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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

単純が難しい!人工衛星の白と黒の配色から見る熱バランスの考え方【宇宙機とデータベース】

黒と白の役割

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-KSC-08pd2979

 

人工衛星が白かったり黒かったりする理由がちゃんと存在します。

 

白は明るかったり、綺麗そうに見えるから。

黒は重く見え、高級そうに見えるから。

 

決してそのようなイメージ戦略で色を付けているわけではないのです。

 

 

 

 宇宙空間では、熱対流という現象が見られなくなります。大気がないのですから対流は起こりません。

 

熱伝導も人工衛星内で発生しますが、外部へ逃げることはほとんどありません。接触しているものがないのですから外部への伝導は起こりません。

 

宇宙空間での熱のやり取りは放射の影響が強くなります。

 

放射は表面処理に強く影響されます。

 

それではJAXAの材料データベースから白と黒の違いを確認してみましょう。

 http://matdb.jaxa.jp/MaterialEvaluation/ME_main_j.html

 

白と検索してみると、垂直赤外放射率の値が0.9に近い値を取っていますが、太陽光吸収率の値が0.25に近い値を取っています。

 

黒と検索してみると、垂直赤外放射率と太陽光吸収率の値がともに0.9に近い値を取っています。

 

赤外放射率が1(100%)に近ければ、熱が放出しやすいです。

太陽光吸収率が1(100%)に近ければ、熱を受け取りやすいのです。

 

白は熱を放出しやすく、熱を受けにくいという特性があります。

この特性を使うことで、物質の熱の変化を減らすことができます。

 

人工衛星の機器の中には、熱を持ちすぎると、性能を落としてしまう機器があり、そのような機器の場合には白色が使われることが多いです。

 

人工衛星で白い機器と言われるとアンテナではないでしょうか。

 

これは地上でもいえることなのですが、パラボラアンテナ(parabolic antenna, parabola antenna)は、反射鏡(parabolic reflector)を持っています。

反射鏡はディッシュやお皿とも呼ばれており、この色が白いことが多いです。

 

白いと反射鏡の歪みを減らすことができ、より安定した性能を得ることができるのです。

 

そう考えると白い表面の方がお得に思えますが、人工衛星内部を白にすると計算が難しくなります。

 

なにせ、吸収率が低いため多くは反射してしまうのです。

 

 

それに比べて黒にすると吸収率「も」高くなるため、衛星内部の温度が慣らされる、一定の値になっていき易くなります。

 

熱のバランスが取り易くなるということなんですね。

 

人工衛星において不安定になる期間を減らし、安定に成り易いということは管理しやすくなるため、運用性の向上につながります。

 

また、宇宙空間はだいたい3K(ケルビン)、-270℃であるため、常に冷やされる方向にあります。

 

機器が起動していないと人工衛星の温度が下がってしまうため、人工衛星全体を暖かくするために衛星の機器は黒色をしていることが多いんですね。

人工衛星の内部を映したとき、人工衛星内部が黒いのにもちゃんと理由があるんですね。

 

なので、赤が好きだから、赤い人工衛星を打ち上げるのが夢なんですといわれると、なかなか難しい所です。

 

赤い人工衛星を作るために、内部機器の配置や、ヒーターを追加したり、熱容量の適した物質の検討や検証などなど、成立する解はあると思いますが、コストは数倍~数十倍は跳ね上がると思います。

 

ただ、人工衛星ではなくなんの機能も持たない場合ですと、ロケットで打ち上げて放出すればいいだけなので、問題はないかもしれません。

 

 

表面特性なので、仕様される塗装や粗さによって特性値が変動することには気を付けた方がいいです。

 

 

 

人工衛星によく使用されている金色や銀色の材料、MLIもこの表面特性を利用しています。

MLIの場合は、色だけではなく、複数のフィルム上の素材を積み重ねていることで、保温性を上げています。

 

 

白、黒、金、銀以外にも、人工衛星の表面上では太陽電池セルが存在しています。

 

太陽電池セルはガリウムヒ素(GaAs)系やシリコン(Si)系があり、さらに太陽全治せる表面上にはカバーガラスが貼られているため、色だけではなく材料そのものの表面特性が関わってきます。

 

この辺りが宇宙機の熱設計が難しいといわれるゆえんかもしれません。

地上では伝導や対流の方が影響が強いのですが、宇宙空間ではこの2つの要素がとても少なく、代わりに放射の方が強い影響を受けます。

 

地上での影響が少ないということは、利用者が少ないため、データを取得する必要でも少なくなります。

 

つまり、基礎データが不足しているのですね。

 

参考

JAXA 材料データベース(もしかして停止中2020年4月9日より)

http://matdb.jaxa.jp/main_j.html

NIMS 物質・材料データベース (MatNavi)

https://mits.nims.go.jp/

Find materials and contact suppliers

https://matmatch.com/

Physical Sciences Informatics System(NASAのシステム)

https://psi.nasa.gov/

Science.gov(アメリカの材料情報システム)

https://www.science.gov/

 

nasa technical reports server

https://ntrs.nasa.gov/search.jsp

放射率表-OMEGA-

https://www.jp.omega.com/techref/pdf/table-total-IR-emissivity.pdf

Solar Absorptance and Thermal Emittance of - NTRS - NASA

https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19840015630.pdf

Spacecraft Thermal Control Coatings References - NTRS

https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/20070014757.pdf

EMISSIVITY COATINGS SPACE RADIATORS FOR LOW-TEMPERATUR

https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19670010542.pdf