テラヘルツ波とは
テラヘルツ波は、100GHzから10THzの間の周波数のことで、テラヘルツ帯であることからテラヘルツ周波数あるいはテラヘルツと呼ばれています。
3mmから30μmの波長レンジを有し電磁波を示しています。
周波数帯としては電磁波(電波)と光の間の周波数帯と言われています。
放射線のような物体にぶつかった際に、持っているエネルギーが原子や分子に加わり電子をはじくなどのイオン化とも呼ばれる電離作用を持たず、生物学的に無害であると考えられています。
リモートセンシングによる観測
あらゆる物質は、それぞれ固有の周波数の電磁波を放射します。
外部から電磁波を受けると固有の周波数帯を吸収し、それ以外を反射します。
この特性を利用して、電磁波を観測したり、電磁波を当てて反射を観測することによって、地域をはじめ物質を調査することができます。
テラヘルツ波は、紙・木材・布・プラスチックなどの物質を透過し、X線では観測できない部品の検査を行いことに使われます。
プラスチックの構造欠陥や薬品工場での異物混入、アミノ酸や糖の分光分析を行うことに使われます。
透過する物質だけではなく、吸収する物質にも特徴があります。
吸収する物質で特徴的なのは水ですが、水以外にも二酸化炭素やメタン、オゾンといった大気にかかわるデータを得ることができます。
宇宙にかかわるテラヘルツ波
テラヘルツ波の使用方法で、宇宙分野で利用を期待されているのは、水といった大気を観測できる特徴から、惑星に対しての大気環境や水資源を観測することができます。
地球自体の大気変化による天気予報のほかに、火星などへの探査機に観測装置を搭載することでデータを入手することができます。
惑星に対しての人工衛星による観測だけではなく、天体観測にも使用されます。
このようなリモートセンシングのほかに、高速無線通信も注目されています。
帯域の性質からより多くの情報量や同時接続による通信ができることから、5Gの次の世代である「Beyond 5G」(6G)とされています。
正直なところ、スマホによるネットワーク通信では、4Gの通信速度でユーザーがある程度満足しているので、5Gの衝撃が思いのほか少なかったとは感じています。
5G、6Gの世界では、産業的な役割が大きくなっていくとは思います。
ゆえに、宇宙で使用するテラヘルツ波は、観測装置よりも通信装置の方が技術的には加速していきそうな気はしています。
テラヘルツ帯は、水に吸収されるという性質があるため、雨天や高湿度、障害物による減衰が発生します。他の電磁波よりも直進性に優れた性質を持つため、減衰はより顕著になっているという技術的な課題が地上ではあります。
一方で宇宙空間に出ていけば、水も大気もないため減衰を考慮することがなくなるために、宇宙空間での衛星間通信ではより有力な通信手段になっていくかもしれません。
人工衛星から地球表面にある地上局と通信する時の減衰のみに限定すれば、より情報量の多く、広い地域での通信網を確立できるかもしれません。
ただ、地上から宇宙に向けての観測においては出力や電力、装置そのものを高出力にすることでできることが増えてきていますが、宇宙においてはまだまだ厳しい状況です。
限られた電力、限られた重量、多種多様な外乱による姿勢制御により制限された中では、高性能な装置を運用することが難しいのです。
技術課題として、高出力増幅器(半導体IC、進行波管)、高信頼性実装技術(微細な機械構造と電気回路などによるデバイス技術)、アンテナ(高精度ビーム制御技術、光技術の導入)、そして必要な電力の確保と、これらの技術を宇宙に投入するための運送能力と資金源が必要になっていきます。
衛星コンステレーションによる複数機によるシステムの構築か、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に代表される高性能の宇宙機を1台軌道上に構築することになります。
それこそ政府による資金補助が必要になるほど、難しいところではあります。
参考文献
テラヘルツ波の特徴
https://www.toptica.com/ja/technology/technical-tutorials/terahertz/terahertz-properties
テラヘルツ波とは何?活用事例や測定方法の種類・原理を解説
https://jss1.jp/column/column_231/
https://www2.nict.go.jp/ttrc/thz-sensing/ja/about_Thz/
テラヘルツ光による天体観測技術
https://www.isas.jaxa.jp/j/special/2005/technology/20.shtml
SMILES(宇宙からのテラヘルツ大気観測)
https://www2.nict.go.jp/res/submm/p3.html
宇宙におけるテラヘルツ無線技術の活用
https://www.soumu.go.jp/main_content/000471094.pdf
「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000364.html
テラヘルツシステム応用推進協議会