マイルズの式について(Miles' Equation)

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マイルズの式は、人工衛星をロケットに搭載した際に、人工衛星に加わるロケット打上げ時に発生する音圧の加速度を算出(近似)することができる方程式です。

人工衛星で使用する場合は、概念検討～詳細設計までの構造解析(振動解析)の前提条件を算出するときに使用します。

具体的には、人工衛星構体及びコンポーネントがロケットのランダム振動(あるいは音響)に耐えられるか、構造強度を確認するための負荷を算出するために用いられます。

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ランダム振動時の場合は、振動のブレ(ランダム性)があることから正規分布を考慮して、X0rms×3 (3シグマ)を行った値を、解析条件に用いる加速度として算出していることもあります。

　　X0rms(=GRMS)：実効加速度

　　fn：固有値振動数(共振周波数) [Hz]

　　Q(=1/(2×ζ))：伝達率又は増幅率

　　ζ(ゼータ)：減衰比

　　PSD(fn)：fn時のパワースペクトル密度[G2/Hz or (ms/s2)2/Hz]

　　π：円周率

未知数となる値は固有値振動数(fn)、伝達率(Q)、パワースペクトル密度(PSD(fn))の3つです。

これらの値は振動試験により算出できるのですが、設計時の検討・解析条件として使用するため、実試験はできません。

使用する数値は、次の方法で決めていきます。

　　固有値振動数：固有値解析(モード解析)

　　伝達率：仮定・過去の実測値　

　　パワースペクトル密度：ロケットマニュアル/ユーザーガイド等

固有値振動数はCAE、シミュレーションによる構造解析(固有値解析、モード解析)で算出が可能です。

伝達率は過去の類似人工衛星の実測値か、フェーズが進めば試験モデル(EM、SM)で実測した値から求めることが可能です。

設計段階では経験則なのか人工衛星では、Q=3,5,10,20といった値を使用することが多いようです。

パワースペクトル密度：PSD(Power Spectral Density Function)は搭載ロケットにより変わり、シミュレーションにより算出し固有値振動数(共振周波数、1次モード)を使用し、ロケットのランダム振動条件のPSD(下記参照)から算出することになります。

参考に、すぐに検索で引っかかったロケットのランダム振動条件を上げておきます。

ロケットによっては音響環境の方が大きく包絡しているため、ランダム振動条件を記載していないところもあります。

最後に、NASA Goddard Space Flight Centerに記載していましたマイルズの式を使用する際に注意するべき点を3つあげておきます。

ランダム試験の負荷の上限は3シグマにより計算できます。しかし、マイルズの式を利用して、部品の構造からどれだけの負荷に耐えられるのかを逆算することはできません。
実試験のランダム振動の負荷は、各振動モードの応答、モード形状、モード時に発生する有効質量比に依存しています。ランダム振動とは別に発生する静荷重の負荷が、人工衛星に負荷されているされているとは限らないため、ランダム試験の実施が静荷重試験の省略をしていい理由にはなりません。
解析上の固有値振動数を使用して、実効加速度を求めたとします。実試験で人工衛星の周波数がずれている場合は、解析以上の応答が発生する可能性があります。

ちなみに、マイルズ(Miles)は距離のマイルではなく、論文を報告したJohn W. Miles氏の名前から取っています。

補足として、2018年販売のマイルズの式に関する書籍を載せておきます。