往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

人工衛星部

モーダルサーベイと呼ばれる共振周波数/共振点探査/振動応答検査のための試験と分析の基礎

モーダルサーベイ試験 モーダルサーベイ試験は、試験する物体に対して低レベルでの加速度を振動試験機で負荷させ、得られ加速度応答データから物体の固有値周波数(振動数)や物体の振動による変形(振動モード)を得る試験のことをいいます。全機振動試験/…

宇宙業界用語「宇宙交通管理(STM)」について

宇宙交通管理こと、STM:Space Traffic Managementとは、宇宙機の打上げ、軌道投入、軌道変更、軌道離脱、地上への落下までの活動を管理することをいいます。 [目次] 宇宙空間の交通事情 宇宙交通管理の簡単な経緯 日本の宇宙交通管理 今後の宇宙機同士の接触…

日本の森林火災/山火事と宇宙からの監視網

海外では森林火災に対して人工衛星によって宇宙空間から取得した画像データを活用して、早期発見システムを構築しています。 日本ではあまり表に出ない情報なのか、そもそもの森林火災件数が少ないためなのか、森林火災に対しての人工衛星による監視システム…

宇宙インフラとは?

宇宙インフラとは 宇宙インフラとは、地上を離れて宇宙という空間を使用した経済や社会を支える基盤となるサービスのことをいいます。 宇宙空間より得られた情報を使用するもの、宇宙空間より情報を生成するもの、宇宙空間を中継して使用するものがあります…

H3ロケット試験機2号機での相乗りの可能性が出てきた件

H3ロケット試験機1号機の打上げが2023年3月7日の行われ、失敗した。 2023年度中ごろに打ち上げ予定(2022年12月23日の宇宙基本計画工程表)であった試験機2号機を次の打上げのために準備している。 H3ロケットは政府関連ミッションを達成するための宇宙空間へ…

信頼性と品質保証は違う、最近影薄めな信頼性と宇宙機

[目次] 信頼と信頼性 信頼性と品質保証 参考サイト 宇宙業界は高信頼性であるといわれています。 ただ、高信頼性といっても決して特殊な設計方法をしているのではなく、自動車や家電、パソコンと同じ設計方法を取っています。 宇宙業界で有名なロケットは千…

宇宙開発の信頼性の設計では何を確認しているのか?

宇宙業界は高信頼性で成り立っているといわれています。 宇宙業界の高信頼性といわれても特殊な手法を取っているわけではありません。 もちろん、他の製品と比べてグレードが変わることはありますが、手法そのものは高い技術を要するものではありません。 JA…

ロケットの打上げ延期の時の人工衛星の対応は?

ロケットの打上げ延期の時の宇宙機(人工衛星など)の対応とは いくつかの場合分けになるとは思いますが、打上げ直前のカウントダウンフェーズの場合、次のようになります。 フェアリングに搭載されたまま、次の打ち上げまで保管 フェアリングから外して、衛…

衛星搭載型2波長赤外線センサの紹介

2波長赤外線センサとは? 赤外線センサといっていますが、いわゆる赤外線カメラのことです。 赤外線は、人間の目に合わせた可視領域外にある光の波長域のことで、可視領域では識別しにくい物体や現象を観測するために用います。 2波長という、それぞれ別の光…

フル3Dプリントによる人工衛星はすでに打ち上げられている

宇宙業界では3Dプリントが注目されています。 注目されているといっても、2022年はややニュース記事としては少なくなっている印象です。 宇宙開発には試験や検証で時間が掛かります。 特に初号機の場合は、小型衛星の場合でも2年以上の期間で開発されます。 …

宇宙産業の規模を他の業界ランキングと比較【2023年】

宇宙業界が盛り上がっていると言われることもあり、世界規模では2030年代後半には100兆円の市場規模と言われています。 日本政府目標としては、2030年代までに2倍を目標としています。 [目次] 宇宙業界の規模 日本の業界規模の中での宇宙産業 宇宙業界の規模…

【就活生のための】宇宙開発業界の業界研究・宇宙就活

宇宙業界とは 宇宙業界、あるいは宇宙開発ビジネスという括りで考えると、宇宙関連機器の発注者、製造者、運送者、運用者、分析者、利用者に分けられます。 宇宙業界は、宇宙開発初期から延々と関わり続けてきたオールドスペースと、2010年代後半より始まっ…

インドの宇宙開発 衛星ナビゲーションシステムNaVIC

インドのNASA、JAXA版ともいえるインド宇宙研究機関(ISRO)があります。 インドは1975年にISROが初めて人工衛星を打ち上げて以来、通信衛星、地球観測衛星、航法衛星、軍事衛星をはじめ、何十機もの宇宙機を打ち上げています。 世界的にみると、アメリカ、…

地球周回衛星の周回数と回帰日数について

地球周回衛星の周回数とは、地球周回衛星は1日に地球を何周も回っており、1日に何周回っているかを示したものです。 地球周回衛星の多くは地球観測衛星であることが多く、日本の組織が保有している衛星では、JAXAのALOS-2、ALOS、アクセルスペースのGRUS、sy…

基本宇宙計画の重点事項(2022年5月版)の内容を年表で書き出してみた

基本宇宙計画とは 基本宇宙計画は、宇宙の大きな可能性と、現在我が国が直面している厳しい状況を認識し、今後20年を見据えた10年間の宇宙政策の基本方針を以下のとおり定め、官民の連携を図りつつ、予算を含む必要な資源を十分に確保し、これを効果的かつ効…

地球軌道上の熱環境 | Lessons Learned

地球軌道上の熱環境 地球軌道上の熱環境というのは、人工衛星の熱解析やデブリ落下解析で使用されます。 宇宙機を製造するにあたり、どんな熱環境を意識する必要があるのかといったことは他に譲るとして、今回は熱解析で利用されるパラメータについてまとま…

宇宙エンジニアの「失敗する機会」を許容する文化 | Lessons Learned

エンジニアに「失敗する機会」を提供する 宇宙業界は失敗してはいけない文化だと聞いたことはありませんか? 失敗しないように試行錯誤を繰り返すのは事実ですが、それでも失敗はおきます。 Lessons Learnedシリーズでは宇宙業界という技術力の高いエンジニ…

代替の経済性(economies of substitution):再設計するコストは新規のシステムを構築するコストを上回る【基礎から知りたい】

代替の経済性(economies of substitution) 代替の経済性(economies of substitution)とは、最初から再利用や交換を考えて設計した製品の開発コストは、製品を再設計するよりコストが低いことを示す概念です。 生産までに時間がかかる製品 人工衛星は、いま世…

民生品を宇宙機に利用した際に寸法が許容できずに発覚した不具合事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例【機械設計向け】

民生品を推奨して、人工衛星の価格を下げるというのが小型衛星開発の設計の流れがあります。 しかし、民生品を利用するということはいくつかのリスクを含んでいます。 少し時間がたっている事例ではありますが、民生品を使用した際に発生しうるリスクを簡単…

静電放電(ESD)による人工衛星破壊を最小限にするための設計手法 | Lessons Learned【電気・機械設計者向け】

静電気でパソコンが壊れるという話を聞くことはありますが、あまり人工衛星で壊れるという話は聞いたことがないかもしれません。 人工衛星も電子機器であることから静電気で壊れます。 人工衛星は軌道上に上がると故障の原因を調査することがかなり難しいで…

宇宙業界用語「ホステッド・ペイロード」ってなんですか?

日本とアメリカは2020年にホステッド・ペイロード協力について合意しました。 ※日本語ではホステッ「ト」ではなく「ド」です。 今回はホステッド・ペイロード協力の中身ではなく、ホステッド・ペイロード(hosted payload)そのものについて述べていきます。 …

人工衛星が何の役に立っているのでしょうか?宇宙技術のスピンオフ【基礎から知りたい】

人工衛星は何に役立てられているのだろうか? 人工衛星って何なのか? 今回は初心に立ち返り、改めて人工衛星について解説します。 目次 めっちゃ高いところにある人工物、それが人工衛星 身近な人工衛星 人工衛星が止まったらどうなるでしょうか? 参考資料…

たまに出る宇宙業界用語「高精密度測位補正技術(MADOCA-ppp)」について

測位システムの高精密度測位補正技術(MADOCA-ppp)を知ろう GPSというと、現在の自分の位置を知る測位システムとして知られています。 ただし、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)に関わる人や人工衛星に関わる一部の人はGNSS(Global…

宇宙業界用語「JAXA認定品」とは

JAXA認定品とは、人工衛星、宇宙ステーション、ロケットなどの宇宙機に使用可能な品質レベルを満たしていること部品に対して、製造する設備も含めて認定した対象の電気電子機器及び部品のことをいいます。 また、JAXAでは電気電子機器及び部品のことを認定品…

SpaceX社の通信衛星コンステレーション(スターリンク)の混信回避方法

衛星コンステレーションが話題になって幾日、電波が混線する可能性に気づいた方がいるのではないでしょうか。 今回はSpaceX社の打上げている通信衛星であるスターリンクの混線回避方法について調べてみました。 スターリンク衛星の通信が混線する可能性 電波…

衛星データで鉱物資源を調査する方法【2021年での事業レベルと研究事例】【宇宙の技術は役に立つ】

鉱物資源のリモートセンシングとは 農業に人工衛星の観測データが使用されてきています。 農業で使用される観測データは、赤外データを使用しているのですが、同様に金属を検出することができます。 赤外観測装置は、物体が反射や放出された光を観測していま…

SpaceXのStarlink衛星でGPSのように自分の位置の特定をする新しい技術研究【応用を知りたい】

SpaceXの外部研究者(アメリカのオハイオ州大学)によって、Starlinkによるインターネットサービス衛星によるブロードキャストされた信号を使用してGPSにように地球上の自分の位置を特定する方法を開発しました。 Starlink衛星は、SpaceX社によって軌道に投…

火星の未知の環境でNASAが直面した着陸時の衝突回避方法 | Lessons Learned【機械設計者向け】

宇宙開発は数年掛かりで開発します。 しかも、打上げロケットや打上げ軌道が決まっている場合は、スケジュールをずらすことが難しいのが現状です。 数年掛かりといえど、かなりタイトなスケジュールを強いることが多いんですね。 そのスケジュールの中で、機…

宇宙市場に参入!宇宙製品を展開するための技術面からの初めの一歩【基礎から知りたい】

宇宙業界で活用されていた技術を日常品(宇宙業界では民生品)に活用していくというのが大きな流れでした。 2010年代後半から、逆に民生品の技術を宇宙業界に取り入れるような流れになってきました。 問題は、宇宙品がとても厳しいという話が広がりすぎて、…

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する | Lessons Learned、失敗学、事故事例【組立作業者向け】

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する スマホや携帯、PCの電源のコネクタは、取付け・取り外しがし易い形状をしています。 宇宙では逆にコネクタが外れないようにしなければなりません。 一番の理由はロケットで打ち上げた際の振動で、コネクタが緩みます…