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ハニカム構造の7つの利点と7つの欠点、6つのコスト要因

ハニカム構造の特徴をまとめてみました

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以前、ハニカム構造の歴史と実例をまとめました。

 

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

まとめたはいいものの、何か特徴があるのか、なぜ使用されているのが具体化していなかったところをまとめました。

 

 

ハニカム構造の利点 

軽量(低密度)

ハニカムパネルのコア層は、六角形あるいは三角形(トラス構造)が規則的に配置されている。コア部の断面積が小さくなり密度が低くなります。

同じ厚さの金属や樹脂よりもはるかに密度が小さくなり、同じ体積でも軽量となります。

高強度で優れた剛性

ハニカムパネルの構造は、六角形あるいは三角形(トラス構造)が規則的に配置されているコア部を板材のスキンで挟む構造をしており、スキンの面内に優れた合成を持つことになります。

 

せん断応力に耐え、スキンにより構造が崩れないようにサポートします。コア自体が緻密な補強材の役割を役割を果たし、断面二次モーメントが高くなり、全体的な剛性と安定性も向上します。

優れた耐衝撃性と振動減衰

ハニカムパネルが外部から衝撃を受けると、衝撃力をハニカムコアの塑性変形(外力による変形)エネルギーに変換し、六角あるいは三角方向に分散され、衝撃エネルギーを効果的に吸収します。

 

衝撃でへこみが発生しても、コア自体に亀裂が発生することなく、スキンやコア材にもよりますが、アルミニウム材の場合は靭性(材料の破壊に対する抵抗、破壊しにくさ)が良く、耐衝撃性が強いことがわかります。

 

耐衝撃性がつよいため、振動を減衰させる耐振性、防振性も高く素材と言えます。

遮音と断熱

ハニカムパネル自体の製造に使用される材料単体では、断熱性と遮音性がなく、アルミニウム材の場合は熱と音の優れた伝導体となります。

しかし、ハニカム構造により、優れた断熱性能と遮音性能を備えることができます。

 

ハニカム構造は、コア材とスキンを接着剤で挟むことになりますが、内部がほぼ密封状態となります。空気の対流が発生しない(少ない)ため、熱の伝達が難しくなり、音波も空気が振動することが少なくなります。

 

宇宙に使用されるハニカムパネルの場合は、打上げ時や軌道上での温度による空気の膨張や収縮が発生し、空気による材料の劣化が発生することから、コア部分に小さい穴が開いていることが多いです。

それでも、空間が物理的に空いていること、スキンという障壁があること、伝達する対象(コア材)が薄いことから、通常の材料よりは遮音性と断熱性が高くなります。

不燃性(難燃性)および耐湿性

ハニカム構造はコア材にスキンが挟まれているのですが、使用される材料がアルミニウム材などの不燃材であれば難燃性が向上します。

 

接着剤が燃焼する場合もありますが、ハニカムパネルを製造する際に、コア材とスキンを固着する接着剤は、高温で接着するタイプが多いことから、燃えることは少ない。

加熱により内部から空気が膨張する場合もあるが、ハニカム構造自体の剛性が高いため、構造が崩れるほどの変更が起こることはない。

 

そもそも接着剤で挟み込む時点で、加圧、加熱し、空気が膨張することから、微細な空気穴がコア材に入っていることが多い。

さらに、アルミニウムの場合であれば、通常の金属よりも化学的安定性、耐食性、耐湿性も、素材自体の高い特性を備えている。

良好な成形性と自在な厚さ

特定の要求に応じて、平板、シングルカーブパネル、ダブルカーブパネルの形状にすることもできます。

コア材やスキンは、成形する前だと容易に変形させることができるため、飛行機などの曲線を成形することが可能となっています。しかも、成形後は変形も少なく厚みもほぼ自在にできます。

美しい外観とお手入れが容易

ハニカムパネルのスキンを変えることにより、さまざまな色やパターン、触感や質感を再現することができます。

インテリアとしても使用される材料となっています。

ハニカム構造の欠点

成形性が悪い

一部段ボールのように、紙で構成されている場合は多少加工性が良いが、金属で構成されたハニカムパネルは、パネルを成形した時に形状がほぼ決まってしまう。

金属のように、一度曲線にしたものを成形して直線に戻すことが難しい。

破損耐性が低い

破損後の修復が難しい。凹みが発生すると補修材などで埋めるても、強度や重さ周囲と違い、バランスが崩れてしまう。

部分的にくり抜き、コア材を埋め、段差になりやすいがスキン材で補修することとなる。

側面側の剛性が弱い

スキンの貼られている面内方向と比べて、スキンの側面の面外方向は、薄いコア材であるため強度が低い。

ハニカムパネルの製品によっては、スキンが貼られる場合もあるが、面内方向よりも強度が弱く、バルク材の方が断然強い強度を示す。

高温耐性が低い

ハニカム構造を構成するためには、コア材とスキンだけでは不足しており、接着剤が必要不可欠である。

使用温度範囲は接着剤の硬化後の温度範囲に制限される。

 

例えば、近年の技術で向上しているかもしれないが、高温の場合は600℃以上、低温の場合は、-40℃以下を越えると接着剤の粘着性が劣化し、剝離の可能性がある。

ボルト締結性が悪い

金属の場合、具材自体にタップやヘリサートを挿入することで簡単に2つ以上の部品をボルト(ネジ)固定することができる。

ハニカム構造の場合、スキンが薄く、コア材は空洞であるために、締結加工を施すことができない。

 

スキンの間にコア材の代わりに、金属具材を挟み成形と同時に加圧接合し、後処理で挿入するか、前処理でタップやヘリサートが入った金属具材を加圧接合すか、コア材を高密度化する必要がある。

放電加工・溶接加工が困難

複合材であり、放電加工時に各々の特性をもとに加工条件が変わるため、複雑な加工ができる放電加工が困難である。

フライス盤(ミリング・マシン)による切削加工で加工することになる。

 

溶接は、溶着する具材との相性が品質に関わってくる。

異なる具材の組み合わせであることが多いハニカムパネルと相性が悪い。挟み込むスキンの両面から溶接したり、スキンを厚くするなどの対策が必要となる。

製造コストが高い

金属板と比べて、多くの人が介在することもあり、成形コストが高くなる。後述参照。

ハニカムパネルのコスト要因

コア材の厚さ

ハニカムパネルの仕様は、コア材の種類(アルミニウム材、ノーメックス紙、ケプラー繊維、ABS樹脂、ポリカーボネートポリプロピレン、ポリエチレン、ステンレス鋼)と厚さによって決まります。

ハニカムパネルのスキンの仕様が異なれば、密度や機械的特性も異なるため、コストも異なります。

コア材のサイズ

ハニカムコアの仕様は、コアのサイズで仕様が決まります。アルミニウム材の場合、サイズは1/4inch、3/8inch、1/2inch、3/4inchなどインチサイズで表現されます。

サイズにより密度が変わり、使用する材料費も異なります。

スキンの材質

ハニカムパネルのコストは、スキン材の材質、幅、厚さ、製造元、処理によって異なります。

スキン材の材質として、アルミニウム材以外にCFRP(カーボン繊維材、炭素繊維材、ガラス繊維材、グラスファイバー)がよく知られています。

接着剤

コア材とスキンを挟み込み、接着剤で固着します。

接着剤には、均一に塗布する必要があるため、シート型の接着剤を使用することもあります。

ハニカムパネルの使用用途によりますが、使用環境により接着剤が劣化したり、粘着力が低下することのない温度範囲に対応するためには、接着剤(エポキシ樹脂、フェノール樹脂)の選択が必要となります。

生産・加工管理費

製造メーカーの人件費、加工費、設備管理費用がコストに影響します。

加工費はハニカムパネルの切削や、成形にかかる費用となります。

成形時に加熱することから、金属の歪みや曲げがあるために平坦に成形するにしても、曲げて成形するにしても工夫が必要であり、加工費が増える場合がある。

表面処理

表面処理方法は、表面処理を施したスキン材を使用したり、スプレーコーティング、通常の金属表面処理(アルマイト陽極酸化被膜、アロジン:化成皮膜処理)を行う。

 

以上のハニカムパネルの特性とコスト要因

 

ハニカム構造の用途(使われ方)

船舶関係

腐食性の高い海洋環境でも使用できます

  • 水上ボート
  • クルーズ船
  • 船内の内壁パネル、天井、ドアパネル
  • ヨット
  • オフシェアボート
  • 沿岸警備隊の救命ボート
航空業界

重量を減らし、飛行距離とペイロード(搭載重量)を増やす効果的な方法です。

高高度を飛行することから極端な温度変動に対する変形や熱に耐えることができます。

運輸業

リサイクル可能で、軽量で、持続可能で実装が容易な材料を求められています。

  • 客車構造の内部のクラッディング(被覆材)や屋根
  • 500系新幹線
  • N700シリーズ新幹線パンタグラフカバー
  • 列車のバルクヘッドと床
  • 大型トラックのキャビンや保管システム内
  • トレーラー
  • RV車
  • 車の外板とドア
建築業界

高い剛性と均一な表面、遮音性、断熱性が優れている建築材料。

  • クリーンルームの天井や壁
  • インテリアデザインの内壁
  • 建築屋根や天井 
  • 耐熱パネル
  • 防音パネル
  • 石膏ボード
  • 天然大理石、御影石(スキン材)
  • カーテンウォール
  • スクリーンの仕切り
  • ルーバー(鎧戸(よろいど)、ガラリ戸)
  • 高層ビルのルーバーや屋根の天井、スクリーンの仕切り、防音パネル
  • 耐震具材(振動減衰)
  • 外壁装飾、軒裏装飾用ハニカムパネル
  • キッチン
 その他
  • レージングシェル
  • LED技術
  • 望遠鏡のミラー構造
  • 衝撃吸収装置
  • 風力タービンのローターブレード

規格類

日本にはハニカム構造あるいはハニカムパネルに関するJIS規格がありませんが、海外にはあるようですので、名称だけ紹介します。

  • NPFC-MIL-STD-401 サンドイッチ構造とコア材料; 一般的な試験方法
  • ASTME1555 サンドイッチパネル修理用の構造用ペースト接着剤の標準仕様
  • SAEAMS-C-8073 コア材料、プラスチックハニカム、航空機の構造および電子用途向けの合わせガラスファブリックベース
  • SAEARP5606 複合ハニカムNDI参照標準
  • ASTME2580 航空宇宙用途で使用されるフラットパネル複合材料とサンドイッチコア材料の超音波試験の標準的な方法
  • ASTME1091 シェルターパネルで使用するための非金属ハニカムコアの標準仕様

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参考文献

Advantages and Applications of Aluminum Honeycomb Composite Material

https://www.honeycombchina.com/info/advantages-and-applications-of-aluminum-honeyc-43897787.html

10 Things You Need to Know about Aluminum Honeycomb Panel

https://www.arrow-dragon.com/10-things-you-need-to-know-about-aluminum-honeycomb-panel/

 

Application Areas of Aluminum Honeycomb Panels

https://www.honeycombchina.com/info/application-areas-of-aluminum-honeycomb-panels-44081491.html

The Features of Aluminum Honeycomb Panel and Its Price Determining Factors

https://www.linkedin.com/pulse/features-aluminum-honeycomb-panel-its-price-determining-david-he

Aluminium Honeycomb Panels: Uses and Benefits

https://www.panelsystems.co.uk/advice-centre/lightweight-composite-and-honeycomb-panels/aluminium-honeycomb-panels-uses-and-benefits

天然石+ハニカムパネル

http://honeycombsolution.jp/2-2-nature-stone-honeycomb-panel.html

当社は天然の大理石や御影石を厚さ4mm*にしました。

https://www.bos-stone.co.jp/

Honeycombs and Honeycomb Materials Information

https://www.globalspec.com/learnmore/materials_chemicals_adhesives/composites_textiles_reinforcements/honeycombs_honeycomb_materials

Brazed honeycomb panels (BP)

https://uacj-automobile.com/honeycomb01.html

Intro to Honeycomb Panels and Uses

https://monarchmetal.com/blog/intro-to-honeycomb-panels-and-uses/

Understanding Honeycomb Panels

https://www.plascore.com/honeycomb/honeycomb-panels/

Advantages of Aluminium Honeycomb Panels Compared To Traditional Building Materials

https://www.gilcrestmanufacturing.com/news/technical-news/advantages-aluminium-honeycomb-panels-compared-traditional-building-materials/

Aluminium honeycomb for Architecture, Construction & Clean Rooms

https://corex-honeycomb.com/applications/architecture-construction-clean-rooms/

Construction

https://honylite.com/industries/construction/

Aluminium Honeycomb

https://corex-honeycomb.com/products-and-services/aluminium-honeycomb/

What are the advantages and disadvantages of honeycomb paperboard?

https://www.zydhoneycomb.com/what-are-the-advantages-and-disadvantages-of-honeycomb-paperboard.html

2021年の上半期の半導体、原材料不足についてのメモ

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2021年初頭から、半導体生産不足という報告がされている。

 

部品製造に関わる原材料不足は、様々な業界に飛び火し、部品の調達が困難になってきているという話です。

 

 

ABFとガラス基板の不足

 

味の素グループの味の素ファインテクノが製造している「Ajinomoto Build-up Film」(ABF)は、すべてのコンピューターに搭載されている高性能中央処理装置(Central Processing Unit:PCU)の基板のためのグルタミン酸由来の層間絶縁フィルムである。

基板の集積度を上げ、従来よりも製造コストを下げ、品質も均一化することとなったのだが、そんなABFが不足している。

 

コロナウィルスをきっかけとして、在宅による仕事が増えたことで、自宅のパソコンを購入あるいはグレードアップさせるために、コンピューターの需要が増大したために供給不足に陥っている。

 

これはコンピューター以外にも、5Gの通信機器や液晶ディスプレイ/モニターの需要も増えている。

 

ABFに限らず、ガラス基板も合わせて不足し、価格も上昇する可能性を示している。

どうも2021年2月の寒波による停電で、ガラス基板の材料であるポリアミド材を製造しているナイロン樹脂メーカーの工場が影響を受け、安定的な供給ができなくなっていた。

ポリアミド材の供給は復活しているが、一時的にでも停滞していたことから影響が出ているようだ。

 

ナイロン樹脂(ナイロン66)は、世界的にも北米での製造が主力となっているため、基板だけではなく、自動車用、産業用に限らず、繊維材にも影響を与えていた。

 

PCBおよび銅箔不足

コンピューターに限らず多くの電子機器で使用されているPCBと銅箔も不足している。

 

電気自動車(EV)などの電化製品の増大やバッテリー用の銅線/銅箔も不足している。

上記樹脂の影響と合わせて、銅と樹脂の両方を使うコネクタや樹脂ケース、スイッチなど電子部品への影響が拡大している。

 

シリコンウェハー不足の悪化

2019年の時点で、シリコンウェハーの需要急増による供給不足及び製造困難、国際取引の制限によりシリコンウェハー不足が言われていた。

 

コロナウィルスにより、世界中での自動車の需要が落ち込み、自動車で使われる部品がキャンセルされた。

その後、スマートフォンやゲーム機、コンピューターへの関心が上昇し、自動車の需要が回復を始めた段階では、その需要に対応できなくなった。

 

シリコンウェハーによって製造される半導体チップが自動車産業を始め、多くの業界に影響を及ぼしている。

 

シリコンの場合は、原材料だけではなく、世界の3分の2を占める半導体ウェハーを製造している台湾(台湾積体電路製造(TSMC)、マイクロン・テクノロジー、および聯華電子(UMC))で、干ばつを受けたことで、半導体製造に必要な大量の水にも影響を及ぼしている。

ただ半導体製造は、政府含めた対策により、影響を軽微にしようと対応している。

 

日本で半導体不足が一般のニュースで取り上げられ始めたのは、2021年3月に茨城県で発生したルネサンスエレクトロニクスでのクリーンルーム火災からだった思う。

 

その前からも使用する半導体の入手に、日本を含めた各メーカーで対応、納期遅延が発生している。

 

先に述べたアメリカを襲った寒波は、半導体だけではなく、石油生産をおこなっている製油所も停止してしまったために、影響を受けた産業が拡大している。

 

参照文献

ABFフィルム

https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/rd/our_innovation/abf/

強みに特化し、ビジネスパートナーと協業体制を構築することで、世界標準を維持

https://www.porterprize.org/pastwinner/2012/12/01175539.html

Raw Material Shortage Marks Latest Setback for Components Industry

https://www.sourcengine.com/blog/components-industry-raw-material-shortage-latest-2021-01-20

These 169 industries are being hit by the global chip shortage

https://finance.yahoo.com/news/these-industries-are-hit-hardest-by-the-global-chip-shortage-122854251.html?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuc291cmNlbmdpbmUuY29tLw&guce_referrer_sig=AQAAADujI9MfYl1hzMDV0OXGGnQxHlaUkFmV9I-Dwdvc68DBdy10LmH7sNdfOU-ecNOl3GTi4J2_eMqPQyeLcyKSJmxwk4S8dhxawImiHcJr3iGDxKAnexcgNlAu4rbl_lMfk97XBVpgNyh3s0YIXMv2nIba6bQyY0x6JoP6S677t-0D

 コネクターなどナイロン樹脂パーツの供給問題について

http://toukai-denkidenshi-sekkei.com/hama/tsubuyaki_2228.html

ナイロン不足で素材各社が対応急ぐ、代替品提案に追い風か

https://newswitch.jp/p/26580

Samsung Electronicsの米工場稼働停止、世界のスマホ生産に影響

https://global-net.co.jp/archives/2713

気候変動による干ばつが半導体不足を深刻にする理由

https://shikiho.jp/news/0/419159

半導体メーカーに水奪われた「台湾農家」の憂鬱

https://toyokeizai.net/articles/-/422748?page=2

原油先物が一段高、テキサス州寒波でパーミアン盆地の供給減少

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-15/QOJM64T0AFB801

原油先物4%高、寒波被害の米石油生産正常化に時間との見通しで

https://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKBN2AM2KL

電気の実作業(保守点検、設置)における危険な現象4選

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現代の世の中は電気に囲まれて生きている。

 

電気を制御し、あらゆる機器を動かしているわけだが、それを製造・管理している職業の人たちは、職場での電気の危険性について注意しておく必要がある。

 

本記事では電気的危険性のある事象をまとめた。

 

電力機器あるいは電力システムの手順書や取扱説明書、作業前打合せなどで、少なくとも以下の注意点があると、より作業者の危険が減ると願っている。

 

[目次]

 

感電

50Vを越える電圧で。5mAを越える電流が流れる部分に直接接触すると、筋肉を麻痺させ、臓器を壊し、心臓に致命的な影響を及ぼす。

 

感電の重症度は、身体に流れる電流の大きさ、電流の経路、接触時間により変化する。

短時間であっても、内部/外部の火傷などの重傷を負う可能性がある。

 

アークフラッシュ

通電された導体に直接接触してはいけない。

アーク放電(電弧、電弧放電)によって高温、高エネルギーの放出により発生するアークフラッシュの危険性がある。

 

アークフラッシュは、大きな断層電流が流れているときに、お互い近接している導体を通し、電位差により空気をイオン化し、低抵抗な部分にも伝達する。

 

ブレーカーが落ちた時に、再度オンするときに発生することが多い。オンする前に、原因を特定し取り取り除くことなくオンしてしまうと簡単にアークフラッシュが発生する。

 

高電圧や低電圧といった電圧の大小は無関係であるので注意が必要である。

だいたい400V以上で負傷の可能性が大きくなってくる。

 

周辺の金属を気化させて発火させることはもちろん、閃光も発生する。

 

光による失明以外にも、空気を高温・爆風により2メートル程度で致死の危険性も少なからず、5メートル程度離れていても火傷を引き起こす可能性がある。

 

電気事故による入院の大部分は、感電ではなくアークフラッシュによる火傷によるものである。

 

アークブラスト

アークブラストは、アーク放電によって引き起こされる高圧音波、爆風である。

アークフラッシュの結果、周辺の空気と金属が高温になることで気化、爆発膨張を引き起こす。

 

導体である銅が蒸発すると、元の体積の67,000倍に膨張し逃げることは難しく、空気を含めて高圧の爆風と高デシベルの音圧が放出される。

 

アークフラッシュと同様に、失明や火傷の危険以外にも、音圧による聴力障害や脳震盪を引き起こす。

 

火傷

電気事故での火傷は、電気火傷と熱源接触の火傷のタイプが多い。

 

電気火傷は、身体の中に電流が流れることで、熱が拡散できず、皮膚組織や内臓組織の損傷を与える。

 

熱源接触の火傷は、加熱した導体に接触することで皮膚表面が火傷するものである。

 

銅線や導体の露出部分に注意しておく必要がありますが、パネルなどで閉じられた電気機器の場合は、パネル裏など開缶したときに接触する恐れがある。

 

どのように開けるか、手順書には明記しておかなければ、不意に触れてしまう可能性ががある。

 

衝撃のアークフラッシュの動画

www.youtube.com

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www.youtube.com

 

 

参考文献

Arc flash

https://en.wikipedia.org/wiki/Arc_flash

Electrical Safety Program - Why Your Company Needs an Electrical Safety Program

https://www.allumiax.com/blog/electrical-safety-program-2018-guide#safety-standards

電気回路のショートによるアークフラッシュの危険性

https://www.jniosh.johas.go.jp/icpro/jicosh-old/japanese/library/highlight/nsc/2004/04_03/BB96.html

あなたはアークフラッシュが何であるか知っていますか?そうでなかったら、読み続けなさい、それは重要である。

https://crushtymks.com/ja/safety/1451-do-you-know-what-an-arc-flash-is-if-not-keep-reading-it8217s-important.html

 

人工衛星及びロケットに関わる宇宙神社

日本では八百万の神といわれるように、様々な神様がおり、神社に祀られています。

 

珍しいものを祀っている一つとして飛行機があります。

 

飛行機に関わる神社として、羽田神社(東京都大田区)、飛不動尊(東京都台東区)、航空神社(東京都港区)、所澤神明社(埼玉県所沢市)、飛行神社京都府八幡市)、泉州航空神社大阪府泉佐野市)と日本各地に存在しています。

 

飛行機に関わる神社が存在しているのであらば、人工衛星及びロケットの打上げに所縁の多い神社があるでしょうということで、今回の記事をまとめてみました。

 

【目次】

 

飛行神社は京都にある 

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知る限り、人工衛星を含めたロケットなどの飛行機関連で有名な神社は京都にある飛行神社ですね。(画像は違う場所です)

最寄り駅:(京都府)京阪電鉄 石清水八幡宮駅から南東へ徒歩5分

JAXAを始め、ロケットで有名な三菱重工などの関係者も訪れています。

 

祭られているのは饒速日命(にぎはやひのみこと)ですね。

饒速日命(にぎはやひのみこと)は古代の空の神といわれ、天津神のみことのりをうけて「天爾瑞宝十種」を奉じお供の神三十二柱を従えて天磐船という飛行船に乗って、河内国河上の哮峯に天降られた。そこから再び天磐船に乗り大空を翔行き大以倭国鳥見白庭山に遷り坐した神様です。
 命が天降られた哮峯には、磐船神社大阪府交野市私市)があり、ご神体は天磐船といわれる大石でその形が大船に似ているところから信仰の対象となっています。
 当社には大正4(1915)年に二宮忠八翁が飛行神社創建に当たって磐船神社大阪府交野市)よりご分霊いただきました。

飛行神社より

 

文書の中に出てくる「二宮忠八」は、ライト兄弟が飛行実験に成功する12年前の1891年4月29日に、ゴムを動力としたプロペラを利用した鳥(カラス)型模型飛行器を完成させ、10mの飛行に成功しました日本航空機の父と呼べる人物です

飛行機ではなく、飛行器と称しているのは、二宮 忠八自ら命名したため、あえて器としています。

 

1893年10月5日に、主翼が2枚ある複葉機の”玉虫型模型型飛行器”を作成したのですが、援助する人がおらず、見通しが立っていたにもかかわらず、 ライト兄弟の飛行実験成功の報を聞き、ライト兄弟を真似ただろうという評価しか受けないとして、製作中の飛行機を破壊したそうです。

 

やがて、世界が飛行時の時代となり、犠牲者が多く現れ、その霊を慰めるために資材を投じ、1915年に二宮忠八飛行神社を創建しました。

 

飛行神社には、航空業界初期の歴史資料を展示している二宮忠八資料館もあります。

 

JAXA筑波宇宙センターのあるつくば市内の筑波山神社

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JAXA筑波宇宙センターに勤める人が住まう土浦市つくば市の近郊にある霊峰筑波山にある筑波山神社

最寄り駅:(茨城県)つくばエクスプレス秋葉原よりつくば駅まで45分、筑波山シャトルバス40分

JAXA筑波宇宙センターあるいはつくば市内ですべての試験を終え、ロケット射場に搬送される前に、多くの人が訪れて成功祈願をしています。

 

筑波山は、関東地方に人が住むようになったころから、信仰の対象として仰がれてきました。御山から受ける恵みの数々は、まさに神からの賜物でありました。その山容が二峰相並ぶため、自然に男女二柱の祖神が祀られました。
その後祖神は「いざなぎの神、いざなみの神」と日本神話で伝えることから、筑波の大神も「いざなぎ、いざなみ両神」として仰がれています

(中略)

筑波山神社は坂東無双の名嶽とうたわれた筑波山を境内とし、万葉集に「二神の貴き御山と神代より人の言い継ぎ」と崇められているように、古代山岳信仰に始る国内屈指の古社である。西峯男体山頂(871m)の磐座に筑波男大神(伊弉諾尊)を、東峯女体山頂(877m)の磐座に筑波女大神(伊弉冊尊)を祀る。

(中略)

紀元元年、筑波山神社男体女体両宮が創祀され、(中略)1875年に現拝殿を造営して現在の規模を整えたのである。

筑波山神社とは

 

ロケット射場のある種子島の宝満神社

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種子島でのロケット打上げ時に関係者が参拝される宝満神社
アクセス: (鹿児島県)種子島空港から車で約40分、西之表港から車で約1時間5分

文化四丁卯年の創建である。祭神玉依姫命が水田を開き稲を作り、食生活を潤した御神徳を称え奉って、宝満池の畔の今の浄地に奉斎したものである。

島内各地で籾の付いた弥生式土器が出土し、天武天皇十年(六八一)には島の状況として、「粳稲常に豊なり、一たび植て両び収む」(日本書紀)と記され、当社縁起にも「種子島は日本における稲作の始まりの地」とあって、当社では今でも稲の原種ともいわれる「赤米」を神田で作っている。

宝満神社 由緒

 

由緒にある通り、稲作始まりの地であり、水稲農耕文化の初めとされる「赤米」を植える御田植祭(町無形文化財)が毎年4月5日ごろから行われている。

 

北海道のロケット射場近くにある大樹神社

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北海道のロケットの町大樹町にある大樹神社

アクセス:帯広駅西口から十勝バスで105分 大樹柏木町下車徒歩1分

ロケットの町の神社であることから、ロケット関係のお守りがあるようです。

ロケットのお守りというと、無事に軌道上に届けることから、運送・運搬関係にご利益がありそうですけどどうなんでしょうね。

 

 明治41年兵庫県三原郡阿万村(現三原郡南淡町)から入植した西田円蔵他数名の人々が発起し、郷里の亀ヶ岡八幡神社より御分霊を勧請、現境内地に社殿を建て「大樹八幡神社」としたのが創祀である。昭和3年、大樹村が広尾村から分村したことにより、大樹村一円を氏子区域とし、産土神社として尊崇を集めた。昭和9年には改めて京都石清水八幡宮から御分霊を勧請。昭和10年3月無格社「大樹神社」として認可された。昭和14年社殿を造営し村社への認可を申請したが、玉垣の未完成があり、完成後再度申請するようにと保留になったが終戦となった。昭和21年宗教法人となる。平成元年、御大典記念事業として、2億3千万円余の予算をもって社殿・手水舎・社務所の改築工事を行い平成3年に竣工した。

  

JAXA宇宙科学研究所のある相模原市内の新田稲荷神社

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JAXA宇宙科学研究所ISAS)があり、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」にゆかりのある新田稲荷神社

最寄り駅:(神奈川県)JR横浜線淵野辺駅 から徒歩9分、矢部駅 から徒歩21分

日本を沸かせた小惑星探査機「はやぶさ」が宇宙空間で見失った際に、「発見祈願」にプロジェクトマネージャーの川口淳一郎さんが毎晩訪れたといいます。

その後の小惑星探査機「はやぶさ2」では成功祈願が行われました。

 

新田稲荷神社は、文政元年(1818年)から開拓の始まった淵野辺新田の鎮守として稲荷社として創建したといいます。

(中略)

このあたりは広大な原野であったため、いったん草に囲まれると方向がわからずに行方不明になる人もいました。そのため見晴らしのよい小高い山を築き、人さがしに御利益のある川口村(現在の八王子市)の今熊神社を勧請して行方不明者の捜索に役立てたといわれています。

(中略)

野火除のため開墾の芝や土などで約七メートルの塚を築き、頂上で鐘や太鼓を叩いて御祈りして探したと伝えられている。

新田稲荷神社の由緒

 

各開発拠点にちなんだ神社で祈願している 

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現在、多くの地域で人工衛星が開発され、近々各地でロケット射場が整備されつつある。

 

ネットで調べただけでも、2021年ではアクセルスペースが打上げた時、2018年にリーマンサット・プロジェクトのRSP-00が打ち上がる前に、東京都台東区ある飛不動尊に御祈願をされていたという画像や記事があります。

 

www.rymansat.com

各地の大学でも、近隣の神社にて成功祈願をしていることでしょう。

 

ただ今後人工衛星の打ち上げ数が増えるにつれて、御祈願の文化も少しずつ減っていく可能性があると思うと、なかなか寂しい気もしますね。 

 

人工衛星で何を祈願するのか

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そんな人工衛星の御祈願ですが、何に祈るのでしょうか。

 

第一は「成功祈願」ですね。

 

その次は「交通安全」

 

人工衛星の成功は、軌道上でのミッション成功であるのですが、その前に様々な交通場面での不意の事故が懸念されます。

 

  1. 輸送しロケット搭載までの交通安全。
  2. 軌道投入までにロケット搭載中での交通安全。 
  3. 軌道投入後のデブリは他の人工衛星接触しないための交通安全。

 

さらに、不具合が多ければ「厄除開運」ですかね。

  

ちなみに自分のプロジェクトで担当範囲で不具合が多発した時はそれなりに有名なところで(個人的に)厄払いをしました。

心持かもしれませんが、不具合多発の勢いは減った気がします。

 

これら四つが御祈願する内容になるのではないでしょうか。

 

 

御祈願でいただいたお神札は運用室に置かれていることが多いですね。

 

ミッション成功まで、達磨と共に、運用を見守ってもらう、そんな願いが込められているのかもしれません。

 

成功祈願のだるま

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お神札と一緒に達磨(だるま)もおかれていることが多いです。

達磨自体は東日本に多く、西日本ではほとんど見かけないため、見たことがない方もいるかもしれません。

 

達磨は白目のまま販売され、祈願のため左目に黒目を書き入れ、成就すると右にも黒目を入れる「目入れだるま」の風習があり、役目を終えただるまは、各地で正月に行われる「どんど焼き」の際、お焚き上げをします。

 

成就しなかった場合はそのまま次の機会に持ち越されるか、右目が白めのままお焚き上げされることもあります。

 

次回に持ち込ち越される場合は、成功祈願の念を蓄積されて、成功率が上がると考える場合もあるようですね。

 

終わりに

人工衛星開発はやり切ったとしても、不安が残る場合が多いです。

最後の祈りとして、神頼みをするのですが、人工衛星開発の際は、関係神社の中で近い場所をめぐるのも良いかもしれません。

 

もちろん、近隣の神社に引き続き見守ってもらうと考えるのも良いかもしれません。

信仰の自由なのですから。

 

今後、各地で人工衛星開発が活発になれば、人工衛星及びロケットに所縁のある神社が増えるかもしれませんね。

一つは和歌山県串本町での射場近郊ですが、あの辺りは神社も多いため、どこのスポットが当たるのでしょうかね。

 

参照文献

飛行神社

https://www.hikoujinjya.com/

二宮忠八について

http://www.city.yawatahama.ehime.jp/docs/2014082600018/

解説 飛行神社

https://www.rikou.ryukoku.ac.jp/images/journal65/RJ65-01.pdf

筑波山神社

https://www.tsukubasanjinja.jp/

宝満神社

https://www.kagojinjacho.or.jp/shrine-search/area-kumage/%E5%8D%97%E7%A8%AE%E5%AD%90%E7%94%BA/1136/

宝満神社 - 南種子町の神社 - ふるさと種子島

http://www.furusato-tanegashima.net/js/minamitanetyou/houman-shrine.html

大樹神社

https://hokkaidojinjacho.jp/%E5%A4%A7%E6%A8%B9%E7%A5%9E%E7%A4%BE/

新田稲荷神社の概要

https://tesshow.jp/kanagawa/sagamihara/shrine_kyowa_shinden.html

だるま-wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A0%E3%82%8B%E3%81%BE

「2025年の崖」と製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の関係

「2025年の崖」

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「2025年の崖」を知っているでしょうか?

 

「2025年の崖」とは既存システム(レガシーシステム)が古くなり、技術格差が追い付けないレベルにまで達する可能性のある予想時期のことである。

 

この壁を越えた先に何があるのかというと、何も日常生活では起きない。

過去にプログラミングの設定上で誤動作が起きた2000年問題や、宇宙天気上で多くの放射線を受ける太陽コロナ問題、かつてドイツに存在していた物理的なベルリンの壁といったものではない。

 

2025年を超えると日本は毎年約12兆円の経済損失が発生するというものだ。

 

毎年約12兆円の経済損失とは、赤字が12兆円ぐらいになるというわけではなく、本来得るはずであった利益が12兆円ぐらい減るということだ。

経済損失というより、機会損失といった方がしっくりと来る人もいるかもしれない。

 

この「2025年の崖」を越えるために、デジタルトランスフォーメーション(DX)と称して、国を上げて改革・変革を推し進めているのだ。

 

DXは主に製造業に注目されているが、製造業だけではなく、他の業界でも改革・変革を進めなければ、売上が目減りしていく。

目減りしていくなら分かりやすく徐々に対応していかなければいけないと考えるのだが、急に売り上げが立たなくなることも発生する。

 

売上が、他社の台頭で増減したり、会社が成り立たなくなるなんていうことは、今まででもよく発生していた、よくある事例ではある。

しかし「2025年の崖」を越えた辺りから、日本全体が落ち込む可能性があるといっているものだ。

 

DXの記事でよく言われているのは、単純作業を自動化し、人間にはよりクリエイティブな、付加価値の高い業務を行い、スピーディーな供給・対応、コスト削減を行うことを挙げている。

 

まあ、ぶっちゃけ、DX、DXと言っているが、導入としてやっていることは過去の農業改革のような流れを使用している技術が違うけれどにたことを、製造業を始め他の業界でもやりはじめたのである。

 

農業は、人の手が必要であった時代から、多くの農業機械によって人の手を減らし、効率的に、スピーディに収穫するシステムを作り上げていた。

現在では品質を一定化させるために、糖度判定や色判別による一定の品質を提供している。

さらなる効率化のため、人の手を減らすために、衛星画像から植生の成長具合を確認するまでになっている。

 

このように、一部の企業、業界ではDXと呼ばれることを実施しているのだが、それでも多くの組織では、人の勘や経験だよりで組織を回しており、国の方から警告を出したというわけである。

 

この警告を無視していると、やがて事業が立ち行かなくなる。

 

DXは事業効率のみに注視しているが、人の勘や経験だよりの場合、技術の継承者もいなくなり、やがてロストテクノロジーとなる。

 

それも含めて、国として危惧しているのだ。

 

という説もある。

 

 

レガシーシステムとDXの関係

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レガシーシステムはDXを妨げる要素になる。

 

レガシーシステムは、過去から使用され、様々な人を介して、カスタマイズし、最適化した結果、新たに手を出す人からすれば、複雑であり、巨大でコントロールが効きにくいシステムを独自に構築し進化させてしまっているのだ。

 

巨大で複雑なシステムはコントロールがとても難しい。

 

微妙なバランスで構築されているため、保守・メンテナンス・改修作業に時間が掛かる。

結果、隠れた負債を社内にため込むことになっている。

この負債は、毎年あるいは数年ごとに費用が掛かる固定費になり、知らず知らずに経営を圧迫し、デジタル化による効率化を妨げる要因となっている。

 

 

よりシンプルで、修正しやすいシステムを構築しておくことがよし。

 

このレガシーシステムを新しいシステムに変えることで、DX化を進めることができるなどと単純に書かれているところもあるが、その場合は、新しいシステムがレガシーシステムになるだけである。

 

そもそも、システムが複雑化する前に、常に新しいシステムと取り入れるか、可能な限りシンプルなシステム構造で構築していくということを前提に考えなければいけない。

よく分からないがDXに有効なツールだからといって取り入れても、使いこなせなければ意味がない。

 

このレガシーシステム化を防ぐためには、システム構築のためのシステムエンジニアリングやプロジェクトマネジメントにより、要求を洗い出し、整理していく必要がある。

 

これは、数年前に台頭してきたデータ分析、データサイエンティストの役割の一つではなかろうか。

 

各工場や部署とコミュニケーションを行い、要求をまとめ、必要なデータを洗い出し、改善を提案する。

実行は各部署で行い、業務改善を行っていく。

 

そんな横断組織を見直すというのも一手かもしれない。

 

DXで求められていること

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正直、業務改善や作業効率の向上だけがDXで求められていることではない。

 

一つ目として、業務改善や作業効率の向上のために、デジタル化を行うのかもしれないが、そこからさらなる付加価値を生み出すところがDXである。

 

二つ目は、業務改善や作業効率により空いた時間をより、知識の継承やシステムのレガシー化を防ぐために知識を「見える形」で残していく。

 

三つ目は、「見える形」で残っている技術を分析したり、付加価値を与え、新しい製品やサービスを提供する。

 

最終的には、DXを利用することで、一つの組織に留まらず、業界あるいは組織間を巻き込んだ新たな事業領域の構築を行うことを狙っているように思える。

 

これら4つすべて行うのではなく、最終的に業界あるいは組織間を巻き込んだ新しい事業領域なり、戦略で「2025年の崖」に挑んで行けということのような気がする。

 

 

DXと言われて、今までの業務改善と何が違うのか疑問に思う人たちは、一つ目の情報しかいきわたっていないからなのではないだろうか。

 

事実、多くの記事では一つ目に留まっている。

 

理由は、一つ目では業務改善のサービスやソフトウェアの需要が高まり、その分野の業界がにぎわうからである。

 

マーケティングに踊らされているのですよ。みなさん。

 

もちろん、DXの取っ掛かりとしては問題ないのだが、「2025年の崖」を乗り越えるには、さらに、デジタル技術による新規サービスなり製品を提供する土台を作り、新しい製品やサービスに目を向けていくことも必要である。

 

では、そんな事例がどこにあるのか

 

 

衛星とレガシーシステム

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レガシーシステムは別に業務システムのことを指すわけではない。

 

多くの人が手を入れることによって、複雑化し、ブラックボックス化してしまったシステムもその一つである。

 

人工衛星システムは、実績主義であると聞いたことがある人もいるかもしれない。

 

実績がゆえに、システムを変更することで発生する「変更点による不具合」を恐れている。

そこで従来より人工衛星を製造してきた組織は、現在、変更点管理に重点を置いている。

 

 

変更点管理をすることで、実績を着実に積み重ねていけるのだが、ここ数年で人工衛星事情も変わってきた。

 

変更点管理により蓄積してきたデータと比類して、小型衛星を製造し、多くの人工衛星を軌道上に放出することで、新しい制御の実績を蓄積することが可能となった。

 

表面上分からなくなっているかもしれないが、人工衛星の制御に関して従来の大型衛星と同等のレベルまで到達しやすくなっているのではないだろうか。(到達しているとは言っていない)

 

参考文献

衛星の揺れを止めろ

https://jpn.nec.com/ad/cosmos/shizuku/story/02/page02.html

 

森林破壊抑制先進国ノルウェー高解像度の無料衛星画像データでの森林監視体制

森林破壊抑制先進国ノルウェー

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ノルウェーは、森林破壊につながる製品を使用しないと宣言した世界で最初の国家です。

 

世界では毎年12万km2から15万km2の森林が失われています。

過去40年で、ヨーロッパ全体に匹敵するサイズの森林が消えています。

 

森林破壊を最も促進させるものは農業です。

焼き畑式農業や整地により、家畜の放牧地域を作るために森林を伐採していきます。

 

2000年から2011年の間に、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、パラぐらいの牛肉、食料パーム油、ろうそくあるいは食用大豆、木製品が世界の40%を占めていました。

 

これらの製品の購入・輸入を停止することで、ノルウェー政府は、森林破壊を止める政策を進めました。

 

購入・輸入を停止するだけではなく、ブラジル、インドネシアリベリアに多くの投資を行い、各国が森林破壊を減らすための支援も行いました。

 

ブラジル・アマゾンの森林破壊

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アマゾンは過去50年間で約17%の木が消え失せています。

 

アマゾンの森林は、私たちが呼吸する酸素の5分の1を作り出しています。

 

2008年にノルウェーは、アマゾンの熱帯雨林の保護のために、ブラジルに対して10億ドルを提供していました。

 

この投資は、2015年までにブラジルの森林破壊の75%も減らしています。

8,5000km2の熱帯雨林を保護し、32億トンの炭素量の増加を防いでいます。

 

炭素排出量は、1年間アメリカ軍の活動を停止させた炭素排出量に相当します。

 

ブラジルでは、1970年代より衛星画像を活用して、伐採監視を行ってきました。

過去、日本でも陸域観測技術衛星「だいち」を実験的に利用して、100件以上の違法伐採を特定することができました。

 

古くから衛星画像を活用していたので、土地台帳を照合して、違法か違法じゃないか判別し、警察に連絡できるようなシステム体制も構築されていました。

 

ブラジル・アマゾンの場合は、だいちを利用した場合、総面積が約350万km2と広範囲であるため、全体図を作るのに約300シーンの画像が必要になります。

このデータを確保するのに、2009年頃の場合、1回で9000万円ほどかかり、年に数回更新しなければならない状況を考えると、予算から考えて断念せざる得ない状況でした。

 

ノルウェーは、2010年のインドネシアとの協定を行い、炭素排出量を数年で半減させることに成功しました。

 

ノルウェー政府の提供するGlobal Forest Watch

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2020年にノルウェーは、Airbus、KSAT、Planetと4,350万ドルの契約を結び、64か国をカバーする衛星画像に無料でアクセスできるシステムすることとなりました。

 

PlanetのDove衛星(解像度3.7m)は、毎日、地球全ての大地の写真を撮っていきます。

これらの写真を組み合わせることで、地球全土の森林を把握することを可能としました。

 

Airbusは、2002年以降、衛星によってキャプチャした画像のアーカイブを保管しています。

これらにより、現在の森林情報と数年前の森林情報を比較することを可能とします。

 

KSATは、これらのデータをまとめ、Global Forest WatchまたはPlanetからファイルを表示あるいダウンロードできるシステムを構築しています。

 

人工衛星により毎日画像が更新され、森林破壊を確認するタイミングを検知することができます。

例え、森深くでひそかに伐採していても、従来のように、隠れ逃げることができなくなっています。

 

地球規模の森林監視における革命は、アメリカ政府が2007年にLandsatの衛星画像を無料で利用できることになり、多くのツールを使用することができたことです。

しかし、高解像度の衛星画像派依然として高価である。

この発表により世界中の人々がLandsatよりも10倍以上の高解像度の商用衛星画像にアクセスできるようになった。

この機会を利用するかどうかは、我々全員の行動にかかっている。

Crystal Davis

 

www.youtube.com

 

しかもこのサービスは、ノルウェー政府がサービスの費用を負担しているため、すべて無料にしています。

 

日本でも衛星画像データとしては、似たようなサービスがありますが、このサービスは森林破壊に特化しています。

 

主に次の項目になります。

  • 森林の炭素排出情報
  • 寿樹被覆損失データ
  • 森林破壊検知レーダー
  • 森林破壊と火災警告を出すスマホアプリ
  • ブラジル・アマゾンでは森林破壊を検知すると24時間から48時間の間に警察に連絡

 

このように人工衛星のデータは世界規模なんですね。

 

ビジネス視点で考えると、少しずつインフラ情報が既存の企業に抑えられて、後続の企業が厳しくなっていきますね。

 

ここで無料サービスはすごい、森林データは他にも活用できるので、これが無料とは。。。

 

参考資料

Global Forest Watch←無料画像

https://www.globalforestwatch.org/

Terrabrasilis – Plataforma de dados geográficos

http://terrabrasilis.dpi.inpe.br/en/home-page/

Active Fire DEFORESTATION

http://terrabrasilis.dpi.inpe.br/app/dashboard/alerts/legal/amazon/aggregated/

 

Norway Is the World’s First Nation to Ban Deforestation

https://www.nathab.com/blog/norway-is-the-worlds-first-nation-to-ban-deforestation/

日本の宇宙技術が世界の森を守る ブラジルでの森林監視の実績をもとに

https://fanfun.jaxa.jp/feature/detail/8244.html

Footing the Climate Bill for the World

https://www.sspi.org/cpages/footing-the-climate-bill-for-the-world

Norway funds satellite map of world's tropical forests

https://www.bbc.com/news/science-environment-54651453

Planet, KSAT And Airbus Awarded First-Ever Global Contract To Combat Deforestation
Tara O'Shea | September 22, 2020

https://www.planet.com/pulse/planet-ksat-and-airbus-awarded-first-ever-global-contract-to-combat-deforestation/

 

新人引継ぎ教育シリーズ:人工衛星打ち上げ後に言われる衛星寿命や製造コスト

人工衛星が上手くいったことは、ニュースの記事になりにくい

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mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

今まで、技術・業務的な引継ぎとしていたが、初めて衛星開発に触れる人が、一般人に対して説明するときの一例を紹介する。

 

人工衛星はどの段階で成功か、人工衛星に関わり合いのない人からすれば、ロケット打上げ後に無事放出されたこと、という印象を持たれるのではないだろうか。

 

人工衛星で「わかりやすい」衝撃的な映像は、ロケット打上げである。


むしろ、ロケット打ち上げ後、見えないのだからしょうがない。

 

その中でも衝撃的な映像はロケット爆発である。


人工衛星ではないが、スペースシャトルの爆発は、知っている年代からすると衝撃的であった。


普通に打ち上がるよりも、爆発が発生すると印象に残る。

 

 

爆発で失敗と、爆発しなかったら成功という印象が付いている人が多いのではないだろうか。


むしろ、その後の人工衛星の成功が、それほど衝撃的な映像がないため、忘れられてしまっている可能性もある。

 

爆発せずに打ち上げて放出することは、人工衛星の成功というよりは、ロケット側の成功に他ならない。


年齢が高い方ほど、ロケットの打ち上げ成功=人工衛星成功としてしまっている人が多い。


まあ、それだけ衝撃的だったのだから、しょうがないのだけれども。

 

しかし、2010年代頃からは風向きが変わっている。

 

惑星探査機はやぶさの成功だ。

 

地球に帰ってくるという目に見えてわかるミッションの成功事例が、人工衛星開発の成功を目に分かる形で示してくれた。

 

人工衛星は打ち上がって終わりではないということ。

 


衝撃、人工衛星の寿命

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人工衛星は打ち上がって終わりではない。

 

ではどこで人工衛星は終わるのだろうか。

 

ミッションが達成できなくなったときである。


多くは、通信ができなくなった、あるいは通信をできないようにしたときに寿命となる。

 

内部のコンポーネントが動作しなくなっただけでは終わりではない。


通信機が生きていれば、通信が続けられれば終わりではないのだ。

 

では、何年間生きれいられるのかというと、軌道によるが早くて数分、長くて数十年である。

 


衝撃かもしれないが、数分で終わる人工衛星も存在する。

 

地球のどの高度から宇宙かという定義にもよるが、気球や小型ミサイルでも宇宙に到達でき、その地点で放出する人工物を人工衛星と呼ぶ人もいる。


通信やミッション達成を目的とするならば、それも十分に人工衛星と言える。

 

缶サットと呼ばれる、空き缶のサイズの人工衛星が放出されるイベントは、もう何年も続けられている。

もちろん、衛星軌道に投入されていないから、人工衛星と呼ばないという説もなくはない。


宇宙あるいは軌道上に放出するというと、最近はISS国際宇宙ステーション)から放出という事例も多い。

 

サッカー場レベルの大きさであるISSから小型人工衛星が打上げられている。


ISSは複数の国が共同で運用している共同宇宙実験施設で、数多くの実験を行う研究者として何人もの宇宙飛行士が生活している。

 

このISSから小型の人工衛星を放出する設備を、日本が開発し、運用している。


小型の人工衛星の放出機構が、日本のISS施設内に存在することを知っている人は、一般の人では少ないのではないだろうか。(今回は新人向けですので)

 

高度460km付近にいるISSから放出される人工衛星の寿命は1か月から3か月程度である。頑張れは1年行くかもしれませんが。

 

先ほどの数分から何倍にもなるが、それでも衝撃の寿命の短さである。

 

一方で長期間運用されているものも存在する

 

日本の人工衛星でいうと気象衛星ひまわりであろう。
アメリカの人工衛星ではGPS衛星がよく知られている。

 

GPS衛星が出たついでに書いておくが、GPS衛星はスマホや携帯電話、自動車から位置情報を送受信しているわけではない。


GPS衛星の電波を受信して位置情報を算出しているのだ。


たった24台の、下手をすると現在販売されているノートパソコンやスマホよりも処理能力の低い数十年前の制御機器が搭載されているGPS衛星に、数十億人レベルの情報を処理できないだろう。


某国のGPS機能を持った人工衛星が打ち上がったから、某国に情報を取得されるというのは、今のところ幻想であるし、人工衛星の機能が追い付かない、とだけ書いておこう。

 

ひまわりは、衛星寿命として5年から10数年と言われている。


GPS衛星は、衛星の「想定」寿命を越えて20年以上使用されている。


想定寿命を越えても使用できるのは、人工衛星製造に、高い信頼性の部品や冗長設計、太いシステム設計によるものといえる。

 

一般に売られている商用製品の場合でも、だいたいそのぐらいの年数である。


商用製品でも、人工衛星でも、結局は使用されている部品の寿命に依存していることが多い。


特に、スイッチ機能をもつ電子部品や、高温低温を何度もサイクルする部品の寿命劣化は激しく、その中で最も劣化しやすい部品の期待寿命を、そのまま製品の期待寿命としていることが多い。

 

商用製品や工業製品は、交換することで製品の寿命を延ばすことが可能だが、人工衛星ではそれが不可能である。


その中で冗長設計というものが、人工衛星の寿命を延ばすことで重要となる。


最近の事情では、1台当たりの製造コスト/打上げコストを下げ、人工衛星の寿命を延ばすことより、人工衛星の寿命が来る前に打上げるような時代にシフトしている。

 

既に数千台もの通信人工衛星を打上げているスペースXのスターリンクシリーズであるが、おそらく1台当たりの製造コスト/打上げコストを下げて、短周期で人工衛星を打上げて、衛星寿命は短いかもしれないが、人工衛星を利用したサービスを長期間化された分かりやすい例である。

 

サービスの長期間の見通しが立てば、資金の投資側からすれば、長期的なリターンが見込めるために、より資本が集まりやすいという事情もありそうである。知らんけど。

 

人工衛星の製造コスト

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大型衛星といわれる人工衛星の価格は、近年の高機能化、新開発要素などから100億円弱から400億円弱ぐらいである。


サイズから比較的小型衛星に近い、惑星探査衛星はやぶさ/はやぶさ2も、130億円~150億円の“製造コスト”がかかっている。


そこにロケットによる打上げコスト50億円弱~200億円程度もかかってくる。

 

大型衛星の製造期間もリピート設計があったとしても、4年以上10年未満と言われている。

 

だいたい、製造コスト/打上げコストに600億円以上かかり、4年で製造したとして年間150億円である。


いやいや、最近の人工衛星はもっと価格が下がっています、と言われるかもしれないが、なかなかの衝撃である。

 

有名どころの企業で言うと、2020年の当時では、高島屋(160億円)、京浜急行電鉄(156億円)、カネカ(140億円)、ワークマン(133億円)が生み出す利益が毎年必要になる。


株主にも社内にも還元せずに、将来投資としてつぎ込むのだから、株式会社としてはもっと利益構造の高い企業でないと、耐えられないことから、かつては最高級品とも、嗜好品とも呼ばれていた時代があったとか、なかったとか。


結局、個人や企業で大型の人工衛星を所有することは日本ではなかったと、認識している。


ただ、アマチュア無線衛星といった、アマチュア無線の周波数帯を使用していた人工衛星が存在しているが、少し資料がないので、なんとも言えない。

 

それに対して、小型衛星は諸説あるが、5000万~15億の製造コストで済ませられる
開発も2年以上5年未満といわれていることから、年間コストでも10倍以上の価格差が出ている。


打上げ費用は、無料から数千万と言われている。


もちろん人工衛星でできることが限定されるのだが、スターリンクシリーズが出たことで、現実味を帯びてきている価格帯になっている。

 

これらの事情が相まって、小型衛星の寿命も、だいたい2年程度が目安になってきている。


人工衛星の長寿命化から短命短サイクル化に変化してきている。

 

ただし、低軌道衛星に限る。

 

静止軌道にある通信衛星は、打上げコストが高く、通信の電波強度や周波数取得、運用の簡易化の関係から、現在でも5年以上の長寿命なものが選ばれる。


もちろん、人工衛星自体の価格を減らすために、リピート設計であったり、いわゆる量産化された設計構造であるバス衛星が選定されることが多い。

 

ざっくり、だいたいこんな感じかな。

日本の自然災害発生前後で最新情報を確認できる公的サイト2選

 

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6月になり、台風の季節も近づいてきたので、日本における自然災害発生時に画像を公開しているサイトを紹介します。

 

むしろ自分用な気もしますが。

 

防災科研クライシスレスポンスサイト

http://crs.bosai.go.jp/

国立研究開発機構防災科学研究所が運用している情報サイトです。

衛星画像を始め、過去の災害情報もまとまっており、過去情報を含めて収集するときにはとても便利です。

光学画像とレーダ画像があり、民間の情報から国保有の情報収集衛星の情報もあり、正直これより整った国内の災害に特化した情報システムは今のところないですね。

民間の情報システムの中で、特定地域を特化させた高解像度画像であったり、画像分析に力を入れなければ、勝つことは難しいでしょう。

過去、情報収集衛星画像は、グーグルの画像と比較されているときもありましたが、情報の提示が比較にならないほど高頻度であるところがとても良いですね。

 

“気象”×”水害・土砂災害”情報マルチモニタ

https://www.river.go.jp/portal/#80

国土交通省が川やダムなどの情報をリアルタイムで公開している情報サイトです。

クライシスレスポンスサイトは直前あるいはリアルタイムの情報を公開することは難しいのです。

しかし、こちらのサイトは、現在発生している災害をリアルタイムで確認することができます。

各地の公共施設の情報サイトを見に行かなければならなかったのが、情報がまとめられて探しやすくなっています。

台風被害や降水量など、テレビや防災用ラジオの情報では頭の中を整理できなかったり、実感できないこともあるのですが、映像として目のあたりにすると、より危機感をもって素早い非難行動ができるのではないでしょうか。

 

おまけ: ハザードマップポータルサイト

https://disaportal.gsi.go.jp/

国土交通省 国土地理院が運用している情報サイトです。

リモートセンシング画像というより、地図に各市町村のハザードマップをまとめた情報です。

以前は、各市町村レベルでの役所サイトから表示するしかなかったのですが、ここに集約されました。

居住区を決める際にも便利なサイトになりますね。

 

 

赤の女王仮説ー新しい場所に行きたければ全力の2倍を出しなさい―

赤の女王仮説を知っていますか?

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赤の女王仮説(読み)あかのじょおうかせつ(英語表記)Red Queen hypothesis
 

生物の種は絶えず進化していなければ絶滅するという仮説。

 

ルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王の、「同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない」という言葉にちなむもので、進化生物学者リー・ヴァン・ヴァーレンによる造語。

 

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

 

 現在の宇宙業界は、この十数年に一気に変わりました。

 

今まで主導してきた政府とつながりのある組織から、民間企業がより表に出てくることとなりました。

 

かつては、日本ではスカパーJSATのような衛星通信企業が、人工衛星に関係する民間企業で分かりやすい宇宙関連企業でした。

 

もっとわかりやすい人工衛星やロケットを開発している宇宙開発企業もあるのですが、作られる人工衛星は政府系で、政府直下の宇宙機間から依頼を受けて発注され、製造されていたものです。

 

政府系の衛星と関係ない宇宙関連企業はほとんどありませんでした。

 

 

まあ、簡単に言うと、従来の宇宙関連企業より倍以上のパワーを持って、宇宙業界に参入する企業、スペースXが現われました。

 

まだまだ、政府系の資本が占めているところもありますが、今後、B2B主体のビジネスが、B2Cのビジネスに移行するかもしれない帰途に立っているのかもしれません。

 

そんなこと、2018年頃から言われてきているのですけどね。

 

2018年頃から衛星データを活用したビジネスが起きていますが、それでもまだB2Bに留まっているというレベルです。

 

しかし、この数年で何が起きるか分かりません。

 

一部の人たちは、2000年代のインターネットの爆発的な広がりと比較する人も出てきています。

 

 従来の宇宙業界の企業は、全力を出してきたかもしれませんが、今後、その2倍の勢いで駆け抜けていく企業が存在しそうだという話です。

 

正直、スペースXが通常の数十倍の人工衛星を一度に放出して、ちょうどこの言葉「新しい場所に行きたければ全力の2倍を出しなさい」を思い出しました。

 

従来の人工衛星は、数年がかりで開発していたものが、CubeSatの出現で、一気に縮まりました。

 

これからもどんどん加速していくでしょう。

 

今、宇宙業界にいる人たちは、常に情報収集をして、現在の宇宙業界の流れを把握していかなければ、破壊的なイノベーションが起きて、あっという間に撤退する可能性があることに気を付けておく必要があるでしょう。

 

kotobank.jp

慣らし運転の重要性と影響具合【宇宙機コンポーネント】

人工衛星と慣らし運転

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慣らし運転を知っていますか?

 

慣らし運転は、機械部品や電子部品を実装した後に、初期の故障を発見したり、急激な運転をすることでの部品同士の擦れや摩耗を防止することを目的とします。

 

電子部品も品質誤差があるため、実性能が中央値より低い場合があり、予期しない動作を生じさせたりすることを防ぎます。

 

機械部品の場合は、急激に力を加えると、応力が集中して機械部品の寿命を減らしてしまいます。

そのため、ある程度の力で動かし、機械部品にいびつな癖や応力を発生させないように、良好な癖をつけます。

 

最終的には、製品としての寿命を延ばすことにあります。

 

駆動部品の多い自動車やバイクの新車、スピーカーも慣らし運転をするとよいといわれています。

 

慣らし運転と言われると、各種部品や機器の調整と頭の中で変換できる人もいるのではないでしょうか。

 

この慣らし運転ですが、人工衛星に搭載するコンポーネントの製造の中でよく使われます。

 

今回は、そんな慣らし運転についてです。

 

慣らし運転は何時間が適切か、経験則によるところが多い

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慣らし運転というと駆動部品、機械部品、機構部品のかみ合わせを馴染ませるというとイメージが分かりやすいかもしれません。

 

回転機構を持つ機器、人工衛星の機器の中ではリアクションホイールやコントロールモーメントジャイロを始め、アンテナや光学機器に使われるモータを使用した駆動機構がある場合、駆動時に使用されるオイルが充分に機構部分になじんでいないと、突然機構部が動かなくなったり、急な速度で動くなどの異常動作を発生させます。そのため、オイルがなじむように、動かします。

 

そんな慣らし運転ですが、何時間駆動させればいいのでしょうか。

 

それは経験則ですね。

 

何十台、何百台、何千台と製造している自動車及び自動車関連部品や汎用量産品の場合は、多くの基礎データを取得することができ、その中から馴染むことができる時間のデータを蓄積できます。

 

一方で、人工衛星部品は、ほとんどが単品です。

電子部品の場合は生産中止もありますので、製造に何年もかかった人工衛星では、同種の電子部品を使って製造することもままなりません。

 

各機器に適切な慣らし運転時間は分からないのです。

 

故に経験則となります。

この辺りは各製造組織のノウハウとなります。

 

まあ、各種機器によるのですが、人工衛星機器の場合、長時間の慣らし運転はあまり聞きません。

 

よく聞くのは、1時間、3時間、5時間、8時間ですね。

もしかすると、知見があれば、7日間や14日間など、比較的長時間実施しているかもしれませんね。

 

さきにいう通り、これらの時間に根拠はありません、口伝やノウハウですので、だいたいそのぐらいというものです。

もしかしてちゃんと各電子部品や機械部品の特性を分析すれば割り出せるかもしれませんが、どうなんでしょうね。

 

この辺りは、日本より海外の方がノウハウを持っているような気がします。

 

理由は、日本より海外の方が、人工衛星専門のコンポーネント製造メーカーとかあるので、製造数は日本より多いはずなので。

 

何時間なんでしょうね。

 

といいつつ、慣らし運転をスピーカーのノイズ環境を良好にする時間と同等に、何十時間も何百時間、何千時間も動かすことはありません。

 

人工衛星開発は、ロケット打上げのスケジュールに縛られることが多いので、なるべく短時間で行われるからです。

打ち上げるロケット数が増えればその限りではありませんけど。

 

といっても、それは地上試験の話です。

 

人工衛星を軌道上に放出した後、初期フェーズと称して、いくつかの駆動を行います。

 

性能試験確認試験や初期故障、打上げ時のロケット振動の影響確認にもなるのですが、慣らし運転も兼ねているのです。

 

30日間連続で動かしていれば720時間、3か月連続で動かしていれば2,160時間、十分な慣らし運転になっているかもしれませんね。

 

ただ、人工衛星そのもののリソースが少ない小型衛星は、初期フェーズをそんなに長く使えないですけどね。

まあ、人工衛星の初期フェーズは、慣らし運転を中心に考えているわけではなく、各種性能試験、確認試験に実際かかる日数から割り出しています。

 

慣らし運転と確認試験

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一般に慣らし運転は、製品の寿命を延ばしたり、品質を安定化させるときに行います。

 

人工衛星でも、その面はあります。

ただ、人工衛星の場合は、初期故障の検出に使われることもあります。

もちろん主目的にはなりませんけど。

 

さて、ロケット打上げに適合している確認試験であるコンポーネントの受入試験(AT)に慣らし運転は必要か。

 

正直難しい所です。

 

なぜなら、コンポーネントメーカーは、人工衛星でどのように動かすのか分からないので、適切な慣らし時間を算出することが難しいからです。

 

最初は低レベルで鳴らすのもいいのかもしれませんが、人工衛星の運用で最も使用されるレベルが中レベルであった場合、中レベルの負荷での慣らし運転をした方が、実運用での負荷が減ることが多いからです。

 

ここで、問題となるのは、起動回数や保証回転数などに制限がある場合ですね。

慣らし運転で、挙動の安定や機器自体の寿命を延ばすのはよいですが、動かすことで耐久回数がゴリゴリ減っていく機器も、たまにあるので注意です。(まあ、今はそれほどシビアなコンポーネントはほとんど聞きませんけどね)

 

 

簡単にまとめると、新品のコンポーネントは、機構関係でなく制御系機器であっても、すぐに急激な負荷を与えず、慣らしていくことを忘れてはいけません、丁寧に扱っていきましょうということですかね。

 

コンポーネントメーカー側は、適切な慣らし運転をすること、などの注意書きを取り扱い説明書や仕様書に明記しておいた方がいいでしょうね。