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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

衛星画像のキャリブレーションをしよう!輝度較正の手法と必要な理由【宇宙機とミッション】

人力で挑んでいる較正手法

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-ED04-0056-065

 

画像の補正を行うためにリフレクター、あるいは反射板と呼ばれるものを使います。

今回の画像は反射板と呼ばれるものです。

 

衛星画像の補正には幾何学キャリブレーションを行う幾何補正(Geometric Correction)と輝度較正(Radiometric Calibration)があります。

 

輝度較正では取得する画像の色合いを整えるために実施しています。

 

衛星の画像は地球からの反射や大気を透過して軌道上のカメラへ画像に記録します。細かく言えば、装置に内蔵されている撮像素子(画像素子)に光が集光されることでデジタル信号に変換されます。

 

撮像素子(画像素子)を通してデジタル信号に変換し記録媒体に記録されるのですが、撮像素子(画像素子)に集まる光が、地球からの放射等を正しく知ることで、素子に集まった光がどのような素性であるか正しく理解することができます。

 

画像の素性を知ることで、画像の分析と分解が可能になります。

画像の分析と分解を行うことで、撮像素子(画像素子)を通して記録されていた画像の中で必要な対象を抜き出したり、定量化させることが可能になります。

 

キャリブレーションにより標準となるデータを取得・決定し、標準となるデータを元に色合いや強度を比較したり慣らす(平準化する)ことで、真実の色に近い色に衛星画像を校正することが可能となるのです。

 

 

 

キャリブレーションは物体の放射データだけでない 

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反射板により放射輝度を取得することは述べましたが、野外用分光放射計を使用して地上から取得するだけでなく人工衛星から取得する場合もあります。

これは両方取得することで、精度を上げるためでもあります。

 

そもそも精度や画像の確からしさがいらなければキャリブレーションは必要ないのです。

ただ画像を取得することが目的ではなく、画像を取得して産業として活かすには、画像データの正確性も必要になります。

現在のところ、人工衛星を打上げ、得られた一次データである生データを加工するという企業は20社に満たないかと思います。組織というくくりにすれば20団体は越えるかもしれませんが。

 

売り出されている組織が少ないということは、簡単に購入され比較できるということです。

購入され、比較されれば、この時代の情報伝達を考えると、どの組織のどの人工衛星が精度の悪いデータを提供してしまうかもわかってしまうのです。

いや、大変ですね。

 

そのため、正確性というのは今後の事業形成を考えるのであれば必要な作業の一つです。

 

では放射以外のデータとはどのようなデータでしょうか。

 

単には気象観測データです。

温度や気圧、風速、風向のデータを取得し、大気の状態を取得する必要があります。

 

さらに通常の通常の野外用分光放射計では取得できない、光学深度、水蒸気、オゾン、二酸化炭素、単一散乱アルベド、非対称性因子等を取得します。

 

通常では取得できないデータはどう取得するべきか、すでにあるネットワークから取得していくことになります。

日本では北から北海道、新潟、石川、富山、千葉、兵庫、奈良、大阪、和歌山、長崎、沖縄と取得することができます。すべて最新版が取得できるかは確認していませんが。

 

Aerosol Robotic Network (AERONET)

https://aeronet.gsfc.nasa.gov/

北海道大学への大気エアロゾル観測のためのAERONET観測サイトの設置について

https://www.eng.hokudai.ac.jp/graduate/top/news/?topic=15102301

 

 

これらの情報を考慮し決定するのが地上基準点(Ground Control Point, GCP)で、すでに明確になっている緯度経度や高度で作成されている数値地表モデル(digital surface model, DSM)などのデータを参照に補正を行っていく必要があります。

 

補正の回数

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キャリブレーションは1回では終わりません。

 

その理由の一つに、撮像素子が劣化するからです。

撮像素子が劣化すると、劣化分は補正の精度を上げることで補完していかないと一定の品質が保たれません。

 

人工衛星による画像の取得を継続して実施しつつ、補正の精度を上げることで劣化に対応していきます。

人工衛星を数多く打上げれば、劣化の傾向を分析していき、自動化も可能かもしれませんが、まだまだ先になるかと思います。光学人工衛星コンステレーションが継続して実施され、使用している撮像素子や軌道、素子の保護などの設計がほとんど同じであれば可能になるのではないでしょうか。

 

それまでは補正を繰り返し、衛星画像の品質を一定して行くしかありません。

統計学でもあるように数点のサンプルでは読み切れない部分があるからです。

 

ちなみに、GOSAT2の補正頻度について記載がありましたので、最後に乗せておきます。

 装置関数較正:月1回

 輝度校正(太陽光拡散板):2周回に1回

 輝度校正(黒体):毎周回数回実施

 電気校正:月1回

 月校正:月1回、順次回数を減らす。

 夜間校正:夜間観測

 代替校正:軌道上でデータ取得が困難な場合に相対的に校正

 

GOSAT-2衛星/センサ開発、打上げ、運用、L1処理について

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/39/1/39_14/_pdf

 

 

参考文献 

 

Absolute Radiometric Calibration is an Essential Tool to Imagery Science, But What is it?

https://blog.maxar.com/earth-intelligence/2020/absolute-radiometric-calibration-is-an-essential-tool-to-imagery-science-but-what-is-it

 

Calibration enables the calculation of the actual radiance of the Earth target, from the corresponding digital counts produced by the satellite instrument.

https://www.eumetsat.int/website/home/Data/Products/Calibration/index.html

 

エアロゾルの光学的特性と直接効果

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/55023/1/LTS72_013.pdf

 

Advanced Land Observing Satellite-2 (ALOS-2) and PALSAR-2

http://seom.esa.int/polarimetrycourse2015/files/PALSAR-2_MShimada.pdf

 

ALOS全球数値地表モデル (DSM) "ALOS World 3D - 30m (AW3D30)"

ALOS全球数値地表モデル(DSM) "ALOS World 3D - 30m (AW3D30)"

 

ASTER GDEM - 一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構

https://ssl.jspacesystems.or.jp/ersdac/GDEM/J/

 

Calibration

https://www.eorc.jaxa.jp/GOSAT/calibration_1_j.html

 

【図解】衛星データの前処理とは~概要、レベル別の処理内容と解説~

https://sorabatake.jp/9192/

 

NASA's Earthdata Search

https://search.earthdata.nasa.gov/

 

LP DAAC's Data Pool

https://lpdaac.usgs.gov/tools/data-pool/

 

Application for Extracting and Exploring Analysis Ready Samples (AρρEEARS) 

https://lpdaacsvc.cr.usgs.gov/appeears/