民間ロケット打上げ企業Rocket Labの施設を紹介して規模を知る
Rocket Labを紐解く
Roket Lab(ロケットラボ)は、2021年8月時点で、アメリカのカルフォルニア州ロサンゼルスに本社を置き、ニュージーランドにロケット射場設備を持つロケット打上げの企業です。アメリカのバージニア州にも第2の射場設備も有しています。
2006年に創業し、SPAC(特別買収目的会社)により2021年2QにNASDAQに上場予定でです。
業績的には赤字ですが、計画では2024年までにキャッシュフローは黒字となる予定のようです。
Vector Capital、BlackRock、Neuberger Bermanをなどの合計39の投資会社の支援を受けています。
NASAをはじめ、アメリカ国家偵察局(NRO)、国防高等研究計画局(DARPA)などの政府機関と商業組織、民間の衛星企業・組織を顧客基盤としています。
今回はRocket Labの施設を説明した動画が2021年8月に公開されたので、合わせてRocket Labを調べてみました。
[目次]
ロケットについて
Rocket Labは、低軌道の宇宙機などの搭載ペイロード300kgの能力を持つ全長18mのElectron(エレクトロン)と、火星や金星への打ち上げ能力を持つ全長40mのNeutron(ニュートロン)の2つの機種を持っています。
エレクトンは、2017年から2021年8月現在までで20機ほど打上げられて、17機以上成功しています。
そして、SpaceXの有するFalcon9の10分の1の価格で100機近い宇宙機を地球の軌道上に投入してきました。
炭素繊維構造の筐体をもち、再利用可能構造をしています。
再利用に対して、ロケットは一度軌道上に上がるため、地球への大気圏への再突入が発生します。
突入時は、2400度以上の高温に達し、2350m/秒の落下速度に達する構造を保有必要があります。
落下の際に姿勢制御を行い、最終的に海に着水するのですが、衝撃速度を減速させるためパラシュートを展開させます。
打上げから48時間以内に回収され検査まで済ますことができます。
2021年3月に、エレクトロンの25倍以上の8,000kgの搭載ペイロードがあるニュートロンを2024年に打ち上げを予定しています。
衛星について
Rocket labは、Photonという衛星バスも開発しています。
衛星バスとは、人工衛星あるいは探査機のプラットフォーム、システム上の共通部分です。衛星バスを開発することで、各パーツの共通化をはかり、量産速度を上げることが可能となります。
衛星バス以外にも、自社製の人工衛星First Lightという人工衛星を2020年8月に打上げています。
地上システムの開発
ニュージーランド宇宙局とアメリカの非政府組織であるEnvironmental Defense Fund (EDF)の開発しているMethaneSATのために、人工衛星用のミッション運用センターMission Operations Control Center (MOCC)を開発しています。
ちなみに人工衛星の打上げ自体はSpaceXのFalcon 9で行われることが決まっています。
Rocket Labの現状
Rocket Labは、アメリカの民間企業として、定期的に軌道上へアクセスすることができる2社のうち1社です。
Rocket labは、SpaceXなどと違い、小型衛星を軌道上に輸送することに注力していたのですが、2021年から金星や火星向けのロケットであるニュートロンを開発したり、Photonといった金星や火星、月向けミッション対応の衛星バスも開発しています。
小型衛星向けの市場から、別の市場に向けて動き出している方向に戦略を変えていますね。
Rocket Labの施設公開
Rocket Labでは、1つの敷地内に複数の施設・設備を入れています。
1つの敷地内に入れた理由には2つあるそうです。
- 垂直統合の製造施設として、輸送や人員配置、基礎データや検査の共有などを行いコスト削減させること。
- 技術を発展させるために、設計し、生産し、試験し、反映するプロセスを早する。繰り返すことで、生産性や性能を向上させること。
この開発体制の中で、炭素繊維部材を利用した構造物の生産性を上げることが重要だと考え、現在では、製造の自動化まで確立しています。
ロケットの構造物は24時間以内に完成する速度まで来ています。
日本で言えば、3Dプリンタや自動化の仕組みから、MISUMIのmeviyサービスを思い起こせるものです。
現在では、3Dプリントの技術は8年以上の蓄積があり、24時間に1つ台分のエンジンのパーツ部品を製造できるといいます。(組み立てまでなのかは読み取れませんでした。)
さらに、アメリカのカルフォルニア州ロングビーチの施設では、世界中の工場から生産された部品を集めて、ロケットを1つ完成させるのにたった20日間で組み上げられるところまで来ています。
宇宙システム部門は2019年から2020年にかけて2倍の生産速度になり、来年にはさらに2倍となる予定という早さです。
動画では、炭素繊維材で製造されたロケットの筒が5台以上ならぶ最終組み立てラインから始まります。
一つの空間でこれだけ並ぶのは圧巻ですね。
このロングビーチの施設ではロケットに関して次の施設が存在しています。
ロケットの最終組み立てラインは動画では5台以上のロケットの構造物が並べられていました。
また、動画の中では割れやすい太陽電池セルをパネルに貼り付けたり、ケーブルを溶接している様子がうつっています。この様子はどこでもあまり変わらないのですね、懐かしい笑
さて、エンジンは先に述べた通り、24時間でパーツを3Dプリンタで加工することができます。
このエンジンは、ロングビーチ施設で製造・組立、ニュージランドの施設で最終試験を行い打ち上げのために統合されます。
試験後も、実機を利用してフライトシミュレーションを行い検査しています。
これらのデータは世界中にある生産工場と共有され、設計や分析にフィードバックされます。
生産と設計を分離せず、1つの施設内で検討していくことが重要であると考えているようです。
このロングビーチの施設には人工衛星の開発設備もあり、次のコンポーネントが製造されています。
- コントロール機器
- バッテリー
- 通信機
- リアクションホイール
- スタートラッカー
- 姿勢制御システム
ここでは、軌道上にある人工衛星の運用・管制センターも存在しており、人工衛星に対しても随時フォードバックを行っているようです。
ニュージランドのロケット射場設備には2つの射場が並べられています。
発射場には、打上げ前の燃料補給と搭載ペイロードに対してのクリーンルームがあります。
発射場から2km離れたところにはコントロール施設があります。
この施設は政府機関や商業組織、どちらのにも対応することを考えられています。
4つのメインコントロールセンター、2つのミッションコントロールセンター、2つの通信コントロールセンターがあり、相互に接続されいずれも同等の機能を保持しており、どこからでも操作可能なシステムを構築しています。
さらには、ロケットだけではなく、打ち上がった衛星もサポートしています。
Rocketは、最近では2021年5月に打上げたロケットが失敗したことが大きなニュースではないでしょうか。
その後、2021年7月に打上げたロケットは成功しており、今後も継続して打ち上がっていくでしょう。
動画の中でもすでに10基近いロケットを製造し打上げる計画のようです。
さて、どこまで生産が早くなるのか楽しみです。
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参考資料
Rocket Lab | Frequent and reliable access launch is now a reality | Rocket Lab
ロケット打ち上げのRocket LabがSPAC合併で上場へ、企業価値4370億円に
NASA火星探査ミッション用にRocket Labが双子の軌道上宇宙機の開発契約を獲得
How to bring a rocket back from space
https://www.rocketlabusa.com/about-us/updates/how-to-bring-a-rocket-back-from-space/
再利用化を進めるRocket Labは次のElectron打ち上げでも第1段回収を実施
Rocket Lab identifies cause of Electron failure
https://spacenews.com/rocket-lab-identifies-cause-of-electron-failure/