには、パフォーマンスを低下させる必要があります。
  • 一定のパフォーマンスでコストを削減するには、より高いリスクを受け入れる必要があります。
  • 一定のパフォーマンスでリスクを軽減するには、より高いコストを受け入れる必要があります。

スケジュールの時間は、重要なリソースとなるため、一種のコストのように考えることもできます。

 

限られた資金でプロジェクトを成立させることは難しいのですが、何をつかみ、何を切り捨てるか、もっとも端的でわかりやすい考え方だと思ったので載せておきます。

 

参考文献

コア部品サプライヤーを中心する企業間分業における知識獲得と意思決定権限―スマートフォンの開発事例―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/amr/16/4/16_0161205a/_pdf/-char/ja

NASAが打ち上げのアウトソーシングに依存していることは、宇宙機関にジレンマを引き起こします

https://theconversation.com/nasas-reliance-on-outsourcing-launches-causes-a-dilemma-for-the-space-agency-44013

Biden’s China space dilemma

https://www.politico.com/newsletters/politico-space/2020/12/18/bidens-china-space-dilemma-491186

Bringing Space Law Into the 21st Century

https://www.realcleardefense.com/articles/2020/12/15/bringing_space_law_into_the_21st_century_653203.html

データベース・パフォーマンス・チューニング・ガイド

https://docs.oracle.com/cd/E82638_01/tgdba/designing-and-developing-for-performance.html#GUID-F8511B21-9EEA-4F1D-A1A0-C7CCEF914503

【機械設計向け】民生品を宇宙機に利用した際に寸法が許容できずに発覚した不具合事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

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民生品を推奨して、人工衛星の価格を下げるというのが小型衛星開発の設計の流れがあります。

 

しかし、民生品を利用するということはいくつかのリスクを含んでいます。

 

少し時間がたっている事例ではありますが、民生品を使用した際に発生しうるリスクを簡単に紹介します。

 

概要

現在国際宇宙ステーションに搭載されているISERV(ISS SERVIR Environmental Research and Visualization System)という、災害監視や地球観測データ取得を行っているCONTS品(Commercial-Off-The-Shelf)の光学機器についてです。

 

このISERVでの教訓は、適合試験によるCONTS品の品質確認、図面と同一ではなくバラつきのある部品の寸法、CONTS品を使用したからといって開発工程が早くなるわけではなく、国際宇宙ステーションで実現したい能力を発揮するわけではない。

また、CONST品を宇宙用に転用する際の確認プロセスの明確化と、解析による確認ポイントや国際宇宙ステーションに取り付けるためのインファーフェースの考え方に対する知見が挙げられています。

詳細な内容

国際宇宙ステーションに搭載されているISERVは、光学機器(カメラ)であり、地球を観測しています。

 

ISERVによって撮影された画像は、世界中に展開され各地の洪水や地滑り、森林加算内dの災害の影響を管理し、様々な環境問題へのヒントを与えてくれます。

 

今回はISERVの開発中に遭遇したトラブルと、学んだ教訓をまとめていきます。

 

COTS品のハードウェアの宇宙用への転用プロセスへの明確な基準が欠けていました

 

プロジェクトでは、宇宙用に転用し、受け入れられるかどうかの条件の多くは口頭で合意されたものであり、内容も限定的なものでした。

 

宇宙に使用される材料や開発工程の考え方から、通常、COTS品であっても宇宙用と同じ品質に保たれるはずでしたが、フライトハードウェアと同じ基準に保たれていますが、ISERVにはそれを行うための下地がありませんでした。


使用されている材料は問題ありませんでしたが、カメラ内部に搭載されているチップが既定の範囲以外での電磁放射を放出したため、電磁波障害試験(EMI)でNGとなりました。

 

カメラの製造元では認識されていなかったのですが、ベンダーで製造しているカメラを構成する機器に、内蔵されているカメラのチップにGPS機能が搭載しているされていることが分かったのです。

 

また、EMIでのトラブルシューティング中に、試験チームは観測データからカメラの望遠鏡部分のポインティングマウントに多量のノイズを受けていることを発見しました。

 

原因中級の中で、望遠鏡マウントの内部の写真を撮ったのですが、多量のノイズは振動試験中に発生した可能性があることが分かりました。

 

答えは単純で、カメラの望遠鏡部分がしっかり固定されていなかったのです。

 

振動試験中に固定が不十分であると、カメラ感度にも影響する望遠鏡部に傷がつく可能性があり、是正処理が必要な事象となりました。

 

そしてカメラがしっかり固定されていなかったのは試験作業者のミスではなありませんでした。

 

購入したCONTS品が寸分の狂いもなく製造されているわけではないことが理由でした。

 

図面と実際のバラつきのある寸法の差は、機械設計者を驚かせ、これは事実ではなく、一般的にはそうではありません。

 

寸法と構成の違いに気づくのが遅れため、想定していた光学機器の機械的な停止スイッチが機能しないことも確実となりました。

 

プロジェクトはいくつかの止められない工程、開発のクリティカルポイントが過ぎ去ってから、光学機器を分解し、正確に実寸して、再度組み上げて、機械的にも適合するソリューションを設計開発する必要がありました。


COTS品を使用する場合、CONTS品が動作するためのケーブルを含むカスタムオプションパーツが必要になり、電源も新たに設計する必要があります。

 

国際宇宙ステーションで使用するための条件として、すでに搭載されている機材にトラブルが発生しないように、多くの条件に適合する必要があり、規定もされています。

 

ただしこの条件は、当たり前かもしれませんが開発されたシステム(機器/装置)が国際宇宙ステーションで目的に合わせて動作できるかについては含まれていませんでした。

 

プロジェクトチームが十分に認識していれば、システムが国際宇宙ステーションの環境の中で、確実に動くように、条件を洗い出し、今回のようなトラブルを発生する可能性を減らすようなプロセスで進めることができたはずでした。

 

機械設計者/構造解析者は、試しに機器を分解して実寸するなどのサンプル用の製品を準備しておらず、実際に搭載されているパーツに対して、図面から部品の厚さ、質量、およびその他の構造特性を見積もったため、過小評価された状態で見積もることになってしまいました。

 

この不確実性により、機械設計/構造解析の時点で致命的なリスクが内在することになりました。

結果、COTS品と機械的にも適合するソリューションを設計する際に、確実性の低いインターフェース情報で検討したため、想定の機能を発揮できないことが明らかになったのです。

 

インターフェースの条件を定義する際は、各インターフェースに対して分析(今回は分解して実測)し、明確にする必要があります。


学んだ教訓

クラスDハードウェア上のCOTS機器をISSWORFラックに統合するには、ISS要件と、クラスAおよびBハードウェアでより一般的な付随する血統のトレーサビリティ、検証、および妥当性確認の要件に注意を払う必要があります。

 

プロジェクトチームは、クラスDハードウェアをクラスA施設に統合する際に、これらの暗黙の要件を認識する必要があります。


COTS機器の使用は必ずしも安価ではありません。

 

暗黙の要件を満たすには、NASAの最小基準を満たす必要があります。

 

これは、追加の品質エンジニアリングサポート、特定のテスト要件、および部品のトレーサビリティを意味します。


ハードウェアを上位クラスのシステムに統合する必要がある場合に発生する可能性のある資格要件を理解するだけであっても、S&MAを事前に関与させることをお勧めします。


機器とサポートハードウェアのプラグアンドプレイの性質についてあまりにも多くの仮定が前もって行われている場合、チームは設計とテストのアクティビティを繰り返すためにより多くの時間を費やします。


暗黙の要件を理解せずにCOTSが印刷ごとであると想定すると、スケジュール、予算、および納品契約を満たさないリスクが不必要に高まります。


一貫性のない構成と部品の寸法、およびベンダーによるCOTS機器の構成制御の欠如により、購入したハードウェアの追加の注意と調査が必要になります。


未知の違いを特定および定量化するために分解および調査できるエンジニアリング評価ユニットとして、追加のユニットを購入する必要があります。

 

エンジニアリング評価用の4番目のユニットを購入することで、チームは、クリティカルパスや制約のあるリワークスケジュールに影響を与えることなく、予期しない構成や設計の問題をトラブルシューティングでき、迅速なターンアラウンドリワーク状況を引き起こしました。


プロジェクトチームは、購入したユニットが同一である、または設計プロジェクトに関連するすべての情報がベンダーから正確に提供されると想定することはできません。

 

エンジニアリング評価ユニットは、プロジェクトサイクルの早い段階でいくつかの環境テストを受けて、設計、建設、および関連するエンジニアリングデータの欠陥を特定する必要があります。


COTSであろうとなかろうと、すべてのペイロードは、ISERVが行ったインターフェースを満たす必要があります。 


COTSハードウェアには、明確な飛行認証プロセスが必要です。すべての分野の資格要件は、事前に明確かつ明示的に述べる必要があります。 


ライフサイクルのすべての段階でインターフェースの分析と評価を賢明に使用することで、構築、テスト、およびマイルストーンのレビュー中の時間とリソースの支出を節約できます。


COTSを使用するための合意は、機器に関する限られたエンジニアリングデータと、リスクを定義して受け入れるためのそれほど厳密ではないライフサイクルの初期プロセスによる安全性とリスクへの影響を理解することで、多分野にわたる必要があります。

 

推奨事項

COTSには、スケジュールに固有のリスクがあります。限られた情報、構成制御の欠如、およびCOTSを含むシステムが統合されるハードウェアからの暗黙の要件を含む、要件の全体的な範囲のリスクを把握します。


COTSの外部提案が、仮定を検証するためのエンジニアリングで精査されていることを確認します。


あなたのハードウェアを知っています。


フライト、フライトスペア、および認定ユニットに加えて、エンジニアリング評価ユニットを購入します。キックオフ時にCOTSの資料と仕様のデータを取得して、起こりうるリスクと軽減手順の定義に役立てます。


プロジェクトの開始時にすべての利害関係者を合意交渉に参加させて、資格要件とプロセスを事前に明示的に定義して同意します。書面で要件を取得します。


チェックリストまたはその他のガイダンスを確立して、MSFCでCOTSを含むシステムを開発するためのベストプラクティス、統合システム要件の場所、およびCOTS機器を使用して導入されるリスクを特定する方法を定義します。


COTSデバイスを使用すると、通常のMSFCワークフロー以外のプロセスステップが発生します。

COTS機器の構成、情報、および認証を処理するように調整された作業プロセスを導入して、開発、テスト、および認証の課題を予測するプロジェクトを支援する必要があります。

 

終わりに

CONTS品は出来合いのものが多いので、寸法にばらつきがあったため、いくつかの工程を再度実施することになりました。

 

実際のところ、機械的に適合するソリューション側に、ある程度のズレも想定して設計した方がよい。

ハードルは上がりますが、カメラの製造側に公差を考慮した図面の提供を依頼した上で、インターフェース条件を定義していく方がよい。

といった対策も立てることもできます。

 

おそらく、今回も同様の対策案を考慮したうえで選定した案のみが記載されているのでしょうね。

 

この考え方は宇宙機開発に限らず、どの製品でも起きうる事象であり、どこかのパーツが不具合が起きないように、リスク対策の上でどこかの部品や機器が影響を吸収していることでしょう。

 

参考文献

https://llis.nasa.gov/lesson/7216

ISERV INSTRUMENT

http://catalogue.servirglobal.net/Product?product_id=16

Service Catalogue

https://www.servirglobal.net/ServiceCatalogue/

【基礎から知りたい】なぜ宇宙船は燃料をほとんど使わずに長距離・長時間移動できるのでしょうか?

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credit:NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA18166

 

宇宙空間は、地球上にある空気がなく、ほとんど真空である宇宙空間を移動しているため、速度が落ちることはなりません。

 

高校の物理でいう等速直線運動をしており、ロケットで打ち上げた最初の加速でも、空気などの抵抗がなければどこまでも進んでいくことができます。

 

といっても、宇宙空間がほぼ真空であるといっても、ほかの減速しないわけではありません。

 

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地球や月、火星、太陽などを含めた太陽系に存在している限り、太陽が持つ引き寄せる力(引力)の影響を受けます。

 

太陽から遠ざかる際に太陽の引力を受けることから宇宙機は減速していきます。

 

太陽だけではなく、火星や木星も引力を発生し続けていることから、近づけば加速あるいは減速します。

 

惑星の引力に捕まらないように、宇宙機によっては推進系と呼ばれるエンジンを積んでいます。

 

航空機の翼やボディに付いているエンジンを思い浮かべるといいかもしれません。

ただ、エンジンには燃料が必要です。

自動車のガソリンのように給油所がないことから、燃料もあまり多く載せられないのでギリギリまで使用しないでいることが多いですね。

 

エンジンはガスなりイオンなり、物質を噴出し、噴き出した勢いで加速します。

 

何もない空間に対して噴出しても、地球上のような空気による抵抗がないから本当に前に進むのか?という疑問もあるかもしれません。

 

いわゆる暖簾(のれん)に腕押しということわざのように、力を加えても動かないのではないかという疑問もあります。

 

実際のところ、エンジンから燃料を放出されるとき、一種の爆発や圧力などを発生させ、前に進む力としています。

 

地球のように大気がないことから、その加速は自動車や飛行機、ロケットをはるかに超える速度を生み出すことも不可能ではありません。

 

地球の重力を飛び出している時点で、少なくともロケットの速度を出しており、かつ速度を保持していることから、さらに加速した時点でロケットの速度を超えるのは当たり前かもしれませんが。

 

ちなみに人工衛星には太陽電池があるのですが、移動の燃料(エネルギー)として使用されていません。(今後はわかりませんが)

太陽電池は、主に通信機や内部に搭載されているコンピューターを動かすことに使用されています。

 

加速といえば、一部の宇宙機では、太陽風を受けた(ヨットの帆のような)仕組みで加速する小型宇宙機も存在しています。

 

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【宇宙の技術は役に立つ】宇宙機のポンプ技術は補助人工心臓である心臓ポンプに応用されている

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credit:NASA

https://images.nasa.gov/details-jsc2004e26519

 

NASAのテクノロジーが命を救う

宇宙機人工衛星、探査機、宇宙船)の技術は、宇宙だけではなく地上でも使われています。

 

病気が原因での世界で確認されている最大の死因のひとつに「虚血性心疾患」があります。

虚血性心疾患とありますが、簡単に言うと心臓への血液のめぐりが悪くなったり、詰まったりする障害の総称のことです。

 

この血流の障害を正すため、スペースシャトルのエンジンポンプに使われている技術が、心臓ポンプ(体内植込み型補助人工心臓)に使用されています。

 

スペースシャトルの燃料ポンプの技術から生まれた

そもそもの技術はスペースシャトルのメインエンジンの燃料ポンプに開発された技術です。

エンジンポンプ事態も、宇宙用に開発された計算流体力学技術と高度なポンプ技術を使用しています。

 

この技術を心臓ポンプに応用したのは、NASAのジョンソン宇宙センターのメンバーと、Dr. Michael DeBakey (マイケル・ドベイキー博士)のチームとDavid Saucie(デビッド・ソーシエ)のコラボレーションにより生まれました。

 

当初心臓ポンプを試作した際に、ポンプの流れが急速に変化し渦が発生することで摩擦が発生し血球が損傷すること、血液凝固を引き起こしてしまう流れが停滞してしまう領域が問題となりました。

 

この課題を解決のきっかけを作ったのがNASAのエンジニアであるCetin KirisとDochan Kwakでした。彼らの話によると「ロケットエンジンの内部を通る流体の速度は血流よりも速いが、非常に似た部分がある」という話でした。

 

525,000ガロン(約2000キロリットル)以上の液体水素と液体酸素の詰まった燃料タンクを空にする能力を持った、机程度の大きさのスペースシャトルの燃料ポンプ(ターボポンプ)の技術を、心臓ポンプ用に改造小型化することとなったのです。

 

NASA保有しているスーパーコンピューターを利用して、スペースシャトルのエンジンやロケットエンジン内部に流れる燃料と酸化剤の流れをモデル化する計算流体力学技術を利用して、心臓ポンプを通る血液の流れを計算しました。

 

計算結果から血球の損傷限界を下回るように設計し、血流パターンから血液凝固を引き起こす血液の停滞領域を作らない構造により減少させました。

 

通常の工業用ポンプの場合は、血液の血球成分が壊れてしまう使用できないのですが、開発された小型のポンプは、115グラム(4オンス)未満の重さで、特殊な内部構造で連続で血液を流し、血液の凝固を防ぐなど、多くのハードルを克服することができました。

※血液の凝固に関しては、従来より改善しているだけで、血液自体が熱で凝固してしまうことから、投薬やさらなる改善が進められています。

 

日本ではまだ100件未満ですが、アメリカでは3000件未満の心臓移植が行われていますが、それでまだまだ足りないのが現状です。

 

この心臓ポンプは、日本語では体内植込み型補助人工心臓(VAD: Ventricular Assist Device)と呼ばれ、小型化により体重の小さい患者にも適用でき、心臓移植までのつなぎにとどまらず、心臓移植対象以外にも病気による障害を解決しています。

 

そして、現在でも、複雑な人体を模擬し、生体適合性やポンプの耐久性向上のために研究が続けられています。

 

終わりに

宇宙開発の目標の一つは宇宙探査ですが、その技術は宇宙工学以外にもあらゆる分野の技術を集約して開発しています。

複合的な技術が集まっているからこそ、新しい技術が生まれ、そのほかの分野に応用することができるという一例になります。

 

昨年は、COVID-19の際に、NASAが人工呼吸器を製造したのは覚えている方もいるかもしれません。

宇宙と医療のコンビネーションというのはとても相性がいいのかもしれません。

 

宇宙で生まれた技術が宇宙以外に使用されていくのですが、再び宇宙製品に戻ってくるというのも面白い何かが生まれるかもしれませんね。

 

文献

WHOが2019年の世界の死因トップ10を発表 高所得国では心血管疾患死が減少

https://sndj-web.jp/news/001149.php

Keeping Hearts Pumping

https://spinoff.nasa.gov/spinoff2002/hm_3.html

NASA Technology Ready to Save Children's Lives

https://www.nasa.gov/vision/space/features/heart_implant.html

Blood Pump

https://www.nasa.gov/audience/foreducators/informal/features/F_Blood_Pump.html#backtoTop

Left Ventricular Assist Device

https://www.nasa.gov/centers/glenn/exploration/med_topic_lvad.html

体内植込み型補助人工心臓システム

https://www.ncvc.go.jp/res/divisions/artificial_organs/11-theme06/

植込み型補助人工心臓のポンプの特徴

http://www.evaheart.co.jp/hojyosinzou/

コロナ患者用の人工呼吸器を開発したNASAの技術者集団

https://amview.japan.usembassy.gov/nasa-engineers-develop-a-ventilator-for-covid-19-patients/

NASA Selects Inventions Of The Year

https://www.sciencedaily.com/releases/2002/04/020402074201.htm

【電気・機械設計者向け】静電放電(ESD)による人工衛星破壊を最小限にするための設計手法 | Lessons Learned

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静電気でパソコンが壊れるという話を聞くことはありますが、あまり人工衛星で壊れるという話は聞いたことがないかもしれません。

 

人工衛星も電子機器であることから静電気で壊れます。

 

人工衛星は軌道上に上がると故障の原因を調査することがかなり難しいです。

人工衛星からの信号で故障を分析するのですが、静電気による影響で故障された場合は、想定がかなり難しくなります。

 

比較的低軌道の場合は大気による空間電荷により静電気による故障を発生する可能性もあるのですが、軌道上の場合ですと放射線による影響で故障する事象が先に上がります。

 

低軌道の場合は、放射線による電子部品の完全破壊の可能性が「比較的」少ないのですがゼロではなく、正直、静電放電による破壊か判別がつきません。

 

静電放電の可能性として、打上げから放出までの間に帯電して破壊されるというケースもあるのですが、打上げ後に信号を受信することができないために判断不能になります。

 

数ある人工衛星をほぼ一撃で破壊する可能性のある静電放電。

今回はそんな静電放電に対する設計対策を紹介します。

 

[目次]

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

概要

静電放電(ESD:Electrostatic Discharg)は、電気回路に対して、電圧スパイク(過渡電圧)を引き起こし、内部のデータを壊し、壊れたコマンドを生成したするため、システム障害を引き起こす可能性があります。

 

ESDに対して注意していないと、表面の劣化によりアーク放電や電荷が蓄積される可能性があります。

 

この静電放電に対する悪影響を次の対処法を取り込むことで最小限にすることができます。

 

  1. 宇宙機の外表面を導電性として、主要構造に接地します(グランドをとります)。
  2. 内部の金属体および、導電性のある材料に、主要構造へ電気的な(ESD導電性のある)パスを接続することです。
  3. すべての電気回路に対して導電性の筐体(ファラデーケージ:Faraday cage)で囲むことです。

 

静電放電は2つの異なる物体が高い電位差を保持した状態で近接した際に発生します。

 

最初の2つの対処法では、電位差がESDを引き起こすのに十分な高さになる前に、電荷を放散させておく必要があります。

 

3つ目の対処法では、例え放電が発生した場合でも、電気回路への電気的な接続が低下しており、干渉の可能性あるいはリスクが低下していきます。

 

アンテナのレドーム、レンズ、ソーラーパネルなどの外部に接地されている誘電表面には、光学/赤外/RF放射の透明性を損なうことなくわずかに導電性になるようにコーティングされています。

 

各電子機器に適した材料を選択するには、予算と対策の効果をトレードオフする必要があります。

 

導電性は、1m^2の中で10^9 Ω未満で、主要構造に接続している必要があります。

 

ケーブル、コネクタ、回路基板、シールド、およびその他の導電性があり未接続のワイヤ、面積3cm^2または長さ25cmを超える内部に搭載されている金属には、100Ω未満の抵抗を有するグランドに導電性のパスを接続しておきます。

 

接地が十分でない場合、小さな金属物体(<3cm^2)は接地されていない可能性があります。

 

サーマルブランケット(MLI)の各金属層は、主要構造に接地しています。

 

すべての外部金属コンポーネントは、主要構造の共通アースに電気的に接続されています。

 

各電子機器は、導電性の筐体でシールドされた箱体で納められています。

 

導電性の筐体の外側に接続されているケーブルは、導電性の筐体の挿入口には全方位囲まれたバックシェルを備えたコネクタシールドによって保護されていることがあります。

 

電子回路基板は、各リード線とそのリターン部分が一緒にねじれた(クロスした)配線を使用する必要があります。

 

また導電性の筐体に入るすべての電子回路に対してフィルタリングします。

ローパスフィルターとトランジェント電圧抑制回路が一般的ですが、デジタルロジックディスクリミネータ(波高弁別器)も使用されています。

 

すべての導電性材料を共通のグランドに接続することにより、電子機器間の高い差動電圧の発生を防ぎます。

 

宇宙ステーションなどの大型構造物の場合、外部の電離プラズマ源を使用して表面帯電を制御できます。

 

ESD試験として、宇宙プラズマ環境を模擬することは現実的ではないため、抵抗測定と、人工放電に対する電子回路内の耐性に依存しています。

 

対策に対する数値的な制限は、宇宙機が軌道に対して想定される帯電条件によって異なります。

 

すべての宇宙船設計者は、宇宙船の設計において空間電荷を考慮しておく必要があります。

空間電荷は、材料が高エネルギーの宇宙プラズマを受けたときに発生します。

表面抵抗が異なる材料は、電圧降伏の限界を超えるほどの電荷を蓄積する可能性のあります。

これが発生すると、放電が発生し、電気回路の過渡現象や材料の劣化または再堆積を引き起こします。

 

Lessons Learned

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

この静電放電に対する悪影響を次の対処法を取り込むことで最小限にすることができます。

 

1.宇宙機の外表面を導電性として、主要構造に接地します(グランドをとります)。

2.内部の金属体および、導電性のある材料に、主要構造へ電気的な(ESD導電性のある)パスを接続することです。

3.すべての電気回路に対して導電性の筐体(ファラデーケージ:Faraday cage)で囲むことです

 

この手法は、Voyager, Magellan, Galileo, and Ocean Topographic Experiment (TOPEX)で使用されています。

 

最後に

静電気は電子機器が壊れます。

 

人工衛星に限らず開発品では静電気防止のためにリストストラップを付けたり、帯電の可能性があれば電子回路基板に接触する前に導電性のある金属体に接触することで製品を壊すことを避けます。

 

実際に静電気と思われる事象で壊れた人工衛星用の電子機器を何台か見ています。

試験によりけりですが、BBM (ブレッド・ボード・モデル) の試験で壊れたり、不具合対応で電子回路基板をチェックしているときに一部の電子部品が壊れたりしていました。

 

まだ、宇宙用の電子機器では手はんだが大部分を占めています。

機械実装では対応していない電子部品を使用していることもあり、部分的な手はんだ実装が残っていることが多いです。

 

現在の宇宙機は量産といっても数千台という台数を生産するほどではないため、すべてを機械実装に対応できる電子部品を選定するよりも汎用性のある電子部品を採用していることがコストや電子部品の入手性、実績からも優位であるからです。

 

電子機器レベルでいうと、いわゆるオールドスペースといわれる古くから宇宙用電子機器を製造している組織では、全て機械実装であったりフレキシブル基盤を利用している組織も存在しています。

 

静電放電を考慮すると機械実装の方が手はんだよりもリスクが少ないことが多いので、製造という面での静電気による製品故障は、減る方向になっているのではないでしょうか。

 

機械実装は、部品選定や製造設備に依存することが多いのでニュースペース系の組織ではまだ難しい気はしているのですが、それもこの5年以内で変わりそうな気もしますね。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

Design Practice to Control Interference from Electrostatic Discharge (ESD)

https://llis.nasa.gov/lesson/773

【基礎から知りたい】国際宇宙ステーション日本実験棟"きぼう"開発のすごいところ

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今回は『「きぼう」のつくりかた』から宇宙ステーション日本実験棟"きぼう"の熱制御についてまとめていきます。


 

 

日本で国際宇宙ステーション(International Space StationISS)のことをいうとき、ISSであったり、日本実験棟「きぼう」であったり、言われます。

 

国際宇宙ステーションは、アメリカ合衆国・ロシア・日本・カナダおよび欧州宇宙機関が協力して運用している地球の低軌道上に浮かんでいます。

 

日本で登場する単語としては、ISS国際宇宙ステーション、日本実験棟、きぼう、補給機、HTV、こうのとり、といった単語をよく聞くのではでしょうか。

 

全体を示している国際宇宙ステーションISS

ISSに4棟ある実験モジュールの一つ、日本実験棟「きぼう」

ISSへ物品を供給する宇宙ステーション補給機こうのとり」(HTV)

 

ISSは、1988年より開発を着手され、1998年に打上げが始まり2011年に完成しました。

 

実は「宇宙」ステーションは、ISS以外にいくつか打ち上っていますが、複数の国や組織が協力する人類史上初の大型宇宙ステーションで、今も運用が続けられています。

最近(2022年2月時点)、2030年で運用終了が予定されていますが。

 

 

宇宙ステーション日本実験棟

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付録1国際宇宙ステーションISS)計画概要 文部科学省資料

 

通常の宇宙開発では、冗長設計とか放射線対策、ロケット振動や人工衛星本体の寿命を引き延ばすための施策が行われているのですが、宇宙ステーションは有人開発であることから、安全対策がさらに行われることになります。

 

しかし、それだけに留まらないのがこの国際宇宙ステーションです。

 

海外の、しかもそれぞれ独自に宇宙開発をしてきた組織が協力して開発することになったのですが、これがなかなか難しい。

 

[1]独自に宇宙開発できるだけの能力をもった組織間の異文化コミュニケーション

 

独自に宇宙開発できるだけの能力があるということは、それぞれの開発方法の考え方があり組織文化があります。

 

依頼していた要求を満たすのはもちろんですが、その下地にある考え方の違いが積み重なることで、思いもよらない結果を引き起こすことになります。

 

製品として思いもよらない結果にならないように通常の宇宙開発では、それぞれの要求に対応しているのか組み合わせ試験であったりシステム試験といった複数のコンポーネントの試験を実施することですり合わせを行っていきます。

ただ、日本の開発していた日本実験棟ではそれが難しい事情がありました。

 

[2]海外の宇宙組織であるNASAと欧州のモジュールの方が先に組み立てる計画であるため、軌道上でしか試験できない

 

組み合わせの試験では、信号を模擬したシミュレーションを用いて試験をすることになるのですが、実機で試験することが望ましいことが多いです。

 

シミュレーションでは比較的きれいな信号を出せるのですが、シミュレーションでは模擬が難しい電磁波環境により信号がぶれたり、立ち上がりや立ち下がりの時、熱試験の時に、何かしらの影響で変化することがあります。

 

もちろん実機で実施しない場合は、搭載用しない地上試験やバックアップ用の機器を利用することもあれば、電磁波環境を測定したり、単体で実施する試験データを詳細に取得して提示する方法が多いです。

 

先に述べたように、開発文化が違うため、おそらくは普通の宇宙機開発よりも多くの対話と調整が必要になったことでしょう。

 

さて、計画の上で打ち上げ時期が遅かった日本実験棟本体も適合性確認試験(Multi-Element Integration Test-III: MEIT-III)と呼ばれる組み合わせ試験をNASAケネディ宇宙センター(KSC)で国際宇宙ステーション本体の結合部(ノード2)実機とアメリカの実験棟模擬装置を利用して試験をしていました。

 

実施された試験も、バルブ動作確認やエアロック動作確認、結合部の動作確認など、運用にクリティカルになる部分にとどまっていました。

 

また日本実験棟は、スペースシャトルで打ち上げることになるのですが、今まで使用したことがないスペースシャトルとのインタフェースの調整も必要でした。

 

[3]スペースシャトル国際宇宙ステーション全体との電力、通信、排熱、結合機構などとの技術調整がより調整を複雑化していた

 

スペースシャトルは、打ち上げ後に、想定の軌道に到達したあと、スペースシャトル自身の熱を放出するために、貨物室の屋根を開くことになります。

 

これによって日本実験棟自体が宇宙空間に放り出されるため、だいたいマイナス20度程度まで温度が下がります。

 

日本実験棟「きぼう」の中には国際宇宙ステーションで使われる冷却水も入っており、保温しなければ凍結してしまいます。

 

ただ凍結するだけならば、後で融かしてしまえばいいのですが、水の通っている配管が体積変化により破裂してしまう可能性もありました。

ゆえに、スペースシャトルから電力をもらい、ヒーターで保温するように調整をすることとなりました。。

 

ちなみに、価格次第ですが、実際の人工衛星でもロケットから電力をもらうことは可能です。

 

いわゆるホット・ローンチなどと言われる打上げ方式の場合は、ロケットから電力をもらい、常に人工衛星内部の装置を起動していたり、電力を充電していることがあります。

 

今回の日本実験棟の場合は、日本の宇宙機関であるJAXA側から最初は1系統分でちょうせいしていたところ、凍結のリスクからバックアップを設けるべきであるという考えになり、NASA側と調整してスペースシャトルから2系統分の電源をもらうことになりました。

 

調整が成功したのは日本実験棟「きぼう」は、多くの開発や調整の中で技術的にも信頼できるパートナーとして認められた結果なのかもしれません。

 

[4]地球外での長期運用を考慮した国際宇宙ステーション

 

国際宇宙ステーションは、その運用期間を考慮して、機器寿命と故障時に交換可能なインターフェイスにする要求がありました。

 

今まで日本で開発してきた人工衛星などは、宇宙空間に放出されるため、多くの場合は交換できない使い切りの製品です。

 

交換不要の使い切りであるため、かなり絞った設計をして成立した部分もあるのですが、交換可能となるとより構造的に余裕を持たせる必要が出てきます。

 

インターフェースは機構部分となるため摩耗や衝撃を受けやすいという欠点がありますが、この仕組みにより寿命を長くするのはもちろん、インターフェイスが同じであれば、新しい技術による改良品を交換することができるという点です。

 

このように各機器の共通の要求もあれば、国際宇宙ステーションの熱制御機器のように、すべて船内実験室の床下に配置するラックに装着されなければならず、位置が制限された中で機能を失わずに、本体のシステムとも連携が取れるようにインターフェースをとる要求もありました。

 

有人であることから、通常の宇宙機よりも十分な安全解析を行い、リスクを最小限にとどめるような対応が求められ、安全解析も考えることがあり、多くの未経験の課題をつぶしていかなくればならなかったのです。

 

当時は世界的にも、有人宇宙開発は事例が少なく、歴史も浅く、未知の領域も多く、時代的にも機密の情報が大半を占めておりで、かなり手探りで進めるしかありませんでした。

 

 

[5]日本実験棟「きぼう」の設計の源流

 

日本では開発当初、手探りで設計を進めていました。

 

それこそ、実物大の模型を使い、日本人の宇宙飛行士や設計者が集まって、問題点を洗い出し、NASAのメンバーと協力しながら設計を固めていきました。

 

何か一つ故障して、システムが落ちたとしても人命が失われる事態を避けなければなりません。

 

機械に不具合が起きたときに、その機能を人間が肩代わりする必要があるため、手動でも操作可能にするなどであることも考慮しなければいけません。

 

宇宙機の歴史は50年です。

 

一方、ロケットや人工衛星に近いシステムをとる航空機は100年以上あります。

 

日本の航空機の歴史は明治時代まで遡り、大正時代で航空機産業が黎明期を迎え、第一次世界大戦により航空機の有用性が示されると、世界的に注目が集まり日本も航空機産業が発展していくことになります。

 

歴史もさることながら、製造数も宇宙機の打ち上げ数が限られることから何十、何百分の一程度になります。

 

膨大な製造データの蓄積は、膨大な故障データにもつながり、これらのデータは分析され安全要求の製錬につながります。

 

手探りの中で、初めての有人宇宙機であることと、NASAメンバーとの協力から、設計漏れの少ない安全設計要求のノウハウは、現在の日本実験棟内での実験機器の設計や以降の有人宇宙開発に繋がるものになったといえます。

 

[6]有人宇宙機の設計から得たもの

 

多目的船外実験システムを持つ日本実験棟「きぼう」は、船外の駆動システムであるロボットアームなどを操作することができます。

 

駆動システムには、国際宇宙ステーションのほかのシステムと比べて大電力を必要としており、排熱する必要がありました。

 

積極的な熱制御(受動型熱制御)に加えて、熱の循環を良くするための機構を必要としない熱のバランスをとる制御(能動型熱制御)も合わせる必要がありました。

 

日本実験棟の能動型熱制御の開発では、宇宙空間という真空に暴露している環境から、機構部の潤滑技術などが必要となり、従来の人工衛星の推進系設計技術と原子力開発で培った熱管理設計技術を組み合わせて設計しました。

 

設計された結果は、日本実験棟打上げ前の1995年3月に、船外プラットフォームの部分モデルを日本版フリーフライヤー衛星である次世代型無人宇宙実験システム(SFU(Dpace Flyer Unit))に搭載し長期間の宇宙実証試験を行っています。

 

翌年1月、シャトルにはじめて登場した若田宇宙飛行士により、ロボットアームを操作して無事回収された。

 

日本実験棟で培った能動熱制御技術は、石油・化学プラントの熱設計に応用され、機構技術は、航空機エンジンのような回転体の開発や車両用サーボモーターなどの使用環境が厳しいシステムに応用されています。

 

国際宇宙ステーション

最近、国際宇宙ステーションが2030年まで運用を延長するという話が上がっています。

 

国際宇宙ステーションは当初2016年の運用でしたが、2015年に2024年まで運用が延長することに合意されています。

ニュース記事の多くは2030年に終了という話が出ていますが、実際のところは延期/延長です。

 

政府予算を考えると、延期より終了という表現の方が、「まだ使うのか」という感情よりも「そこで完了ですね」という感情の方が落ち着きが良いように感じるのは気のせいかもしれません。

 

老朽化が進んでいる国際宇宙ステーションですが、今後は民間で製造した宇宙ステーションが打ち上げるという話もあります。

 

問題なのは、日本や欧州、カナダといった自前で宇宙ステーションを製造していなかった組織が今後の有人宇宙開発に出遅れてしまう可能性ですかね。

 

もしかすると、権利関係がかなり難しいですが、どこかの大企業がほとんどまるごと購入して、インターフェース部分を次々と新しい装置に交換して継続運用するという可能性もある気はしています。

 

さて、今後どうなることやら。

 

今回は熱構造部分やインターフェースに注目したのですが、他の面で知りたい方は読んでみてください。

 

参考文献

 

付録1 国際宇宙ステーションISS)計画概要

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/09/29/1352168_2.pdf

国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で獲得した有人宇宙技術

https://jaxa.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=4175

「きぼう」日本実験棟開発の歴史

https://iss.jaxa.jp/iss/kibo/develop_status.html

宇宙業界用語「ホステッド・ペイロード」ってなんですか?

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日本とアメリカは2020年にホステッド・ペイロード協力について合意しました。

※日本語ではホステッ「ト」ではなく「ド」です。

 

今回はホステッド・ペイロード協力の中身ではなく、ホステッド・ペイロード(hosted payload)そのものについて述べていきます。

 

[目次]

 

ホステッド・ペイロード(・サービス)とは

ホステッド・ペイロードは、相乗りともいわれることがあります。

宇宙業界の中で人工衛星に対して相乗りという言葉は大きく2つあります。

 

一つは、ロケットに搭載されるときにメインとなる人工衛星に対して、ロケットの打ち上げ能力の余剰分を利用して別の人工衛星(副衛星)を打ち上げる際に、副衛星を相乗り副衛星と呼ぶことがあります。別の呼び方ではピギーバックとも言われています。

 

もう一つが、人工衛星の内部に別の組織によるコンポーネント(モジュール/機器)を搭載し、電源や通信機を共有したうえで、人工衛星を運用することを相乗りと呼びます。

 

今回のホステッド・ペイロードは後者のことを指します。

ホステッド・ペイロードは搭載量の貸出しという意味で、相乗りと呼ばれています。

 

ホステッド・ペイロードのメリット

  • コスト面が安くなる

人工衛星は、小型化が進んだといっても数千万~十数億円の世界であることは変わりません。中・大型衛星でも数百億円以上かかります。

 

このコストを一つの組織が使用するにはまだ大きく、このことが宇宙業界に参入する組織が少ない原因の一つともなっています。

ホステッド・ペイロードの仕組みを利用することで、コスト(開発費、打上げ費)の分担が発生し、安く購入することができるようになります。

 

  • 打上げまでの時間の短縮

人工衛星は、打上げ時のロケット振動環境や軌道上での放射線対策、製造後の確認(適合)試験に時間がかかります。フルセットで実施する場合は、数年レベルで試験を行い確認していくことになります。

理想をいえば、ホステッド・ペイロードにより、試験の途中から機器を搭載する判断も可能となり、大幅な時間短縮もできます。もちろん各機器に対しての責任区分(分界点)は必要であり、お互いの機器が干渉しないことを確認する試験が必要になってきます。

と、開発面での時間短縮を上げたのですが、最も大きいのは今だに打上げ機会が限られているロケットによる軌道投入までの時期を早めることではないでしょうか。

ロケットの打ち上げ機会は、スペースXにより増えている印象を持っているかもしれませんが、まだまだ不足しているのが現状です。

次回の打ち上げに、数か月から数年レベルで人工衛星を待機させておく必要があります。

人工衛星はナマモノのように腐るわけではないのですが、清浄度管理やそのものが大きい場合であったりと、保管にも費用が掛かります。保管期間が長ければ、不測の自然災害による損傷や人的事故のリスク、電池の充電管理など実際打ち上げたときに障害になりうる事象を引き起こすことになるため、製造後の速やかな打上げが望まれます。

 

ホステッド・ペイロードは一部の機器(主に電源機器、通信機器)を共有します。

スペースデブリは、ネジ1本でも他の人工衛星を壊せるだけの破壊力を発揮します。この仕組みを使用することで、ネジ1本以上も部品を減らすことができるようになります。

 

ホステッド・ペイロードのデメリット

  • 性能や形状に制限が出てくる

空いている部分を使用するため、性能や形状に制限が出てくることです。ただし、人工衛星は古くから性能や形状に制限がある中で、小型化や工夫して搭載していたため、元々コンポーネントを製造していたメーカーからすれば、今までの人工衛星と大差ないとも言えます。

 

日本でのホステッド・ペイロード

日本では人工衛星を製造しているメーカーが少ないことから、商業的にホステッド・ペイロードを実施しているメーカーは今のところあるかもしれませんが、打上げまで済ませた人工衛星がない可能性があります。

 

近い仕組みとして、JAXAの主導する革新的衛星技術実証機になります。

同じ機体の中に、複数の実証機器を搭載し、電源機器や通信機器を共有していくこの考え方は、ホステッド・ペイロードと呼ばれてる考えに通じています。

 

ホステッド・ペイロードを進めていく上で、重要な要素は人工衛星の製造の安定性です。

 

人工衛星は、目的の違いからミッション機器と呼ばれる観測装置、通信装置なども変わっていきます。

一つの人工衛星を製造するのに、複雑なミッション機器であればあるほど開発時期が延びて置き数年、数十年に及ぶことも少なくありません。

同じようなミッション機器を次世代に搭載しようとしても、宇宙業界以外の技術革新が激しく、それに合わせてミッション機器もかつて使用した部品が使えなくなったりと、一品一様の人工衛星であることが長く続いていました。

 

最初は潤沢にあった政府資金も、世情からいくつからの目的を失い資金削減の方向に動いており、製造メーカーも統廃合が進み、コスト削減の波が幾度も来ていました。

 

そのため、世界の人工衛星メーカーは各ミッション機器に対して共通の衛星バス機器(電源装置や筐体、姿勢制御機器などのどの衛星でも共通の機能を持つ機器)を開発していった経緯があります。

同じ設計の衛星バス機器を搭載することで、設計費のコストを削減し、在庫管理や部品購入の際の輸送や書類作成コストを削減しています。

製造した衛星を輸送する際にも、独自の輸送ボックスを使いまわすなどの地道な削減を行ってきました。

このようにして(今風にいうとオールドスペースの)人工衛星メーカーの多くは生き残ってきました。

 

潤沢な資金の上に成り立っていると思われていた宇宙業界も、削減され続ける政府予算の上で、リアルタイムで最新技術のデータを作成しなかればならない厳しい事情の上で頭を悩ましてきたうえでの進んできました。

 

ホステッド・ペイロードは、コストや時間によるリスクを減らし、継続して人工衛星を製造し続けていくという組織としての安定性に一役買うことになる仕組みといえます。

 

海外のホステッド・ペイロード

ホステッド・ペイロードが明文化されたのは、2007年にアメリカより出てきました。

 

2007年当時は、というか現在でもそうですが、商業衛星でいうと通信衛星です。

 

衛星通信が民間企業で購入される時代であり、人工衛星の需要が増加すると予測されている一方で、政府資金が削減され、打上げ機会が多くなく、製造時間も数年レベルと長期になることから、リスク軽減のためにホステッド・ペイロードの考え方が出てきました。

 

その後、2010年辺りからホステッド・ペイロード・サービスとして実際にサービスが始まっています。

2010年当時はまだまだ政府関係へのサービスが主流でしたので、気象関係や軍事関係で活用されていたようで、現在もアメリカに限らず諸外国で続いています。

 

公開しているだけでも多くの人工衛星でホステッド・ペイロード・サービスが利用されており、コストを抑えたい政府や企業と、多くの衛星本体を販売したい企業の利害が一致した形となっています。

参考資料

日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくホステッド・ペイロード協力に関する書簡の交換

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000392.html

Hosted payload - Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Hosted_payload