宇宙業界とは
宇宙業界、あるいは宇宙開発ビジネスという括りで考えると、宇宙関連機器の発注者、製造者、運送者、運用者、分析者、利用者に分けられます。
宇宙業界は、宇宙開発初期から延々と関わり続けてきたオールドスペースと、2010年代後半より始まったニュースペースに2つに分けられることが多いです。
[目次]
オールドスペース(OLDSPACE)
オールドスペースは、宇宙業界が国策メインの資金で成立していた時代から関わってきた組織が当たります。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は国立開発法人であるので別として、三菱電機、NECスペース、富士通といった宇宙機に関わるものから、IHI、川崎重工といったロケットに関わる企業、放送衛星を運用しているスカパーJSAT、放送衛星システムが代表として挙げられます。
これらの企業の中で宇宙機やロケットを製造するメーカーは、システムメーカーとして装置をはじめ、素材などを開発する製造メーカーを従えており、業界のすそ野はとても広い業界です。
先に上げた企業が有名ではありますが、ロケットや宇宙など国策に関わっていたことから、極力国内生産が推奨され、国内でほとんどの部品や機器を製造できるような体制を構築しています。
しかもこれらの細かい部品や機器を製造しているのは300人以下の中小企業であることがほとんどです。
入社してみて、実は宇宙関係の機器を製造していたなんていうことはよく聞く話です。
マイナビやエン・ジャパン、リクナビで検索しても載っていない企業で開発していることもよくあります。
これらの製品は一品一様であったり、100台も製造しないような製品がほとんどです。
ちなみに宇宙開発関係の株式は、企業内の宇宙分野の比率がそれほど大きくないため、影響が少ないです。
正直あてにならなさそうなので、株価よりIRの方を見た方が良いでしょう。
ニュースペース(NEWSPACE)
2010年代頃よりキューブサットといった超小型衛星や小型衛星が開発され、頻繁に打ち上げられるようになりました。
これらの衛星を開発し運用している企業は、オールドスペースではなく新興企業がほとんどでしたので、ニュースペースと呼ばれています。
ニュースペースの宇宙業界進出により、宇宙開発業界が注目され、人工衛星の数も多くなり、今まで目が向けられていなかった宇宙から得られる画像データなどが注目されるようになっていきました。
2010年代以前も僅かではありますが人工衛星により取得されたデータを公開しているところがあったのですが、人の流入が少なく、技術的にも大きな勢いがなかったため大学の研究ベースで進められていました。
それが、人工衛星の増加による業界への注目と人の流入に合わせて、今まで人工衛星より取得していたデータを無料で配布する(主に政府)機関が増え、整備されるようになりました。
当時注目の的であったビックデータの解析と人工衛星の画像データ、観測データとの親和性が高く使用方法がや解析方法が一気に拡散されるようになってきました。
そこで画像解析エンジニアが宇宙業界へ広く参入するきっかけとなっています。
アクセルスペースやSynspective、キヤノン電子といった人工衛星開発メーカーのほかに、地上局のシステムを構築するインフォステラ、衛星データ解析を行う天地人、ロケットを製造しているインターステラテクノロジズなどがあげられます。
オールドスペースとニュースペースの違い
就職をするという観点でのオールドスペースとニュースペースとの違いは、企業としての安定性に違いがあります。
オールドスペースの場合は、過去から事業を受け持っているために、比較的安定的に仕事を受注することができ、事業展開も宇宙事業以外も実施していることもあり、企業としてもつぶれにくくなっています。
ただし、企業としての宇宙事業の比率や組織としての重要性が低くなっています。
日本の宇宙企業において、過去、宇宙事業の衰退が一気に進んだ時期がありました。
有名なのはアメリカとの包括的貿易法「スーパー301条」、民主党政権による事業仕分け(2009年~2013年)です。
政府からの資金でほぼ成立していたため、国の方針で左右されることから宇宙業界が消えることは無くとも、企業としては撤退せざる得ない状況に陥ったところも少なくありません。
これらの事情により生き残っている企業は、国策としての事業としての固さ、企業がつぶれたり海外に買収されたとしても国内企業へ引き取りされる可能性が高いです。
オールドスペースにはそんな事業としての固さがあります。
ニュースペースの場合は、宇宙事業中心で立ち上げられた企業で、大学生ベンチャー発が多いですが、他業界からの企業や転職者が多い傾向にあります。
即戦力であったり、高い熱意が求められることが多く、大学からの就職は、大学時代に宇宙関係の研究や自主的に宇宙に関係する活動をしていないと厳しく、代わりに熱意や幅広くやりたいことを出さないとなかなか難しいところがあります。
オールドスペースでも、大企業(従業員1000名以上)でも近い厳しさはありますが、ニュースペースの方は熱意の強さに勝るものはないといえるでしょう。
この高い熱意というのは、言い換えると長期的に続けられるモチベーションとも言えます。
ニュースペースが増えてきたことで人材もさらに流動的になったので、継続していく高いモチベーションが必要になっています。
IT業界ではないベンチャー企業があまり表に出ないだけで、情報も想像も難しいとは思いますが、勢いのある市場・業界というだけでは新卒の大学生にはややハードルが高くなってきている程度には成長してきている業界ではあります。
理系職ではない場合、強烈な熱意がなければオールドスペース側で就職して、気づいたら関わっていたということもゼロではありません。
ただ、オールドスペースだとやることがルーチン化されていることが多く、知識も特殊で専門的になり易く、ニュースペースは広い範囲で関わることができ、スパンがとても速くスピード感があります。
これは人数的な要素もありますが、市場開拓や業務開拓で色々やらなければならないというのが理由なのかもしれません。
業界の市場
宇宙業界は、BtoG(企業と行政/政府)が一番大きいお金が動きます。
次に、BtoB(企業同士)で、最近はBtoC(企業と消費者)も増えてきています。
事業の安定性と市場規模はBtoG>BtoB>BtoCとなります。
まだ政府の資金が大きく、利益が制限されていますが、徐々にビジネスとしての成立しつつある傾向にあり、BtoBやBtoCが増えています。正直、BtoBやBtoCが増えていかないと、政府主導に逆戻りになり、宇宙業界が再び衰退していくことになります。
現在はビジネスの種まきから芽を出しているところで、政府の補助金(アンカーテナンシー)で下支えを行い、将来に向けて進んでいるのが現状です。
何がきっかけで市場が拡大していくか分からない状態でもあります。
BtoCは、衛星データ解析や通信衛星(スターリンクによる通信やBS放送)となります。
BtoBは、コンポーネント開発や衛星データ解析、解析ソフトウェア、衛星施設運用・保守など多岐にわたります。
業界的にはコンポーネント開発やパーツ(部品)開発のすそ野が広く、パーツ開発の場合、宇宙で使用されているとは明言されなかったり、製造メーカーに情報が来ないこともあります。
ちなみに衛星データ解析や解析ソフトウェア、前述したシステムメーカーの場合、英語力が必要になっていきます。
今後の宇宙業界の活性化で別の分野、例えば画像解析や衛星データによるアプリなどが少しずつ増えていくかもしれません。
そして、今まで宇宙業界に手を出していなかった企業もJAXAを通じて宇宙のデータを使用していくよう活動を始めていることから何かしら宇宙に関わることができるような世の中にはなっています。
https://www.jaxa.jp/projects/biz/index_j.html
宇宙業界の魅力
mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com
NASA(JPL)で働いている小野 雅裕さんの話ではビジネスとともに国の機関の役割なども話してもらっています。
ニュースペースでの就職事情
宇宙就活サイト
新卒向け宇宙就活サイトは、宇宙就活が大きいですが、マイナビやエン・ジャパン、リクナビでも取り扱っています。
宇宙就活
https://spacejobhunting.wordpress.com/
宇宙関連事業
とても分かりにくいサイトですが、JAXAのサイトでも宇宙関連事業として紹介されています。
https://aerospacebiz.jaxa.jp/partner/#partners
https://aerospacebiz.jaxa.jp/venture/
マイナビ
就活メインのサイトでは、マイナビの宇宙業界地図がまとまって分かりやすいですね。
他の宇宙業界地図はロゴマークでまとめられていて少しわかりにくいですので笑
ちなみにサイト内の検索で調べると人材派遣会社も多く含まれてしまうため注意が必要です。
JAXA新卒採用サイト
もちろJAXAの新卒採用を直接確認した方が最新情報を入手するには便利です。
https://stage.tksc.jaxa.jp/recruit/
あまり知られていませんが、リモート・センシング技術センター(RESTEC:レスレック)も宇宙に関係しています。
https://www.restec.or.jp/recruit/
転職サイトから実情を調べる
新卒の情報サイトの検索条件では絞り切れないばあいは、転職サイトから現在必要な人材や求人情報などの目星をつけて、サイトの採用ページから直接アクセスするのも一つのやり方です。
https://doda.jp/keyword/%E5%AE%87%E5%AE%99%E9%96%A2%E9%80%A3%E3%80%80%E6%AD%A3%E7%A4%BE%E5%93%A1/
文系で宇宙関係の就職が可能なのか
可能です。
JAXAの仕事でいうのでしたら予算管理(会計事務)や法務関係、広報、教育で関わることができます。
英語力を生かして、国際組織間の調整を行う仕事を行うことも定常業務としてあります。
現在はニュースペースに代表されるように、新しいビジネスや法律が作れていることから、ルールの整備などに関わることになることでしょう。
JAXA外となると、営業や事務、技術サポート業務がメインになります。
企業としては、宇宙関係を取り扱う商社や保険業が文系職としての需要になります。
商社は主に海外メーカーとやり取りすることが多いため、英語力は必須となります。
むしろ、英語力の高さから海外の宇宙関係のメーカーとの担当になる可能性もあります。
入ってからは技術英語や各種機械の性能を読み取れる以外に、技術職より先に世界的な製品需要など宇宙業界を広く知ることができます。
保険業はまだ未知数ですが、大手の保険業者が手を上げており、国内よりも海外の方が件数が多くなりそうなので、こちらでも英語力が必要になってきます。
保険業の場合は、入ってからで問題ないとは思いますが、ロケットや人工衛星の打ち上げや運用での流れを知り、どこで保険が必要となるのか、人工衛星の開発・製造費や市場規模などを知っていくことができるでしょう。
https://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/5571.html
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