往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

ロケット打上げ環境がある施設での地上支援装置(GSE)の設計に必要な環境要素 | Lessons Learned

ジョン・F・ケネディ宇宙センター(John F. Kennedy Space Center, KSC)にはロケット発射場があります。

 

過去、スペースシャトルと呼ばれる宇宙機が現役であった時にもケネディ宇宙センターで製造され、打ち上げられていました。

 

今回は、ロケット打上げ環境がある施設での地上支援装置並びに施設内の設備で考慮すべき環境条件をまとめました。

目次

ロケット発射場は、射場や射場施設と呼ばれています。

この射場の設備は、通常の施設に比べて、射場特有の条件があります。

 

ロケット発射場の設備あるいは施設なんて何度も作るものではありません。

日本の建築基準としても、空港はあってもロケット発射場はありませんし、どの基準に沿って作るべきか悩みどころです。

 

ちなみに、宇宙活動法の一つである人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(平成28年法律第76号)に基づいて、「人工衛星の打上げ用ロケットの型式認定」、「打上げ施設の適合認定」があります。

この内容は周囲安全やロケットを制御するための飛行管制設備の設置などを定めています。(2022年8月時点)

 

建築基準法や宇宙活動法、電波法、電気事業法、電気工事法、消防法などの法律を遵守していることは必須条件として、関係省庁に確認しつつ、どのような仕様であるのか、ロケット射場のある施設内で動くために環境条件も考えておく必要があります。

 

一般的な施設の設備の仕様として、設置した自然環境への耐久と設置した施設特有の環境への耐久を考えておく必要があります。

 

今回は、新しくロケット発射場を作る、ということはそうそうないので、すでにあるロケット射場の追加設備を前提に記載していきます。

射場設備の条件

立地の検討はおいておいて、射場設備の条件は比較的単純です。

 

設備が受けるであろう環境負荷に耐える能力を有していればいいだけです。

ロケットを打ち上げる射場と、射場を制御する管理施設、燃料を注入する施設、ロケットや宇宙機を接続できる施設あるいは機械設備、簡単な気象観測施設があげられます。

 

ロケットの打ち上げ能力が高ければ、打ち上げに使用される推進力も高く、発生する衝撃音や風圧も大きいものになります。

施設はそれらの環境に耐える必要があります。

 

また、ロケットの打ち上げに影響がないように、施設から発生する電磁場の管理を実施したりと細々とした環境が変わってきます。

 

ロケット特有な環境だけではなく自然環境にも耐える必要があります。

 

例えば雷対策です。

ケネディ宇宙センター(KSC)のあるアメリカのフロリダ州南部地域は雷が多発する地域であるため、雷対策に多くの費用をかけています。

 

日本の場合、海に面している場所が多いことから海からの塩害対策も考えなければなりません。風向きや距離によっては重耐塩対策を講じる時もあります、

 

日本の場合は、台風やハリケーン対策はもちろんですが、地震や洪水、津波、積雪対策も考慮しておくことになります。

積雪の場合は融雪剤に塩が使用されることもあるため、重耐塩対策も頭に入れておくことになります。

設備に対する要求仕様

原文のLessons Learnedでは、次のフローで試験を実施することが推奨されています。

試験フローの順序としては、試験結果がNGとなった際に、開発し直した時に影響度の大きい順に実施されます。

それはスケジュールやコストの両面から考慮したうえで、特記がない限り、次の順序が推奨されています。

  • 電磁妨害
  • 低温
  • 高温
  • 熱衝撃
  • 音響
  • 振動
  • 衝撃(インパクト)
  • 湿度
  • アイシング
  • 日射
  • 真菌
  • 塩霧
  • 砂とほこり
  • 爆発
  • リフトオフブラスト
機能試験

以降の環境試験後に製品の機能性能に影響を受けていないか判断するために、環境試験前に実施します。

 

詳細である必要はありませんが、すべて正常であることを確認できる程度にの試験を実施しておくことになります。

 

もちろん、製品の品質や信頼性に関わることから、試験期間や製造コストなどが潤沢であれば、詳細な試験を実施しておくに越したことはありません。

 

試験項目を考える中で、NGレベルとして許容の限度範囲も想定したうえで実施しておくことが望まれます。

 

ここで問題が発生します。

基本的に設備の建築を依頼するのはロケットや宇宙機を開発している側なので、必要以上に試験してしまう可能性があり、宇宙業界の知見のない設備製造側からすると文字通り言葉が通じないことがあります。

 

丁寧に説明するか、転職などで知見がある人、過去に近い施設を取り扱ったことがある業者など、一枚間に挟んでおいたほうがよいです。

いや、マジで、どちらも不幸になるので。

施設設備の試験項目の前提条件

試験項目は運用方法を事前に想定した上で、設置を検討します。

施設ありきではなく、運用ありきで考えるべきです。

 

設置している機械的または電気的な接続状態を可能な限り再現して、模擬負荷での離京を測定する装置を配置しておきます。

 

もちろん試験する前に、誤接続による誤操作や機能に致命的な影響を及ぼす損傷が発生しないことを確認するために記録しておく必要もあります。

 

試験条件としては、環境的な負荷がかかる場所でも稼働するような設備の場合は、電気的に稼働した状態で試験に供する必要があります。

 

また、抜けがちなのが信頼性の検討も必要であることから、年に何回ロケット打ち上げなどの大きな衝撃を受ける可能性があるのか。

 

設備には適宜メンテナンスが必要になります。

メンテナンスのタイミングも考慮して構築した方がいいです。

 

本内容から外れますが、設備が壊れたときの代替え案や、交換方法、交換のための通路なども考慮に入れていると、長く使える設備になるのではないでしょうか。

特性試験

製品の基本的な設計特性を確認する試験も必要になります。

試験項目は、機能試験とは異なります。

特性試験は、破壊試験でない場合、通常環境試験の前に1度実施されます。

 

空気圧に関係する製品の特性試験の例として次の試験があげられます。

  • プルーフ試験:圧力容器内に初期欠陥がないことを確認する加圧試験
  • フロー試験:空気圧の流体流動性を確認する試験
  • 雷サージ試験:サージ電圧(サージ電流)を印加する試験
  • 破壊的なバースト試験:通常の電圧、信号では発生しない突発的な電気的負荷が発生したときに誤操作しない評価する試験

電気製品の場合の特性試験は、次の試験項目が含まれる場合もあります。

  • 電圧降下試験
  • 電流通電試験
  • 絶縁抵抗試験
  • ライフサイクル試験

試験は、信頼度計算のために統計データを考慮して取得します。

 

原文では「1000分の1」で発生する可能性のある障害は、ライフサイクル試験で発生するか確認します。

 

運用中に製品が受けるあらゆる環境を印加された状態で動作の劣化を確認し、信頼性を算出します。

 

耐用年数を超えて発生する故障は、設計上の故障とはしないのですが、運用時の設備のメンテナンス期間を設定するための情報として入手します。

 

ライフサイクル試験のサイクル数は、運用環境により設定する必要があります。

記録文書

試験計画とともに試験要件を文書化します。

 

文書の記録には、計画の実績とともに、検査、データ要件、試験公差(適合範囲)、機能試験、および設置要件を記載し、適合条件から適合条件から逸脱されたデータがある場合、特記事項として記録に残しておきます。

 

適合から外れた場合は、危機に対して修正を実施する必要があるが、修正された記録も残しておくことです。

 

試験結果も、内容を承認したのちに、および誰もが確認できるようにしておく必要があります。

 

また、試験を実施する組織は、試験計画に記載された試験要件に基づき、試験手順書を作成する必要があります。

 

もちろん長期的に記録は保存し、保守記録として継続して蓄積しておくことを進めます。

試験方法

電磁妨害

電磁干渉試験(EMC試験)は、電磁波によって電子機器または電気機器が誤動作または性能低下を引き起こすか確認する試験です。

電気電子機器には、外部の電磁波よる誤動作の影響を受けやすい機器が含まれています。

 

誤動作が発生すると、搭載しているコンピューターの計算が狂ったり、コンピュータープログラムのコマンドのシーケンスが変更したり、記録ディスクの記録失敗、記録時刻の変更を誤って示す原因となる可能性があります。その他には電磁弁、電源接点、信号リレーなど、外部の電磁波による誤動作の影響を受けにくいコンポーネントは、電源のON/OFFによる異常パルスを生成する場合もあります。

低温

低温試験は、運用中に起こりうる低温環境で、電子部品を含めたパーツの動作性能に影響がないかを確認する試験です。

試験項目は、低温環境が性能の低下を引き起こしているか確認する必要があることから、低温中に機能試験を実施します。

 

低温状態で発生する可能性のある問題は次の通りです。

  • 部品の収縮差
  • ガスケットの弾力性の低下
  • 潤滑剤の凝固による結合
高温

高温試験は、運用中に起こりうる高温環境で、低温試験と同じく、電子部品を含めたパーツの動作性能に影響がないかを確認にする試験です。

試験項目は、高温環境が性能の低下するという低温と同じ目的で実施されます。

 

高温状態で発生する可能性のある問題は次の通りです。

  • パッキンやガスケットの恒久的な硬化
  • 膨張差による部品の結合
  • ゴムやプラスチックのひび割れや膨らみ
熱衝撃

熱衝撃試験は、運用中に起こりうる温度環境の急激な変化が、電子部品を含めたパールの動作性能に影響がないかを確認する試験です。

熱衝撃で発生する可能性のある事象は次の通りです。

  • 材料の特性や寸法の変化による材料(特にバルブシート)のひび割れや破裂

 

熱衝撃で起こりやすい事象としては次のものがあります。

  1. ガスが空気圧コンポーネントの上流またはすぐ下流で膨張する場合
  2. 油圧作動油が高流量で制限を通過する場合
  3. 極低温流体が徐々に冷却されないアイテムに使用される場合
音響

音響試験はロケットのホールドダウンおよびリフトオフ時の音響環境が該当します。

ロケットの打ち上げを支援するために使用される地上支援装置、または施設内の設備の動作性能に影響がないかを確認する試験です。

音響環境内では、設備に対して動的な圧力変動を与えます。

 

音響負荷の周波数帯には、多くの設備の構造的な共振周波数が含まれています。

発生する可能性のある問題は次のものがあります。

  • 電気的チャタリング
  • ワイヤの摩擦
  • プリント回路基板のひび割れや破損
  • 導波管やクライストロン管の誤動作/故障

音響試験は、既存の試験施設の能力によって課せられる制約の対象となります。

振動

振動試験は、ロケットの打ち上げを支援するために使用される地上支援装置、または施設内の設備の動作性能に影響がないかを確認する試験です。

振動環境は、ロケット打ち上げ中に発生する振動環境に適用されます。

 

原文では発射場及び発射場から半径300メートル以内にある設備が対象となります。

衝撃

ロケットの打ち上げは、圧力環境を発生します。

ロケットの点火時に一部のエンジンによって生成される圧力のパルスは、応答として明確な振動ショックを誘発せず、むしろ、リフトオフ期間中のピーク振動よりも低いピーク振幅を有する過渡振動をもたらす。

 

打ち上げ中に発生する振動衝撃は、構造要素間の衝突および防振装置の固定台によって発生します。

高い衝撃は、保護回路がなく、設備内の金属同士の衝撃によって引き起こす防振装置の硬い固定台によって発生する可能性があります。この場合、衝撃環境による動作性能の確認だけでは個々の設備を評価することが難しいです。

 

試験仕様や試験手順、及び許容公差はケースバイケースで検討しておく必要があります。

温度

温度試験は、KSCで発生するような高温多湿による耐性、主に腐食への耐性を確認します。

吸湿性材料は湿気に敏感で、湿気の多い自然環境では急速に劣化します。

腐食は材料の機能性や物理的強度を失い、重要な機械的特性を変化させます。

湿気を吸収する断熱材も断熱性を失う可能性があります。

耐水

耐水試験は発射場の降雨量の影響を確認する試験です。

耐水は、雨から筐体が保護されているか、保護カバーが有効にになっているのか能力を確認します。日本では電気機器において保護等級試験、IP試験とも呼ばれます。

着氷及び凍結

着氷及び凍結試験は、外面に氷が形成されやすい設備に対して実施する試験です。

この試験は屋外施設だけではなく、極低温システムに関係する設備、大きな圧力降下が発生する気圧関係のシステム(真空チャンバー)で対象となりことがあります。

氷は設備を構成する個々の電子機器でも発生する可能性があります。

光照射/太陽光近似日射

光照射/太陽光近似日射試験では、太陽放射エネルギーの影響を確認します。

太陽放射エネルギーは、加熱、光劣化(退色)、塗料剥がれ、天然ゴムの弾性低下、プラスチックのひび割れを引き起こします。

 

光照射/太陽光近似日射試験は、運用中に日射を受ける可能性があり、受けたことで悪影響を受ける可能性のある材料で構成されている対象に実施します。

真菌

真菌検査は、真菌(キノコ・カビ、単細胞性の酵母)により発生する有害な影響を確認します。

真菌の影響の一つに成長中に有機物質の化学反応を加速する酵素分泌があります。

多くの有機物は菌類によって破壊あるいは劣化します。

またミネラル成分も真菌の胞子によって破壊されることがあります。

菌類は、断熱材、木材および木材派生物(紙)、一部の種類のシール、レンズコーティング、多くの種類の材料に影響を与えます。

温度と湿度の条件によっては、真菌の急速な成長と材料の劣化を加速する可能性があります。

塩霧

塩水噴霧試験は、塩水雰囲気の影響に対する機器の耐性を決定するために実行されます。

塩水噴霧で確認する影響は金属の腐食です。

腐食以外には、塩水堆積物が可動部品に詰まったりする可能性があります。

いわゆる加速環境試験の一つであることから、水分と塩の濃度は、通常の地上試験の濃度よりも高くなります。

砂とほこり

防塵・耐塵試験は、細かい砂とほこりの粒子を吹き付け、耐性を確認します。

砂やほこりは研磨性があるため、砂が入る可能性のある設備に影響を与える可能性があります。

砂やほこりも部品間の稼働を悪化させたり、電気的接触を妨げる可能性があります。

防塵・耐塵試験は、ロケットを設置する地域で一般的な風に吹かれた砂やほこりに晒される設備に適用されます。

これも加速環境試験で、通常のサービスよりも厳しい状態で試験することになります。

爆発

防爆試験は、危険な場所で操作した場合の設備自体の爆発発生または爆発封じ込め特性を確認する試験になります。

爆発は機械的または電気的な火花、閃光、温度、または化学反応によって発生する場合があります。

ハードウェアは(1)本質的に安全または(2)防爆の2つのカテゴリのいずれかに分類できます。

推進剤の保管場所または給油場所の近くにあるGSEおよびその他の施設の設備は、大気中濃度の高い水素やおよび 自己着火性推進剤(ハイパーゴリック推進剤)にさらされる可能性があります。

似たようなものに粉じん爆発試験がありますが、粉じん爆発試験は着火のしにくさを確認する試験です。

リフトオフブラスト(Lift off Blast)

リフトオフブラスト試験は、ロケットエンジンの排気がロケットのホールドダウン及びリフトオフ時にGSEおよびその他の設備に及ぼす影響を確認します。

爆風はケットエンジンの排気プルームにより非常に高い温度と圧力が発生します。

損傷の具合は、曝露時間、排気ガスの速度、推進剤の種類がありますが、ロケットエンジンの排気特性が最も関係します。

爆風により施設表面の浸食、保護塗装の損失、高温によるゴムおよびプラスチックの変形、亀裂、膨らみ、および圧力負荷による材料の歪み、変形を引き起こす可能性があります。

まとめ・得られた教訓

地上支援支援設備(GSE)の環境条件は、設置場所により細部が異なっていきます。

環境条件の中で最も厳しい条件で試験することは、非現実的で莫大な費用が発生します。

施設の耐久年数を考慮した信頼性の目標を確実に達成するには、実際の環境要件と信頼性要件の両方を念頭に置いて設計と試験を実施してください。

試験だけではなく、現在多くの規格が発行しており、いくつかの条件を確認した上で、試験ではなく規格に適合した材料や製品を利用することで、実際に試作試験をするよりも費用を抑えることができます。

 


 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Environmental Test Methods for Ground Support Equipment

https://llis.nasa.gov/lesson/651

ケネディ宇宙センター - Wikipedia

許認可の申請手続き

https://www8.cao.go.jp/space/application/permits.html

「Lessons learned」とは?|プロジェクトマネジメント用語、宇宙業界用語

Lessons Learnedとは、プロジェクトを実施する中で得られた知識や気づきのことです。知識や気づきには、失敗や不具合を起こした時の対処方法だけではなく、何も失敗や不具合を起こさずに対応した内容も含まれます。また、プロジェクトマネジメントの概念の一つです。

日本語では「学んだ教訓」と称することが多いのですが、とても語呂が悪い表現となっています。個人的には「得られた教訓」の方が良いとは思っています。一般には、教訓やプロジェクト教訓とすることがあります。

表現としては、Lessons learned以外にレッスンズ・ラーンドとする場合があります。

 

このブログに書かれているLessons Learnedは下記linkにまとめています参考にしてください。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

Lessons Learnedは失敗事例だけではなく、成功事例もまとめていることが大きなポイントです。

同じことを起こさないだけではなく、それぞれの工夫を記録に残すことで、実際に製品開発に携わったメンバー以外にも組織内部に情報を残すことができます。

 

実際のところ、On the Job Training(OJT)で伝えてきたプロジェクト進め方を記録に残すことができるという利点もあります。

 

[目次]

Lessons Learnedの効果

プロジェクトマネジメントやシステムエンジニアリングは、古くからNASA(米国の宇宙機関)で取り入れられていたようですが、Lessons Learnedがデータベースとして構築し始めたのは、1995年と比較的歴史は浅いです。

 

日本の宇宙研究機関であるJAXAでも、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の開発にも活用され、チーフエンジニア室と呼ばれる部署の業務の中に組み込まれることとなりました。

 

宇宙開発に限らず、プロジェクトと称される業務は、新規製品開発や建築工事などの目標を達成するための計画を指し、多くが固有の課題を有し、基本的には次の新しいプロジェクトに全く同じ教訓が活かされないものと考えられていました。

 

しかし、実際にデータベース化してみると、似たような事故や不具合が発生していることが明確となり、よりデータベースの活動を推進していくことになったそうです。

 

実際に宇宙に打ち上る製品は、部品メーカー、機器メーカー、システムメーカーなどと複数で多種の組織文化が協力して完成させています。

 

メンバーが違うだけでも、多くの教訓や知見が途切れてしまい、プロジェクトが失敗につながることは度々発生しています。

 

プロジェクトを成功につなげるために、属人化してしまう教訓を共有し、過去に起きた気を付けるべきことと見習うべきことを蓄積し、複雑なシステムの成功率を上げる効果がLessons Learnedにはあります。

開始はいつか

Lessons Learnedはプロジェクトが開始した時点で、プロジェクトマネージャーが意識してメンバーに呼び掛け、開始していくべきです。

 

人間は忘れやすいため、その都度情報を残しておく必要があります。

 

もちろんプロジェクトが終わらないと、その知見が本当に成功につながったか、分からないのですが、Lessons Learnedの情報を完成させるのではなく、意識的に残しておいた方が、振り返った時に思考を再現するときに有利になります。

 

これは、プロジェクトに追加メンバーが入った時、プロジェクトマネージャーが変わった時、組織体系が変わった時にLessons Learnedをまとめる活動を続けることを再度周知・展開する必要があります。

 

それは追加メンバーが入ったり、プロジェクトマネージャーが新しくなることは、プロジェクト自体が長期化していたり、新しいフェーズに突入したときに起こるため、伝えるとともにLessons Learnedをまとめること認識するにはちょうど良いタイミングです。

過去のLessons Learnedはリスクマネジメント管理

Lessons Learnedは過去に実際に起きた事象をまとめており、類似のプロジェクト、類似の製品、類似の構造に対して新たな気づきを得ることが来ます。

 

リスクを抽出するとき、メンバーの経験や知識を元に炙りだしていきます。

炙りだされなかった事象は、リスクとして認識できず、課題として問題が発生してから対応していくことになります。

 

課題となってからでは、対処に対するメンバー数やコストが大きくなっていきます。

 

もし品質保証が組織内に存在しているのであれば、過去に起きた事象を最もまとめており、管理されているはずです。

 

その情報を設計や製造、組立や運用に活かすためにフィードバックするのですが、品質保証自体忙しいことが多いこと、品質保証自体がフォーマット化している情報データベースの検索性が悪いことで、有効に活用されていないのが実情ではないでしょうか。

分析してまとめる

組織文化や製品の特性により画一的なフォーマットを作ることが難しいです。

 

だいたいは次の事項でまとめられています。

  • 概要:要約、時期
  • 詳細:経緯と原因、対処と結果
  • 推奨事項
  • まとめ
  • 検索用キーワード

 

ちなみに比較的多くの企業では、次の既存のシステムを利用してLessons Learned共有している企業もあるようです。

ただ、汎用ソフトですので扱いにくい場合がほとんどではあります。

参考サイト

学んだ教訓 - Wikipedia

「きぼう」日本実験棟開発を振り返って (26)―Lessons Learnedは手間がかかるが役立つ―

https://www.pmaj.or.jp/online/2101/message12.html

How to do lessons learned in project management

https://www.projectmanagementqualification.com/blog/2019/08/21/lessons-learned/

Lessons Learned in Project Management: Example and Template

https://pmstudycircle.com/lessons-learned/

システムズエンジニアリングが失敗していると思った時にチラ見する記事

システムズエンジニアリングを導入してみたがどうも失敗している。

なぜか上手くいかない。

一部の人に負担が偏って効果が見えない。

 

そんな声とともにやがて過度に増える負担と効果から部分的に効果を見せていても、社内に広まることは無くシステムズエンジニアリングから撤退していっているのではないでしょうか。

 

最近はMBSE(Model-based systems engineering)が広まるとともに、SysML言語を利用したツールにより一見手軽に扱えるようになったように思えるかもしれませんが、それでも、上記のような意見とともに、うまく扱えず失敗、あるいは失敗と言えずとも効果があったとは言えない状況で終わってしまいます。

 

今回は、宇宙機も限らず、複数の専門分野(機械、電気、ソフトなど)が関わる製品で適用したときに、失敗が起きている理由と対策の一つを述べていきます。

宇宙機では、宇宙機というシステムの下に、姿勢制御系、電源系、機械系といった複数のサブシステムがあり、その下にコンポーネントあるいはユニットという形での製品があります。このコンポーネントも、機械、電気、ソフトなどの分野に分かれます。

 

[目次]

 

ちなみに、システムズエンジニアリングを始める前提として必要な情報を過去の記事にまとめていますので、気になった方は参照ください。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

失敗事例1:システムエンジニアリングをリーダー/マネージャーしか理解しない

ソフトウェア開発でのシステムエンジニアは、各機能を作成するチームを調整し、それらの機能が上位の要求に適合しているか確認し、分析し、仕様を作成する役目を負っています。

 

客先の要求に適合できる製品を開発するために、ざっくりした要求を機能と性能に分解し、実現可能な仕様に落とし込みつつ、進めていきます。

 

では、今回のような複数の専門分野(機械、電気、ソフトなど)が関わる製品の場合はどうでしょうか。

 

突然システムエンジニアリングを導入しますと言われた他のメンバーは、ニュース記事とかでたまに出てくる単語ではありますが、内情が分かりません。

 

ある程度システムズエンジニアリングの知識がある人からしても、複雑多岐にわたるためにどこから説明していいか悩むところです。

 

こんなときに発生する問題としては、システムズエンジニアリングを推進する担当者とリーダーやマネージャークラスでどのようにメンバーを取り込み、システムエンジニアリングを回していくか、ということです。

 

とりあえずシステムエンジニアリングについて深く知っている人がいない状況から始まると、ある程度の知見がある推進する担当者とリーダー/マネージャークラスだけが、MBSEを回そうと仕組みの構築、もしかするとSysML言語によるアプリ(ツール)を始めます。

 

各メンバーは、推進担当の人とリーダー/マネージャークラスの人からツールの穴埋めに必要な情報しか入手できておらず、具体的な作業の割り振りがされていないため、ブラックボックスで進められてしまいます。

 

結果、システムズエンジニアリングの要求分析で精一杯となり、試作品や製品が製作されてから、情報を更新できずに、未完成のままとなり、効果を感じずにプロジェクトが終わってしまいます。

 

 

システムズエンジニアリングの効果とは何かというと、

 

システムズエンジニアリングの流れとして、試験結果と要求が妥当であるか、必要に応じて機能を追加したり、想定性能を見直したりします。

見直す際に各追加機能が、現在の要求や機能に影響がないかも確認します。

確認作業の中で、潜在的なリスクを共有し、事前に対策を施すことができます。

 

実際のところ、ある程度の設計・製造熟練者でメンバーが構成されている場合、システムズエンジニアリングを意識せずともリスクに対応できてしまいます。

 

これはシステムズエンジニアリングの効果の一端ですが、より分かりやすく効果を実感できる部分ではないかと考えています。

失敗事例2:システムエンジニアがプロジェクトで一人か二人である

これはMBSEでのツールを使用した場合になるんですが、複雑なシステムにおいて複数の分野にまたがっているにもかかわらず、システムエンジニアが1人か2人しかいない。

システムズエンジニアリングを学ぶのは大変です。

一様の方法というのはなく、実用化するにはほぼ確実にいくつかの方法を各プロジェクトに合わせて応用する必要があることが多いシステムズエンジニアリング。

 

ある程度の知識をもとに回せる人間をなんとか2人確保してプロジェクトを進めてみたものの、ツールをまともに動かそうとすると負荷が高くて断念してしまいます。

 

2人しか確保できない場合、下手にモデルベースとするのではなく、ドキュメントベースに移行した方が効率が良いです。

 

MBSEは、複数の分野に跨がるプロジェクトを、共通の言語で表現するため効果が高まります。

ここで必要なのは、各分野の人でもMBSEで書かれている内容を理解できることです。

 

システムエンジニアが少ない場合、複数の分野とのすり合わせが少なくなり、一部の分野では解読しなければならない言語で記述されてしまいます。

 

書かれた記述を解読もできず、更新するタイミングもなければ、MBSEを使用する人が限られてしまい、効果が落ちてしまいます。

 

MBSEのツールとして、完璧なアウトプットを出せたけど、穴埋めをすることが目的となってしまい、それをプロジェクト内の設計や運用にうまく生かすことができないまま終わってしまう可能性があります。

 

理解と関係性、影響度を明確に分かりやすくするツールとしてMBSEのツールを意識して使わないと、うまくプロジェクトの一つに回せなくなるので注意が必要です。

 

ちなみに、少人数であったり、専門分野もそれほど広くない場合は、モデルベースよりもドキュメントベースの方が効果がある場合があります。

 

2人程度の場合、ドキュメントとして知見を残すことはもちろんですが、対話により理解が早く、ドキュメント方式の方が比較的早く作成できるからです。

ツールを使用すると、穴埋めに時間がかかり、本来のコミュニケーションをおろそかとなります。

 

結果、情報抜けや更新速度が落ちてしまう可能性があります。

失敗事例3:プロジェクトが小規模である

システムズエンジニアリングは複数の専門分野が関わる製品の場合に有効に働きます。

 

失敗事例2でも記載しましたが、プロジェクトのメンバーが少ない場合、システムズエンジニアリングに則って動かそうとすると、うまく回らないことがあります。

 

システムズエンジニアリングあるいはMBSEによるツールを利用することで、ツールやドキュメントの作成に負荷が多くなってしまい、本来システムズエンジニアリングが生きるはずの効果が薄れてしまっているのです。

 

複数の分野であっても、同じ組織であり、同じチームで、同じ職場で、十分な頻度で会議が成立する人数であれば、対話やコミュニケーションの方が早いです。

 

例えば、同じ組織であり、同じチームで、同じ職場であっても、人数の規模が多い場合や使用する言語が違う場合ですと、ある一定のルールに沿った共有言語でないと、すれ違いが発生してしまいます。

すれ違いの蓄積は、ミスや要求抜け、過去の対策忘れにつながります。

 

各組織は、これらが繰り返し発生しないようにするシステムを構築していくのはもちろんですが、そうもいかないことがあります。

  • 会社そのものが違う。
  • 部署が違う。(社内の情報共有が甘い)
  • 設計と製造、組み立ての部署が違う。(社内の情報共有が甘い)
  • 人数が多い。(システムエンジニアリング、リーダーシップ不足)
  • 新規メンバーの増員が増えていく予定がある。
  • 共通言語が違う。

 

このような時に、ドキュメントベースにしろ、MBSEにしろ、情報の共有と抜けのない設計にシステムエンジニアリングが有効になります。

対策

対策の一例をあげてみます。

  • 複数のメンバーがシステムズエンジニアリングをある程度理解した上で進めること。また、完全に理解する必要はなく、始めながら理解した方が身に付きやすい。
  • システムエンジニアリングは、MBSEのツールを使用することではなく設計・試作・製造・試験・運用を検討する際に、検討忘れや試験の妥当性を評価するものという認識を持っておくこと。
  • 複数のメンバー(主にリーダー)によりMBSEのツールの管理をすること。
  • 互いの表現に誤解がないか、コミュニケーションをとり、すり合わせること。
  • コミュニケーションが取り難く、規模やメンバー、組織間の情報のやり取りが少ない場合は、ツールを使用することで補完できる。

MBSEという言葉が先行していますが、システムズエンジニアリングでは、モデルベースとなる前には、ドキュメントベースで今まで管理してきました。

 

ドキュメントベースでも、一つ一つの要求を網羅的に分析していましたが、文書が複数に渡るため、人間の頭で補完しつつ進めていました。

また、複数の分野が絡み合っているため、ドキュメントとして完成させるのにも複数のメンバーが携わり、調整するなどして時間がかかっていました。

 

実際に、システムズエンジニアリングを意識することは、ドキュメントが固まっていくプロジェクトの中盤ごろでした。

 

現在、SysML言語によるツールを使うことで序盤から、よりシステムズエンジニアリングを意識することができます。

 

システムズエンジニアリングは、多様な専門分野を統合したうえで製品を成立させていきます。

 

モデルベースという形ができるまで、宇宙機の分野では、コミュニケーションとドキュメントと人間の頭によりその差分を埋めていました。

 

ここ20年近くから生まれた宇宙関連企業・団体をニュースペースと呼び、それ以前の宇宙関連企業・団体をオールドスペースと呼んでいます。

 

ニュースペースから見て、「オールドスペースはドキュメント文化」だと称されていたのは、システムエンジニアリングをドキュメントベースで管理していたというのも理由の一つではないでしょうか。

 

システムズエンジニアリングを元に、試験の妥当性や変更点の影響度管理、リスク管理を進めてきたのは、過去の無数の失敗が積み重なった上での対応です。

ただ、現在はあまりに膨大になり過ぎて、ドキュメント管理に費やす時間が増えているのも事実です。

 

プロジェクトの規模や状況により、システムズエンジニアリングの手法を操っていただければと思います。

 

参考

システムズエンジニアリングの基本的な考え方 初版

https://ssl.tksc.jaxa.jp/isasse01/kanren/BDB/BDB06007BSEkihon.pdf

システムズエンジニアリング におけるモデルの役割

https://www.sera.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/11/sera191028-01.pdf

開発者のためのシステムズエンジニアリング導入の薦め 

https://www.ipa.go.jp/files/000059776.pdf

株式会社レヴィ ブログ

https://blog.levii.co.jp/

 

 

航空宇宙光学システムの超精密ダイヤモンド切削・研磨技術 | Lessons Learned

ダイヤモンド切削とは、ダイヤモンド工具を利用して物体を削る技術のことを指します。

 

ダイヤモンドは炭素により構成される構造であることから高い熱伝導率を持ち、削る対象に対して熱を拡散させながら切削することができます。

 

切削により発生する物体間の摩擦による熱は、切削対象に熱を蓄積させ、変形させたり、劣化させる可能性があります。

特に高い精度を求められる部品に対しては、切削による熱を調整するために、切削速度を調整することもあります。

 

ダイヤモンド工具を利用することで、他の工具では歪んでしまう対象も、比較的歪みにくく切削することができるため、有効活用されています。

 

人工衛星や宇宙探査機、宇宙望遠鏡は、非常に離れた対象の情報を取得します。

非常に多くの情報を入手するためには。より多くの光を集める必要があり、大きなレンズが必要になります。

大きなレンズによって集められた光を集約させるために、計算された曲線により光を集める必要があります。

歪まない、ぼけのないデータを入手するためには、レンズの形状まで計算しつつ整える必要があります。

 

そこでダイヤモンド工具が使用されるのですが、今回の紹介はダイヤモンド工具を利用した切削技術の情報がありましたので集めてみました、。

[目次]

 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。 

高品質の光学レンズとは

高精度の光学システムを製造するには、ダイヤモンド工具を利用し、厳密に制御された切削プロセスにより信頼性の高く、良品質のレンズを製造することができます。

 

良質な光学システムを製造することができれば、様々なアプリケーションに適する頑丈で温度補償型のアクロマティック(アクロマート)光学レンズを製作することができます。

 

レンズには、光を集めて一つの焦点に集める役割を持つのですが、レンズの製作精度や周囲の熱環境など様々な事情で、完全に光が集まらない現象を収差と言います。

集めた光の色によって生じる「色収差」、光の色によらず生じる「(単色)収差」があります。製造による歪みにより発生する収差に球面収差、コマ収差が発生します。

 

アクロマティック光学レンズとは、収差が発生しない(収差を除去する)ように、設計されたレンズのことで、主に色収差を除去したレンズのことをいいます。

ダイヤモンド切削技術に有効に働く観測機器

ダイヤモンド切削技術は、金属、樹脂、および高品質の光学表面を成形するための製造プロセスです。

 

ダイヤモンド切削技術は、切削工具を使用して、光の波長の何分の1かの精度で精密加工する機能を備えており、高品質のレンズの製造に適しています。

 

ダイヤモンド切削技術による表面仕上げ品質は赤外スペクトルの中波長から長波長領域の光学部品に適しています。

表面仕上げとは、荒い切削により大まかな形状を成形し、いくつかの工程を得て、最終的に表面上の加工を行い、外観や最終性能を整えることといいます。

 

ダイヤモンド工具による加工は、取り付けボス、位置合わせフランジ、およびリブ補強材を含む構造基板上にミラーの反射面を加工することができるため、金属ミラーの製作に有効です。

振動用の影響を低減する

コンポーネントを加工できる精度は、工作機械の動的な動きをワークピースで制御できる範囲に部分的に依存します。

 

ダイヤモンド旋盤に悪い影響を与える振動は、旋盤機械自体を補強するか、防振マウントに取り付けることで最小限に抑えることができます。

 

振動を減らすには、花崗岩のブロック、または防振材で囲まれた地下のコンクリートブロックに機械を取り付けることが有効です。

 

ダイヤモンド旋盤に加えて、高精度のレンズを製造するためには、剛性やバランスの取れたエアベアリングスピンドル、ストレートスクエアウェイなどの工具、レーザー干渉フィードバックを使用した制御装置なども含まれます。

温湿度の管理を行う

精度の高いレンズを製造するには、大気の湿度や大気圧といった微妙な変化にも影響を及ぼすことが分かっているため、均一の環境で加工する必要があります。

 

湿度だけではなく温度も管理すべき要素になります。

温度制御の失敗は、加工精度が失敗する最大の原因でもあります

温度制御は、加工部分だけではなくダイヤモンド旋盤機械全体も同一の環境にすることが望まれており、±0.01度に維持する必要があります。

 

ダイヤモンド旋盤機械だけではなく、切削する材料も温度環境の影響を減らすために、加工する前に、熱平衡状態にする必要があります。

加工精度に影響する機械制御パラメータと互換性のある材料

ダイヤモンド旋削による表面仕上げは、次の条件で決まります。

  • 切削工具の半径
  • 切削送り速度
  • 切削深さ
  • すくい角(切削対象の面と切削工具が摩擦するときに切りくずを流しだす面との角度)
  • 工具摩耗
  • 切削油の安定した供給
  • 機械自体の剛性
  • 機械加工される材料

ダイヤモンド旋削と互換性のある材料

炭素を含む金属は、機械加工の高温により炭素とダイヤモンド工具に化学反応が発生するため、機械加工が困難となります。

切削工具の速度設定

切削工具の回転数は切削速度の影響を受けません。

 

円形プレート面を切削している場合、鏡面反射仕上げ(面の凹凸なく仕上げる加工法)を維持しながら、外周の縁(ふち)より4572メートル/分の切削速度で進めていき、プレートの中心でゼロとなるように切削速度を制御していきます。

 

通常は、前工程の切削によるダメージを減らすことを目的として、徐々に細かい切削にしていくプロセスを組んでいます。

この工程では、127~510ナノメートルシャープペンシルの芯以下)の仕上げの深さを求められることも少なくありません。

 

送り速度(切削工具を移動させる速度)は、工具のサイズと形状が許す限り大きくすることができますが、通常は1回転あたり0.25ミリメートル未満で設定されます。

機械や工具の剛性(強度)

剛性のある工作機械は、ダイヤモンド旋削の重要な部分です。

 

振動や突然の衝撃により、ダイヤモンド工具に不意なダメージを与えることになり寿命が短くなります。

 

高い切削速度には十分なスピンドルパワー(工具を回転させる軸の強度)が必要であり、剛性が高ければ刃先への圧力が軽減されます。

工具の切削油と工具の管理

切削油の使用は冷却と摩耗を減らし、切りくずの除去を助けます。

最も一般的な切削油は、ジェット燃料と軽量の機械油です。

 

ダイヤモンド工具の刃先は、取り扱い中やセットアップ中の不注意による損傷から保護するために、使用しないときはプラスチックまたはゴム製のキャップで覆っておきましょう。

ダイヤモンド旋盤と標準の工作機械

ダイヤモンド旋盤を標準の工作機械と区別する設計上の特徴は次のとおりです。

  • マシンベースの剛性と安定性
  • スピンドルの精度と再現性
  • スライドの精度と再現性
  • サーボ性能
  • 振動制御
  • 温度管理
  • 位置決め精度
  • ツールのサポートとセットアップ

 

外部振動は、スピーチの音波でさえ、ダイヤモンド旋削加工品の表面仕上げに影響を与える可能性があります。

 

3点空気圧ダンピングシステムは、機械からの振動と衝撃を分離し、スライド位置とワークピースの重量の変化に対応するための自動レベリングを提供します。

 

さらに調整するのであれば、シミュレーションと有限要素解析を実行して、機械の剛性と固有振動数を調整したうえで構築します。

 

巨大な切削対象の場合、複数回にわたり切削工程を繰り返すことになるのですが、回転数や切削仕上げの精度を再現するには、静水圧を調整するスピンドルも必要になります。

 

油圧供給ポンプによる振動を防ぎ、発熱を抑えるために、圧縮された空気の流量を調整する軸受けであるエアベアリングを利用します。

 

どちらのシステムも、10マイクロインチ未満の回転精度を得ることができます。

 

切削工具との振動を除去するために、各モーター駆動の際に発生する振動メカニズムを分離する必要があります。

 

マシンのスライドは、1マイクロインチ以下に制御するために、切削工具とスピンドルの間でスムーズに動かせるように、モータの制御を行う必要があります。

 

まとめ

光学システム(光学レンズ/光学素子)を切削・研磨する際に、マシンの環境やマシン自体発生する振動から保護しないと、性能が劣化し、信頼性そのものも低下しる可能性があります。

 

光学システムは、観測装置の性能に直接かかわるため、性能が劣化した場合、最終的な性能未達となるため、製造のやり直しが発生し、コストが増え、スケジュールの遅延を引き起こします。

 

超精密ダイヤモンド切削技術を含めた製造技術は、従来の光学レンズの切削および研磨より徐々に変わっています。

 

以前の手法では製造できないような精密な解説、屈折、反射、高性能な光学部品を早く製造することができます。

新しい手法で製造された光学素子は、厳密に制御された環境で機械加工されることで、信頼性、耐久性、および精度を向上することができます。

 


 

最後に

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

ダイヤモンドペレット研削工具(MF

https://technology.nasa.gov/patent/MFS-TOPS-83

https://llis.nasa.gov/lesson/755

宇宙の技術は役に立つ!宇宙技術のスピンオフその3【基礎から知りたい】

日本ではアメリカに比べてコストを抑えている方(特に宇宙探査)だが、宇宙開発には多くのコストがかかります。

 

現在でもそう考えられているのかわかりませんが、宇宙の研究開発に科学的経済的な価値があるのか多くの疑問を投げかけられた時がありました。

 

今回は宇宙業界で生まれて、現在一般に広まっている技術(スピンオフ)についてまとめました。

 

これは日本でも現在多くの宇宙関連が起業しているが、将来宇宙業界ではなく技術的に別の分野でも通用する新しい技術を手にする可能性があるとも言えます。

 

心臓の健康を監視する画像処理ソフトウェア

NASAカルフォルニア州にあるジェット推進研究所の研究員によって、火星探査機オービターや無人宇宙探査機ボイジャーのミッションとして、撮影した画像を処理するためのソフトウェアを開発しました。

 

このソフトウェアは、1997年に設立したMedical Technologies International Inc.の医療機器に搭載されました。

 

医療機器では超音波技術を用いて、頸動脈の厚さを測定し、心臓発作や脳卒中を引き起こす前に動脈硬化を検出できるような機能を持つことができました。

 

2次元シンボル(QRコード)認証システム

現在はスマートフォンに標準装備されている2次元シンボル認証システムですが、NASAで開発された技術です。

 

NASAのマーシャル宇宙飛行センターにより、スペースシャトルの部品を識別し、情報を追跡させるため、従来のバーコード認識システムより正確に読み取れ識別でき、追跡するためのシステムとして開発されました。

 

スペースシャトルのシステムは数十万の部品で構成されており、品質保持のために製造履歴や使用実績のデータをすぐに確認できるように部品にマーキングする技術が必要でした。

しかもスペースシャトルが晒される環境のため、マイナス250度からプラス2000度を超える環境下でも識別できる必要がありました。

 

従来のバーコード認識システムでは、部品が小さい、特殊形状、高温環境などの理由によりバーコードラベルを保持することが困難な状況にありました。

 

現在、2次元シンボルと呼ばれているVeriCodeがカリフォルニア州にあるVeritec、Inc.で開発されバーコードよりも多くの情報を、小さい空間に収め、部品の表面に容易にマークすることが可能となりました。

 

バーコードと同じサイズで100倍の情報を収めることができるVeriCodeは、CCDカメラより容易に精度も高くスキャンでき、人的エラーを減らすことも可能としました。

 

デジタルマンモグラフィ

光を電荷に、そして信号に換えて転送する機能を持つCCD(Charge Coupled Devices 電荷結合素子)は、1969年に発明され、イメージセンサーとしてハッブル宇宙望遠鏡に搭載されました。

 

ハッブル宇宙望遠鏡に搭載するにあたり、超高感度のCCDの開発に努めました。

 

米国LORAD社(現Hologic社)は 、超高感度のCCDをさらに改良し、デジタル乳房撮影装置に採用しました。この装置はいくつかの角度から乳房の高度解像度X線デジタル画像を取得し、CCD信号を3次元画像に変換します。

変換するだけでなく、装置内で疑わしき場所を特定することができます。

 

従来、外科的な検出により確認していたことをより正確に、素早く、安価にすることができたのです。

 

また、ハッブル宇宙望遠鏡は打ち上げ直後の時点で、鏡が歪んでおり、分解能が劣化していました。そして、取得できるデジタル画像に対して、この鏡の歪みを補正するための画像処理と強調技術の開発することになりました。

 

この開発はハッブル宇宙望遠鏡のCCDに当たった宇宙放射線によりデジタル画像に残される小さな白点(ノイズ)を識別する方法を開発していました。

 

一方で、この検出する過程が、乳房X線検査で検出する腫瘍形成の初期に確認できるカルシウムなどの石灰化に非常に似ていることが分かりました。

 

さらに、米国のジョンズホプキンス医療機関、国立科学財団(NSF)、コダック社により、デジタル画像に対する宇宙放射線の検出および除去技術が、カルシウムなどの石灰化を今までより鮮明に識別できることに気づきました。

 

ハッブル宇宙望遠鏡の技術は天文学への貢献以外に医学分野でも広く使用されています。

 

 

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

参考

Medical Technologies International, NASA Johnson Space Center Partner on Cardiovascular Testing for AstronautsMedical Technologies International, NASA Johnson Space Center Partner on Cardiovascular Testing for Astronauts

https://www.dicardiology.com/content/medical-technologies-international-nasa-johnson-space-center-partner-cardiovascular-testing

Electronic Fingerprinting for Industry

https://spinoff.nasa.gov/node/9846

ELECTRONIC FINGERPRINTING FOR INDUSTRY

https://er.jsc.nasa.gov/seh/pg108s95.html

Hubble X-rays aid health Technology: Space Telescope contributes to making breast exams easier.

https://www.baltimoresun.com/news/bs-xpm-1997-02-11-1997042113-story.html

"Cool" Laser Heart Surgery

https://www.nasa.gov/audience/foreducators/postsecondary/features/F_At_the_Hostipal_with_NASA.html

Combating Breast Cancer - Research & Diagnosing Technology

https://www.nasa.gov/vision/earth/technologies/combat_cancer.html

製品と市場シェアに関わるランチェスター理論

ランチェスターシェア理論、クープマンモデル (クープマンの目標値)

マーケティング用語で市場において何%シェアを獲得していれば、市場において安定であるか、どの市場に対して影響があるかをアメリカの数学者B.O.クープマンのランチェスターの戦略方程式を日本の田岡信夫と斧田大公望により算出した指標です。

 

やみくもにTOPシェアを目指すのではなく、現在の組織規模や市場規模に応じた戦略目標として利用されることが多いです。

 

 

 

独占的市場シェア:73.9%

「独占的寡占型」と呼ばれ、首位が絶対安全かつ優位独占の状態をさします。

これ以上のシェアの獲得は、独占市場となり、市場そのものの活性化を失わせる恐れがあります。

一方で、メーカーの場合は製造責任が生じるために、事業責任が生じることがあります。やめるにやめられないという状況にもなりかねません。

 

安定的トップシェア:41.7%

実質3組織以上の市場競争の場合、業界において優位な位置となり、安定した事業展開を展開することができます。

 

市場影響シェア:26.1%

安定とはいえないまでも、競争状況から他社よりも一歩抜け出した状態と判断されます。

一般的な業界トップ、もしくはシェア2位であっても市場に影響力を与える地位にあると言えます。

 

この上位3つの目標値が、企業戦略において今後の発展を考える上での目標値となります。

以下の目標値は、競合相手が多く、安定した地位ではないのですが、認知度、知名度が高いと判断されたり、撤退目標となる数値になってきます。

 

並列的競争シェア:19.3%

各社組織で拮抗している競争状態の時に多いシェアで、業界トップであったとしても安定した地位を得られていない状況です。

競合他社より先に、次の市場影響シェアまで到達することが望まれます。

 

市場認知シェア:10.9%

市場/業界において顧客や競合他社から強く存在を認知される地位になります。

競合他社も同レベルである場合、シェアの奪い合いが発生しています。

 

市場存在シェア:6.8%

一般に、市場/業界で認知される地位になります。

シェアが落ち込んでいっている場合、新しい戦略を打ち出したり、事業撤退の基準ともなるレベルです。

市場において最低限確保するべき数値です。

 

市場橋頭堡シェア:2.8%

市場/業界に参入した際に最初の目標となる数値となります。

競争戦略を始める上での値となります。

 

 

参考

シェアの目標数値(しぇあのもくひょうすうち)

https://www.itmedia.co.jp/im/articles/0807/01/news164.html

自分を見つめ、敵を知る市場占有率・市場シェアのサイン クープマンの目標値

http://www.systrat.co.jp/theory/theory03coopeman.html

The Lanchester Model

http://www.remnet.com/lanchester.html

熱伝達率を求めるためのニュートン冷却の法則【熱設計者向け】

熱解析での入力要素値:熱伝達率

目次

式だけ知りたい方は最後だけで問題ないです。

 

熱シミュレーション(熱解析)の入力要素の中に熱伝達率(Heat transfer coefficient)という係数が存在します。

 

固体や流体、気体といった相や物資間での熱の伝わりやすさを示す値です。

単純な熱移動だけではなく、時間平均でも考えるため、算出するには時間を考慮に入れることが多い。

単位はW/(m2·K)。単位面積と温度差当たりの伝熱量のことで、記号としてhが使われます。

 

そして熱伝達率は熱伝導率(thermal conductivity)とは違います。

熱伝導率の単位はW/(m·K)。物体の熱の伝わりやすさを示す値です。

 

熱伝導率の方が一般的でに知られており混同されていることが多く、物体のデーターベースに記載されていると思いきや、物体の組み合わせが多いためにデータベース化されていることが少ない数値です。

 

また、宇宙機の設計開発では、熱の移動に関わる熱伝導、熱対流(熱伝達)、熱放射のうち、大気がない(薄い)ため、熱対流を除いた熱伝導と熱放射の要素が大きいです。

 

宇宙自体が氷点下を下回る空間であることから宇宙機は常に冷やされ続けています。

現時点では大きく発熱する物体による熱放射を考える必要がありますが、それよりも周囲に何もなく冷え続いている環境から、宇宙機設計において熱伝導の方がより熱を運ぶため、重要度が高くなります。

 

ただ、物体が大きくなればなるほど、物体自体の熱の逃げにくさを示した熱容量が大きくなります。その分、熱伝導よりも熱放射が宇宙機の熱のコントロールに寄与する割合が大きくなっていきます。

 

さて、熱伝導は熱の伝わりやすさを示しており、同一の物体内(熱伝導率)の熱の移動を示しています。

 

しかし、物体は個別に機械的に非接触で構成されておらす、ボルトやワッシャなど様々な物質の接触や固着によって成り立っています。

 

このときに考える要素が、熱対流の中に含まれる熱伝達のことで、接触している物体間(熱伝達率)の熱の移動のことでもあります。

 

通常の熱計算の場合ですと大気中であることから対流の影響が大きすぎるために、相対的に熱伝達の影響が低くなってしまい、解析の要素でも小さく、結果的に情報が少なくなってしまうのが実情です。

 

地球とは違い対流の影響が小さく、熱伝達の影響が大きくなることから、適当な数値ではなく、影響ある数値として、熱設計並びに熱解析を行う上で実験値やタイトルにあるニュートン冷却の法則(Newton’s Law of Cooling Derivation)による近似値で算出していきます

 

ニュートン冷却の法則から熱伝達率を求める

ニュートン冷却の法則の考え方は他のサイトに任せるとして、熱伝導率を求めるために必要な数値をまとめてみます。

  • 物体の熱量Q [J]
  • 物体の熱容量C [J/K]
  • 物体の伝熱表面積S [m2]
  • 熱伝達率h [W/(m·K)]
  • 物体の初期の表面温度T0 [K]
  • 物体の時間経過後の表面温度T [K]
  • 周囲の環境温度Tm [K]
  • 初期温度からの経過時間t [sec]

ニュートン冷却保存の法則は実験により算出された経験式です。

the rate at which a warm body cools is proportional to the difference between the temperature of the warm body and the temperature of its environment.

 dQ/dt = - hS(T-Tm)

で表記され、微分方程式を解くことで次のように表すことができます。

 T=(T0-Tm)exp(-hSt/C)+Tm

 

試験のコンフィギュレーションを考えてみる

ここからさらに熱試験を想定していきます。

 

まずは温度センサー。

熱試験で熱を温度に数値化するには温度センサーを貼り付ける必要があります。

値段は高いが、精度が高く劣化も少ない標準的に使用されることが多い、白金の温度センサーで考えます。

 

次に試験条件ですが、こういったものは恒温槽やチャンバー内での実施を想定しましょう。

宇宙機においては周囲に大気がないため可能な限り真空の条件で測定を行いましょう。

 

条件は「測定する物体の温度が安定する前」、かつ「周囲環境温度が安定した後」で考えましょう。

 

一つは、真空恒温槽内で温度を下げて(あるいは上げて)いきます。

恒温槽内の温度が安定した状態で、測定する物体の温度の測定を開始します。

その後、物体の温度が安定したら(温度の振れがなくなったら)測定終了です。

 

ただし、物体には熱容量という温度の下がり難さ上り易さを示す物理量が存在し、物体が小さすぎたり、熱容量自体が小さい場合ですと、周囲(恒温槽)の温度が安定した段階で、物体がすでに安定する可能性があります。

そのため、ヒーターを用いて物体に集中して熱を掛ける仕組みを作ることでその課題を解決させます。

 

さらに考えるべきは、温度センサーの固定方法ですね。

組織によって違うかもしれませんが、剥がし剤も販売されているアロンアルファといったエポキシ系接着剤などが固着方法に使われているのではないでしょうか。

 

接着剤は温度センサと測定する対象の物体に挟まります。

 

測定したい2つ以上の物体間の伝達率の間に、接着剤という物体も考慮する必要があるかを考えなければなりません。

まあ大抵は、接着剤自体に導通成分のあるものを利用するか、熱解析モデル全体を考えたときに影響する要素が小さいため、無視してしまうことがあり、多くは後者の無視を選択することが多いです。

 

それでは各々試験をしたということでまとめに行きましょう。

 

物理実験としては「Newton's law of cooling experiment」と検索するといろいろと出てきます。

www.youtube.com

データ取得後に、ニュートン冷却保存の法則を利用して算出する

さて、再び文字の定義と数式を見てみます。

  • 物体の熱容量C [J/K]
  • 物体の伝熱表面積S [m2]
  • 熱伝達率h [W/(m·K)]
  • 物体の初期の表面温度T0 [K]
  • 物体の時間経過後の表面温度T [K]
  • 周囲の環境温度Tm [K]
  • 初期温度からの経過時間t [sec]

ニュートン冷却保存の法則

 T=(T0-Tm)exp(-hSt/C)+Tm

さらに多くの場合、簡略のためS=Cと置いて、次式で計算することが多いです。

 T=(T0-Tm)exp(-ht)+Tm

 

実際の計算ではさらに、M=exp(p) ⇔ p=ln M という対数の公式と底の変換式を利用します。

 h= ーt×ln{(T-Tm)/(T0-Tm)}

Excelであれば下記式でh:熱伝達率を求めることができます。

  =-t*LN*1

 

ニュートン冷却の法則は実験によって求められた近似式であることを念頭に活用しましょう。

 

参照サイト

熱伝達率

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E4%BC%9D%E9%81%94%E7%8E%87

熱伝導率

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E4%BC%9D%E5%B0%8E%E7%8E%87

Newton's law of cooling

https://en.wikipedia.org/wiki/Newton%27s_law_of_cooling

Heat transfer coefficientHeat transfer coefficient

https://en.wikipedia.org/wiki/Heat_transfer_coefficient

*1:T-Tm)/(T0-Tm

基本宇宙計画の重点事項(2022年5月版)の内容を年表で書き出してみた

基本宇宙計画とは

基本宇宙計画は、宇宙の大きな可能性と、現在我が国が直面している厳しい状況を認識し、今後20年を見据えた10年間の宇宙政策の基本方針を以下のとおり定め、官民の連携を図りつつ、予算を含む必要な資源を十分に確保し、これを効果的かつ効率的に活用して、政府を挙げて宇宙政策を強化していくものです。

 

今回参照するのは、令和2年6月30日閣議決定された基本宇宙計画を元に策定された、令和3年12月28日宇宙開発戦略本部決定された基本宇宙計画工程表(令和3年度改定)における、令和4年5月20日宇宙開発戦略本部にて示された宇宙基本計画工程表改訂に向けた重要事項を元にまとめました。

 

宇宙基本計画工程表改訂に向けた重要事項は次の改訂に向けた重点事項をまとめたものなのですが、各重点項目でまとめていることから年代が分かりにくい側面があります。

 

さらに上位の基本宇宙計画工程表に年表がありますが、各項目でまとめられていることから、年間分けでまとまった情報がありません。

 

ということで勝手にまとめました。太字は重点項目ですね。

2021年度
  • 11 月にロシアが衛星破壊実験を行った
2022年度
  • X バンド防衛衛星3 号機を打ち上げる。
  • 即応型小型衛星システムである短期打上型小型衛星の実証を打ち上げる
  • SAR、AIS 複合利用で把握した船舶情報や各種衛星情報等との組み合わせにより船舶の識別や行動を分析するデータを取得するALOS-4を打ち上げる
  • 宇宙状況把握運用システムの一部として整備する民間事業者等に宇宙状況把握に関する情報を無償提供する機能の運用試験を行う
  • 準天頂衛星システムの衛星安否確認サービスとスマートフォンによるアドホックネットワーク技術を組み合わせ、一般の通信回線が途絶した状態でも、比較的低コストで広範囲に渡って災害直後から安否情報の収集等が可能になる技術を開発し、システムの評価を継続して実施する
  • X線分光撮像衛星(XRISM)及び小型月着陸実証機(SLIM)を打ち上げる
  • 商業デブリ除去関連技術実証に取り組む
  • 衛星通信における量子暗号技術の基盤技術を確立する
2022年度以降
  • HTV-X の 1号機、2号機、3号機を打ち上げる
2023年度
  • 宇宙状況把握システムの運用開始する
  • 気象庁総務省が連携して、台風・集中豪雨の監視・予測、航空機・船舶の安全航行、地球環境や火山監視等、線状降水帯等の予測精度向上に向け、大気の3次元観測機能など最新の観測技術を導入した次期静止気象衛星の製造に着手する
  • 温室効果ガス観測センサ 3 型(TANSO-3)、高性能マイクロ波放射計 3(AMSR3)及
    び両センサを搭載する温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)を打上げる
  • イプシロン S ロケットの実証機を打ち上げる
  • 準天頂衛星システム7 機体制構築
  • 宇宙状況把握運用システムの一部として整備する民間事業者等に宇宙状況把握
    に関する情報を無償提供する機能の本格運用を開始する※政府側と民間側で意図的に分けられているのか不明
  •  ESA が行う衛星システムEarthCARE/CPRの打ち上げる(日本側は支援する)
  • 革新的衛星技術実証プログラム3号機を打ち上げる
  • フルデジタル通信ペイロードを搭載した技術試験衛星9号機を打ち上げる
2023年度以降
  • JAXA の宇宙状況把握システム(レーダ、光学望遠鏡および解析システム)を用いて、解析能力の向上を行うとともに、防衛省が運用する我が国の宇宙状況把握システムへ観測データを共有し、我が国の宇宙状況把握能力の強化を図る
  • 宇宙分野の人材育成の強化に向けた検討を行う
2024年度
  • 人類初の火星圏からのサンプルリターン実現に向け、火星衛星探査計画(MMX)の探査機を打ち上げる
  • 深宇宙探査技術実証機(DESTINY+)を打ち上げる
  • 海外向け高精度測位補強サービス(MADOCA-PPP)の実用サービスを開始する
  • 災害・危機管理通報サービスによる配信情報の拡張のためのシステムを運用開始する
  • 測位信号のなりすまし(スプーフィング)を防ぐ信号認証機能の正式運用を開始する
  • 将来の宇宙輸送システムの研究開発の、国際協力による1段再使用飛行実験を行う
  • アジャイル開発・実証の実現に向け、小型技術刷新衛星研究開発プログラムの衛星として 2024 年度に初号機を打ち上げ、実証実験を行う
  • 革新的衛星技術実証プログラム4号機を打ち上げる
2020年代前半
  • 国内での事業化を目指す内外の民間事業者における取組状況や国際動向等を踏まえ、必要な環境整備の在り方及びその実現に向けた進め方について、早期に具体化する
2025年度
  • 地球低軌道から地上へのマイクロ波方式によるエネルギー伝送の実証を開始する
  • 災害・危機管理通報サービスのアジア・オセアニア地域での正式運用を開始する
  • 日本の民間事業者による小型 SAR 衛星コンステレーションの構築する(国側としては支援する)
  • 欧州宇宙機関と協力し、国際水星探査計画(BepiColombo)の探査機の水星到着し、運用を開始する
  • 高精度な航空用の衛星航法システム(SBAS)の整備のため、準天頂衛星 7 機体制による安定した測位補強サービスを開始する
2025年度以降
  •  ISS 運用期間への参加の可否については検討中
  • 商業デブリ除去技術実証を取り組む(2022年度は関連技術実証)
2026年度
  • 宇宙状況監視衛星(宇宙設置型光学望遠鏡)を打上げ、宇宙状況把握システムの体制強化を完了する
  • 高感度太陽紫外線分光観測衛星(Solar-C(EUVST))を打ち上げる
2027年度
  • 赤外線位置天文観測衛星(JASMINE)を打ち上げる
2028年度
2029年度
  • 線状降水帯等の予測精度向上に向け、大気の3次元観測機能など最新の観測技
    術を導入した次期静止気象衛星を運用開始する
  • 人類初の火星圏からのサンプルリターン実現する
2020年代後半
  • 日本人の月面着陸の実現を図る
2050年
参照サイト

宇宙基本計画 - 内閣府

https://www8.cao.go.jp/space/plan/keikaku.html

重点事項(令和4年5月20日 宇宙開発戦略本部決定)

https://www8.cao.go.jp/space/plan/plan2/kaitei_fy04/juten_all.pdf

地球軌道上の熱環境 | Lessons Learned

地球軌道上の熱環境

地球軌道上の熱環境というのは、人工衛星の熱解析やデブリ落下解析で使用されます。

 

宇宙機を製造するにあたり、どんな熱環境を意識する必要があるのかといったことは他に譲るとして、今回は熱解析で利用されるパラメータについてまとまった情報を紹介します。

ドライビングイベント

地球の軌道の熱環境を正確に予測するには、次の要素を考える必要があります。

  • 公差のある季節変動
  • 太陽
  • アルベド:天体に入射する光に対する反射光の比率
  • 地球の放射エネルギー

 

太陽定数

まずは太陽定数を考えます。

 

太陽の定数とは何のことだと思うかもしれませんが、単位面積当たりの単位時間のエネルギー量を示しています。

 

公称の太陽定数値は1367.5 W/m2です。

 

ただしこの平均値は地球と太陽の距離により変動し、季節変動によって公称値から±3.5%変わります。今までの観測結果より太陽定数の精度は±0.5%です。

 

下記に北半球における季節値を示します。

 

公称 1367.5 W/m2 
冬季 1422.0 W/m2(NOM + 4.0%)
夏季 1318.0 W/m2(NOM-4.0%)

 

この季節値や近日点が冬にある通り、冬の方が太陽から受ける(放射)エネルギーがが大きいことが分かります。

 

ちなみに北半球において、冬の方が寒いのは地球の地軸が約66.5度、太陽から遠ざかる方に傾いていることが理由です。

 

あくまで地球の中心から太陽との距離であることから体感とは感覚が違う現象が起きています。

アルベド係数

アルベドは天体に入射する光に対する反射光の比率のことです。

公称アルベド係数は0.30で、変動が±0.05程度です。

また、地球の温度とアルベドは緯度によって異なるため、軌道が極軌道または赤道軌道のいずれかの極値に近づくにつれて、詳細な値が変わります。

 

ただし、熱容量が小さく、形状も軽い物体でない限り、特定の軌道において詳細な変動値を考慮する必要はありません。

 

熱解析におけるワーストケース(最悪ケース)を実施する場合は、以下の値を用います。

 

ノミナルケース(定常ケース):0.30

ホットケース(高温ケース):0.35

コールドケース(低温ケース):0.25

 

熱設計においてはホットケースやコールドケースを先に解析することが多いですが、通常運用時の熱バランスも衛星運用の成立性を検討するために、ノミナルケースも早期に解析を行う必要があります。

地球の放射エネルギー

地球が放射する赤外線エネルギーの公称されている地表面温度は255Kで、241W/m2のの加熱率となります。

 

太陽、アルベド、および地球の放射熱には次の関係式が成り立ちます。

 

 地球の放射エネルギー(熱)=[(1-アルベド係数)×太陽定数]/4.0

 

地球の放射エネルギーを計算するソフトウェアプログラムは、適切なホットケース、ノミナルケース、またはコールドケースの太陽定数とアルベド値、地球温度を使用する必要があります。

 

推奨されるケース

ノミナルケース

 太陽定数:1368 W/m2

 アルベド係数:0.25

  地球放射エネルギー:256W/m2

  地球表面温度:258K

 アルベド係数:0.30

  地球放射エネルギー:239W/m2

  地球表面温度:254K

 アルベド係数:0.35

  地球放射エネルギー:222W/m2

  地球表面温度:250K

冬季ケース

 太陽定数:1422W/m2

 アルベド係数:0.25

  地球放射エネルギー:267W/m2

  地球表面温度:262K

 アルベド係数:0.30

  地球放射エネルギー:249W/m2

  地球表面温度:258K

 アルベド係数:0.35

  地球放射エネルギー:231W/m2

  地球表面温度:253K

夏季ケース

 太陽定数:1318W/m2

 アルベド係数:0.25

  地球放射エネルギー:247W/m2

  地球表面温度:256K

 アルベド係数:0.30

  地球放射エネルギー:231W/m2

  地球表面温度:251K

 アルベド係数:0.35

  地球放射エネルギー:214W/m2

  地球表面温度:246K

 

地球を周回する人工衛星の熱設計は、外部エネルギー源を考慮する必要があります。

 

人工衛星に入射する最も重要な外部エネルギー源は、太陽、地球の熱放射、および地球から反射された太陽エネルギー(アルベド)です。

 

地球と太陽の距離の変動によって人工衛星に入力されるエネルギーの変化、および太陽定数の測定の精度は、熱解析を実施する重要なパラメータとなります。

 

学んだ教訓

このガイドラインで説明されているように環境の熱効果の変動を考慮しないと、熱分析が不完全になります。

 

宇宙船の温度変化は大幅に過小評価される可能性があり、それによってその信頼性が低下します。

 

推奨事項

地球オービターの熱収支を計算するときは、太陽定数、アルベド、および地球放射について現在受け入れられている値を使用してください。

 

この方法では、スペクトル効果やコリメーションを考慮せずに、黒体の場合の加熱速度を提供します。

終わりに

地球軌道上の熱環境は教科書にはまとめられていない項目です。

 

JAXA共通技術文書でも近い内容がまとめられており、宇宙環境標準に記載されていると思いきや熱制御系設計標準に記載されています。

内容の重複を避けるため、今後も熱制御系設計標準が更新されていくことでしょう。

 

熱解析を実施する場合、パラメータとして与えられている条件ではあります。

ゼロから調べる場合、理科年表などの情報から算出するのですが、本記事のように場合分けで記載されてはいません。

 

参考に値を使用してください。

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Earth Orbit Environmental Heating

https://llis.nasa.gov/lesson/693

振動低減に利用するワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 | Lessons Learned

ワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

今回はワイヤーロープアイソレータについてです。

ワイヤーロープアイソレーターとは

防振製品の一つです。

 

ゴムやばねと同様の性質を利用して振動や衝撃のエネルギーを吸収する製品となります。ゴムやばねはサイズ感の違いがあれど、構造的には同じものです。

 

伸縮性のある分子構造を持つゴム、金属の伸展性とらせん構造を持つばねは、それぞれ伸縮することで振動や衝撃のエネルギーを熱や運動エネルギーに換えています。

 

ワイヤーロープは、金属ワイヤーをより合わせて作られた金属の縄のことで、柔軟性、強度、摩耗性、耐食性が高く、熱に強い性質を持っています。

 

ワイヤーロープで作られた防振器であるワイヤーロープアイソレーターは、通常のゴムやばねよりも丈夫な特性を持っています。

 

宇宙業界では振動や衝撃吸収のために輸送時に使用されるエアサスペンションと同じくらい使われています。

例えば、宇宙機本体の輸送振動を低減したり、振動が発生する宇宙機自体に搭載される機器に搭載されることがあります。

www.youtube.com

ちなみに低減されている様子はこの動画でイメージできます。

www.youtube.com

 

概要

ワイヤーロープアイソレーター(Wire Rope Isolator, WRI)は、剛性が非線形であることで有名です。

その特性と応答は、振動による入力負荷レベルによって変化することが分かっています。

 

各メーカーデータから引用する剛性値は、意図した負荷レベルに対して正確でない場合があります。

 

ワイヤーロープアイソレーターの使用者は、製品に対して負荷される入力レベルを理解する必要があります。

 

解析モデルのこの荷重範囲には、(ベンダー提供の値ではなく)テスト相関のワイヤーロープアイソレーターの剛性と減衰特性を適用する必要があります。

 

発生状況

国際宇宙ステーション成層圏エアロゾルおよび気体観測に使用される組付け後のモジュール(Instrument Adapter Module (IAM) 、Contamination Module Package (CMP)、Engineering Development Units (EDUs))でのランダム振動試験の中でCMPの中で温度制御を行う水晶振動子(Temperature-controlled Quartz Microbalance 、TQM)に高い応答を示し、障害が発生しました。

 

CMP単体では発生しなかったのですが、CMPは他のモジュール(IAM)に固定されており、モジュールを通して増幅され高い応答を発生させました。

 

応答を減らすために、ワイヤーロープアイソレーター(WRI)をCMPのインターフェースとなる位置に設置することを考えました。

 

事前に解析モデルを作成しシミュレーションを実施したのですが、CMPの質量モデルを利用して正弦波振動試験(サインバースト試験)を実施した結果、試験結果と一致しませんでした。

 

これにより、CMPとIAMの間のワイヤーロープアイソレータを含めた解析モデルを作成するとともに、解析に重要な条件を組み込むために、剛性と減衰の相関関係を確認する試験を進めることになりました。

 

結果、メーカーが公開しているデータとは異なる剛性値、目標とする周波数帯で不均一な減衰を示しました。

 

ワイヤーロープアイソレーターの剛性と減衰の変動を解析モデルに組み込むことにより、解析モデルの結果がより厳密に現物と一致しました。

 

学んだ教訓

ワイヤーロープアイソレーターは剛性が非線形であることで有名であり、その特性と応答は入力負荷レベルで変化します。

 

プロジェクトによって実施されたワイヤーロープアイソレーターの振動試験では、メーカーのデータから引用された剛性値では、CMPで使用される負荷レベルではズレてしまうことが分かりました。

 

通常の動的振動解析で使用される2%の臨界減衰と比較して、ワイヤーロープアイソレーターによる減衰ははるかに高く、大幅に変動することがわかりました。

 

低周波数帯(0〜250 Hz)では15%、高周波数帯(250-2000Hz)では約8%の減衰があります。

ちなみに、高周波数帯が広いのは宇宙業界特有ですので、通常の試験ではそこまで広い領域を高い分解能で試験することは少ないです。

 

実験値により周波数帯で可変する減衰率と修正された剛性が解析モデルに組み込むことで、解析モデルの結果を高い精度にすることができます。

 

推奨事項

ワイヤーロープアイソレーターに対して負荷される入力レベルを理解する必要があります。

 

構造解析モデルでより精度の高い解析結果を取得するために、ワイヤーロープアイソレーターの試験と特性評価を実施します。

 

解析モデルに対して、試験結果により算出される剛性特性の相関関係を組み込みます。

 

減衰率の変動をテーブル化して、解析モデルに実機で見られる不均一な減衰特性を入力します。

 

終わりに

ワイヤーロープアイソレータを使用することは、宇宙業界でも比較的新しい技術です。

と言っても、30年弱にはなっています。

 

宇宙業界で気にしていた振動領域はロケット振動が主でした。

 

現在では、ミッション機器である観測機器が駆動したり、冷却器の振動を観測機自体に伝わり、観測データがブレないようにすることを目的として使用されます。

 

すべては高性能の観測機器を高い分解能でデータを取得する方向に動いてきているからです。

 

特にワイヤーロープアイソレータは、電源を使用することのない機器であり、重量と空間が必要であること以外は、比較的容易に使用することができます。

 

ただし、本文にあるように剛性と減衰を調整する知見が少なく、日本ではそれほど使用されているとは言いにくい製品です。

 

また、現在計画されている衛星コンステレーションに対してまだ使用される予定が少なそうではあります。

 

通信衛星の衛星コンステレーションの場合、目的となる通信性能に対して振動の影響が少ないことが多いからです。

もちろん、通信アンテナが駆動する場合、駆動時の振動がノイズとなる可能性は否定できません。

 

光学あるいはSAR衛星の衛星コンステレーションの場合、まだまだ小型の衛星が多いため、重量物に対して減衰効果が高いワイヤーロープアイソレータでは十分な減衰が見込めないからです。

 

まだまだ小型用のワイヤーロープアイソレータの調整が難しいことから、もう少し先に利用される技術と考えています。

 

まあ宇宙機のスパンが長いため、次の世代の衛星コンステレーションでは高い分解能などが求められ、活用されている可能性は高いでしょうね。

 


 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Wire Rope Isolator Characteristics: Use of Damping and Stiffness in Analysis Models

https://llis.nasa.gov/lesson/19101

Sine Burst Testing with Wire Rope Isolators

https://llis.nasa.gov/lesson/25801