往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

衛星搭載型2波長赤外線センサの紹介

2波長赤外線センサとは?

赤外線センサといっていますが、いわゆる赤外線カメラのことです。

赤外線は、人間の目に合わせた可視領域外にある光の波長域のことで、可視領域では識別しにくい物体や現象を観測するために用います。

2波長という、それぞれ別の光の波長域を観測することで、通常では見逃してしまったり、疑似的に模造した物体を識別し、本物を当てることができます。

 

赤外線を用いる技術は多くあり、特に熱を観測できることから熱源探知機としても利用されています。

 

兵器の視点でいうと、赤外線はミサイルの推進剤が燃焼する熱やCO2などの炭素ガスを検知することができます。通常の可視光では単なる蒸気のような白い雲のようで見分けることができません。

紫外線でも観測することができますが、観測できる波長の領域が少ないため、赤外の方が視野的に広い範囲で、確率も高く検出することが可能です。

 

もちろんミサイルだけではなく、爆発や火災、飛行機の落下など、いずれも危険な状態を宇宙という何からも邪魔されないところから観測することができる利点があります。

この利点は、現在のミサイル防衛に利用されている赤外線センサ(レーダ)の欠点を補完しています。

 

地上に配置されたレーダーは地平線により、長距離からの検知に遅れてしまいます。

長距離のミサイル、例えば弾道ミサイルを利用されたとして、どうでしょうか?

弾道ミサイルは、ミサイルが発射されるときに推進剤が燃焼される時間はわずか数分(十数分?)で打ち上り、大気圏を突入し、自由落下します。

自由落下するので、特徴的な熱の観測が難しく、目視できた時には対応が難しい距離にある可能性があります。

 

そこで人工衛星に装備された赤外線センサが利用することで広範囲で観測することができ、対応に時間を作ることができます。

ただし、現状人工衛星の赤外線センサは、細かい部分を観測するには、まだまだ精度が低いという欠点があります。

そこで、2波長赤外線により、多角的(多くの波長帯域)に観測することで精度を向上させる目的があるものと思います。

 

ミサイルなどの高速で飛行する物体の検知は、赤外線だけではなく、電波を放出して反射してきた電波観測するレーダー(Radio Detection and Ranging) も存在することから、これらの技術を組み合わせて、ミサイルの検知などの精度を高めています。

 

例えば、先ほど挙げた弾道ミサイルの場合、打上げ時点では人工衛星などによる赤外線センサで観測できるのですが、高高度から落下する期間は、ミサイルが比較的低温になることから観測が難しく、落下の際の大気の抵抗により再度加熱するのですが、赤外線で追うよりも、レーダーによる観測の方が精度が高く対応できます。

初動の際に利用されることが多くなります。

 

弾道ミサイルと変わり、巡航ミサイルというのも存在しています。

巡航ミサイルは、エンジンを搭載し大気の空気から酸素を利用して飛行し、機動力が高く、低高度で飛行します。

ただし、巡航ミサイルは大気の酸素を使用し、燃焼しちえることと、大気抵抗により熱を放出していることから、赤外線センサで比較的に検知することができます。

 

このように通常の技術と使い分けを行っています。

 

ちなみに、アメリカや中国、ロシアは、軍用の赤外線センサを搭載した人工衛星を所有しているかは公開されていません。

 

[目次]

 

先進レーダ衛星の搭載される衛星搭載型2波長赤外線センサ

先進レーダ衛星(ALOS-4、だいち4号)には人工衛星名にもなっているレーダのミッション以外にも、ミッションが存在しています。

 

メインのレーダのミッションはLバンド合成開口レーダ(PAKSAR-3)、船舶自動識別信号受信器(SPAISE3)の2つはJAXAやリモート・センシング技術センターのWEBページをはじめ紹介されており、そこには記載されていない衛星搭載型2波長赤外線センサも搭載されています。

 

衛星搭載型2波長赤外線センサの有用性については述べた通りですが、そのほかの面も調べていきたいと思います。

 

名称がない人工衛星のミッション

また、ALOS-4ではミッションの名称としてPAKSAR-3やSPAOSE3があるのですが、2波長赤外線センサには名称がありません。

人工衛星は複数のミッションが搭載されていることが多く、データ内容も違うことからミッションの名称で分析しているデータを識別していたこともかつてはありました。

 

ちなみに、人工衛星に開発時の名称(ALOS-4)とは別に愛称(だいち4号)がつけられます。

これは日本に限らず、アメリカのアポロやソ連ソユーズなど海外でも愛称が使われています。

 

人工衛星の愛称には、言葉の力、象徴として名付けられることが多く、同時に宇宙業界外の人たちに向けた親しみやすさを作りだしているといわれています。

 

日本軍や自衛隊にて艦船に名前を付けてきたことから、何かしらつけると思っていたのですが、なかなかそうではないようです。

 

ただ、人工衛星は打ち上げが失敗することもあり、打ち上げられなかったときは愛称が使われないこともあるため、打ち上ってから公表するのかもしれませんし、名前を付けないことで、あまり表に出さないようにしているのかもしれません。

搭載されている赤外線センサは?

衛星搭載型2波長赤外線センサには、メインのQDIP光学センサ以外に評価用のMCTセンサが搭載されています。

 

QDIPとMCTは、いわゆる赤外線センサの種類のことを指しており、どちらも高感度のセンサの一つで、熱によるノイズの影響を受けやすく、温度の誤差が発生することから冷却装置(センサ温度を-50~0℃(77K)以下に冷却)を搭載する必要があります。

 QDIP:Quantum Dot Infrared Photodetector, 量子ドット型赤外線検知素子

 MCT:Mercury Cadmium Telluride,

メインのセンサはQIDPで、MCTの方は比較評価用に搭載されています。

 

センサ部分を冷却しなければいけないミッション機器は、人工衛星にとって厄介です。

 

まず、人工衛星の温まる要素として、地球からの輻射熱、太陽光と内部の消費電力があります。

 

人工衛星には、電池(バッテリー)や他の電子機器の中に、低温過ぎると寿命が短くなったり、挙動がおかしくなる電子機器が存在しています。

そんな温まってしまう現象と温まってしまう機器が存在している中で、冷やさなければいけません、。

 

単純に冷やしたければ、太陽側や地球側と反対方向に向ければ勝手に冷えていきます。

 

冷える方向に向けるためのアームやケーブルが必要になったりしますが、そこから伝熱して、冷やしたくない人工衛星全体も伝わって冷えていきます。

 

宇宙空間は大気がないために、伝熱や輻射など地上では無視されてしまう要素が、打って変わって効果が抜群に効いてきます。

 

さらに、人工衛星自体が(ALOS-4の場合)3,000kg近い重さで、ほとんどが金属物質であることから単純に熱容量が大きく、温度が変化しにくい特性があります。

 

温度が変化しにくいということは、冷却するのにも時間が掛かるし、温めるのにも時間が掛かります。

宇宙といっても軌道上にあれば、地球や太陽との相対的な関係により昼と夜が生まれ温度差が発生し、多少なりとも人工衛星全体の温度が変わりますが、熱容量が大きい人工衛星だと思いのほか温度の変化が少なくなっていきます。

 

そこに、どうしても冷却しなければいけないミッション機器があるとするとどうでしょうか?

 

冷却装置を搭載しなければならず、冷却装置の搭載場所の確保や発熱、断熱設計、光学設計と調整した急冷による物体の温度膨張収縮の調整、電力の確保、冷却時にモータが駆動する場合は、振動の影響によりデータ記録やデータ取得時の共振の確認など玉突きのように考えなければいけなくなります。

 

非常に面倒な設計をしなければならず、難しいものになります。

 

今回の人工衛星は、赤外線センサを搭載した土地うことよりも、冷却装置、並びに冷却装置を維持するシステムが技術的に高いものと想像しますが、あまり公開されていないようです。

搭載の理由

2波長赤外線センサは少なくとも2015年ごろから研究・計画されていました。

 

そもそも2波長赤外線センサを開発する経緯となったのは、宇宙環境に使用することができるような日本製の赤外線センサが存在していなかったということを理由としています。

 

高い画素数の赤外線センサは輸出入規制により海外から入手することが困難であることを理由に、日本製として研究開発を進めることになったそうです。

 

どうも、64x64画素レベルの赤外線受光部を搭載するところから始まっているようで、おそらくALOS-4に搭載するセンサも同レベルではないかとみられます。

 

iPhoneの画素数が1200万画素や4800万画素であるとすると、かなり分解能が悪いように思えますが、研究開発時点の状況や「赤外線」であること、実証であること、放射線体制を持つセンサであることを考慮すると実用性というより実現可能性を確認しているという目的の方が強いのかもしれません。

 

計画上も、1000x1000画素を量産目標として、挑戦的に2000×2000画素へと段階的に開発を進めて打ち上げる様子です。

2000x2000画素は、地上の装置としてもかなり高価です。

 

ちなみにレンズ情報はありません。

衛星搭載型2波長赤外線センサの運用の想像

人工衛星からのミサイルなどの兵器の検知は難しいです。

 

理由の一つに人工衛星は地球の周りはある程度周期的な軌道で動いているからです。

日本にミサイルが発射される瞬間だとしても、人工衛星が発射場所から地球の裏側にいるとそもそも観測できません。

 

気象衛星ひまわりのように、静止衛星の場合ですとその限りでもないかもしれませんが、地球との距離が離れすぎていて、観測装置の精度が追い付かないことになります。

 

従い、常にある程度の人工衛星が地球を周回している、いわゆる衛星コンステレーションを構築することができれば、問題は解決します。お金と時間の問題はありますが。

 

また、逆に観測装置の精度を向上すれば静止衛星でも問題はありません。

現段階では、どちらに行くのか明確ではありませんが、技術的には衛星コンステレーションの方が現実的な気はします。

 

さて、今回の場合は、人工衛星1機しかないため、実証というミッションとなるでしょう。

対象としては、各紛争地域の観測もありますが、時間の予想がつく日本のロケットエンジン開発地域の観測、ロケット打ち上げ時の観測があげられます。

ホリエモンが創業者であるIST社のロケット打ち上げや、キャノン電子が関わっているスペースワンの打ち上げを観測する可能性もあります。

 

それはそれで画像を見たいです。

 

その他にも、通信システムとして光データ中継衛星(データ中継衛星1号機)による衛星間通信の有用性なども確認することになるのではないかと思います。

 

実用性というより、データの蓄積を主とした運用になるのではないかと思います。

今後の課題の想像

今回のミッションを得て、今後は100kg級小型衛星や6U,12U級超小型衛星に赤外線センサーを搭載するロードマップを描いています。

いわゆる衛星コンステレーションですね。

 

ただ、小型衛星や超小型衛星に移した時、機械設計的な視点としての課題があります。

 

それは冷却方法です。

 

冷却器を小型化、省エネルギー化する必要があります。

想像ですが、ALOS-4に搭載されているであろう冷却器はサイズ的に大きく、電力消費もあり、物理的に搭載できません。

ヒートパイプやヒートシンクで-50℃(77K)にすることができるか非常に難しいところです。

 

また、冷却しすぎて、電池の寿命を削るか、短期であったとしても他の電子部品に影響が出てきます。

小型衛星は大型衛星と違い熱容量が小さいため、すぐに冷めてすぐに温まる特徴があり、電源系、制御系、通信系コンポーネントの稼働電力で温まってしまうことでしょう。

 

小型衛星の画期的な冷却手法か、常温でも高性能な赤外線センサの開発が必要になります。

この二つは人工衛星製造メーカーでは、新規に開発したり、見つけてくることが難しいいでしょう。

対応可能な協業先を見つけるか、発注元が目星をつけて提案しないと、開発がとん挫するか長期の延期に入ることになり、開発期間が長くなることは覚悟しておいた方がいいでしょうね。

 

搭載場所の余裕度合いから100kg級小型衛星の方が比較的に実現性があります。

6U、12U超小型衛星では非常に困難で、精密な熱シミュレーションが必要となっていきます。

逆に超小型人工衛星で実現したら、かなり画期的な技術になると思います。部分的な冷却技術が確立できれば、通常の分光機器で発生する熱問題も解決できるかもしれません。

 


 

参考サイト 

宇宙領域における防衛装備長の取り組みについて

https://www.sjac.or.jp/pdf/publication/backnumber/202004/20200402.pdf

平成21年度小型衛星への赤外センサの搭載可能性に関する調査研究報告書

http://www.jmf.or.jp/japanese/houkokusho/kensaku/pdf/2010/21sentan_y12.pdf

小型衛星への赤外センサ搭載可能性に関する調査研究報告書

https://hojo.keirin-autorace.or.jp/seikabutu/seika/21nx_/bhu_/zp_/21-11koho-12.pdf

ミサイル警報装置

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB%E8%AD%A6%E5%A0%B1%E8%A3%85%E7%BD%AE

先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)

https://www.jaxa.jp/projects/sat/alos4/index_j.html

ALOS-4

https://www.restec.or.jp/satellite/alos-4.html

Space-based Infrared System (SBIRS)

https://missilethreat.csis.org/defsys/sbirs/

An Overview of Sensors for Long Range Missile Defense

https://www.mdpi.com/1424-8220/22/24/9871#:~:text=Two%20main%20types%20of%20sensors,and%20may%20have%20high%20resolution.

 

フル3Dプリントによる人工衛星はすでに打ち上げられている

宇宙業界では3Dプリントが注目されています。

 

注目されているといっても、2022年はややニュース記事としては少なくなっている印象です。

 

宇宙開発には試験や検証で時間が掛かります。

特に初号機の場合は、小型衛星の場合でも2年以上の期間で開発されます。

逆に、2022年にニュース記事が少なかったのはちょうど検証の期間であった可能性もあります。

 

今回は人工衛星開発における3Dプリントの現状をまとめていきます。

[目次]

すでにフル3Dプリンタ衛星が打ち上げられている

2022年にオーストラリアのFleet Space Technologiesでフル3Dプリンタで製造された小型衛星が打ち上げられました。

 

打ち上げられた人工衛星はAlphaと呼ばれ、衛星コンステレーションと呼ばれる、人工衛星を複数機軌道上に打上げ、システムを構築することを目的にしています。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

このフル3Dプリンタ衛星の特徴は、最大64個のアンテナを装備し、データの情報転送を向上させる点にあります。

 

Fleet Space Technologiesでは、主に鉱物資源情報を軌道上から観測して調査するいわゆる資源探査を眼前の目的としています。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

このフル3Dプリンタ人工衛星を製造したFleet Space Technologiesのあるオーストラリアは宇宙の業界的にも新興国に分類されます。

宇宙機のノウハウが少ない中でも人工衛星をフル3Dプリンタで製造したことは驚きです。

 

もちろんこのフル3Dプリンタ衛星が組織として1号機でというわけではなく、Centauriという3U CubeSatと呼ばれる30㎝級の超小型衛星を打ち上げ、現時点で7つの衛星を打ち上げられています。

 

先ほど記載した通りFleet Space Technologiesの目標は鉱物探査のようですが、今回の衛星自体は衛星通信によるものらしいです。

 

いくつかの情報によると3Dプリンタによる製造対象は、アンテナや構造物を製造しています。小型とはいえ宇宙機3Dプリンタで製造するノウハウを利用することで、別の可能性も継続して探っているようです。

その一環として3D systems社と共同で取り組み宇宙用のアンテナを販売しているようです。

 

3Dプリンタの利点は人間の作業が少なくほぼ自動で休みなく動いてくれる点(安全性と人間によるポカミス防止)、パーツの組立が不要な点、パラメータさえ分かれば品質も安定して製造できるという点です。

 

ちなみに、Fleet Space Technologiesでは一つの塊ではなく、フレームやパネルなどを3Dプリンタで製造したのちに組み上げる方式をとっているようです。

 

Fleet Space Technologiesの衛星が映りこんだ動画のリンクを置いておきます。

2021年以前はフル3Dプリント衛星ではないのためご注意ください。

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=78i9BRvRW3k

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=LgmagYYyTDY&t=50s

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=Q_uS9GMNOgA

人工衛星3Dプリンタ事情

人工衛星3Dプリンタでは宇宙用アンテナを製造販売しているところが多いです。

 

3Dプリンタの性能は、最大サイズのオーダーにもよりますが、数ミリ以下、数十マイクロ以下のレベルにあります。

 

切削と比較しても良好な品質を得ることも可能です。

装置自体が高額であったり、パラメータ調整が機敏であるといったデメリットを除けば、信頼性が高く安定的に製造可能とも言えます。

切削で最も問題であった、切削熱による歪みといった問題も解消されます。

 

それでもフル3Dプリンタ人工衛星が少ないのは、3Dプリンタを使いこなせる組織の存在が少なく、切削加工や金属可能の方が比較すると安価であること、強度計算の精度が難しいなどがあげられます。

アンテナのほかに、構造物やセンサーなどにも利用される事例が出てきています。

 

一方で、宇宙空間(軌道上)で3Dプリンタを使用するという技術も考えられてきています。

3Dプリンタの技術を軌道上に持ち込んで形状を製作する方向に動いています。

 

とても画期的ですが熱や振動の低減技術がかなり難しそうです。

製造の際の熱や振動の低減技術が進めば、他の観測機器の熱や振動低減につながり相乗効果が望めそうなので、この技術が発展することはとても期待が持てます。

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=kebh_KRXMzc

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=9BkH88RilHk

 

おそらく最初の衛星は、超小型よりも小型衛星や中型衛星の方がよいと個人的に思っています。

理由は、振動や熱による影響を減らすため、姿勢制御を安定させるために質量を重くする(姿勢の回転を減らす)こと、熱変化を減らすためにサイズや容量を大きくする(熱容量を大きくする)ことを思い浮かべます。

 

逆に小さくして、連続稼働ではなく断続稼働や微小稼働により、振動や熱、電力問題を解決させる手もありますが、そのあたりはシステム設計や搭載想定のロケット性能によるところかもしれません。

 

 

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=ir_SLjykvRE

その他の情報

ロケットの部品の製造。

www.youtube.com

How Do We Finish Machine this Large 3D Printed Rocket Part??? - YouTube

 

人工衛星ではありませんが、ドローンを3Dプリンタで製造したものです。

インタビューの中では人工衛星についても触れられています。

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=taYYWQbpkeM

 

参考サイト

FLEET SPACE’S NEW 3D PRINT FACILITY AIMS FOR SPACE

https://www.aumanufacturing.com.au/fleet-spaces-new-3d-print-facility-aims-for-space

Using part design only manufacturable via 3D printing, Fleet Space lowers the cost and size of communication satellites while boosting their power.

https://all3dp.com/4/fleet-of-3d-printed-satellites-set-to-expand-global-connectivity/

Fleet Space Has Developed Fully 3D Printed Satellites

https://www.3dnatives.com/en/fleet-space-has-developed-fully-3d-printed-satellites-030120214/#!

Researchers 3D print sensors for satellites

https://news.mit.edu/2022/rpa-sensors-satellites-3d-print-0727

3D-Printed Satellite Component Presents a Lesson in Rethinking Design

https://www.altair.de/c2r/ws2016/3d-printed-satellite-component-presents-lesson-rethinking-design

New Manufacturing Facility, Hires and 3D Printing Manufacturing Drives Growth for Fleet Space Technologies

https://fleetspace.com/news/new-manufacturing-facility-hires-and-3d-printing-manufacturing-drives-growth-for-fleet-space-technologies

HIGH SPEED CONNECTIVITY FOR EVERYTHING.LOW COST UNLIMITED SERVICES ANYWHERE.

https://fleetspace.com/alpha

3D printed satellite antennas can be made in space with help of sunlight

https://www.space.com/satellites-antennas-3d-printed-in-space

Reaching the tipping point for 3D printing satellites

https://spacenews.com/reaching-the-tipping-point-for-3d-printing-satellites/

3D Systems partners with Fleet Space for RF patch antennas

https://www.metal-am.com/3d-systems-partners-with-fleet-space-for-rf-patch-antennas/

Fleet Space Technologies

https://spaceflight.com/sp-customers/fleet/

Fleet Space Technologies

https://twitter.com/fleetspace

Flavia Tata NardiniFlavia Tata Nardini

https://au.linkedin.com/in/flavia-tata-nardini-1159a875

Hemant Chaurasia

https://www.linkedin.com/in/hchaurasia

宇宙産業の規模を他の業界ランキングと比較【2023年】

宇宙業界が盛り上がっていると言われることもあり、世界規模では2030年代後半には100兆円の市場規模と言われています。

日本政府目標としては、2030年代までに2倍を目標としています。

[目次]

 

宇宙業界の規模

そんな宇宙業界ですが、業界内でも市場が7つに分かれています。

 

宇宙機器産業 約3500億円

②宇宙利用サービス産業 約7700億円

③宇宙関連民生機器産業 約1億4500億円

④ユーザー産業 測位分野 約3.2兆円

⑤ユーザー産業 通信・放送 約2.2兆円

⑥ユーザー産業 リモートセンシング部門 約5000億円

一般社団法人日本航空宇宙工業会 令和元年度宇宙産業データブック(平成30年(2018)年度の宇宙関連産業規模)

 

この中で①②が政府が注力する宇宙産業と呼ばれる範囲です。

 

③宇宙関連民生機器産業はカーナビシステム製造、BS/CSチューナ付きTVの製造を示しています。

④~⑥は人工衛星による衛星データを利用した一般に使用する分野を指しています。

 

この③~⑥に衛星データの提供するための根幹の部分を①②分野で作り出し、合計約1.2兆円規模の市場を日本政府は2030年代までに2.4兆円規模を目標としています。

 

直近のデータはありませんが、宇宙産業約1.2兆円(2018)でとりあえず比較していきましょう

日本の業界規模の中での宇宙産業

日本の業界規模top5は次の通りです。

 

1位:卸売 126兆円

2位:電気機器 85.5兆円

3位:総合商社 66.2兆円

4位:金融 64.4兆円

5位:自動車 63.9兆円

次点:小売 63.1兆円

※卸売と総合商社がある程度被っているため次点も記載しました。

 

調べられる範囲で業界規模top46-50は次の通り。

 

46位:ゴム・タイヤ 6.3兆円

47位:地方銀行 6.2挑円

48位:家電量販店 6.1兆円

49位:精密機器 5.8兆円

50位:人材派遣 5.6兆円

 

そうです。

日本の宇宙業界はtop50の中に入らない規模だということが分かります。

宇宙業界の規模がそれほど大きくない理由

宇宙産業は国策で進められており政府がほぼ発注元でした。

政府の予算以上に市場が大きくならない、政府の方針に左右される業界でした。

 

政府方針に左右されないものとして、上記の分野でいう②宇宙利用サービス産業である民間の通信衛星スカパーJSAT)やアマチュア無線衛星がありました。

2010年代後半では①宇宙機器産業で外国からの受注依頼による人工衛星製造も上げられます。

 

政府外からの割合は少なく、政府の政党が変わるだけも宇宙予算が大きく変わります。

しかも宇宙業界は、政府の資金から出ているため、宇宙技術に対する理解がなければ旨味がなく、他の業界と比較しても政治的に弱い立場にあります。

 

長期政権や長期政権政党の場合ですと、宇宙技術に対する理解の蓄積があるために予算が大きく削られたり、プロジェクトの延期や中止もそれほど大きくはないという特徴があります。

 

この辺りは宇宙大国であるアメリカにも言えます。

アメリカの政権の方針により、国際規模の宇宙開発プロジェクトの方針が大きく変わり、予算の増減やプロジェクトの延期や中止などよく発生しており、決して不思議な状況はないというのが宇宙業界の現状です。

 

その中でやっと政府から民間でも宇宙開発ができる土台ができつつあります。

ちょうど宇宙業界への政府資金が重荷になった時に、超小型衛星やロケットなど民間でも製造できるような体制が整ってきています。

 

この勢いのまま政府が後押しをして政府の資金以外で成り立つことが可能な市場へと進んでいます。

それでも、まだまだ足りないという現実は持っておいた方がいいでしょう。

 

例えば、アメリカにおいてスペースXという大きな宇宙企業ができたとしても、政府からの援助を受けてプロジェクトを進めているところがあります。

政府からの資金が日本、世界を含めても大きな割合を占めており、決められた上に年々減りる可能性があるお金の奪い合いのある世界なのです。

 

まだまだ政府以外からの資金が全然足りない、政府からの資金の比率がとても高い業界であることには間違いありません。

 

もし宇宙業界に就職したのであれば、政府からの案件に力を入れて取りに行っていること、政府からの案件は適正な利益率が決められているために、儲けるというのが難しいです。

宇宙業界で利益を得るにはどうしても政府外からビジネスを成立させる仕組みを作ることが必要になります。

 

特にスタートアップやベンチャー企業と呼ばれる宇宙関連企業は、宇宙開発に挑むと同時にビジネスを確立させる仕組みを作っていくことになるでしょう。

宇宙開発だけ、技術だけにこだわらず、多面的にやっていくことになります。

企業や技術、ビジネスの紹介など、経営に直接関わるかどうかは分かりませんが、対外的に説明するということは多くなるかと思います。

 

今後、市場規模が大きくなることが世界的に言われています。

そんなうまい話があるのかなとは思いますが、民間でも宇宙開発が行われ、政府も後押ししていることから市場規模が縮小する方向には動かない、そんな業界が今の宇宙業界です。

参考サイト

第1回宇宙産業プログラムに関する事業評価検討会中間評価/終了時評価 補足説明資料

2022年1月14日経済産業省製造産業局宇宙産業室 

https://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000R03/220114_space_1st/space_1st_08-1.pdf

業界別 業界規模ランキング(2021-2022年)

https://gyokai-search.com/5-kibo.html

市場規模マップ

https://stat.visualizing.info/msm

【エンジニア、技術面における】トレードオフについて

設計におけるトレードオフの考え方はいくつか存在しています。

今回は比較的に宇宙業界で使用されているトレードオフと称している手法は、いくつか書籍やネットの情報と差異があったので紹介します。

[目次]

トレードオフとは

トレードオフ(trade-off)は、製品開発では複数の設計アイディアや搭載機器を選択する際に、要求事項に合致することは前提として、選択に関わる要素を洗い出し、要素の優先事項を明確にして適切なリスクを選択する手法です

新規の製品開発設計で使用されるが、設計変更における影響評価にも使用されることが多いです。

 

製品設計におけるトレードオフは、ほぼ個人作業であるため、あまり表に出ることははありません。

リスク分析のためにFMEAやFTA、過去のトラブル一覧による設計要素の変更を記録や資料化して、客観的に確認したり、第三者に確認してもらうことはありますが、あまりトレードオフ表という形で資料化する文化が少ないようです。

 

宇宙開発において、複数の案が出た場合、よくトレードオフして検討結果を出してくれと言われることがあります。

最初に言われると「トレードオフ?」と思われるでしょう。ネットの情報や設計関係の書籍を調べても、正直、技術者が求めるトレードオフには残念ながらたどり着きません

経済用語としてのトレードオフの意味が先行しており、技術的なトレードオフに代用するには乱暴すぎて使えません。

 

宇宙開発だけではなく技術系で使用されることが多いトレードオフでは、優先すべき項目(要素)のみに注目するのではなく、設計アイディアや搭載機器を主軸として要素に対して優先順位を決め、リスクを考慮した上で、総合的に判断します。

 

決して、A案はコスト1/2とB案はスケジュール1/2、C案は性能3倍では判断せず、コスト、スケジュール、性能を具体的な数値や表現に代えて比較します。

トレードオフの検討項目例

一例として、現行案に不具合が発生したことで対策を検討し、4案が考え付いたとして、どれを選択すればいいのかトレードオフした場合、次のようなイメージになります。

宇宙業界でなくとも、技術系では、初期検討や案件受注時はコストが優先されます。

これは案件を受注の競争に勝つためにはわかりやすい対応です。

 

ただし開発が始まると、業界によって違うとは思いますが宇宙業界の場合はコストよりもスケジュールが優先されることが多いです。

スケジュールが重要視される理由は宇宙業界は打ち上げの時期を決めなければいけないことが多く、太陽系における地球の相対的な位置から、ロケットの能力や射場環境により打ち上げ時期を限定せざる得ないためです。

 

そういった限定的な環境の中で行われる技術的なトレードオフではリスクを洗い出し、評価することが重要視されます。

 

機械や電気的な面だけではなく、ソフトウェアの改修といった多面的に評価することになります。

 

上記例を代表に、コストや機械的な面で考えるのであれば、案①が採用されますが、電力やソフトウェアの改修を考えると案③を採用する方向になる。過去の実績を重要視し、運用制限を許容するのであれば案④を採用することになります。

これらの優先度は製造スケジュールにより、他に並行している開発製品と歩調を合わせながら進めるため、単一ではなく柔軟に変えていくことになります。

 

宇宙開発のトレードオフは、リスク要素を明確にして、各フェーズにおいて適切な案を選択できるような手段として用いられるのです。

 

そして、一覧表を会議の場で提示することで、各視点からのリスクの抜けにも気づきやすくなります。

 

トレードオフの一覧表(トレードオフ表)は製造側や設計側が作成することが多いのですが、会議で提示することで製造側と管理(やシステム設計)側での方針の違いをすり合わせることにも役に立ちます。以降の設計や製造においてよりよい設計の提案もすることができます。

 

ただ、通常の設計のトレードオフ自体は一部の設計担当者で完結することもあるので、見れる機会は少ないかもしれません。

よく使用される項目としては、信頼性、拡張性、保守性、寿命、互換性、適応性、可用性、ロバスト性、プログラマビリティ、開発計画、費用(コスト)があげられます。

 

設計者の立場だけではなく、プロジェクトを進める一員として、技術的な側面以外からもトレードオフによる分析が求められます。

最近の宇宙のニュースとトレードオフイプシロン6号機

宇宙業界では先端技術というより枯れた技術を使用することが多いです。

枯れた技術とは、技術として確立されており安定的で信頼性のある技術のことを指します。内情では、過去に多くの不具合を発生させ、致命的なことにもなったうえで現在でも改修も続けて確立させた技術を指しています。

従い、軌道上実績を優先することが多いです。

 

最近の話ではありますが、2022年11月11日に打ち上げられ、地上からの破壊指令信号により飛行を中断したイプシロン6号機ではロケットの推進系のガスジェット装置について、「弁の動作不良」「推進薬の配管詰まり」の可能性があり、現在も調査を進めています。

 

今回の不具合を受けて、JAXAの開発している新しいロケットであるH3ロケットではその影響を受けて、製品としては別物ではありますが同じ組織という理由で、他社製の製品を交換することを検討し始めているといいます。

 

同じ組織を避ける理由としては、まだ原因が解決していない段階で、類似の設計をしている製品を使用していると、実際は分かりませんが同じ設計者や同じ開発グループにより開発されていることから、不具合が発生した部分に対しての検証の抜けがあると考えられてしまいます。

 

原因が究明できていれば、H3ロケットに使用する製品に対して検証の実施有無の確認をし、検証できていなければ事前に実証して同じ不具合を防ぎます。

しかし、今回は原因究明に時間が掛かりそうな見込みであり、H3ロケットの開発スケジュールに間に合わない見込みであるという二つのリスクから、実績のある他社製品を利用する流れになったとみられます。

 

これらの選定基準も、トレードオフ表の検討項目(要素)に含めて検討されたことだと思います。

項目として追加するには、現時点で想定される原因(特定の部品とそれにかかわるインターフェイス)の検証有無、改修が発生した場合の改修スケジュール、ロケット全体の開発スケジュールが3点があげられ、その上で他社製品の実績品が使われたのではないでしょうか。

技術面におけるトレードオフのまとめ

  • トレードオフはリスクマネジメントである
  • 技術面だけではなく多角的な意見で判断すること
  • フェーズによって優先度が変わるため前のトレードオフに固辞しないこと
参考サイト

Sample records for design tradeoff studies

https://www.science.gov/topicpages/d/design+tradeoff+studies#

NASA Office of Logic Design

http://klabs.org/history/history_docs/sp-8070/ch4/4p1_design_tradeoffs.htm

イプシロンロケット6号機打上げ失敗原因調査状況について

https://www.jaxa.jp/press/2022/10/20221018-1_j.html

Design trade-offs for product development

https://www.embedded.com/design-trade-offs-for-product-development/

D06.『百害あって一利なし』のFMEA - ついてきなぁ!機械設計の職人ワザ(ブログ版)

https://kunii.biz/d06/

D07.匠のワザ(1):トラブル三兄弟でトラブル半減 - ついてきなぁ!機械設計の職人ワザ(ブログ版)

https://kunii.biz/d07/

【就活生のための】宇宙開発業界の業界研究・宇宙就活

宇宙業界とは

宇宙業界、あるいは宇宙開発ビジネスという括りで考えると、宇宙関連機器の発注者、製造者、運送者、運用者、分析者、利用者に分けられます。

 

宇宙業界は、宇宙開発初期から延々と関わり続けてきたオールドスペースと、2010年代後半より始まったニュースペースに2つに分けられることが多いです。

 

[目次]

 

オールドスペース(OLDSPACE)

オールドスペースは、宇宙業界が国策メインの資金で成立していた時代から関わってきた組織が当たります。

宇宙航空研究開発機構JAXA)は国立開発法人であるので別として、三菱電機NECスペース、富士通といった宇宙機に関わるものから、IHI川崎重工といったロケットに関わる企業、放送衛星を運用しているスカパーJSAT放送衛星システムが代表として挙げられます。

 

これらの企業の中で宇宙機やロケットを製造するメーカーは、システムメーカーとして装置をはじめ、素材などを開発する製造メーカーを従えており、業界のすそ野はとても広い業界です。

先に上げた企業が有名ではありますが、ロケットや宇宙など国策に関わっていたことから、極力国内生産が推奨され、国内でほとんどの部品や機器を製造できるような体制を構築しています。

 

しかもこれらの細かい部品や機器を製造しているのは300人以下の中小企業であることがほとんどです。

入社してみて、実は宇宙関係の機器を製造していたなんていうことはよく聞く話です。

マイナビやエン・ジャパン、リクナビで検索しても載っていない企業で開発していることもよくあります。

これらの製品は一品一様であったり、100台も製造しないような製品がほとんどです。

 

ちなみに宇宙開発関係の株式は、企業内の宇宙分野の比率がそれほど大きくないため、影響が少ないです。

正直あてにならなさそうなので、株価よりIRの方を見た方が良いでしょう。

 

ニュースペース(NEWSPACE)

2010年代頃よりキューブサットといった超小型衛星や小型衛星が開発され、頻繁に打ち上げられるようになりました。

これらの衛星を開発し運用している企業は、オールドスペースではなく新興企業がほとんどでしたので、ニュースペースと呼ばれています。

 

ニュースペースの宇宙業界進出により、宇宙開発業界が注目され、人工衛星の数も多くなり、今まで目が向けられていなかった宇宙から得られる画像データなどが注目されるようになっていきました。

 

2010年代以前も僅かではありますが人工衛星により取得されたデータを公開しているところがあったのですが、人の流入が少なく、技術的にも大きな勢いがなかったため大学の研究ベースで進められていました。

 

それが、人工衛星の増加による業界への注目と人の流入に合わせて、今まで人工衛星より取得していたデータを無料で配布する(主に政府)機関が増え、整備されるようになりました。

当時注目の的であったビックデータの解析と人工衛星の画像データ、観測データとの親和性が高く使用方法がや解析方法が一気に拡散されるようになってきました。

 

そこで画像解析エンジニアが宇宙業界へ広く参入するきっかけとなっています。

 

アクセルスペースやSynspective、キヤノン電子といった人工衛星開発メーカーのほかに、地上局のシステムを構築するインフォステラ、衛星データ解析を行う天地人、ロケットを製造しているインターステラテクノロジズなどがあげられます。

 

オールドスペースとニュースペースの違い

就職をするという観点でのオールドスペースとニュースペースとの違いは、企業としての安定性に違いがあります。

 

オールドスペースの場合は、過去から事業を受け持っているために、比較的安定的に仕事を受注することができ、事業展開も宇宙事業以外も実施していることもあり、企業としてもつぶれにくくなっています。

ただし、企業としての宇宙事業の比率や組織としての重要性が低くなっています。

 

日本の宇宙企業において、過去、宇宙事業の衰退が一気に進んだ時期がありました。

有名なのはアメリカとの包括的貿易法「スーパー301条」、民主党政権による事業仕分け(2009年~2013年)です。

政府からの資金でほぼ成立していたため、国の方針で左右されることから宇宙業界が消えることは無くとも、企業としては撤退せざる得ない状況に陥ったところも少なくありません。

これらの事情により生き残っている企業は、国策としての事業としての固さ、企業がつぶれたり海外に買収されたとしても国内企業へ引き取りされる可能性が高いです。

 

オールドスペースにはそんな事業としての固さがあります。

 

ニュースペースの場合は、宇宙事業中心で立ち上げられた企業で、大学生ベンチャー発が多いですが、他業界からの企業や転職者が多い傾向にあります。

即戦力であったり、高い熱意が求められることが多く、大学からの就職は、大学時代に宇宙関係の研究や自主的に宇宙に関係する活動をしていないと厳しく、代わりに熱意や幅広くやりたいことを出さないとなかなか難しいところがあります。

 

オールドスペースでも、大企業(従業員1000名以上)でも近い厳しさはありますが、ニュースペースの方は熱意の強さに勝るものはないといえるでしょう。

この高い熱意というのは、言い換えると長期的に続けられるモチベーションとも言えます。

ニュースペースが増えてきたことで人材もさらに流動的になったので、継続していく高いモチベーションが必要になっています。

IT業界ではないベンチャー企業があまり表に出ないだけで、情報も想像も難しいとは思いますが、勢いのある市場・業界というだけでは新卒の大学生にはややハードルが高くなってきている程度には成長してきている業界ではあります。

理系職ではない場合、強烈な熱意がなければオールドスペース側で就職して、気づいたら関わっていたということもゼロではありません。

 

ただ、オールドスペースだとやることがルーチン化されていることが多く、知識も特殊で専門的になり易く、ニュースペースは広い範囲で関わることができ、スパンがとても速くスピード感があります。

これは人数的な要素もありますが、市場開拓や業務開拓で色々やらなければならないというのが理由なのかもしれません。

 

業界の市場

宇宙業界は、BtoG(企業と行政/政府)が一番大きいお金が動きます。

次に、BtoB(企業同士)で、最近はBtoC(企業と消費者)も増えてきています。

 

事業の安定性と市場規模はBtoG>BtoB>BtoCとなります。

まだ政府の資金が大きく、利益が制限されていますが、徐々にビジネスとしての成立しつつある傾向にあり、BtoBやBtoCが増えています。正直、BtoBやBtoCが増えていかないと、政府主導に逆戻りになり、宇宙業界が再び衰退していくことになります。

現在はビジネスの種まきから芽を出しているところで、政府の補助金(アンカーテナンシー)で下支えを行い、将来に向けて進んでいるのが現状です。

何がきっかけで市場が拡大していくか分からない状態でもあります。

 

BtoCは、衛星データ解析や通信衛星スターリンクによる通信やBS放送)となります。

BtoBは、コンポーネント開発や衛星データ解析、解析ソフトウェア、衛星施設運用・保守など多岐にわたります。

 

業界的にはコンポーネント開発やパーツ(部品)開発のすそ野が広く、パーツ開発の場合、宇宙で使用されているとは明言されなかったり、製造メーカーに情報が来ないこともあります。

ちなみに衛星データ解析や解析ソフトウェア、前述したシステムメーカーの場合、英語力が必要になっていきます。

 

今後の宇宙業界の活性化で別の分野、例えば画像解析や衛星データによるアプリなどが少しずつ増えていくかもしれません。

 

そして、今まで宇宙業界に手を出していなかった企業もJAXAを通じて宇宙のデータを使用していくよう活動を始めていることから何かしら宇宙に関わることができるような世の中にはなっています。

www.jaxa.jp

https://www.jaxa.jp/projects/biz/index_j.html

 

宇宙業界の魅力

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

www.youtube.com

 

NASA(JPL)で働いている小野 雅裕さんの話ではビジネスとともに国の機関の役割なども話してもらっています。

www.youtube.com

 

ニュースペースでの就職事情

www.youtube.com

 

宇宙就活サイト

新卒向け宇宙就活サイトは、宇宙就活が大きいですが、マイナビやエン・ジャパン、リクナビでも取り扱っています。

 

宇宙就活

spacejobhunting.wordpress.com

https://spacejobhunting.wordpress.com/

 

宇宙関連事業

とても分かりにくいサイトですが、JAXAのサイトでも宇宙関連事業として紹介されています。

aerospacebiz.jaxa.jp

https://aerospacebiz.jaxa.jp/partner/#partners

aerospacebiz.jaxa.jp

https://aerospacebiz.jaxa.jp/venture/

マイナビ

就活メインのサイトでは、マイナビの宇宙業界地図がまとまって分かりやすいですね。

他の宇宙業界地図はロゴマークでまとめられていて少しわかりにくいですので笑

宇宙ビジネスの業界地図

ちなみにサイト内の検索で調べると人材派遣会社も多く含まれてしまうため注意が必要です。

JAXA新卒採用サイト

もちろJAXAの新卒採用を直接確認した方が最新情報を入手するには便利です。

stage.tksc.jaxa.jp

https://stage.tksc.jaxa.jp/recruit/

 

あまり知られていませんが、リモート・センシング技術センター(RESTEC:レスレック)も宇宙に関係しています。

www.restec.or.jp

https://www.restec.or.jp/recruit/

転職サイトから実情を調べる

新卒の情報サイトの検索条件では絞り切れないばあいは、転職サイトから現在必要な人材や求人情報などの目星をつけて、サイトの採用ページから直接アクセスするのも一つのやり方です。

doda.jp

https://doda.jp/keyword/%E5%AE%87%E5%AE%99%E9%96%A2%E9%80%A3%E3%80%80%E6%AD%A3%E7%A4%BE%E5%93%A1/

 

文系で宇宙関係の就職が可能なのか

可能です。

 

JAXAの仕事でいうのでしたら予算管理(会計事務)や法務関係、広報、教育で関わることができます。

英語力を生かして、国際組織間の調整を行う仕事を行うことも定常業務としてあります。

現在はニュースペースに代表されるように、新しいビジネスや法律が作れていることから、ルールの整備などに関わることになることでしょう。

 

JAXA外となると、営業や事務、技術サポート業務がメインになります。

企業としては、宇宙関係を取り扱う商社や保険業が文系職としての需要になります。

 

商社は主に海外メーカーとやり取りすることが多いため、英語力は必須となります。

むしろ、英語力の高さから海外の宇宙関係のメーカーとの担当になる可能性もあります。

入ってからは技術英語や各種機械の性能を読み取れる以外に、技術職より先に世界的な製品需要など宇宙業界を広く知ることができます。

 

保険業はまだ未知数ですが、大手の保険業者が手を上げており、国内よりも海外の方が件数が多くなりそうなので、こちらでも英語力が必要になってきます。

保険業の場合は、入ってからで問題ないとは思いますが、ロケットや人工衛星の打ち上げや運用での流れを知り、どこで保険が必要となるのか、人工衛星の開発・製造費や市場規模などを知っていくことができるでしょう。

 

fanfun.jaxa.jp

https://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/5571.html

 


 

「マツコの知らない世界」でみる「宇宙の世界」

マツコの知らない世界」でみる「宇宙の世界」

 

youtu.be

https://youtu.be/t9X5wHmgJEM?t=9

 

2022年6月にJAXAを退職した宇宙飛行士の野口聡一さんをゲストに迎えて「宇宙の世界」が配信されました。

 

野口宇宙飛行士は、2005年、2009年~2010年、2020年~2021年の3回、国際宇宙ステーションで長期間の宇宙滞在をしました。

 

2022年6月の時点で57歳、「3回目の宇宙飛行を終えて、後輩の宇宙飛行士に道を譲りたいと考えるようになった」ということで退職され、現在は2021年12月付で就任している東京大学先端技術研究センター特任教授となっています。

 

身近にある宇宙の技術

宇宙技術といえば、様々な製品が応用されて身近な製品に展開されています。

このブログの中でも何回か宇宙開発の中で生まれた技術が展開されている例を紹介していきました。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

そんな中で野口宇宙飛行士が話されていたのは、こういった宇宙開発の技術が身近なものとして役になっているということをうまく宣伝していないことに対して「そういうところがJAXAダメ。ちゃんと宣伝すればいいのに」と語っていました。

 

JAXAのページをみると、新事業促進部というところが存在しています。

aerospacebiz.jaxa.jp

 

とりあえず窓口のようですが、どのような技術を保有しているのか、過去にどのような技術が展開されていたのか、ページに行ってもわかりませんでした。

興味あったら連絡をくださいという、連絡する側としては心理的にやや障壁のある構成でしたね。

 

例えば検索ですとTOPにページが引っかかるのですが、とても情報が古いのです。

日本の宇宙技術の主なスピンオフ事例 平成17年6月

https://www.jaxa.jp/press/2005/06/20050629_sac_spinoff_at01.pdf

 

先ほどの新事業推進部のページを見ても、各種データや検討方法、資金調達の手助けをしますといった形で、情報に具体性が少なくふんわりと感じてしまいます。

 

もっと情報があるはずなのに、WEBページの構成をするには、次の情報を前提として

・最新の情報が掲載されている
・必要十分な情報が供給されている
・問い合わせ導線がわかりやすい

大体次の内容が優先されるといわれています。

1.検索エンジンの利用者
2.SNSの利用者
3.既存ユーザー
4.見込みユーザー
6.採用候補者
7.自社職員

まあ話がブレるのでこの辺で止めておきます。

 

野口宇宙飛行士が、宇宙で暮らしている様子はあまり視聴率が稼げないと話されていたのも事実ですね。

 

こういった情報を日常の中でどのように伝えていくのか、なかなか難しい話ではあります。

 

なぜ宇宙進出を進めるのか?

野口宇宙飛行士が、なぜ宇宙進出を進めるのか?という問いに対して

「人類が活動のフィールドが広がっていく中で、どう立ち向かっていくかでその後の100年が決まる」

と、先のことを話していました。後進を道に譲る選択をした野口宇宙飛行士らしいですね。

 

マツコデラックスさんは「超岐路に立っている。知的なものへの止められない欲望、大航海時代と一緒。宇宙に行った人と変わらないくらい怖かった。何もわからないものに対して立ち向かった。人類が避けて通れない、進化への欲望」

と、ストレートに話していました。

単純に産業や利益のためではなく、知らないこと、困難なことへの人類の根幹にあるチャレンジ精神のようなものを語っていました。

 

そんな話題の中で宇宙から見た感想として、

「夜の日本の明るさって尋常じゃない」

「宇宙から夜の日本を見ると、そんなに働かなくていいのにと思う」

と妙にこちらも納得した答えを受けました。

 

特定の企業の話ではなく、最新のニュースというわけではない、宇宙の世界をかみ砕いて伝えている番組でした。

 

宇宙の記事を普段から見ているとなかなか伝えられない、情報がほとんどない人への伝え方というのも知れた感じがしますね。

 

 

振り返り配信

www.paravi.jp

 

twitter.com

www.youtube.com

Soichi Noguchi - YouTube

 

宇宙飛行士の野口聡一さんが退職前に会見「後輩に道譲りたい」宇宙飛行士の野口聡一さんが退職前に会見「後輩に道譲りたい」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220525/k10013643211000.html

宇宙にかかわるテラヘルツ波とは

テラヘルツ波とは

テラヘルツ波は、100GHzから10THzの間の周波数のことで、テラヘルツ帯であることからテラヘルツ周波数あるいはテラヘルツと呼ばれています。

3mmから30μmの波長レンジを有し電磁波を示しています。

 

周波数帯としては電磁波(電波)と光の間の周波数帯と言われています。

放射線のような物体にぶつかった際に、持っているエネルギーが原子や分子に加わり電子をはじくなどのイオン化とも呼ばれる電離作用を持たず、生物学的に無害であると考えられています。

 

リモートセンシングによる観測

あらゆる物質は、それぞれ固有の周波数の電磁波を放射します。

外部から電磁波を受けると固有の周波数帯を吸収し、それ以外を反射します。

この特性を利用して、電磁波を観測したり、電磁波を当てて反射を観測することによって、地域をはじめ物質を調査することができます。

 

テラヘルツ波は、紙・木材・布・プラスチックなどの物質を透過し、X線では観測できない部品の検査を行いことに使われます。

プラスチックの構造欠陥や薬品工場での異物混入、アミノ酸や糖の分光分析を行うことに使われます。

 

透過する物質だけではなく、吸収する物質にも特徴があります。

吸収する物質で特徴的なのは水ですが、水以外にも二酸化炭素やメタン、オゾンといった大気にかかわるデータを得ることができます。

 

宇宙にかかわるテラヘルツ波

テラヘルツ波の使用方法で、宇宙分野で利用を期待されているのは、水といった大気を観測できる特徴から、惑星に対しての大気環境や水資源を観測することができます。

 

地球自体の大気変化による天気予報のほかに、火星などへの探査機に観測装置を搭載することでデータを入手することができます。

惑星に対しての人工衛星による観測だけではなく、天体観測にも使用されます。

 

このようなリモートセンシングのほかに、高速無線通信も注目されています。

帯域の性質からより多くの情報量や同時接続による通信ができることから、5Gの次の世代である「Beyond 5G」(6G)とされています。

 

正直なところ、スマホによるネットワーク通信では、4Gの通信速度でユーザーがある程度満足しているので、5Gの衝撃が思いのほか少なかったとは感じています。

5G、6Gの世界では、産業的な役割が大きくなっていくとは思います。

 

ゆえに、宇宙で使用するテラヘルツ波は、観測装置よりも通信装置の方が技術的には加速していきそうな気はしています。

 

テラヘルツ帯は、水に吸収されるという性質があるため、雨天や高湿度、障害物による減衰が発生します。他の電磁波よりも直進性に優れた性質を持つため、減衰はより顕著になっているという技術的な課題が地上ではあります。

 

一方で宇宙空間に出ていけば、水も大気もないため減衰を考慮することがなくなるために、宇宙空間での衛星間通信ではより有力な通信手段になっていくかもしれません。

人工衛星から地球表面にある地上局と通信する時の減衰のみに限定すれば、より情報量の多く、広い地域での通信網を確立できるかもしれません。

 

ただ、地上から宇宙に向けての観測においては出力や電力、装置そのものを高出力にすることでできることが増えてきていますが、宇宙においてはまだまだ厳しい状況です。

 

限られた電力、限られた重量、多種多様な外乱による姿勢制御により制限された中では、高性能な装置を運用することが難しいのです。

 

技術課題として、高出力増幅器半導体IC、進行波管)、高信頼性実装技術(微細な機械構造と電気回路などによるデバイス技術)、アンテナ(高精度ビーム制御技術、光技術の導入)、そして必要な電力の確保と、これらの技術を宇宙に投入するための運送能力と資金源が必要になっていきます。

 

衛星コンステレーションによる複数機によるシステムの構築か、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に代表される高性能の宇宙機を1台軌道上に構築することになります。

それこそ政府による資金補助が必要になるほど、難しいところではあります。

 

参考文献

テラヘルツ波の特徴

https://www.toptica.com/ja/technology/technical-tutorials/terahertz/terahertz-properties

テラヘルツ波とは何?活用事例や測定方法の種類・原理を解説

https://jss1.jp/column/column_231/

テラヘルツリモートセンシング

https://www2.nict.go.jp/ttrc/thz-sensing/ja/about_Thz/

テラヘルツ光による天体観測技術

https://www.isas.jaxa.jp/j/special/2005/technology/20.shtml

SMILES(宇宙からのテラヘルツ大気観測)

https://www2.nict.go.jp/res/submm/p3.html

宇宙におけるテラヘルツ無線技術の活用

https://www.soumu.go.jp/main_content/000471094.pdf

「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」の公表 

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000364.html

テラヘルツシステム応用推進協議会

https://www.scat.or.jp/THz-conso/index.html

インドの宇宙開発 衛星ナビゲーションシステムNaVIC

インドのNASAJAXA版ともいえるインド宇宙研究機関(ISRO)があります。

 

インドは1975年にISROが初めて人工衛星を打ち上げて以来、通信衛星地球観測衛星、航法衛星、軍事衛星をはじめ、何十機もの宇宙機を打ち上げています。

世界的にみると、アメリカ、ロシア、中国、日本、欧州に並ぶ宇宙開発国の一つです。

 

1975年、インドの初の人工衛星はロシアのロケットによって打ち上げられました。

衛星自体は、電力系統の故障によって5日後には通信が途絶えてしまいましたが、その後も継続的に宇宙機を開発し続けています。

 

また、1980年代後半からロケットを開発し打ち上げるようになり、1993年の初回打上げは失敗したもののその後は極軌道や対地同期軌道向けに継続した軌道輸送能力を有しています。

 

インドの衛星ナビゲーションシステム

現在、ISROでは2018年からインド洋を含むインド地域に限定した衛星測位システム(あるいは、衛星航法システム)が運用されています。

 

衛星航法システムは、人工衛星から発射される電波信号から地球上での位置の測定や時刻を知るシステムを言います。

 

地域を限定せず、地球全周をまたがる場合はGlobal Navigation Satellite System (GNSS、全地球航法衛星システム) とも言い、アメリカのGPSがとても有名です。

 

インドではNaVIC(Navigation with Indian Constellation)と呼ばれています。

また、2013年に開始されたインド地域航法衛星システム(IRNSS)と2019年に統合されています。

インドは、当初の表向きの目的としてインドの民間航空部門の支援を目的に、2008年以降、航法衛星を打ち上げています。

 

NaVICのシステムは、周波数帯(L5バンド(1176.45 MHz)、Sバンド(2492.028 MHz))を採用することにより、アメリカのGPS(L1バンド)よりも正確な位置を観測できます。

といっても、アメリカのGPSは、1978年から1993年に打ち上げられた測位衛星によって構築されているもう古いシステムではありますが。

 

NaVICには現在8つ程度の人工衛星により構築されており、そのうち3つの静止軌道(GEO)にあり、高度24,000kmの遠地点と250kmの近地点に5つの静止衛星(GSO)があります。

 

NaVICのシステムでは、インドおよび隣接国では10m未満で、インド洋地域では約20m程度の精度を誇ります。

現在では、地上、航空、海上ナビゲーション、災害管理や車両追跡、携帯電話との統合、正確な時刻やマッピング、測地データの取得、旅行者向けの地上ナビゲーションシステム、電力ラインとの同期、リアルタイム車両情報システム、漁師の安全などの一般的なアプリケーションの使用から、国家プロジェクトにも利用されています。

 

NaVICのシステムは、国際的な衛星航法システムとは異なり、インド政府としても推進しているため、2019年には国内のすべての商用車両に対してNaVICベースとなる車両追跡装置とスマホにも搭載すること搭載することが義務付けられました。

 

世界中でドローンが使用されるようになり、インドは2021年にドローンの規制を更新しています。その中には、NaVICのデバイスを搭載することも含んでいます。

 

インドの航法システムの今後

このようなシステムは、日本の準天頂衛星QZSSに非常に近いです。

全世界という意味では、先ほどから上げているアメリカのGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国の北斗があります。

 

現時点では、8つの航法衛星で構成されているNaVICですが、GEOの衛星寿命は9.5年、GSOの衛星寿命は11年であることから、次世代あるいは代替衛星も打ち上げも進んでいます。

 

日本では、一般でも近年に発生したロシアのウクライナへの軍事侵攻により、宇宙大国の一つであるロシアのロケットをはじめ技術が使用できなくなったことで、宇宙業界では大きな衝撃を与えました。

独自でGPSと同等レベルの航法システムを持つことの重要性を認識するようになりました。

 

NaVICの始まりは、印パ戦争と呼ばれるインドとパキスタンの間で行われた戦争(インド・パキスタン戦争)に始まります。

1999年、インドの北部とパキスタン北東部の国境にある山岳部で発生したカルギル紛争で、インドはアメリカの所有する衛星航法システムであるGPSに、この地域の衛星データの提供を求めました。

 

しかし、アメリカはデータの提供を拒否したことにより、インドでも独自での衛星航法システムの重要性を認識させました。

 

その結果、インド独自の衛星航法システムを構築するに至ったのです。

 

参考資料

Everything You Need To Know About NavIC, India’s Version Of GPS

https://www.indiatimes.com/explainers/news/everything-you-need-to-know-about-navic-indias-version-of-gps-587540.html

India’s Road To Space Superpower: NavIC, The Indian GPSIndia’s Road To Space Superpower: NavIC, The Indian GPS

https://bharatshakti.in/indias-road-to-space-superpower-navic-the-indian-gps/

India to launch replacement navigation satellites NVS-0: Jitendra Singh

https://www.business-standard.com/article/technology/india-to-launch-replacement-navigation-satellites-nvs-0-jitendra-singh-122120701186_1.html

Centre States About The Increased Usage Of Indian Regional Navigation Satellite System

https://indiaeducationdiary.in/centre-states-about-the-increased-usage-of-indian-regional-navigation-satellite-system/

India’s satellite sector enters high growth phase

https://www.fiercewireless.com/5g/indias-satellite-sector-enters-high-growth-phase

Satellite Navigation Services

https://www.isro.gov.in/SatelliteNavigationServices.html

それは基礎研究から始まった

https://www.nikkei-science.com/beyond-discovery/gps/04.html

NavICで武装し、インドは自立は主張!

https://www.indiaperspectives.gov.in/ja/armed-with-navicindia-asserts-self-reliance/

地球周回衛星の周回数と回帰日数について

地球周回衛星の周回数とは、地球周回衛星は1日に地球を何周も回っており、1日に何周回っているかを示したものです。

 

地球周回衛星の多くは地球観測衛星であることが多く、日本の組織が保有している衛星では、JAXAALOS-2ALOS、アクセルスペースのGRUS、synspectiveのStriX-1、キヤノン電子CE-SAT、ソニーが打上げ予定のSTAR SPHEREが該当し、いずれも地球観測衛星です。

アメリカのSpaceX通信衛星であるStarlinkも地球周回衛星になります。

周回数

周回数(N)は、地球の軌道周期24時間(=86400sec)に対し人工衛星が地球を1周するのに要する時間(T)からから求められます。

 N=86400/T

 

周回数を計算すると、端数となることがあります。というか、ほとんどがその場合となります。

 

周回数で算出した端数分は、周回数が地球を1周する時間なので緯度の位置は同じになりますが、経度がずれていくというイメージです。

 

また、周回数が整数値になった日数がいわゆる回帰日数となります。

回帰日数

回帰日数(M)は、地球上のある地域を再度観測するには何日かかるかの日数となります。Lは整数として、次の条件で求められます。

 L=M×N

 

地球周回衛星の観測の特徴

地球周回衛星は、地球のほぼ全球を観測するために、太陽同期準回帰軌道であることが多いです。

地球周回衛星における軌道の違いの特徴の一つとして、回帰日数が変わります。

太陽同期準回帰軌道は、数十日で同じ位置を観測することができます。

太陽同期回帰軌道は、1日で同じ位置を観測することができます。

赤道軌道は、1日で何度も同じ位置を観測することができます。

 

あまり意識していないかもしれませんが、災害が発生した際の次のような特徴があります。

・1時間半前後の写真が連続して取得されている。

・1日後の写真が少し位置がずれている。

これは人工衛星の周回数と回帰日数の違いによって発生します。

 

ただし、1時間半前後の写真を取得していたとしても、人工衛星の観測範囲により元の位置から大きくずれてしまします。

 

同じ位置を観測するには、観測幅の広い観測装置を利用するか、観測装置が駆動式であったり、人工衛星自体の指向を動かして同じ位置を観測する、軌道制御装置を利用して移動するという方法があります。

 

ただし、これには小型衛星レベルだと難しい問題があります。

 

それぞれ、観測装置に駆動装置を取り付ける、指向性を動かせるだけの指向性誤可能な装置を取り付ける、軌道制御装置を取り付けるといった方法が取られます。

 

しかし、小型衛星ではそれらの装置を取り付けるスペースと電力、駆動する際に発生する振動を相殺させることが難しくなります。

 

これらに対しては、小型衛星の短納期、小コストという利点をとって衛星コンステレーションとすることで解決するのがここ数年の業界の動きとなります。

 

大型衛星では装置を搭載できれば対応可能なのですが、装置を搭載する分、スペースや電力、駆動の際の振動に影響され、観測装置そのものに制限が発生する可能性があります。

 

もちろん使用される電力が増大することから、バッテリーの配置や数量、放熱設計による観測装置への影響なども考慮しなければならず、開発期間に影響が発生してしまいます。

 

この開発期間の長期化と、一品物の開発中の不具合によるプロジェクト全体の影響をから、小型衛星が主流となっている要因の一つとも言えます。

 

参考

 

月のFACT/事実

月は地球唯一の天然の衛星です。

 

月は地球と同期して自転しているため、常に同じ面を地球に向けています。

ただし、地球から月を観測すると、見かけ上、秤動(ひょうどう)と呼ばれるゆっくりとした振動運動が見られます。

そのため、月の半分ではなく、約59%程度を観測することができます。

 

1959年にソビエト連邦の月面着陸計画によって無人のミッションが行われました。

その10年後の1969年にアメリカ合衆国アポロ11号が最初の有人着陸となります。

最初に月面に踏み入れたのはアメリカ人のニール・アームストロングで、1972年のアポロ17号のジーン・サーナンが最後に歩いています。

その後、月には無人機のみのミッションとなっています。

 

直径3,475kmで、質量:7.35×10^22kgです。

地球の約1/4のサイズで、1/81の質量です。

 

表面温度は-233℃~123℃程度となっています。

 

軌道周期:27.3日

表面温度:-233~123℃

 

地球の衛星で、年平均で3.8cmの速さで地球から遠ざかっています。

100年前の月は現在の月と比較して相対的に離れています。

月と地球の位置関係がずれることで、現在27,3日で地球を周回していますが、周回する日数が長くなっていきます。

 

地球の各地で起こっている満潮と干潮は、月の引力で引き起こされます。ちなみに遠心力ではありません。

月の引力により、地球そのものも変形しており、潮汐力(tidal force)と呼んでいます。月の引力により地球は十数センチ程度押し上げています。

 

潮汐力は海以外にも火山の噴火にも影響されることが分かっており、雲仙普賢岳火砕流、三宅島の噴火にも影響していることが分かっています。

 

地球から月への影響だけではなく、地球から月にも影響があります。

地球の引力によって月にも地震があることが分かっています。

 

宇宙飛行士が月面に訪れた際に地震計を使用したところ、月面下数キロメートルで小さな地震が発生していることが観測されています。この事実から科学者たちは地球と同じような核が存在されていると考えられています。

 

まだ月面着陸計画が成功する前に、1958年にアメリカ空軍は月で核爆弾を爆発させる極秘計画「プロジェクトA119」がありました。

宇宙開発がソビエト連邦に先行されていたことから検討されており、アメリカ軍関係者の中には、月を軍事基地として利用することや月面に核兵器発射場を建設する考えもあったそうです。