「2025年の崖」
「2025年の崖」を知っているでしょうか?
「2025年の崖」とは既存システム(レガシーシステム)が古くなり、技術格差が追い付けないレベルにまで達する可能性のある予想時期のことである。
この壁を越えた先に何があるのかというと、何も日常生活では起きない。
過去にプログラミングの設定上で誤動作が起きた2000年問題や、宇宙天気上で多くの放射線を受ける太陽コロナ問題、かつてドイツに存在していた物理的なベルリンの壁といったものではない。
2025年を超えると日本は毎年約12兆円の経済損失が発生するというものだ。
毎年約12兆円の経済損失とは、赤字が12兆円ぐらいになるというわけではなく、本来得るはずであった利益が12兆円ぐらい減るということだ。
経済損失というより、機会損失といった方がしっくりと来る人もいるかもしれない。
この「2025年の崖」を越えるために、デジタルトランスフォーメーション(DX)と称して、国を上げて改革・変革を推し進めているのだ。
DXは主に製造業に注目されているが、製造業だけではなく、他の業界でも改革・変革を進めなければ、売上が目減りしていく。
目減りしていくなら分かりやすく徐々に対応していかなければいけないと考えるのだが、急に売り上げが立たなくなることも発生する。
売上が、他社の台頭で増減したり、会社が成り立たなくなるなんていうことは、今まででもよく発生していた、よくある事例ではある。
しかし「2025年の崖」を越えた辺りから、日本全体が落ち込む可能性があるといっているものだ。
DXの記事でよく言われているのは、単純作業を自動化し、人間にはよりクリエイティブな、付加価値の高い業務を行い、スピーディーな供給・対応、コスト削減を行うことを挙げている。
まあ、ぶっちゃけ、DX、DXと言っているが、導入としてやっていることは過去の農業改革のような流れを使用している技術が違うけれどにたことを、製造業を始め他の業界でもやりはじめたのである。
農業は、人の手が必要であった時代から、多くの農業機械によって人の手を減らし、効率的に、スピーディに収穫するシステムを作り上げていた。
現在では品質を一定化させるために、糖度判定や色判別による一定の品質を提供している。
さらなる効率化のため、人の手を減らすために、衛星画像から植生の成長具合を確認するまでになっている。
このように、一部の企業、業界ではDXと呼ばれることを実施しているのだが、それでも多くの組織では、人の勘や経験だよりで組織を回しており、国の方から警告を出したというわけである。
この警告を無視していると、やがて事業が立ち行かなくなる。
DXは事業効率のみに注視しているが、人の勘や経験だよりの場合、技術の継承者もいなくなり、やがてロストテクノロジーとなる。
それも含めて、国として危惧しているのだ。
という説もある。
レガシーシステムとDXの関係
レガシーシステムはDXを妨げる要素になる。
レガシーシステムは、過去から使用され、様々な人を介して、カスタマイズし、最適化した結果、新たに手を出す人からすれば、複雑であり、巨大でコントロールが効きにくいシステムを独自に構築し進化させてしまっているのだ。
巨大で複雑なシステムはコントロールがとても難しい。
微妙なバランスで構築されているため、保守・メンテナンス・改修作業に時間が掛かる。
結果、隠れた負債を社内にため込むことになっている。
この負債は、毎年あるいは数年ごとに費用が掛かる固定費になり、知らず知らずに経営を圧迫し、デジタル化による効率化を妨げる要因となっている。
よりシンプルで、修正しやすいシステムを構築しておくことがよし。
このレガシーシステムを新しいシステムに変えることで、DX化を進めることができるなどと単純に書かれているところもあるが、その場合は、新しいシステムがレガシーシステムになるだけである。
そもそも、システムが複雑化する前に、常に新しいシステムと取り入れるか、可能な限りシンプルなシステム構造で構築していくということを前提に考えなければいけない。
よく分からないがDXに有効なツールだからといって取り入れても、使いこなせなければ意味がない。
このレガシーシステム化を防ぐためには、システム構築のためのシステムエンジニアリングやプロジェクトマネジメントにより、要求を洗い出し、整理していく必要がある。
これは、数年前に台頭してきたデータ分析、データサイエンティストの役割の一つではなかろうか。
各工場や部署とコミュニケーションを行い、要求をまとめ、必要なデータを洗い出し、改善を提案する。
実行は各部署で行い、業務改善を行っていく。
そんな横断組織を見直すというのも一手かもしれない。
DXで求められていること
正直、業務改善や作業効率の向上だけがDXで求められていることではない。
一つ目として、業務改善や作業効率の向上のために、デジタル化を行うのかもしれないが、そこからさらなる付加価値を生み出すところがDXである。
二つ目は、業務改善や作業効率により空いた時間をより、知識の継承やシステムのレガシー化を防ぐために知識を「見える形」で残していく。
三つ目は、「見える形」で残っている技術を分析したり、付加価値を与え、新しい製品やサービスを提供する。
最終的には、DXを利用することで、一つの組織に留まらず、業界あるいは組織間を巻き込んだ新たな事業領域の構築を行うことを狙っているように思える。
これら4つすべて行うのではなく、最終的に業界あるいは組織間を巻き込んだ新しい事業領域なり、戦略で「2025年の崖」に挑んで行けということのような気がする。
DXと言われて、今までの業務改善と何が違うのか疑問に思う人たちは、一つ目の情報しかいきわたっていないからなのではないだろうか。
事実、多くの記事では一つ目に留まっている。
理由は、一つ目では業務改善のサービスやソフトウェアの需要が高まり、その分野の業界がにぎわうからである。
マーケティングに踊らされているのですよ。みなさん。
もちろん、DXの取っ掛かりとしては問題ないのだが、「2025年の崖」を乗り越えるには、さらに、デジタル技術による新規サービスなり製品を提供する土台を作り、新しい製品やサービスに目を向けていくことも必要である。
では、そんな事例がどこにあるのか
衛星とレガシーシステム
レガシーシステムは別に業務システムのことを指すわけではない。
多くの人が手を入れることによって、複雑化し、ブラックボックス化してしまったシステムもその一つである。
人工衛星システムは、実績主義であると聞いたことがある人もいるかもしれない。
実績がゆえに、システムを変更することで発生する「変更点による不具合」を恐れている。
そこで従来より人工衛星を製造してきた組織は、現在、変更点管理に重点を置いている。
変更点管理をすることで、実績を着実に積み重ねていけるのだが、ここ数年で人工衛星事情も変わってきた。
変更点管理により蓄積してきたデータと比類して、小型衛星を製造し、多くの人工衛星を軌道上に放出することで、新しい制御の実績を蓄積することが可能となった。
表面上分からなくなっているかもしれないが、人工衛星の制御に関して従来の大型衛星と同等のレベルまで到達しやすくなっているのではないだろうか。(到達しているとは言っていない)
参考文献
衛星の揺れを止めろ
https://jpn.nec.com/ad/cosmos/shizuku/story/02/page02.html