往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋はのたもうた

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

対象:運用設計者

QPS研究所の宇宙戦略:九州発SAR衛星で拓くリアルタイム観測網

はじめに:地方から世界へ QPS研究所は、九州大学発のベンチャーとして2005年に設立された。創業当初から掲げていたのは、「小型SAR衛星によるリアルタイム地球観測網の構築」という壮大な構想だった。だが、2017年から2019年にかけては、技術的にも資金的に…

衛星通信の“見えないリスク”を設計でどう防ぐか:事例と対策

1. 通信系の構成と脆弱性 人工衛星の通信系(Communications Subsystem)は、地上局とのデータ送受信を担う中核的なサブシステムである。観測衛星であれば画像やセンサーデータの送信、通信衛星であれば音声・映像・インターネットの中継、測位衛星であれば…

地球と宇宙を結ぶ究極の生命線―キャンベラ深宇宙通信施設(CDSCC)ちょこっとガイド

Image Credit: NASA/JPL-Caltech 宇宙探査機が太陽系の果てへと向かうとき、その「声」を地球に届ける場所がオーストラリアにあります。キャンベラ中心部から南西に35km、山々に囲まれたティドビンビラの谷に位置する「キャンベラ深宇宙通信施設(CDSCC)」…

小型衛星の“向き”を支える技術:姿勢制御装置の構造・課題・比較

1 リアクションホイール:姿勢制御のトルク源 リアクションホイールは、人工衛星の姿勢を制御するためのトルク生成装置である。内部に搭載されたフライホイールを高速回転させ、その角運動量を変化させることで、衛星本体に反作用トルクを与える。これはニュ…

地上の光回線を超える速度へ。宇宙光通信の革命、スターリンク衛星間レーザーリンク

現在、私たちの頭上数千キロメートルの宇宙空間では、人類史上最大規模の光通信ネットワークが構築されています。SpaceX社が展開する「スターリンク(Starlink)」は、単なる衛星インターネットの枠を超え、宇宙空間における「通信の標準」を塗り替えようと…

設計は1つのシステムで終わらない—System of SystemsとNASAのSystems Engineeringの違いを読み解く

1. はじめに:あなたの設計は、誰かのシステムとつながっている ある若手エンジニアが、都市交通のセンサーを設計していた。彼はそのセンサーが、信号機と連携して車の流れを制御するだけだと思っていた。ところが、ある日そのセンサーが、災害時の避難誘導…

推進系の失敗はなぜ起きるのか:事例に学ぶ設計と運用の盲点

1. はじめに:推進系の役割と設計上の課題 人工衛星の推進系(Propulsion System)は、衛星の軌道投入、姿勢制御、軌道維持、そして最終的な離脱操作(deorbit)までを担う、いわば「宇宙機の生命線」である。推進系が正常に作動しなければ、衛星は所定の軌…

小型衛星の熱制御系に潜む故障パターンと設計改善のヒント

1. はじめに:宇宙空間で熱を制するという挑戦 宇宙機の設計において、熱制御系(Thermal Control System, TCS)は、ミッションの成否を左右する重要な要素である。地球上では空気や水による対流・伝導が熱移動を担うが、宇宙空間ではそれらが存在せず、放射…

宇宙業界用語「宇宙交通管理(STM)」について

宇宙交通管理こと、STM:Space Traffic Managementとは、宇宙機の打上げ、軌道投入、軌道変更、軌道離脱、地上への落下までの活動を管理することをいいます。 [目次] 宇宙空間の交通事情 宇宙交通管理の簡単な経緯 日本の宇宙交通管理 今後の宇宙機同士の接触…

衛星搭載型2波長赤外線センサの紹介

2波長赤外線センサとは? 赤外線センサといっていますが、いわゆる赤外線カメラのことです。 赤外線は、人間の目に合わせた可視領域外にある光の波長域のことで、可視領域では識別しにくい物体や現象を観測するために用います。 2波長という、それぞれ別の光…

トレードオフはエンジニアの「苦悩」である。そんなエピソード

設計者にとって「トレードオフ(Trade-off)」は、日常茶飯事の言葉です(多分)。 しかし、現場で「トレードオフを検討して結論を出せ」と言われたとき、多くのエンジニアが頭を抱えます。 ネットや書籍にある「あちらを立てればこちらが立たず」といった解…

宇宙にかかわるテラヘルツ波とは

テラヘルツ波とは テラヘルツ波は、100GHzから10THzの間の周波数のことで、テラヘルツ帯であることからテラヘルツ周波数あるいはテラヘルツと呼ばれています。 3mmから30μmの波長レンジを有し電磁波を示しています。 周波数帯としては電磁波(電波)と光の間…

システムズエンジニアリングが失敗していると思った時にチラ見する記事

システムズエンジニアリングを導入してみたがどうも失敗している。 なぜか上手くいかない。 一部の人に負担が偏って効果が見えない。 そんな声とともにやがて過度に増える負担と効果から部分的に効果を見せていても、社内に広まることは無くシステムズエンジ…

振動低減に利用するワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 | Lessons Learned

ワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はワイヤーロープアイソレータについてです。 ワイヤ…

システムズエンジニアリングを活用する前にチラ見する記事

システムズエンジニアリングはNASAの宇宙開発で活用されてきました。 ゆえに、システムズエンジニアリングとは宇宙開発に対して実施するものであるという誤解をしている人がいるかもしれないがそうではありません。 一方でMBSE(Model-based systems enginee…

ロシアの撤退で国際宇宙ステーションに何が起こっていくのか

credit:NASA https://images.nasa.gov/details-9802668 あまり時事ネタはやらないのですが、浮かんでしまったのでまとめました。 2022年4月30日、以前より、国際宇宙ステーション(ISS)の撤退を表明していたロシアの国営宇宙機関のROSCOSMOS(ロスコスモス)…

SpaceX社の通信衛星コンステレーション(スターリンク)の混信回避方法

衛星コンステレーションが話題になって幾日、電波が混線する可能性に気づいた方がいるのではないでしょうか。 今回はSpaceX社の打上げている通信衛星であるスターリンクの混線回避方法について調べてみました。 スターリンク衛星の通信が混線する可能性 電波…

火星の未知の環境でNASAが直面した着陸時の衝突回避方法 | Lessons Learned【機械設計者向け】

宇宙開発は数年掛かりで開発します。 しかも、打上げロケットや打上げ軌道が決まっている場合は、スケジュールをずらすことが難しいのが現状です。 数年掛かりといえど、かなりタイトなスケジュールを強いることが多いんですね。 そのスケジュールの中で、機…