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アンテナやコンテナなどの工作物の風荷重、風圧、風速による設計検討のヒント【構造設計者向け】

目次

工作物の風荷重は規制がない?

風荷重(かぜかじゅう)とは、台風や竜巻、強風にて物体に受ける力のことを指します。

建築物では風荷重の設計が求められますが、工作物には規制(建築基準法による構造計算)がなく、どのように計算すればよいのかわかりません。

 

全ては設計者に委ねられるのですが、本記事では工作物での風荷重、風圧、風速による設計を求められた時のヒントとなるようにまとめておきます。

 

法律は様々な事情で改正されますので、最新の情報を確認しつつ判断してください。

工作物とは

法律的な工作物とは、土地に設置する人工物のことを指します。

 

従って、居住空間のない宇宙通信用のアンテナや広告の看板、随意かつ任意に移動できないコンテナなどが該当します。

 

正確には、法律の改正などがあるため、設置する自治体などに確認が必要です、特にコンテナは用途で判断が分かれる(建築物※寄り)ところですので十分に確認しましょう。建築基準法 第2条第1号

風荷重の設計検討

風荷重の計算は、建築基準法施行令第87条第2項関連である平成12年建設省告示第1454号に係数値がまとめられています。

 

求める要素は、風速と風を受ける対象(工作物や建築物など)の形状、設置場所の地質状況や災害時などの拠点となるかといった要素を考慮した上で計算をはじめます。

そして風を受ける面に応じて、算出していく必要があります。

 

目的に合わせて設計するのですが、汎用を目指すのであれば各要素を最大値に設定した上で設計することになります。

 

本記事では風荷重を検討材料とします。耐震計算は別の情報から参照してください。

設計風圧(N):W

大本となる計算式です。

W=Cr*q*A

A:面積

ピーク風力係数:Cr

Cr=Cpe-Cpi

CrはCfとも称するので注意

ピーク内圧係数:Cpi

閉鎖型の建築物:0≤Cpe:Cpi=-0.5

Cpeがプラス:建物の外側から風による圧力が加わる場合

常時扉を開放していないコンテナはこちらとなり、倉庫や開放することが多い駐車スペースなどは開放型で計算することとなります。

閉鎖型の建築物:Cpe<0:Cpi=0

 Cpeがマイナス:建物の内側から圧力が加わる場合

開放型の建築物:風上開放:Cpi=1.5

 風の吹いている方向が開放されており、そのまま風が吹き抜けることなく建築物が受ける場合

開放型の建築物:風下開放:Cpi=-1.2

 風の吹いている方向が閉じており、別の面が開放されている場合

ピーク外圧係数:Cpe

Cpeは「-1.0~0.8」の範囲で、定められた数値を選択します。

それなりの場合分けがあるため、詳細は平成12年建設省告示第1454号を確認してください。

設計用速度圧(N/m2):q

q=0.6*(V0)^(2)*Er^(2)*Gf*I

設計用基準風速:V0

平成12年建設省告示第1454号より

全国単位でV0=30m/sec~46m/secで決められます。

迷った場合は、「46m/sec」としましょう。

 

ちなみに観測史上最大瞬間風速「91.0m/sec」で、富士山頂で、第2位は沖縄県宮古島で「85.3m/sec」です。

 

また、風速は高度が高ければ高いほど大きくなる傾向にあり、高層ビルの上層階だと風が強く、近年では高層部に工作物としてアンテナやキュービクル、あまりないかもしれないがコンテナを設置したりしており、十分に注意が必要になります。

平均風速の高さ方向の分布を示す係数:Er

平成12年建設省告示第1454号

Erは、地表面の区分(地表面粗度区分:ちひょうめんそどくぶん)により、沿岸地域(Ⅰ)、田園地域(Ⅱ)、一般地域(Ⅲ)、都市部(Ⅳ)の4段階に分けられ、詳細は地方自治体によって決められています。

「○○県△△市 地表面粗度区分」と検索してください。

地表面粗度区分Ⅰ Er

Er=1.7*(H/250)^(0.10)

地表面粗度区分Ⅱ Er

Er=1.7*(H/350)^(0.15)

地表面粗度区分Ⅲ Er

Er=1.7*(H/450)^(0.20)

地表面粗度区分Ⅳ Er

Er=1.7*(H/550)^(0.27)

ガスト影響係数:Gf

工作物の高さHに対して

H=10m以下

地表面粗度区分Ⅰ Gr=2.0

地表面粗度区分Ⅱ Gr=2.2

地表面粗度区分Ⅲ Gr=2.5

地表面粗度区分Ⅳ Gr=3.1

H=10m超え40m未満は、H=10m以下とH40m以上を直線で結んだ場合の数値

H=40m以上

地表面粗度区分Ⅰ Gr=1.8

地表面粗度区分Ⅱ Gr=2.0

地表面粗度区分Ⅲ Gr=2.1

地表面粗度区分Ⅳ Gr=2.3

ガスト影響係数は、GrあるいはGpeとしており、ピーク風力係数(Cr)と設計用速度圧(q)の算出に必要とされる。

設計用速度圧は上記の通りであるが、ピーク風力係数に対しては、ピーク外圧係数Cpeを算出する際に、ガスト影響係数を掛け合わせることもある。

どちらか考慮していればよく、本記事では設計用速度圧に考慮して算出している。

用途係数、重要度係数:I

防災業務の中心や防災拠点となる建築物等:I=1.5

震災時に機能を保持する必要のある建築物等:I=1.25

それ以外の建築物:I=1.0

詳細は地方自治体によって決められています。

「○○県△△市 用途係数 重要度係数 用途指標」と検索してください。

 

工作物の設置荷重

建築物に限らず設備設計の場合、耐震設計としてアンカーボルトの選定などを行います。

 

まずは、単純に静置した状態で転倒するかの検討をしてみます。

 

工作物の重力方向への荷重(N)が掛かり、転倒モーメントを考慮するため、風を受ける方向と垂直側の重心から回転中心までの距離(x)を考慮して、機器の荷重W0を算出します。

xは風を受ける方向に対して高さと奥行き方向がありますが、回転しやすいことを考慮して短い方を選択しましょう。

機器の荷重:W0

W0=W*9.8*x

設計風圧Wと機器の荷重W0の比較と検討

設計風圧W<機器の荷重W0 は、機器の方が重くそのままでも「風」に対しては問題ありません。

耐震の構造計算で必要な耐震設計をしてください。

設計風圧W≧機器の荷重W0 は、「風」に対して転倒する可能性があります。

 

転倒する可能性がある場合は、アンカーボルトなどで土台(必要に応じてコンクリート上)と固定してください。

 

転倒角に関して知りたい方はこちら

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

最後に

風荷重を考慮した構造設計は、設置する土地の情報を含めて、最適な設計あるいはカスタム設計を行う場合は、設置する情報が必ず地方自治体で設定されているため十分に調査して設計を開始することをお勧めします。

 

標準化を考慮する場合は、上記の最悪ケースを考慮した数式を使用した方が良いでしょう。

ただし、冒頭で記載した通り法律は様々な事情で改正されますので、最新の情報を確認しつつ判断してください。

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参考情報

建築研究所〔平成12年5月31日建設省告示第1454号〕Eの数値を算出する方法並びにV0及び風力係数の数値を定める件

https://www.kenken.go.jp/japanese/research/lecture/h16/slide/06-1/ref/No6.htm

屋外に設置した建築設備の耐風設計について 基本的考え方 

https://www.jabmee.or.jp/wp-content/uploads/2022/03/2022.3_taihuusekkei.pdf

建築基準法の風荷重 

https://www.built-material.co.jp/wp-content/themes/built-material/pdf/2021/kazekajyuu_210324.pdf

風荷重の規定

https://www.kyowa-kb.co.jp/documents/doc04/

 

構造 計算 風 荷重

http://www.kouzoukeisann.com/entry3.html

第7章 荷重及び外力と安全性

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/reference/pdf/sekkei/sekkei_7.pdf

建築基準法の風荷重関係規定について

http://www.kinzoku-yane.or.jp/technical/pdf/261sp.pdf

サッシ風圧力算出について

https://www.ykkap.co.jp/business/building/sekkei/huatu/henkou.php

風力係数とは(閉鎖型・開放型)風力係数とは(閉鎖型・開放型)

https://books-memorandum.com/fuuryoku_keisu/

板ガラスの耐風圧強度

http://www.cg-glass.jp/pro/pdf/all/technique_P40-49.pdf

瓦屋根標準設計・施工 ガイドライン

https://www.marusugi.co.jp/manu/guideline.pdf

耐風圧性

http://www.twinkledesign.co.jp/images/todoyou/H05P650-653.pdf