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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

インドの宇宙開発 衛星ナビゲーションシステムNaVIC

インドのNASAJAXA版ともいえるインド宇宙研究機関(ISRO)があります。

 

インドは1975年にISROが初めて人工衛星を打ち上げて以来、通信衛星地球観測衛星、航法衛星、軍事衛星をはじめ、何十機もの宇宙機を打ち上げています。

世界的にみると、アメリカ、ロシア、中国、日本、欧州に並ぶ宇宙開発国の一つです。

 

1975年、インドの初の人工衛星はロシアのロケットによって打ち上げられました。

衛星自体は、電力系統の故障によって5日後には通信が途絶えてしまいましたが、その後も継続的に宇宙機を開発し続けています。

 

また、1980年代後半からロケットを開発し打ち上げるようになり、1993年の初回打上げは失敗したもののその後は極軌道や対地同期軌道向けに継続した軌道輸送能力を有しています。

 

インドの衛星ナビゲーションシステム

現在、ISROでは2018年からインド洋を含むインド地域に限定した衛星測位システム(あるいは、衛星航法システム)が運用されています。

 

衛星航法システムは、人工衛星から発射される電波信号から地球上での位置の測定や時刻を知るシステムを言います。

 

地域を限定せず、地球全周をまたがる場合はGlobal Navigation Satellite System (GNSS、全地球航法衛星システム) とも言い、アメリカのGPSがとても有名です。

 

インドではNaVIC(Navigation with Indian Constellation)と呼ばれています。

また、2013年に開始されたインド地域航法衛星システム(IRNSS)と2019年に統合されています。

インドは、当初の表向きの目的としてインドの民間航空部門の支援を目的に、2008年以降、航法衛星を打ち上げています。

 

NaVICのシステムは、周波数帯(L5バンド(1176.45 MHz)、Sバンド(2492.028 MHz))を採用することにより、アメリカのGPS(L1バンド)よりも正確な位置を観測できます。

といっても、アメリカのGPSは、1978年から1993年に打ち上げられた測位衛星によって構築されているもう古いシステムではありますが。

 

NaVICには現在8つ程度の人工衛星により構築されており、そのうち3つの静止軌道(GEO)にあり、高度24,000kmの遠地点と250kmの近地点に5つの静止衛星(GSO)があります。

 

NaVICのシステムでは、インドおよび隣接国では10m未満で、インド洋地域では約20m程度の精度を誇ります。

現在では、地上、航空、海上ナビゲーション、災害管理や車両追跡、携帯電話との統合、正確な時刻やマッピング、測地データの取得、旅行者向けの地上ナビゲーションシステム、電力ラインとの同期、リアルタイム車両情報システム、漁師の安全などの一般的なアプリケーションの使用から、国家プロジェクトにも利用されています。

 

NaVICのシステムは、国際的な衛星航法システムとは異なり、インド政府としても推進しているため、2019年には国内のすべての商用車両に対してNaVICベースとなる車両追跡装置とスマホにも搭載すること搭載することが義務付けられました。

 

世界中でドローンが使用されるようになり、インドは2021年にドローンの規制を更新しています。その中には、NaVICのデバイスを搭載することも含んでいます。

 

インドの航法システムの今後

このようなシステムは、日本の準天頂衛星QZSSに非常に近いです。

全世界という意味では、先ほどから上げているアメリカのGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国の北斗があります。

 

現時点では、8つの航法衛星で構成されているNaVICですが、GEOの衛星寿命は9.5年、GSOの衛星寿命は11年であることから、次世代あるいは代替衛星も打ち上げも進んでいます。

 

日本では、一般でも近年に発生したロシアのウクライナへの軍事侵攻により、宇宙大国の一つであるロシアのロケットをはじめ技術が使用できなくなったことで、宇宙業界では大きな衝撃を与えました。

独自でGPSと同等レベルの航法システムを持つことの重要性を認識するようになりました。

 

NaVICの始まりは、印パ戦争と呼ばれるインドとパキスタンの間で行われた戦争(インド・パキスタン戦争)に始まります。

1999年、インドの北部とパキスタン北東部の国境にある山岳部で発生したカルギル紛争で、インドはアメリカの所有する衛星航法システムであるGPSに、この地域の衛星データの提供を求めました。

 

しかし、アメリカはデータの提供を拒否したことにより、インドでも独自での衛星航法システムの重要性を認識させました。

 

その結果、インド独自の衛星航法システムを構築するに至ったのです。

 

参考資料

Everything You Need To Know About NavIC, India’s Version Of GPS

https://www.indiatimes.com/explainers/news/everything-you-need-to-know-about-navic-indias-version-of-gps-587540.html

India’s Road To Space Superpower: NavIC, The Indian GPSIndia’s Road To Space Superpower: NavIC, The Indian GPS

https://bharatshakti.in/indias-road-to-space-superpower-navic-the-indian-gps/

India to launch replacement navigation satellites NVS-0: Jitendra Singh

https://www.business-standard.com/article/technology/india-to-launch-replacement-navigation-satellites-nvs-0-jitendra-singh-122120701186_1.html

Centre States About The Increased Usage Of Indian Regional Navigation Satellite System

https://indiaeducationdiary.in/centre-states-about-the-increased-usage-of-indian-regional-navigation-satellite-system/

India’s satellite sector enters high growth phase

https://www.fiercewireless.com/5g/indias-satellite-sector-enters-high-growth-phase

Satellite Navigation Services

https://www.isro.gov.in/SatelliteNavigationServices.html

それは基礎研究から始まった

https://www.nikkei-science.com/beyond-discovery/gps/04.html

NavICで武装し、インドは自立は主張!

https://www.indiaperspectives.gov.in/ja/armed-with-navicindia-asserts-self-reliance/