コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する
スマホや携帯、PCの電源のコネクタは、取付け・取り外しがし易い形状をしています。
宇宙では逆にコネクタが外れないようにしなければなりません。
一番の理由はロケットで打ち上げた際の振動で、コネクタが緩みます。
軌道上でも、寒暖差が激しいため、コネクタが収縮して緩むことがあります。
宇宙機で姿勢や軌道を変更する際に、人工衛星内でいくらかの振動が発生して緩む可能性があります。
コネクタだけではなく、コネクタが付いているワイヤのテンションが強ければ、もっと緩い振動で外れてしまいます。
宇宙だけではありません。
日常製品でも同じことが言えます。
PCを使用しているのでしたら、映像用のコネクタが分かりやすいかと思います。
衛星用のコネクタが緩んでいれば、時折、ディスプレイの映像の色が出てこなかったり、映らなかったりします。
宇宙機に限らず、様々な電子機器で発生します。
今回はコネクタの話です。
概要
新しく製造された電子部品の電気的な受入検査を実行しているときに、不規則な大電流が計測されました。
その際に、ある技術者は、何か焦げたような匂いを感じていました。
他のトラブルシューティングのためにコネクタを取り外したときに、コネクタのワイヤが緩んでいることに気づきました。
コンタクタを保護するカバーを取り外した後に、ワイヤの緩みとナット/ボルト接続部が高温特有の変色があり、過熱が確認されました。
ワイヤーは、銅線部分を金属金具と共に固定されており、金属金具が抜けないようにボルトに溶接されていました。
ボルトで溶接されているため、ネット側から取り外すことも、締めることもできず、結局コネクタ本体を交換することになりました。
根本原因
コネクタの製造工程内で、ボルトナットを十分に締結しているか確認されていなかったことが原因でした。
しかも、ナットを回転させることまではできたのですが、緩みなく締めることができなくなっていました。
無理にナットがハマったことによるカジリが発生したのか、ナットあるいはボルト自体が不良品であったのか、ボルトと金属金具を固定した際に溶接材が付着したのか、いくつかの要因が考えられます。
Lessons Learned
Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。
組立時に、すでに接続済みのコネクタを外す際には、細心の注意を払って、無理な負荷を掛けることなく外し、再接続が問題ないようにする必要があります。
推奨事項
宇宙機の最終組み立て時、コネクタのボルトを含むトルクを掛けた部品に対して、ナットやコネクタが接続されている筐体側にも「トルクマーク、あるいは合マーク」を適用すること、検討してください。
宇宙業界では合マークより、トルクマークの方が通じることが多いです。
トルクマークは、ペンの場合もあれば、色付きの接着剤を塗布する場合があります。
次に、「トルクマーク」の目視検査することで、最終的な組立ができているのか確認することができます。
もしボルトが緩んでいたり、なんらかの理由で取り外した場合は、接合部のトルクマークがずれていたり、塗布した接着剤に亀裂があれば、十分な締め付けができていないことに気づくことができます。
接続が緩いんでいる場合は、緩んだ接続部にタグをつけるなどして、作業をするマークをつけ、トルクマークを外します。
処置が終わり、接続部のトルク掛けが完了し、組立て終わったら、再度、「トルクマーク」を付けます。
高電力が流れるコネクタは、電子機器を最初にONし、電力を供給する前に、トルクマークを含む接続の確認することが必須です。
今回は、目視検査を実施していましたが、コネクタカバーに隠れた緩みまでは確認できなかった事象であることも注意が必要です。
終わりに
コネクタ接続による失敗は、すべてを破壊する可能性があります。
電子機器だけではなく、最悪、作業者にダメージを受ける可能性もあります。
最初の試験や慣れてきた最後の試験など、十分に気を付けていきましょう。
参考サイト
NASA Lessons Learned
https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html
NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)
High electrical resistance from loose connectors
https://llis.nasa.gov/lesson/1229