宇宙業界では3Dプリントが注目されています。
注目されているといっても、2022年はややニュース記事としては少なくなっている印象です。
宇宙開発には試験や検証で時間が掛かります。
特に初号機の場合は、小型衛星の場合でも2年以上の期間で開発されます。
逆に、2022年にニュース記事が少なかったのはちょうど検証の期間であった可能性もあります。
今回は人工衛星開発における3Dプリントの現状をまとめていきます。
[目次]
すでにフル3Dプリンタ衛星が打ち上げられている
2022年にオーストラリアのFleet Space Technologiesでフル3Dプリンタで製造された小型衛星が打ち上げられました。
打ち上げられた人工衛星はAlphaと呼ばれ、衛星コンステレーションと呼ばれる、人工衛星を複数機軌道上に打上げ、システムを構築することを目的にしています。
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このフル3Dプリンタ衛星の特徴は、最大64個のアンテナを装備し、データの情報転送を向上させる点にあります。
Fleet Space Technologiesでは、主に鉱物資源情報を軌道上から観測して調査するいわゆる資源探査を眼前の目的としています。
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このフル3Dプリンタ人工衛星を製造したFleet Space Technologiesのあるオーストラリアは宇宙の業界的にも新興国に分類されます。
宇宙機のノウハウが少ない中でも人工衛星をフル3Dプリンタで製造したことは驚きです。
もちろんこのフル3Dプリンタ衛星が組織として1号機でというわけではなく、Centauriという3U CubeSatと呼ばれる30㎝級の超小型衛星を打ち上げ、現時点で7つの衛星を打ち上げられています。
先ほど記載した通りFleet Space Technologiesの目標は鉱物探査のようですが、今回の衛星自体は衛星通信によるものらしいです。
いくつかの情報によると3Dプリンタによる製造対象は、アンテナや構造物を製造しています。小型とはいえ宇宙機を3Dプリンタで製造するノウハウを利用することで、別の可能性も継続して探っているようです。
その一環として3D systems社と共同で取り組み宇宙用のアンテナを販売しているようです。
3Dプリンタの利点は人間の作業が少なくほぼ自動で休みなく動いてくれる点(安全性と人間によるポカミス防止)、パーツの組立が不要な点、パラメータさえ分かれば品質も安定して製造できるという点です。
ちなみに、Fleet Space Technologiesでは一つの塊ではなく、フレームやパネルなどを3Dプリンタで製造したのちに組み上げる方式をとっているようです。
Fleet Space Technologiesの衛星が映りこんだ動画のリンクを置いておきます。
2021年以前はフル3Dプリント衛星ではないのためご注意ください。
https://www.youtube.com/watch?v=78i9BRvRW3k
https://www.youtube.com/watch?v=LgmagYYyTDY&t=50s
https://www.youtube.com/watch?v=Q_uS9GMNOgA
人工衛星の3Dプリンタ事情
人工衛星の3Dプリンタでは宇宙用アンテナを製造販売しているところが多いです。
3Dプリンタの性能は、最大サイズのオーダーにもよりますが、数ミリ以下、数十マイクロ以下のレベルにあります。
切削と比較しても良好な品質を得ることも可能です。
装置自体が高額であったり、パラメータ調整が機敏であるといったデメリットを除けば、信頼性が高く安定的に製造可能とも言えます。
切削で最も問題であった、切削熱による歪みといった問題も解消されます。
それでもフル3Dプリンタの人工衛星が少ないのは、3Dプリンタを使いこなせる組織の存在が少なく、切削加工や金属可能の方が比較すると安価であること、強度計算の精度が難しいなどがあげられます。
アンテナのほかに、構造物やセンサーなどにも利用される事例が出てきています。
一方で、宇宙空間(軌道上)で3Dプリンタを使用するという技術も考えられてきています。
3Dプリンタの技術を軌道上に持ち込んで形状を製作する方向に動いています。
とても画期的ですが熱や振動の低減技術がかなり難しそうです。
製造の際の熱や振動の低減技術が進めば、他の観測機器の熱や振動低減につながり相乗効果が望めそうなので、この技術が発展することはとても期待が持てます。
https://www.youtube.com/watch?v=kebh_KRXMzc
https://www.youtube.com/watch?v=9BkH88RilHk
おそらく最初の衛星は、超小型よりも小型衛星や中型衛星の方がよいと個人的に思っています。
理由は、振動や熱による影響を減らすため、姿勢制御を安定させるために質量を重くする(姿勢の回転を減らす)こと、熱変化を減らすためにサイズや容量を大きくする(熱容量を大きくする)ことを思い浮かべます。
逆に小さくして、連続稼働ではなく断続稼働や微小稼働により、振動や熱、電力問題を解決させる手もありますが、そのあたりはシステム設計や搭載想定のロケット性能によるところかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=ir_SLjykvRE
その他の情報
ロケットの部品の製造。
How Do We Finish Machine this Large 3D Printed Rocket Part??? - YouTube
人工衛星ではありませんが、ドローンを3Dプリンタで製造したものです。
インタビューの中では人工衛星についても触れられています。
https://www.youtube.com/watch?v=taYYWQbpkeM
参考サイト
FLEET SPACE’S NEW 3D PRINT FACILITY AIMS FOR SPACE
https://www.aumanufacturing.com.au/fleet-spaces-new-3d-print-facility-aims-for-space
Using part design only manufacturable via 3D printing, Fleet Space lowers the cost and size of communication satellites while boosting their power.
https://all3dp.com/4/fleet-of-3d-printed-satellites-set-to-expand-global-connectivity/
Fleet Space Has Developed Fully 3D Printed Satellites
https://www.3dnatives.com/en/fleet-space-has-developed-fully-3d-printed-satellites-030120214/#!
Researchers 3D print sensors for satellites
https://news.mit.edu/2022/rpa-sensors-satellites-3d-print-0727
3D-Printed Satellite Component Presents a Lesson in Rethinking Design
https://www.altair.de/c2r/ws2016/3d-printed-satellite-component-presents-lesson-rethinking-design
New Manufacturing Facility, Hires and 3D Printing Manufacturing Drives Growth for Fleet Space Technologies
HIGH SPEED CONNECTIVITY FOR EVERYTHING.LOW COST UNLIMITED SERVICES ANYWHERE.
3D printed satellite antennas can be made in space with help of sunlight
https://www.space.com/satellites-antennas-3d-printed-in-space
Reaching the tipping point for 3D printing satellites
https://spacenews.com/reaching-the-tipping-point-for-3d-printing-satellites/
3D Systems partners with Fleet Space for RF patch antennas
https://www.metal-am.com/3d-systems-partners-with-fleet-space-for-rf-patch-antennas/
Fleet Space Technologies
https://spaceflight.com/sp-customers/fleet/
Fleet Space Technologies
https://twitter.com/fleetspace
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