日本では八百万の神といわれるように、様々な神様がおり、神社に祀られています。
珍しいものを祀っている一つとして飛行機があります。
飛行機に関わる神社として、羽田神社(東京都大田区)、飛不動尊(東京都台東区)、航空神社(東京都港区)、所澤神明社(埼玉県所沢市)、飛行神社(京都府八幡市)、泉州航空神社(大阪府泉佐野市)と日本各地に存在しています。
飛行機に関わる神社が存在しているのであらば、人工衛星及びロケットの打上げに所縁の多い神社があるでしょうということで、今回の記事をまとめてみました。
【目次】
- 飛行神社は京都にある
- JAXA筑波宇宙センターのあるつくば市内の筑波山神社
- ロケット射場のある種子島の宝満神社
- 北海道のロケット射場近くにある大樹神社
- JAXA宇宙科学研究所のある相模原市内の新田稲荷神社
- 各開発拠点にちなんだ神社で祈願している
- 人工衛星で何を祈願するのか
- 成功祈願のだるま
- 終わりに
飛行神社は京都にある
知る限り、人工衛星を含めたロケットなどの飛行機関連で有名な神社は京都にある飛行神社ですね。(画像は違う場所です)
最寄り駅:(京都府)京阪電鉄 石清水八幡宮駅から南東へ徒歩5分
JAXAを始め、ロケットで有名な三菱重工などの関係者も訪れています。
祭られているのは饒速日命(にぎはやひのみこと)ですね。
饒速日命(にぎはやひのみこと)は古代の空の神といわれ、天津神のみことのりをうけて「天爾瑞宝十種」を奉じお供の神三十二柱を従えて天磐船という飛行船に乗って、河内国河上の哮峯に天降られた。そこから再び天磐船に乗り大空を翔行き大以倭国鳥見白庭山に遷り坐した神様です。
命が天降られた哮峯には、磐船神社(大阪府交野市私市)があり、ご神体は天磐船といわれる大石でその形が大船に似ているところから信仰の対象となっています。
当社には大正4(1915)年に二宮忠八翁が飛行神社創建に当たって磐船神社(大阪府交野市)よりご分霊いただきました。飛行神社より
文書の中に出てくる「二宮忠八」は、ライト兄弟が飛行実験に成功する12年前の1891年4月29日に、ゴムを動力としたプロペラを利用した鳥(カラス)型模型飛行器を完成させ、10mの飛行に成功しました日本航空機の父と呼べる人物です
飛行機ではなく、飛行器と称しているのは、二宮 忠八自ら命名したため、あえて器としています。
1893年10月5日に、主翼が2枚ある複葉機の”玉虫型模型型飛行器”を作成したのですが、援助する人がおらず、見通しが立っていたにもかかわらず、 ライト兄弟の飛行実験成功の報を聞き、ライト兄弟を真似ただろうという評価しか受けないとして、製作中の飛行機を破壊したそうです。
やがて、世界が飛行時の時代となり、犠牲者が多く現れ、その霊を慰めるために資材を投じ、1915年に二宮忠八が飛行神社を創建しました。
飛行神社には、航空業界初期の歴史資料を展示している二宮忠八資料館もあります。
JAXA筑波宇宙センターのあるつくば市内の筑波山神社
JAXA筑波宇宙センターに勤める人が住まう土浦市とつくば市の近郊にある霊峰筑波山にある筑波山神社
最寄り駅:(茨城県)つくばエクスプレスで秋葉原よりつくば駅まで45分、筑波山シャトルバス40分
JAXA筑波宇宙センターあるいはつくば市内ですべての試験を終え、ロケット射場に搬送される前に、多くの人が訪れて成功祈願をしています。
筑波山は、関東地方に人が住むようになったころから、信仰の対象として仰がれてきました。御山から受ける恵みの数々は、まさに神からの賜物でありました。その山容が二峰相並ぶため、自然に男女二柱の祖神が祀られました。
その後祖神は「いざなぎの神、いざなみの神」と日本神話で伝えることから、筑波の大神も「いざなぎ、いざなみ両神」として仰がれています(中略)
筑波山神社は坂東無双の名嶽とうたわれた筑波山を境内とし、万葉集に「二神の貴き御山と神代より人の言い継ぎ」と崇められているように、古代山岳信仰に始る国内屈指の古社である。西峯男体山頂(871m)の磐座に筑波男大神(伊弉諾尊)を、東峯女体山頂(877m)の磐座に筑波女大神(伊弉冊尊)を祀る。
(中略)
紀元元年、筑波山神社男体女体両宮が創祀され、(中略)1875年に現拝殿を造営して現在の規模を整えたのである。
筑波山神社とは
ロケット射場のある種子島の宝満神社
種子島でのロケット打上げ時に関係者が参拝される宝満神社
アクセス: (鹿児島県)種子島空港から車で約40分、西之表港から車で約1時間5分
文化四丁卯年の創建である。祭神玉依姫命が水田を開き稲を作り、食生活を潤した御神徳を称え奉って、宝満池の畔の今の浄地に奉斎したものである。
島内各地で籾の付いた弥生式土器が出土し、天武天皇十年(六八一)には島の状況として、「粳稲常に豊なり、一たび植て両び収む」(日本書紀)と記され、当社縁起にも「種子島は日本における稲作の始まりの地」とあって、当社では今でも稲の原種ともいわれる「赤米」を神田で作っている。
宝満神社 由緒
由緒にある通り、稲作始まりの地であり、水稲農耕文化の初めとされる「赤米」を植える御田植祭(町無形文化財)が毎年4月5日ごろから行われている。
北海道のロケット射場近くにある大樹神社
北海道のロケットの町大樹町にある大樹神社
アクセス:帯広駅西口から十勝バスで105分 大樹柏木町下車徒歩1分
ロケットの町の神社であることから、ロケット関係のお守りがあるようです。
ロケットのお守りというと、無事に軌道上に届けることから、運送・運搬関係にご利益がありそうですけどどうなんでしょうね。
明治41年兵庫県三原郡阿万村(現三原郡南淡町)から入植した西田円蔵他数名の人々が発起し、郷里の亀ヶ岡八幡神社より御分霊を勧請、現境内地に社殿を建て「大樹八幡神社」としたのが創祀である。昭和3年、大樹村が広尾村から分村したことにより、大樹村一円を氏子区域とし、産土神社として尊崇を集めた。昭和9年には改めて京都石清水八幡宮から御分霊を勧請。昭和10年3月無格社「大樹神社」として認可された。昭和14年社殿を造営し村社への認可を申請したが、玉垣の未完成があり、完成後再度申請するようにと保留になったが終戦となった。昭和21年宗教法人となる。平成元年、御大典記念事業として、2億3千万円余の予算をもって社殿・手水舎・社務所の改築工事を行い平成3年に竣工した。
JAXA宇宙科学研究所のある相模原市内の新田稲荷神社
JAXA宇宙科学研究所(ISAS)があり、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」にゆかりのある新田稲荷神社
最寄り駅:(神奈川県)JR横浜線淵野辺駅 から徒歩9分、矢部駅 から徒歩21分
日本を沸かせた小惑星探査機「はやぶさ」が宇宙空間で見失った際に、「発見祈願」にプロジェクトマネージャーの川口淳一郎さんが毎晩訪れたといいます。
その後の小惑星探査機「はやぶさ2」では成功祈願が行われました。
新田稲荷神社は、文政元年(1818年)から開拓の始まった淵野辺新田の鎮守として稲荷社として創建したといいます。
(中略)
このあたりは広大な原野であったため、いったん草に囲まれると方向がわからずに行方不明になる人もいました。そのため見晴らしのよい小高い山を築き、人さがしに御利益のある川口村(現在の八王子市)の今熊神社を勧請して行方不明者の捜索に役立てたといわれています。
(中略)
野火除のため開墾の芝や土などで約七メートルの塚を築き、頂上で鐘や太鼓を叩いて御祈りして探したと伝えられている。
新田稲荷神社の由緒
各開発拠点にちなんだ神社で祈願している
現在、多くの地域で人工衛星が開発され、近々各地でロケット射場が整備されつつある。
ネットで調べただけでも、2021年ではアクセルスペースが打上げた時、2018年にリーマンサット・プロジェクトのRSP-00が打ち上がる前に、東京都台東区ある飛不動尊に御祈願をされていたという画像や記事があります。
日本初の量産衛星GRUS 4機の打上げ成功!https://t.co/PKXUNe9BKI
— Axelspace (@axelspace) 2021年3月22日
Axelspace successfully launched 4 GRUS satellites.https://t.co/6GnVXwNvur pic.twitter.com/b6g3X913ma
各地の大学でも、近隣の神社にて成功祈願をしていることでしょう。
ただ今後人工衛星の打ち上げ数が増えるにつれて、御祈願の文化も少しずつ減っていく可能性があると思うと、なかなか寂しい気もしますね。
人工衛星で何を祈願するのか
そんな人工衛星の御祈願ですが、何に祈るのでしょうか。
第一は「成功祈願」ですね。
その次は「交通安全」。
人工衛星の成功は、軌道上でのミッション成功であるのですが、その前に様々な交通場面での不意の事故が懸念されます。
さらに、不具合が多ければ「厄除開運」ですかね。
ちなみに自分のプロジェクトで担当範囲で不具合が多発した時はそれなりに有名なところで(個人的に)厄払いをしました。
心持かもしれませんが、不具合多発の勢いは減った気がします。
これら四つが御祈願する内容になるのではないでしょうか。
御祈願でいただいたお神札は運用室に置かれていることが多いですね。
ミッション成功まで、達磨と共に、運用を見守ってもらう、そんな願いが込められているのかもしれません。
成功祈願のだるま
お神札と一緒に達磨(だるま)もおかれていることが多いです。
達磨自体は東日本に多く、西日本ではほとんど見かけないため、見たことがない方もいるかもしれません。
達磨は白目のまま販売され、祈願のため左目に黒目を書き入れ、成就すると右にも黒目を入れる「目入れだるま」の風習があり、役目を終えただるまは、各地で正月に行われる「どんど焼き」の際、お焚き上げをします。
成就しなかった場合はそのまま次の機会に持ち越されるか、右目が白めのままお焚き上げされることもあります。
次回に持ち込ち越される場合は、成功祈願の念を蓄積されて、成功率が上がると考える場合もあるようですね。
終わりに
人工衛星開発はやり切ったとしても、不安が残る場合が多いです。
最後の祈りとして、神頼みをするのですが、人工衛星開発の際は、関係神社の中で近い場所をめぐるのも良いかもしれません。
もちろん、近隣の神社に引き続き見守ってもらうと考えるのも良いかもしれません。
信仰の自由なのですから。
今後、各地で人工衛星開発が活発になれば、人工衛星及びロケットに所縁のある神社が増えるかもしれませんね。
一つは和歌山県串本町での射場近郊ですが、あの辺りは神社も多いため、どこのスポットが当たるのでしょうかね。
参照文献
二宮忠八について
http://www.city.yawatahama.ehime.jp/docs/2014082600018/
解説 飛行神社
https://www.rikou.ryukoku.ac.jp/images/journal65/RJ65-01.pdf
https://www.tsukubasanjinja.jp/
宝満神社
https://www.kagojinjacho.or.jp/shrine-search/area-kumage/%E5%8D%97%E7%A8%AE%E5%AD%90%E7%94%BA/1136/
http://www.furusato-tanegashima.net/js/minamitanetyou/houman-shrine.html
大樹神社
https://hokkaidojinjacho.jp/%E5%A4%A7%E6%A8%B9%E7%A5%9E%E7%A4%BE/
新田稲荷神社の概要
https://tesshow.jp/kanagawa/sagamihara/shrine_kyowa_shinden.html
だるま-wiki