往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

熱構造部

衛星搭載型2波長赤外線センサの紹介

2波長赤外線センサとは? 赤外線センサといっていますが、いわゆる赤外線カメラのことです。 赤外線は、人間の目に合わせた可視領域外にある光の波長域のことで、可視領域では識別しにくい物体や現象を観測するために用います。 2波長という、それぞれ別の光…

ロケット打上げ環境がある施設での地上支援装置(GSE)の設計に必要な環境要素 | Lessons Learned

ジョン・F・ケネディ宇宙センター(John F. Kennedy Space Center, KSC)にはロケット発射場があります。 過去、スペースシャトルと呼ばれる宇宙機が現役であった時にもケネディ宇宙センターで製造され、打ち上げられていました。 今回は、ロケット打上げ環…

航空宇宙光学システムの超精密ダイヤモンド切削・研磨技術 | Lessons Learned

ダイヤモンド切削とは、ダイヤモンド工具を利用して物体を削る技術のことを指します。 ダイヤモンドは炭素により構成される構造であることから高い熱伝導率を持ち、削る対象に対して熱を拡散させながら切削することができます。 切削により発生する物体間の…

熱伝達率を求めるためのニュートン冷却の法則【熱設計者向け】

熱解析での入力要素値:熱伝達率 目次 熱解析での入力要素値:熱伝達率 目次 ニュートン冷却の法則から熱伝達率を求める 試験のコンフィギュレーションを考えてみる データ取得後に、ニュートン冷却保存の法則を利用して算出する 参照サイト 式だけ知りたい…

地球軌道上の熱環境 | Lessons Learned

地球軌道上の熱環境 地球軌道上の熱環境というのは、人工衛星の熱解析やデブリ落下解析で使用されます。 宇宙機を製造するにあたり、どんな熱環境を意識する必要があるのかといったことは他に譲るとして、今回は熱解析で利用されるパラメータについてまとま…

振動低減に利用するワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 | Lessons Learned

ワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はワイヤーロープアイソレータについてです。 ワイヤ…

ハーネスが損傷する機械的理由 | Lessons Learned

ハーネスが損傷する機械的理由 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はハーネスが損傷する理由です。 抜粋した資料の情報が少ないため、「終わりに」が本題ですね…

初心者から一歩先へ!宇宙機の振動音響試験の考え方 | Lessons Learned【機械設計者向け】

宇宙開発は難しいことをしていると思っていませんか? 一見難しいように思えますが、理由を知れば、開発者が必要なことをシンプル化して試験をしています。 Lessons Learnedでは宇宙業界という技術力の高いエンジニアである人たちでも盲点となり起きてしまっ…

民生品を宇宙機に利用した際に寸法が許容できずに発覚した不具合事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例【機械設計向け】

民生品を推奨して、人工衛星の価格を下げるというのが小型衛星開発の設計の流れがあります。 しかし、民生品を利用するということはいくつかのリスクを含んでいます。 少し時間がたっている事例ではありますが、民生品を使用した際に発生しうるリスクを簡単…

静電放電(ESD)による人工衛星破壊を最小限にするための設計手法 | Lessons Learned【電気・機械設計者向け】

静電気でパソコンが壊れるという話を聞くことはありますが、あまり人工衛星で壊れるという話は聞いたことがないかもしれません。 人工衛星も電子機器であることから静電気で壊れます。 人工衛星は軌道上に上がると故障の原因を調査することがかなり難しいで…

国際宇宙ステーション日本実験棟"きぼう"開発のすごいところ【基礎から知りたい】

今回は『「きぼう」のつくりかた』から宇宙ステーション日本実験棟"きぼう"の熱制御についてまとめていきます。 「きぼう」のつくりかた 国際宇宙ステーションのプロジェクトマネジメント [ 長谷川 義幸 ] 楽天で購入 日本で国際宇宙ステーション(Internati…

金属3Dプリンタで使える部品とロケット【機械設計者向け】

今回は金属3Dプリンタにより製造する部品を使用するうえでの考え方をまとめました。 目次 金属3Dプリンタで許容できないもの それでも金属3Dプリンタ自体の製造公差が発生します。 ロケットと金属3Dプリンタ 3Dプリンタで推進薬タンクを製造する 参考文献 金…

中世に生まれた機械工学アストロラーベ、時計、マスドライバー【基礎から知りたい】

中世の機械工学と宇宙につながるもの 中世の機械工学で生まれた技術という記事を見つけたので、宇宙に絡めて紹介しようと思います。 www.engineersjournal.ie 記事によると、中世は機械工学において、大きな技術革命が発生した時期ではないと多くの人にとっ…

火星の未知の環境でNASAが直面した着陸時の衝突回避方法 | Lessons Learned【機械設計者向け】

宇宙開発は数年掛かりで開発します。 しかも、打上げロケットや打上げ軌道が決まっている場合は、スケジュールをずらすことが難しいのが現状です。 数年掛かりといえど、かなりタイトなスケジュールを強いることが多いんですね。 そのスケジュールの中で、機…

ものづくりにおけるリバースエンジニアリングについて【基礎から知りたい】

リバースエンジニアリングは、パーツ、既存のモデル、およびアセンブリを使用することで、3Dデータを生成できるプロセスの一つです。 簡単に言うと、スキャンしたデータを元に製品を再現することができます。 リバースエンジニアリングは、既存の形状から正…

【機械設計者向け】サーファーの技術がロケットの問題を解決した海外では有名な事例

サーファーの技術が宇宙開発を救った #TIL that engineers had issues with the honeycomb insulation on the #SaturnV second stage, so they ended up hiring local surfers from #SealBeach CA, who had experience in working with the material, to app…

【試験作業者向け】試験装置の配線も確認せずに供試体が破壊された後の今後の対策 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

試験前に試験機器の機能を確認しておく 試験前の事前確認は重要です。 例えば地上支援装置(GSE)を外注し、外注の検査結果をもって試験に挑んだとしても、データが取れなかったなんて言うことはよくある話です。 出荷時点で問題なかったとしても、試験コン…

熱試験で白金温度センサーに異常値・トラブルが発生した理由(2003) | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙環境試験の温度センサー Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-MSFC-202100027 画像は熱真空試験を実施するために、人工衛星を熱試験治具で囲んで、チャンバーに入れるところです。 あの黒い物体が熱試験治具になります。これはヒーター方式で…

導電性のある炭素繊維(カーボン)/樹脂複合材でも宇宙空間で空間電荷の影響を受ける | Lessons Learned

導電性のある炭素繊維(カーボン)複合材でも宇宙空間で空間電荷の影響を受ける 宇宙機開発において注意するべきものは、グランドという考え方です。 既製品や一般製品の場合、アースという考え方があり、グランドはアースに似て異なる考え方です。 アースは…

民間ロケット打上げ企業Rocket Labの施設を紹介して規模を知る

Rocket Labを紐解く Credits: Rocket Lab Roket Lab(ロケットラボ)は、2021年8月時点で、アメリカのカルフォルニア州ロサンゼルスに本社を置き、ニュージーランドにロケット射場設備を持つロケット打上げの企業です。アメリカのバージニア州にも第2の射場…

ハニカム構造の7つの利点と7つの欠点、6つのコスト要因

ハニカム構造の特徴をまとめてみました 以前、ハニカム構造の歴史と実例をまとめました。 mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com まとめたはいいものの、何か特徴があるのか、なぜ使用されているのが…

ハイスループット衛星(HTS)とは何か

high throughput satellite (HTS)? Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-KSC-00pp0712 直訳すると高い情報処理能力を持つ人工衛星である。 2022年に打上げられる技術試験衛星9号機(ETS-9)はハイスループット衛星(High Throughput Satellites:…

レーザー加工の誤解と6つ真実【筐体加工】

レーザー加工の誤解を解く 原文 https://www.engineeredmechanicalsystems.com/truth-behind-laser-cutting-myths/ John Thom レーザーは間違いなく、私たちの知る技術の中でも実用的に進化してきた技術の一つです。光のエネルギーを集約したビームは、矯正…

宇宙機のセラミックコンデンサの熱や機械的負荷の影響 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙環境試験に供するセラミックコンデンサの注意点 コンデンサは、充電や放電を行うことで、電圧の変化を吸収したり、電気の通り道で余計なノイズを横道にそらしたり、直流はさえぎり周波数で信号をより分ける機能があります。 セラミックコンデンサは、誘…

NASAのDC/DCコンバーターの適用に関するガイダンス(2008年) | Lessons Learned、失敗学、事故事例

NASAの選択とDC/DCコンバータの適用に関するガイダンス DC/DCコンバータの不具合は、宇宙機に限らず多くの製品で発生する可能性が高いデバイスです。 現在、市販製品と言われるCOTS品が使用されていますが、DC/DCコンバータの場合はどうでしょうか? 今回は…

太陽電池パドルの展開検知スイッチの未起動で異常事態となった事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

惑星探査人工衛星マゼランのソーラーアレイの展開の兆候 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-s30-72-046 太陽電池が必要な人工衛星は、電力消費が多く、使用頻度の高いミッションを行う場合に搭載されます。 展開パドルが働かなければ、人工衛星…

火星探査用のローバーのタイヤがパンクした事例(火星探査プロジェクトMSL) | Lessons Learned、失敗学、事故事例

火星探査プロジェクトであるMSLのローバーホイールの早期摩耗 2021年現在、火星や月をローバーと呼ばれる車両が走行する計画が上がっています。 現在も多くの車両が研究開発されています。 今回の教訓は、想定していた最悪ケース以上のケースが発生し、ロー…

軌道での温度変化を考慮しなかったためにSバンドアンテナが故障した | Lessons Learned、失敗学、事故事例

気象衛星NOAA-15(NOAA-K)のSバンドアンテナの故障 Credits: NASA GOES-L https://images.nasa.gov/details-KSC-99pp0489 極軌道気象衛星は、南北の極付近を通り赤道を大きな角度で横切る軌道を持っています。 これは、低高度(NOAA の場合は約850km)を短…

光学機器搭載の人工衛星に必須な汚染対策 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙機搭載イメージングカメラの汚染への対応(1999) 人工衛星において光学観測は、その結果が見た目でも分かりやすく、直観的にも出来を判断されてしまいます。 地上のカメラにおいても、保管方法を間違えてしまえば、レンズにカビが生えたり、汚れが付着…

振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法 振動試験より音響試験は物理的に難しい。 試験コンフィギュレーション上は、それほどと思うかもしれないが、小型衛星の場合はその限りでないかもしれないが、数メートル級の音響設…