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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

衛星データで鉱物資源を調査する方法【2021年での事業レベルと研究事例】【宇宙の技術は役に立つ】

鉱物資源のリモートセンシングとは

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農業に人工衛星の観測データが使用されてきています。

農業で使用される観測データは、赤外データを使用しているのですが、同様に金属を検出することができます。

 

赤外観測装置は、物体が反射や放出された光を観測しています。

レンズに赤外領域の波長のみ受光できるフィルターでデータを取得します。

 

また、赤外データだけではなく、合成開口レーダーデータや標高データによる地形解析などの複合的な解析手段で鉱物資源の探査を行っています。

 

地表面での調査だけではなく、各地質の特徴・現象を人工衛星のある軌道上から観測できる現象を抽出するような手段で研究・開発が続けられています。

 

広義的に物理探査あるいは空中物理探査と呼ばれる手法で、航空写真や航空の電磁場、重力波を観測します。

 

人工衛星によるリモートセンシングの利点としては、次の通りです。

  1. 航空機以上に広範囲を調査することができる
  2. 繰り返しデータを取得できる
  3. 地表面の光学センサ(赤外センサ含む)のスペクトルデータを取得できる
  4. 合成開口レーダにより地形の凹凸データが取得できる

 

鉱物探査から事業化まで

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鉱物探査、いわゆる探鉱は、次のような流れで事業化まで進みます。

  1. 予備調査
  2. 概査
  3. 精査
  4. 埋蔵量評価
  5. 事業化

日本では南米大陸やアフリカ大陸で研究あるいは開発が行われているようです。

 

解析手法に関しては、他の赤外データとほぼ同じ流れを取ります。

 

鉱物探査で難しい所は、対象が酸化して物性が変わったり、混合物が混ざり込んだ形で鉱物・岩石となる可能性があります。

 

解析フローとしては、大きな流れとしては次の通りです。

  1. 大気補正
  2. 混合物や植生との評価分離
  3. スペクトルによる構成鉱物比の推定
  4. 鉱物含有量のマッピング

 

現行の小型衛星と鉱物探査について

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現在の小型衛星のコンステレーションで使用される光学観測装置は、可視光の観測装置がメインであるため、鉱物を探査するに最適化されていないことが分かっています。

 

地球上では4000を越える天然鉱物があり、それぞれ独自の化学組成となるため、抽出が可能となります。

 

赤外などのスペクトルデータから対象の物質を特定することを同定というのですが、理論式があるわけではないので、データベース化する必要があります。

 

必要な帯域である短波赤外線の周波数帯の観測装置を搭載することで、効率よく鉱物探査が可能となります。

 

短波赤外線の観測装置に関して言えば、大型衛星での知見があるためゼロではないのですが、今後加速させるには小型衛星が必要にはなるでしょう。

 

 

現在、見える形での研究レベルでは、金や銅、亜鉛や鉛、インジウムがあげられています。

 

いくつかの理由で、研究が止まっているということもあるでしょうが、最近の衛星コンスレテーションの構築と赤外センサを搭載した小型衛星での組みわせにより、より多くのデータが広く得られれば、解析も進むことでしょう。

 

近年の衛星データを使用した解析と同様に加速する可能性があります。

 

赤外領域は農業の植生の健康管理にも使用されています。

帯域の問題があり、農業と鉱物資源両方に使用することは簡単ではありません。

 

通常の光学カメラを搭載した人工衛星よりは、解像度や取得するフィルタを工夫などの技術な難易度がありますが、おそらく小型衛星の中では光学衛星、レーダー衛星の次に、通信衛星か赤外センサ搭載衛星が増えていくことでしょう。

 

現在の小型衛星にも赤外センサを搭載していますが、高い解像度を搭載して小型衛星は少ないので、狙いどころかもしれません。

 

ただ、この鉱物探査で希少金属を狙えるかどうかは、、、大事業にもなりそうなので、事業化に至るまで秘密にされそうですけどね。

 

参考文献

チリ共和国 鉱物資源リモートセンシングプロジェクト
事前調査団報告書

https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/11641487_01.pdf

Hyperspectral remote sensing in lithological mapping, mineral exploration, and environmental geology: an updated review

https://www.spiedigitallibrary.org/journals/journal-of-applied-remote-sensing/volume-15/issue-03/031501/Hyperspectral-remote-sensing-in-lithological-mapping-mineral-exploration-and-environmental/10.1117/1.JRS.15.031501.full?SSO=1

チリ・アルゼンチンにおける銅・金の探鉱権益を譲渡~JOGMECの調査成果を民間企業へ~

http://www.jogmec.go.jp/news/release/release0426.html

金属資源探査

https://www.geotechnos.co.jp/service/geology-metal.html

ナミビア共和国亜鉛・鉛・インジウムの共同探鉱契約を締結

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000059.000012624.html

資源開発における衛星地球観測の役割 資源開発における衛星地球観測の役割
とこれからの方向性 とこれからの方向性

https://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/frontier/6kai/siryo1-1-1.pdf

アフリカ金属鉱床探査に関する解析技術開発

http://www.jogmec.go.jp/metal/technology_004.html

資源探査における衛星リモートセンシング技術の進歩

https://spc.jst.go.jp/hottopics/0911inquiry/r0911_sanga.html

 

衛星画像からの地熱変質帯の抽出と熱水パス推定への応用

http://www.jsgi-map.org/geoinforum2016/22.pdf

 Mineral Exploration from Space

https://www.esri.com/about/newsroom/arcwatch/mineral-exploration-in-the-hyperspectral-zone/

Application of hyperspectral remote sensing for supplementary investigation of polymetallic deposits in Huaniushan ore region, northwestern China

https://www.nature.com/articles/s41598-020-79864-0

Mineral Exploration

https://www.isro.gov.in/Mineral_Exploration

The use of Remote Sensing Technology in geological Investigation and mineral Detection in El Azraq-Jordan

https://journals.openedition.org/cybergeo/2856