ハニカム構造の7つの利点と7つの欠点、6つのコスト要因
ハニカム構造の特徴をまとめてみました
以前、ハニカム構造の歴史と実例をまとめました。
mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com
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まとめたはいいものの、何か特徴があるのか、なぜ使用されているのが具体化していなかったところをまとめました。
ハニカム構造の利点
軽量(低密度)
ハニカムパネルのコア層は、六角形あるいは三角形(トラス構造)が規則的に配置されている。コア部の断面積が小さくなり密度が低くなります。
同じ厚さの金属や樹脂よりもはるかに密度が小さくなり、同じ体積でも軽量となります。
高強度で優れた剛性
ハニカムパネルの構造は、六角形あるいは三角形(トラス構造)が規則的に配置されているコア部を板材のスキンで挟む構造をしており、スキンの面内に優れた合成を持つことになります。
せん断応力に耐え、スキンにより構造が崩れないようにサポートします。コア自体が緻密な補強材の役割を役割を果たし、断面二次モーメントが高くなり、全体的な剛性と安定性も向上します。
優れた耐衝撃性と振動減衰
ハニカムパネルが外部から衝撃を受けると、衝撃力をハニカムコアの塑性変形(外力による変形)エネルギーに変換し、六角あるいは三角方向に分散され、衝撃エネルギーを効果的に吸収します。
衝撃でへこみが発生しても、コア自体に亀裂が発生することなく、スキンやコア材にもよりますが、アルミニウム材の場合は靭性(材料の破壊に対する抵抗、破壊しにくさ)が良く、耐衝撃性が強いことがわかります。
耐衝撃性がつよいため、振動を減衰させる耐振性、防振性も高く素材と言えます。
遮音と断熱
ハニカムパネル自体の製造に使用される材料単体では、断熱性と遮音性がなく、アルミニウム材の場合は熱と音の優れた伝導体となります。
しかし、ハニカム構造により、優れた断熱性能と遮音性能を備えることができます。
ハニカム構造は、コア材とスキンを接着剤で挟むことになりますが、内部がほぼ密封状態となります。空気の対流が発生しない(少ない)ため、熱の伝達が難しくなり、音波も空気が振動することが少なくなります。
宇宙に使用されるハニカムパネルの場合は、打上げ時や軌道上での温度による空気の膨張や収縮が発生し、空気による材料の劣化が発生することから、コア部分に小さい穴が開いていることが多いです。
それでも、空間が物理的に空いていること、スキンという障壁があること、伝達する対象(コア材)が薄いことから、通常の材料よりは遮音性と断熱性が高くなります。
不燃性(難燃性)および耐湿性
ハニカム構造はコア材にスキンが挟まれているのですが、使用される材料がアルミニウム材などの不燃材であれば難燃性が向上します。
接着剤が燃焼する場合もありますが、ハニカムパネルを製造する際に、コア材とスキンを固着する接着剤は、高温で接着するタイプが多いことから、燃えることは少ない。
加熱により内部から空気が膨張する場合もあるが、ハニカム構造自体の剛性が高いため、構造が崩れるほどの変更が起こることはない。
そもそも接着剤で挟み込む時点で、加圧、加熱し、空気が膨張することから、微細な空気穴がコア材に入っていることが多い。
さらに、アルミニウムの場合であれば、通常の金属よりも化学的安定性、耐食性、耐湿性も、素材自体の高い特性を備えている。
良好な成形性と自在な厚さ
特定の要求に応じて、平板、シングルカーブパネル、ダブルカーブパネルの形状にすることもできます。
コア材やスキンは、成形する前だと容易に変形させることができるため、飛行機などの曲線を成形することが可能となっています。しかも、成形後は変形も少なく厚みもほぼ自在にできます。
美しい外観とお手入れが容易
ハニカムパネルのスキンを変えることにより、さまざまな色やパターン、触感や質感を再現することができます。
インテリアとしても使用される材料となっています。
ハニカム構造の欠点
成形性が悪い
一部段ボールのように、紙で構成されている場合は多少加工性が良いが、金属で構成されたハニカムパネルは、パネルを成形した時に形状がほぼ決まってしまう。
金属のように、一度曲線にしたものを成形して直線に戻すことが難しい。
破損耐性が低い
破損後の修復が難しい。凹みが発生すると補修材などで埋めるても、強度や重さ周囲と違い、バランスが崩れてしまう。
部分的にくり抜き、コア材を埋め、段差になりやすいがスキン材で補修することとなる。
側面側の剛性が弱い
スキンの貼られている面内方向と比べて、スキンの側面の面外方向は、薄いコア材であるため強度が低い。
ハニカムパネルの製品によっては、スキンが貼られる場合もあるが、面内方向よりも強度が弱く、バルク材の方が断然強い強度を示す。
高温耐性が低い
ハニカム構造を構成するためには、コア材とスキンだけでは不足しており、接着剤が必要不可欠である。
使用温度範囲は接着剤の硬化後の温度範囲に制限される。
例えば、近年の技術で向上しているかもしれないが、高温の場合は600℃以上、低温の場合は、-40℃以下を越えると接着剤の粘着性が劣化し、剝離の可能性がある。
ボルト締結性が悪い
金属の場合、具材自体にタップやヘリサートを挿入することで簡単に2つ以上の部品をボルト(ネジ)固定することができる。
ハニカム構造の場合、スキンが薄く、コア材は空洞であるために、締結加工を施すことができない。
スキンの間にコア材の代わりに、金属具材を挟み成形と同時に加圧接合し、後処理で挿入するか、前処理でタップやヘリサートが入った金属具材を加圧接合すか、コア材を高密度化する必要がある。
放電加工・溶接加工が困難
複合材であり、放電加工時に各々の特性をもとに加工条件が変わるため、複雑な加工ができる放電加工が困難である。
フライス盤(ミリング・マシン)による切削加工で加工することになる。
溶接は、溶着する具材との相性が品質に関わってくる。
異なる具材の組み合わせであることが多いハニカムパネルと相性が悪い。挟み込むスキンの両面から溶接したり、スキンを厚くするなどの対策が必要となる。
製造コストが高い
金属板と比べて、多くの人が介在することもあり、成形コストが高くなる。後述参照。
ハニカムパネルのコスト要因
コア材の厚さ
ハニカムパネルの仕様は、コア材の種類(アルミニウム材、ノーメックス紙、ケプラー繊維、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ステンレス鋼)と厚さによって決まります。
ハニカムパネルのスキンの仕様が異なれば、密度や機械的特性も異なるため、コストも異なります。
コア材のサイズ
ハニカムコアの仕様は、コアのサイズで仕様が決まります。アルミニウム材の場合、サイズは1/4inch、3/8inch、1/2inch、3/4inchなどインチサイズで表現されます。
サイズにより密度が変わり、使用する材料費も異なります。
スキンの材質
ハニカムパネルのコストは、スキン材の材質、幅、厚さ、製造元、処理によって異なります。
スキン材の材質として、アルミニウム材以外にCFRP(カーボン繊維材、炭素繊維材、ガラス繊維材、グラスファイバー)がよく知られています。
接着剤
コア材とスキンを挟み込み、接着剤で固着します。
接着剤には、均一に塗布する必要があるため、シート型の接着剤を使用することもあります。
ハニカムパネルの使用用途によりますが、使用環境により接着剤が劣化したり、粘着力が低下することのない温度範囲に対応するためには、接着剤(エポキシ樹脂、フェノール樹脂)の選択が必要となります。
生産・加工管理費
製造メーカーの人件費、加工費、設備管理費用がコストに影響します。
加工費はハニカムパネルの切削や、成形にかかる費用となります。
成形時に加熱することから、金属の歪みや曲げがあるために平坦に成形するにしても、曲げて成形するにしても工夫が必要であり、加工費が増える場合がある。
表面処理
表面処理方法は、表面処理を施したスキン材を使用したり、スプレーコーティング、通常の金属表面処理(アルマイト:陽極酸化被膜、アロジン:化成皮膜処理)を行う。
以上のハニカムパネルの特性とコスト要因
ハニカム構造の用途(使われ方)
船舶関係
腐食性の高い海洋環境でも使用できます
- 水上ボート
- クルーズ船
- 船内の内壁パネル、天井、ドアパネル
- ヨット
- オフシェアボート
- 沿岸警備隊の救命ボート
航空業界
重量を減らし、飛行距離とペイロード(搭載重量)を増やす効果的な方法です。
高高度を飛行することから極端な温度変動に対する変形や熱に耐えることができます。
運輸業界
リサイクル可能で、軽量で、持続可能で実装が容易な材料を求められています。
- 客車構造の内部のクラッディング(被覆材)や屋根
- 500系新幹線
- N700シリーズ新幹線パンタグラフカバー
- 列車のバルクヘッドと床
- 大型トラックのキャビンや保管システム内
- トレーラー
- RV車
- 車の外板とドア
建築業界
高い剛性と均一な表面、遮音性、断熱性が優れている建築材料。
- クリーンルームの天井や壁
- インテリアデザインの内壁
- 建築屋根や天井
- 耐熱パネル
- 防音パネル
- 石膏ボード
- 天然大理石、御影石(スキン材)
- カーテンウォール
- スクリーンの仕切り
- ルーバー(鎧戸(よろいど)、ガラリ戸)
- 高層ビルのルーバーや屋根の天井、スクリーンの仕切り、防音パネル
- 耐震具材(振動減衰)
- 外壁装飾、軒裏装飾用ハニカムパネル
- キッチン
その他
- レージングシェル
- LED技術
- 望遠鏡のミラー構造
- 衝撃吸収装置
- 風力タービンのローターブレード
規格類
日本にはハニカム構造あるいはハニカムパネルに関するJIS規格がありませんが、海外にはあるようですので、名称だけ紹介します。
- NPFC-MIL-STD-401 サンドイッチ構造とコア材料; 一般的な試験方法
- ASTME1555 サンドイッチパネル修理用の構造用ペースト接着剤の標準仕様
- SAEAMS-C-8073 コア材料、プラスチックハニカム、航空機の構造および電子用途向けの合わせガラスファブリックベース
- SAEARP5606 複合ハニカムNDI参照標準
- ASTME2580 航空宇宙用途で使用されるフラットパネル複合材料とサンドイッチコア材料の超音波試験の標準的な方法
- ASTME1091 シェルターパネルで使用するための非金属ハニカムコアの標準仕様
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参考文献
Advantages and Applications of Aluminum Honeycomb Composite Material
https://www.honeycombchina.com/info/advantages-and-applications-of-aluminum-honeyc-43897787.html
10 Things You Need to Know about Aluminum Honeycomb Panel
https://www.arrow-dragon.com/10-things-you-need-to-know-about-aluminum-honeycomb-panel/
Application Areas of Aluminum Honeycomb Panels
https://www.honeycombchina.com/info/application-areas-of-aluminum-honeycomb-panels-44081491.html
The Features of Aluminum Honeycomb Panel and Its Price Determining Factors
https://www.linkedin.com/pulse/features-aluminum-honeycomb-panel-its-price-determining-david-he
Aluminium Honeycomb Panels: Uses and Benefits
天然石+ハニカムパネル
http://honeycombsolution.jp/2-2-nature-stone-honeycomb-panel.html
当社は天然の大理石や御影石を厚さ4mm*にしました。
Honeycombs and Honeycomb Materials Information
Brazed honeycomb panels (BP)
https://uacj-automobile.com/honeycomb01.html
Intro to Honeycomb Panels and Uses
https://monarchmetal.com/blog/intro-to-honeycomb-panels-and-uses/
Understanding Honeycomb Panels
https://www.plascore.com/honeycomb/honeycomb-panels/
Advantages of Aluminium Honeycomb Panels Compared To Traditional Building Materials
Aluminium honeycomb for Architecture, Construction & Clean Rooms
https://corex-honeycomb.com/applications/architecture-construction-clean-rooms/
Construction
https://honylite.com/industries/construction/
Aluminium Honeycomb
https://corex-honeycomb.com/products-and-services/aluminium-honeycomb/
What are the advantages and disadvantages of honeycomb paperboard?
https://www.zydhoneycomb.com/what-are-the-advantages-and-disadvantages-of-honeycomb-paperboard.html