往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

防衛白書 令和2年版を振り返り読み解く宇宙領域

産業面から見る防衛白書 令和2年版

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技術だけではなく、国の政策からも宇宙領域をみたことはあるでしょうか?

 

利用者からすれば、注意している方は少ないかもしれませんが、開発者や事業者からすれば政策にまつわる補助金や、業務委託という形でお客様になります。

 

国防とか技術面は横に置いておいて、今回はなるべく、産業面から防衛白書を読み解いていきます。

 

ただ、防衛面での宇宙事業関係の場合は、既知の技術や製品を使い、安全や信頼性が高いものを使用しているイメージがあります。

これは新規の研究開発や実証実験レベルがとても少ないということです。

 

防衛を見据えた宇宙用製品を開発する場合は、すでに他の製品などで関わりがなければ、防衛特化ではなく産業で十分に有用である結果がなけれなならないことに注意しておく必要があります。

 

最初からアイディア先行のスタートアップで防衛目的で販売しても誰も買わない、ということです。

 

興味を示し、情報収集のための接触はあるかもしれませんが、開発の時間を考慮すると、何年もスタートアップ企業のスポンサーとなることはやや少ないといえます。

昨今の予算事情では、文科省内閣官房のような予算がないため、難しいでしょう。

 

現在の予算を増やすという話もありますが、決まっていないことは仮定とすることは避けます。

それに明言しているのは文科省の大臣であるため、長期計画としても、入れるのは止めておいた方がいいでしょうと先に述べておきます。

 

「特集2 新たな領域 宇宙領域 サイバー領域 電磁波領域」

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一般知識として 、宇宙空間に利用されるものとして、各種の観測衛星、通信・放送衛星、測位衛星などが打上げられているとあります。

 

現在、ビックデータであったり、画像解析に提供される画像を取得するリモートセンシング衛星とも呼ばれる人工衛星は、観測衛星に分類されます。

 

これら人工衛星とは別に、宇宙空間利用において特に注意されるものとして2点あげられています。

  1. スペースデブリ宇宙ゴミ
  2. 人工衛星に接近して妨害・攻撃・捕獲するキラー衛星

 

この2つを如何様に対応していくべきか、議論に上げられています。

書き様から、どのように取り組むべきなのか情報収集と試作検討段階、製品調達で進めているというところでしょうか。

 

国防という観点から、内部組織内、あるいは古くから付き合いのある信頼できる企業を利用してでの情報収集などの初期検討を取り組んでいることでしょう。

 

宇宙空間利用だけではなく、防衛白書では、サイバー領域と電磁波領域について記載されており、この3つの新領域と従来の陸・海・空を融合させることを検討しているようです。

 

サイバー領域については、情報としては2010年代の話で古いですが、こちらの情報が役に立つかもしれません。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

電磁波領域については、実は宇宙業界と切り離せない領域でもあります。

まあ、宇宙業界は産業としての裾野が広いので、切り離せない領域は多いかもしれませんけどね。

 

宇宙領域をめぐる動向

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防衛という面ではどのような衛星が使用されているでしょうか。

 

防衛白書には次のようなものがあげられています。

 

  1. 軍事施設・目標偵察用の画像収集衛星
  2. 弾道ミサイルなどの発射を感知する早期警戒衛星
  3. 電波信号などを収集する電波収集衛星
  4. 各部隊間などの通信を仲介する通信衛星
  5. 艦艇・航空機の測位・航法・時刻同期や武器システムの精度向上などに利用する測位衛星

 

この中で、自衛隊が保持している衛星は、おそらく通信衛星ぐらいではないでしょうか。

 

画像収集衛星や測位衛星は、内閣府側で持っています。

しかし、自衛隊は独自性が強い印象を受けるため、画像収集衛星の画像データなどは気軽に手にすることは難しいような気がします。

 

最初からそのつもりなら、防衛庁で研究開発費を取得して独自で人工衛星を開発すればいいもののとは思います。

 

まあ、軍事色が強くなるのを避けるためかもしれないですけどね。

 

同じことは内閣府が管理?運用?している測位衛星である準天頂衛星にも同じことが言えます。

 

ただ、準天頂衛星は、割と情報がオープンな方なので情報提供は難しくないかもしれません。

 

さらに、早期警戒衛星と電波収集衛星は、日本政府内では調査研究レベルで、影も形もありません。

 

そういう意味では、ねらい目なのかもしれませんね。

 

このうち、早期警戒衛星は即応性衛星と関連つけられているため、5年以内には実現の目途が立ちそうですけどね。

 

 

そんな一方で、宇宙作戦隊の内容が報道されました。

 

そこでは人工衛星の動きを分析し予測しているそうです。

主な目的は、日本の人工衛星を敵対攻撃から守るというものですね。

この「日本の人工衛星」はどこまでの範囲に入るのかちょっと知りたい気がしますね。

 

ひまわりのような気象観測衛星はもちろん、情報収集衛星といった政府衛星だけではなく、いわゆる、宇宙活動法で登録された人工衛星も入るのでしょうかね。

 

人工衛星の管理に関わる許可申請書などを見ると、軌道情報を提供することで独自に軌道を監視することができます。

 

人工衛星の構造の記載もあるため、高精度の観測機器なら地球上から、人工衛星を観測できるかもしれません。

 

宇宙活動法も細かい箇所が改訂されているため、何か宇宙作戦隊などに情報を提供するようなことがどこかに記載されているかもしれませんね。

 

 参考資料

宇宙関係予算について

https://www8.cao.go.jp/space/budget/yosan.html

令和2年度当初予算案及び令和元年度補正予算案における宇宙開発利用関係予算について

https://www8.cao.go.jp/space/budget/r02/fy02yosan_01hosei.pdf

自衛隊「宇宙作戦隊」の訓練 報道陣に公開

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201216/k10012767621000.html

1994年、木星に衝突した彗星が地球と同じ大きさの衝突跡を残した

Comet Shoemaker–Levy 9 (D/1993 F2)を知っていますか?

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Category:天体衝突を題材とした映画

 

隕石あるいは彗星が衝突した光景を見ることができる人はどれだけいるでしょうか?

 

地球には年間数個の隕石が落下してくるといいます。

 

そんな隕石が落ちてくる様子と、落下したクレーターを観測できる人はほとんどいないでしょう。

 

四半世紀ほど前にそれを地球上全世界で観測できるチャンスがありました。

 

1993年3月に、シューメーカー夫妻とデイヴィッド・レヴィによって発見された彗星はComet Shoemaker–Levy 9 (D/1993 F2)、シューメーカー・レヴィ第9彗星と名付けられ、翌年7月に木星に衝突しました。

 

最初はそんなことはなかった

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA00139

 

発見した彗星も、当初は木星に衝突するとは考えられていませんでいた。

 

彗星は、1966年ぐらいに、木星の引力に捕らわれ周回することになり、数十年間もの間木星の周りを回っていたとされています。 

 

発見から1年以上たった1994年7月に日本の天文家である中野主一と村松修によって衝突する軌道であることが予測されました。

 

衝突は、木星の引力に捕まった彗星が重力のバランスを崩し(木星潮汐力)崩壊、2km以下の大きさに分裂して毎秒60kmの速度で、1994年7月16日から7月22日の数日間もの間、21個の衝突が観測されました。

 

木星は、現在においても完全に解明されていませんが、地球でいう地上、地殻はなく、大気の層から内部の液体の層を形成する惑星だそうです。

 

地球や月のように、地表にクレーターが残ることはなく、衝突によって、大気を形成するガスや液体によるものによって、炎が吹き上がったところが衝突の際に観測されました。

 

当時、木星探査のために1989年に打上げられ、まだ移動中の木星探査機ガリレオによって彗星の衝突の瞬間が観測されました。

 

探査機だけではなく、地球の彗星や惑星の専門家は望遠鏡をのぞき込み、地球の軌道上を周回しているハッブル宇宙望遠鏡木星の方向に向けることになりました。

 

衝突跡は、小さな望遠鏡を使用しても非常に簡単に見ることができたそうです。

 

火の玉

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-ARC-1994-AC94-0353-3

 

7月16日の最初の衝突では、地球の半径とほぼ同じ幅で約6000 kmの衝突跡が残りました。同時に発生した火の玉は、23700℃(24000K)の温度に達しました。

 

木星の大気の温度はー140℃(130K)程度ですので、一気に2万℃近く急上昇したことになります。火の玉の噴煙も3000km以上であったそうなので、エベレストはもちろん、低軌道の人工衛星国際宇宙ステーションが巻き込まれたことになります。

 

破片の中に最も大きな影響を及ぼしたのが、7番目に衝突したフラグメントGと呼ばれる破片です。フラグメントGの衝突は、600万Mトンに相当するエネルギーを放出しました。

 

衝突により木星の貴重なデータを取得することもできました。

 

硫化水素アンモニアなどの「硫黄含有化合物」が放出されたり、微細な破片の動きから、木星の高高度の大気の動きを観測できるなどの成果を得ることができたそうです。

 

その後の影響

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA01265

 

衝撃跡は数年後に消えましたが、探査機ガリレオによって、1994年と2000年に木星の輪の画像を取得した時には、1994年に輪の全体が約2kmほど傾いていることが観測されています。

さらに、衝突から約20年後の2011年に、冥王星探査機ニューホライズンにより、木星の輪のブレを観測されたそうです。

 

軌道上にある欧州のハーシェル宇宙天文台の赤外線宇宙望遠鏡によって、彗星の衝突による水分が2013年ごろまで待機中に残っていることが観測されています。

 

 

木星への彗星衝突と関連して語られるのは、2013年に、ロシアのチェリャビンスクという都市で発生した隕石の衝突です。

 

地表面には衝突せず、上空で爆発したのですが、彗星の大きさは直径17mでしたが、それでも数百人の負傷者と建物への被害が発生しました。


Падение метеорита в Челябинске ! 15.02.2013г.meteorite in Chelyabinsk

 

 

1994年の木星の衝突後、1998年にアメリカの議会ではNASAに直径1kmの地球近傍天体(NEO)の90%を探すことが義務付けました。

 

これは、1990年代後半、ハリウッドは、地球への彗星衝突をテーマにした映画である「アルマゲドン」と「ディープインパクト」の影響も少なからずあったとされています。

 

参考資料

What would happen if a rocky planet the size of Earth collided with Jupiter?

https://www.quora.com/What-would-happen-if-a-rocky-planet-the-size-of-Earth-collided-with-Jupiter

 

 What would have happened if comet Shoemaker-Levy 9 had hit Earth instead of Jupiter?

https://www.quora.com/What-would-have-happened-if-comet-Shoemaker-Levy-9-had-hit-Earth-instead-of-Jupiter

 

Category:天体衝突を題材とした映画作品 - Wikipedia

 

Comet Shoemaker–Levy 9 - Wikipedia

 

シューメーカー・レヴィ第9彗星 - Wikipedia

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Impact_event#Jupiter

 

隕石落下のリスク評価 ―100 年間の落下隕石

https://www.spaceguard.or.jp/RSGC/results/ASTEROID_23_4/Vol.23-99-103.pdf

 

地球に隕石落下って年間どれぐらい?

https://www.gizmodo.jp/2013/02/post_11674.html

 

隕石落下は人類最大の脅威!? 今後10年間で危険そうな小惑星リスト

https://miraijin.info/asteroid-collision/

 

人類史上でただ一人だけ月面に埋葬された人物とは?

https://gigazine.net/news/20181027-eugene-shoemaker-buried-moon/

 

1994 年の SL9 彗星の衝突のスケッチ画像を収蔵

https://prc.nao.ac.jp/prc_arc/arc_news/arc_news921.pdf

 

宇宙で発見された最も怖いものは何ですか? - Quora

 

ロシアに墜落して激突した隕石のとんでもない瞬間を撮影したムービーまとめ - GIGAZINE

 

ロシア・チェリャビンスク隕石の総合解析~起源と歴史の理解に向けて~

http://chrome-extension://dnkjinhmoohpidjdgehjbglmgbngnknl/pdf.js/web/viewer.html?file=https%3A%2F%2Fwww.okayama-u.ac.jp%2Fup_load_files%2Fsoumu-pdf%2Fpress24%2Fpress-130318-2.pdf

 

チェリャビンスク隕石の現地調査報告

https://www.wakusei.jp/book/pp/2013/2013-4/2013-4-228.pdf

 

Why, when the Shoemaker/Levy comet slammed into Jupiter, were we not able to get even better photos of the event? Was that the best equipment for 1992?

https://www.quora.com/Why-when-the-Shoemaker-Levy-comet-slammed-into-Jupiter-were-we-not-able-to-get-even-better-photos-of-the-event-Was-that-the-best-equipment-for-1992

 

https://www.quora.com/Would-we-be-dead-if-Jupiter-didnt-exist

 

https://www.quora.com/If-Jupiter-is-made-up-of-entirely-gas-why-do-comets-slam-into-them-and-explode-like-it-hit-a-solid-ground-e-g-Shoemaker-levy-9-comet-in-1994

 

https://www.quora.com/What-is-the-largest-space-object-impact-recorded-in-human-history

Shoemaker-Levy 9: Comet's Impact Left Its Mark on Jupiter

https://www.space.com/19855-shoemaker-levy-9.html

軌道での温度変化を考慮しなかったためにSバンドアンテナが故障した | Lessons Learned、失敗学、事故事例

気象衛星NOAA-15(NOAA-K)のSバンドアンテナの故障 

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Credits: NASA  GOES-L

https://images.nasa.gov/details-KSC-99pp0489

 

極軌道気象衛星は、南北の極付近を通り赤道を大きな角度で横切る軌道を持っています。

これは、低高度(NOAA の場合は約850km)を短い周期(NOAAの場合は約100 分)で地球を南北方向に周回する軌道です。この軌道を持つ衛星は、地球上のある地点からみると、1日2回程度その地点の近傍上空を通ります。

静止気象衛星に比べ低高度を飛行するため、高解像度の画像が得られますが、観測範囲は狭くなります(NOAA の場合、幅約3,000km)。

また極軌道気象衛星は、静止気象衛星による観測が難しい高緯度地方(緯度60度以上の極地方)を高頻度で観測することが可能です。

静止気象衛星と極軌道気象衛星

 

今回は、最近注目を集めている小型衛星を打上げている軌道とは別の、軌道を通る宇宙船のアンテナに関するLessons Learnedです。

 

概要

温度変化の大きい軌道を採用する場合、人工衛星に使用されるアンテナの評価をより厳密にする必要があります。

 

設計で熱の影響を十分に考慮しつつ、熱モデルを作成したり、熱サイクル試験により設計を確認する必要があります。

 

発生タイミング

気象衛星NOAA-15(NOAA-K)は、1998年5月13日に打ち上げられました。

 

この衛星は、1978年に打ち上げられたTIROS-Nの設計の流れを汲む、新しい極軌道気象観測衛星(POES)の1号機に当たる人工衛星でした。

 

この衛星には、今までにない1700MHzの周波数範囲で動作する3つのSバンドアンテナを搭載していました。

 

ロケットから放出から約18日後、Sバンドアンテナ#2でデータ品質の低下が見られました。

 

1998年10月、英国が分析した観測機器Advanced Microwave Sounding Unit-B(AMSU-B)の観測データは、スキャン視野の半分に品質の劣化を観測しました。

 

発生原因

データの劣化は、人工衛星の軌道位置に応じて、相関性がある場合とない場合がありました。

 

調査の結果、毎年の季節の変化により、太陽が北から南に移動するにつれて、劣化も移動していることが明らかとなりました。

 

さらなる調査により、Sバンドアンテナで大きな温度勾配を受け、受信リンクの品質と観測データの劣化と、熱的な相関性があることが明らかとなりました。

 

アンテナに対して詳細な熱応力分析を行い、アンテナの歪みや破損を引き起こすのに十分な応力がは発生していることが確認されました。

 

また、一度アンテナが壊れると、アンテナゲイン、軸比、および定在波比 (Standing Wave Ratio:SWR) の変化により、受信リンクの品質とアンテナパターンが大幅に低下します。

 

解析で確認できた故障モードは、アンテナの熱サイクル試験で同様の結果を確認することができました。

 

Lessons Learned

軌道上で大きな温度勾配にさらされる人工衛星の設計者は、設計内のすべての材料の熱膨張係数(CTE)を慎重に検討する必要があります。

 

材料が受ける軌道温度のワースト値とその温度勾配を確認する詳細な熱モデルを作成し確認する必要があります。

 

熱モデルは、主に材料の機械的応力と熱的応力の両方を詳細にモデル化していく必要があります。

 

頻繁に、そして大規模な熱環境にさらされる場合は、熱サイクル試験の項目として、詳細に確認しておく必要があります。


Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

新規の宇宙用ハードウェアを採用する場合、ピアレビューや設計レビューで重点項目の対象となるようにします。

 

今回のLessons Learnedを受けて、アンテナは、CTE特性が良い材料で再設計され、広範な熱サイクル試験に供されるように設計されるようになりました。

   

 

最後に

小型衛星を見るとパッチアンテナが多いです。

 

 見た目でアンテナと分かるのは皿(ディッシュ)が半球に近い形状を持ちパラボなアンテナではないでしょうか。

 

これらのアンテナは熱の影響を受けやすく、形状によっては集光して熱を集めることにもなります。

 

熱により変形してしまうと、本文のように送信データが劣化してしまいます。

 

しがたい、運用上でもなるべく太陽光を受けないような部分にアンテナが付けられています。

 

基本は地球に向けるため、わざわざ太陽を向けることはあまりありませんので、たまに設計の検討項目から抜けてしまうのかもしれません。

 

検討項目から抜けてしまう理由として、アンテナ系は構造系と別のメンバーが設計しており、設置場所や通信以外での運用時の人工衛星の指向方向など、気づいたらアンテナに悪影響を及ぼす運用だったなんてことは、たまにあります。

 

複合要因であるからこそ、設計や試験項目での追加項目としてあらかじめあるいは第三者視点でないと、抜けてしまうので要注意です。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

 

https://llis.nasa.gov/lesson/908

 

静止気象衛星と極軌道気象衛星

https://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/general/geopolar.html

光学機器搭載の人工衛星に必須な汚染対策 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙機搭載イメージングカメラの汚染への対応(1999)

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人工衛星において光学観測は、その結果が見た目でも分かりやすく、直観的にも出来を判断されてしまいます。

 

地上のカメラにおいても、保管方法を間違えてしまえば、レンズにカビが生えたり、汚れが付着してしまいます。

 

洗浄方法はいくつかあるのですが、人の手がない宇宙空間ではその対応が難しいのです。

 

今回は宇宙空間でのカメラの洗浄方法とロケットで打ち上がるまでの管理についての教訓です。

 

概要

カメラに汚染物が付着した場合、その分析は汚染源や複雑な付着経路を必ずしも特定できるとは限りません。

 

設計・製造では、カメラシステムと熱制御面をわずかな侵入口から遠ざけたり、感受性の高い面を覆ったり、密閉したりする必要があります。

 

設計・製造時に、水蒸気汚染の対策(例えば、温度環境管理)を考慮する必要があり、複合材料を使用する場合は、低吸湿性材料の選択あるいは非ガス放出のコーティングを使用も考慮する必要があります。

 

発生タイミング

打上げ直後、初期動作確認で、NASAディスカバリー計画の探査衛星スターダストに搭載されたイメージングカメラの光学面が汚染されていることが判明し、画質が低下されていることが確認されました。

 

カメラのCCD検出器と光学系の低温動作温度により、汚染分子が物体に付着しやすい「コールドシンク」現象を発生させます。

 

この現象は遊離分子が最も冷たい表面に移動します性質を持っています。

 

付着する汚染物質は、宇宙船のガス放出、カメラ内に閉じ込められた汚染物質が付着している可能性があります。

 

探査衛星スターダスト以外でも、過去に米国および米国以外の低温動作温度環境に曝される機器で発生することが分かっていました。

 

イメージングセンサーの品質を悪化させないために主な対策としては、内部ヒーターや付着物が無機物の場合は太陽の熱によって、汚染物質を除去することが知られています。

 

ただし、加熱することで汚染物質の除去した後、宇宙船とカメラの光学部品の間の温度勾配により暖かい汚染源と冷たい光学面という状態になると、再びカメラの光学面に汚染物が付着することも分かっています。

 

その場合は、再度、内部ヒーターを使用して、再び汚染物質を除去する必要があります。

 

Lessons Learned

カメラに汚染物が付着した場合、理論的に分析しても、汚染源や複雑な付着経路を必ずしも特定できるとは限りません。

 

そのため、ミッション運用中に光学面の予期しない除染が必要になる場合があります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。


特に汚染に敏感な光学システムを扱う場合は、設計・製造と運用時に特に注意して取扱う必要があります。

 

光学システムの関連機器をガス放出源から遠ざけ、実現可能な範囲でガス放出経路を管理した光学システムを構成できるように、開発する必要があります。

 

宇宙船の主構造または機器に複合材料を使用する場合は、吸湿性の低い材料の使用を検討してください。

 

また、吸湿を減らすために、複合構造に非ガス放出コーティングを使用することを検討してください。

 

これらの対策により、ガスによる汚染の可能性がさらに減少します。


汚染の可能性がある期間中は、カメラの光学部品を露出させたりせずに、カバーまたは密閉してください。

 

また、汚染分子を付着させる可能性のあるため、光学面がを冷やす/冷えることを避け、暖かく保温させてください。


宇宙空間で付着したら、光学機器のラジエーターに、ヒーターまたは直射日光を当てて内部温度を上げ、汚染物質を吹き飛ばしてください。

 

ただし、汚染された光学面に直射日光を当てないでください。

 

汚染物質が有機物である場合、太陽光の紫外線に化学反応を起こし、光学面または熱制御面に恒久的に付着する可能性があります。

 


 


 
最後に

汚染物の付着は、必ずしも打ち上げ直前だけとは限らないことを覚えておいてください。

 

打上げ後、長期間、金色のフィルム(MLI)に付着していた汚れが、フィルムから分離して光学面に付着することもあり得ます。

 

時間が経過しているから問題ないと考えるのは、まだまだ故障分析が足りていないといわれるかもしれません。

 

画像を取得して、毎回同じところが、ボケたり、黒点があったり、画素抜けがあったりとすれば、汚れの付着や放射線によるCCDあるいはCMOS素子の異常という可能性があります。

 

CCDあるいはCMOS素子の放射線での影響は、主に白抜けといった現象がみられるので、厳密には原因を分けることができるかもしれませんけどね。

 

今回のコールドシンクと呼ばれる、浮遊物が冷たい所に移動するという現象は、真空温度試験でものぞき窓があれば確認することができます。きっと清掃が大変です。

 

さらに言えば、光学面より冷える場所を作ってしまえば、より安全と言えるかもしれません。

 

だた、冷えやすい光学面より低温の面を少ないリソースの中でどうやって作り出すかが問題となるかもしれませんね

 

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

 Spaceborne Imaging Camera Contamination (1999)

https://llis.nasa.gov/lesson/992

振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法

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振動試験より音響試験は物理的に難しい。

 

試験コンフィギュレーション上は、それほどと思うかもしれないが、小型衛星の場合はその限りでないかもしれないが、数メートル級の音響設備 を用意するなど、難しい。

 

それでも、ロケットは発射時などの衝撃波が加わることは明らかで、試験の必要性を迫られる。

 

もしかすると、小型衛星の場合は、ランダム振動条件の方が、人工衛星の負荷が大きいこともあるので、そちらで代用しているかもしれませんね。

 

さて、今回は専門用語が多いため、いつもより誤訳している可能性があります。

 

原文やJAXAの振動試験あるいは音響試験ハンドブックを確認することをお勧めします。  

概要

設計と試験において推奨される手法。

 

宇宙機の打上げ時の機械環境は、リフトオフ、遷音速、分離により発生する動的加速度、静的加速度、音響の負荷に耐えられるように、宇宙機及び内部機器の一次および二次構造を設計します。

 

特に二次構造は、遷音速時に発生するMaxQ(最大空力動圧変動)やランダム振動より、リフトオフ時の音響負荷での構造破損の可能性が高くなることがあります。

 

実際の手法 

複数の負荷(動的加速度、静的加速度、音響)による負荷は、個別に計算できます。

 

次に、以下にリストされている組み合わせ方法の1つを使用して、組み合わせた負荷を導き出します。

 

音響的に敏感なコンポーネントの場合、直接的な音響負荷も含める必要があります。

 

技術的根拠:

構造に負荷を掛ける振動は、次のように分類できます。

  1. 静的加速度を含む、通常60 Hz未満(周波数はロケットによる)のイベント(リフトオフ、分離など)による振動。
  2. 機械的インターフェースを介して伝達される、通常20~2000Hz程度のランダムな振動、
  3. ロケット打上げ時に発生する音響負荷によって引き起こされる、通常50~10,000Hzのランダムな振動。

 

一次構造の場合、動的加速度、静的加速度及び音響負荷が支配的ですが、後者の振動音響負荷は小さく、実際には無視されることがよくあります。

 

ただし二次構造の場合、音響負荷の振動の影響を大きく受けます。

 

ロケットにもよりますが、二次構造に対しての音響負荷は、遷音速時の動的加速度、静的加速度の負荷に匹敵するか、それよりも大きくなる可能性があります。

 

特に、音響的に敏感な機器(パドルなどの平面で固定箇所の少ない構造をもつ機器)には、音響環境により発生する音響励起による振動に応答し、大きな負荷を受ける可能性があります。

 

動的加速度と音響負荷は同等の大きさである可能性があり、リフトオフ時に両方発生します。

同時に発生しているため、それぞれの負荷に合わせて構造を設計することが難しく、複合負荷環境で評価していく必要があります。

 

複合環境負荷評価方法1:ベースドライブランダムとの結合過渡解析

ロケットによりますが、結合箇所との動的解析により最大60 Hzの構造荷重が予測されます。

 

ほとんどの場合、周波数のカットオフによって、60Hzより低くなります(STSリフトオフの場合は35 Hz)。

 

このような強制振動の解析は、ロケットの飛行データに基づいて調整され、負荷が実際の打上げ負荷(解析の周波数範囲内の動的および機械的に伝達されるランダム振動を含む)を確実に包括するように設定されます。

 

カットオフ周波数より高い周波数帯で連成過渡解析を行う場合、機械的に伝達されるランダム振動荷重は、ペイロード構造のベースドライブのランダム解析を使用して計算できます。

 

また基本振動は、各方向の加速度のパワースペクトル密度で算出できます。

 

可能であれば、飛行全体のランダム振動の最大値ではなく、ピーク時の動的加速度の時刻歴応答による入力加速度を使用して解析を実行する必要があります。

 

異なる方向の加速度は無相関と見なす必要があり、同時に適用することも、一度に1つの方向に適用することもできます。

 

ランダム解析では、一般的にピーク負荷予測としてRMSの3倍(3シグマ)を使用します。

 

動的解析とベースドライブのランダム解析を組み合わせたピーク負荷は、二乗和平方根RSS)によって組み合わせることができます。

 

ペイロード構造への直接的な音響負荷が無視できない場合は、RSSを使用して上記の負荷と組み合わせることができます。

 

音響負荷を予測する方法には、低周波数の予測に限定される有限要素ベースのアプローチと、高周波数の予測に限定される統計的エネルギー法が含まれます。

 

複合環境負荷評価方法2:typical Mass Acceleration Curve

typical Mass Acceleration Curve(MAC)は、場所、方向、または周波数に関係なく、特定の質量のすべてのコンポーネントの上限加速度レベルです。 

適用範囲は、最大約100 Hzの周波数で、最大500kgの質量に制限されます。

 

この曲線は、分析データと飛行データに基づいて算出でき、過渡振動と機械的に伝達されるランダム振動の両方の影響が含まれます。

つまり、曲線によって予測される荷重は、過渡振動とランダム振動の組み合わせた負荷となります。

 

直接的な音響負荷が無視できない場合は、RSSアプローチを使用してMAC負荷と組み合わせることができます。

 

複合環境負荷評価方法3:モーダルMACを使用した過渡解析の組み合わせ

ベースドライブのランダム解析は、インピーダンスの影響を考慮していないため、低めな負荷である可能性があると考えられられます。

また、有効質量が大きい振動モードで非常に影響が大きくなる可能性があります。

 

構造の各モードには、その有効質量に基づいた加速レベルを割り当てることができます。

割り当てる加速度レベルは、インピーダンスが考慮に入っているMACによる曲線から取得できます。

振動モードを考慮したモーダルMACは質量に適用されるMACよりもレベルが低くなります。

 

次に、各振動モードに対応する物理的負荷は、この加速度レベルに従い。振動モードの形状を拡縮、調整することによって導出されます。

組み合わされた負荷は、カットオフ周波数を超える過渡負荷のRSSとして取得されます。

 

この手法は、ベースドライブのランダム解析による手法が、モーダルMACに拡縮、調整されたモーダル負荷のRSSに置き換えられていることを除いて、方法1と同じであることがわかります。

 

前の2つの方法と同様に、直接音響荷重が無視できない場合は、適切な音響解析方法で計算し、RSSアプローチを使用して過渡荷重およびランダム荷重と組み合わせる必要があります。

 

Lessons Learned
  1. 非実践の場合、特に二次構造において、打ち上げ中の構造破損の可能性が高くなります。

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

  1. リフトオフ時の静的加速度、動的加速度、および振動音響の荷重負荷に対応するように、一次および二次構造コンポーネントを設計します。

  


 

最後に

現在では音響負荷をシミュレーションソフトに掛けることで解析することが可能です。

 

一方で音響の解析は難しいため、構造を模擬したモデル(SM)を利用して音響試験をすることが多いです。

 

音響の応答を解析や設計可能なように、荷重を組み合わせて

 

ただ、Base drive randomが日本語で、何を示すのか読み取れなかった。

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Combination Methods for Deriving Structural Design Loads Considering Vibro-Acoustic, etc., Responses 

https://llis.nasa.gov/lesson/652

宇宙機の環境試験について

https://kyutech-laseine.net/FFSEEK/20080213_9thSEEK_saitou.pdf

Vibration Engineering 振動⼯学−線形振動の基礎−

http://forth.aero.cst.nihon-u.ac.jp/lecture/vibration_engineering_2019.pdf

見て学ぶ!振動試験の動画一覧【宇宙機、人工衛星と振動試験】

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以前、展開機構のYOUTUBEをまとめていたのですが、今回は振動試験物の動画を集めてみました。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

振動試験をはじめて実施することになった方へ何かしら参考になればと思います。

動画紹介なので、ちょっと重い。

 

人工衛星の試験


BepiColombo horizontal vibration test


BepiColombo vibration test


Vibration test of the CHEOPS satellite


BepiColombo vertical vibration test


KIZUNA(WINDS) MBA PFT sinusoidal vibration test きずな/JAXA


ExoMars EDM Structural Model undergoing X-axis vibration testing on the QUAD shaker


ExoMars Rover STM vibration test


Top Deck Antenna Vibration Test (11/2010)


Rover Shakedown

小型衛星の振動試験


LightSail-A random vibration test


Vibration Testing Arkyd 6 at Planetary Resources


CubeSat EPS and Battery NASA GEVS Vibration test


九州工業大学 100周年衛星 「鳳龍」振動試験


FM振動試験 2013_12_26

 

輸送梱包試験の様子


【KIBO ROBOT PROJECT】ロボット宇宙飛行士になるための12の試練 その8:振動試験


Mechanical Vibration Test Machine

 


Vibration Tester 505 V4 Full Video Guide by PackTest.com


振動試験システム


【業界初】3軸同時振動と衝撃を同時に発生させる輸送包装試験機が誕生!


JBL 包装試験 - 落下試験 振動試験 圧縮試験 恒温恒湿

飛行機の振動試験


Solar Impulse - Ground Vibration Tests


October 2017 - Ground Vibration Tests


X-56 Full-Body Ground Vibration Tests

自動車振動試験


電気サーボモータ式2・4ポスター振動試験機

振動試験実験例


共振現象


Natural Frequency Vibration Test


Noordwijk shake


棒の共振【物理実験 説明つき】


「振動試験」のスローモーション映像


振動試験PRビデオ 株式会社ケミトックス

振動試験治具一例


都産技研 振動試験機・恒温振動試験機 [実証試験S] の紹介

ボルトの緩み試験


ノルトロックワッシャー/ユンカー振動試験での他製品比較検証


ロックン・ボルト振動試験

振動試験実例


Vibration Testing and Shock Testing Capabilities Overview


VAIOの振動試験


VAIO Zの加圧振動試験/本体ひねり試験

地震再現振動試験


耐震試験・振動試験:兵庫県南部地震(1995年)再現


耐震試験・振動試験:新潟県中越地震(2004年)再現


耐震試験・振動試験:東日本大震災(2011年)再現

色々な振動の世界


[Simcenter] Ground Vibration Testing Master Class 2018


振動の世界 東京文映製作


3.11 東北地方太平洋沖地震発生時の新宿高層ビル群(Earthquake in Japan)

 

NASA施設内でのリチウムイオン電池の火災は数日間施設が停止する惨事となった | Lessons Learned、失敗学、事故事例

リチウムイオン電池の火災

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リチウムイオン電池の爆発事故は、世界各地で発生していますが、宇宙船のエネルギー貯蔵システムとしてリチウムイオン電池を使用しているNASAでも発生しています。

 

今回は地上設備で発生したリチウムイオン電池の火災についてまとめたLessons Learnedを紹介します。

 

ついでに、YOUTUBEに発火の様子と、危険行動も記載されていたので載せておきます。

最初の破裂音注意ですね。

www.youtube.com

  

概要

NASAのジェット推進研究所の地下室で特性試験を行っているリチウムイオン電池は、過熱、発火、爆発し、有毒ガスがビルの上層階2階にまで吹き込み、数日間の避難を余儀なくされました。

 

電池の危険性評価を実施し、研究としての電池試験と、その保管が安全基準に準拠していることを確認した上で、排気システムが建物全体に煙を拡散する可能性を再評価し、宇宙空間で使用される電池の試験構成の改善に影響を与えました。

 

発生経緯

2009年10月20日のリチウムイオン(Li-ion)電池の試験中に、電池が過熱し、発火し、NASA 研究所(カリフォルニア工科大学ジェット推進研究所(JPL)の高層オフィス)の建物に取り付けられたバンカー内の密閉されたスチールロッカー内で爆発しました。

  

バンカーは、このような電池の火災の影響を抑えることを目的として特別に設計されていました。

 

電池試験装置に隣接するロッカーは、初期火災により加熱され、一部が燃え尽きました。

 

試験に供していた電池は、定格30V、容量15Ahのリチウムイオン電池で、特定のプロジェクトのための試験体ではありませんでした。

 

試験用電池は、一般的なロッカーと同様に、2枚の金属板で構成された板金ロッカーの中に保管されていました。

 

ロッカーは、施設の床に6個セットで配置され、配線はロッカーの背面に開けられた開口部を通って配線されました。

 

この出来事は、電池が同じ試験コンフィギュレーションで、18か月間試験に供した後に火災が発生しました。

 

電池の火災が発生すると、煙探知器が火災警報器を作動しました。建物にいた人は、怪我をすることなく、建物から避難しました。

 

JPLの消防施設では、リチウムイオン電池の火災に適した消火器を用いて対応したため、2次的な被害は発生しませんでした。

 

電池用バンカーは、建物の換気用空調口の近くにあったため、リチウムイオン電池の燃焼による煙と有毒ガスが建物の残りの部分に排出されました。

 

大気質サンプルが分析され、有毒ガスなどにより建物全体で修復されるまで、建物全体に数日間に入ることもできませんでした。

 

 発生原因

バッテリー火災は、電池の充放電を制御する試験装置と接続されている端子電圧の誤った測定によって引き起こされました。

 

端子の接続を通して、80個のセル内の温度が上がり、電池の内圧が上昇し、爆発と火災につながるまで、試験用電池に充電され続けられました。

 

JPLの故障調査によると、根本原因として試験担当者の不十分な知識と経験不足に起因すると考えました。

 

原因は、欠陥のある地上試験装置の使用と、電池への熱保護が不十分であることでした。

 

隣接する施設の汚染の原因は、施設の換気および吸気システムの設計に起因するものでした。

 

Lessons Learned

電池の試験と保管のリスクは、研究開発中の電池の取り扱い方法も、フライト品(宇宙用)に使用する電池の取り扱いと同様に管理し、安全基準を満たす必要があるといえます。

 

JPLには、試験担当者がリスクの評価に関して認識していない、またはトレーニングを受けていないため、他の研究開発試験においてリスクがある可能性があります。

 

今回の電池試験は研究開発活動であり、厳密に管理されているフライト用(宇宙用)ハードウェアの検証ではありませんでした。

 

電池の故障は試験中に発生することがあるため、電池の火災は珍しいことではありません。

 

ただし、今回の事故につながった危険な電池試験の試験手順には、適切な故障への保護・制御が取り付けられていませんでした。

 

その結果、火災警報器によりビル全体の避難を引き起こすことになりました。

バンカー内の電池火災による燃焼生成物が、オフィスビルの上層階まで換気口を通って入り込みました。

  

この施設の教訓に加えて、この事件は同様のリチウムイオン電池を使用したいプロジェクトへ試験構成の改善を示しています。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。


リスクの重要度により、試験品の種類(今回の場合は電池の種類)と試験の種類に対して、各々の危険性評価を実施しすること。

 

さらに、試験施設の運用前安全性評価を行い、必要に応じて補強を行うこと。

 

リスクを評価し、リスクの制御方法を施設管理者に連絡してください。

  

電池の試験手順と保管方法は、人員、施設、設備の安全を保証し、安全基準に準拠している必要があります。

  

危険物を取り扱う、または保管する場所から、建物の換気システムの吸気口を再評価し、リスクがない事を確認してください。

 

今回のようなリチウムイオン電池の使用を検討するNASAのプロジェクトでは、電池試験の構成の改善を検討する必要があります。

  

直前に家訓する項目として、冗長電圧タップの動作を確認してください。

(電池には冗長電圧タップはありません。重要なことは、作業者は機器が故障したことを認識し、機器が修理または交換されるまで試験から除外してください。)

 

完成時の電池の熱伝導率(あるいは温度計測)の実装を検討してください。

(電池に内蔵される機能ではありません。作業者は、電池の熱管理が将来の試験で考慮事項であることを認識し、適切な試験コンフィギュレーションの構築/換気規定で対応する必要があります。)

  

ワーストケースでの熱環境、充電制御機器やセンサーの故障ケースなど、電池の充放電時に対応できる機能を実装してくだしさい。

 

電池の充放電サイクル全体で発生する、ワーストケースでのリスク評価を実施し、各イベントに対して適切な緩和策が実施されていることを確認してください。

 


 

最後に

リチウムイオン電池の火災は増え続けています。

 

リチウムイオンが広がるにつれて制御されていると思いきや、数が増えているのでその分事故件数も増えているようです。

 

電池に対する取り扱いは、社会の電池に対する事故が増えるにつれて、宇宙業界でも取り扱いが厳しくなります。

 

打ち上がってしまえば、問題はないのですが、多くの場合は、ロケット搭載時の安全基準により対応を迫られるものです。

 

厳しい厳しいと名高い、安全審査の主要目的はロケット搭載時への作業人員への事故や火災を防ぐことにあるので、しっかりと取り組むべき項目ではあります。

 

リチウムイオン蓄電池は世に出てから、20年も経過しておらず、危険性も知られる物品です。

 

 

今後、適切な管理の上、宇宙用に活用してほしいものです。

 

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リチウムイオン電池からの火災に注意しよう

 

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

 

案外成功体験というものは、組織の中でノウハウとして蓄積されず、個人の中でされることが多いです。

 

本人は今までのノウハウから自然と身についていることだとしても、他の人が同じノウハウを共有しているとは限らないため、言語化して残しておくことは重要です。

 

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。

  

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Lithium-Ion Battery Fire

https://llis.nasa.gov/lesson/3516

ロケット打上げまでの1年以上かけて人工衛星との準備を行ったことで不慮のイベントにも対処できた事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

 プロジェクトから得たロケット打上げまでの1年以上におよぶ準備計画の重要性

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-KSC-2009-4762

 

2020年の3月に制定されたJAXA共通技術文書の存在を知っているでしょうか?

 

JERG-2-701 運用準備標準のことです。

JAXA内ではJERGのことをジェルグと呼んでいるところもあります)

 

JAXA衛星の運用準備の流れが書かれています。

 

一方で、ここまで準備をしている組織がJAXA衛星以外に日本にあるかといえば微妙なところです。

 

というのも、長らく日本では打上げ・運用はJAXAがほとんど実施してきたため、特別に標準を作ることもなく、JAXAあるいはプライムメーカーのノウハウが多かったのではないでしょうか。

 

現在は大学衛星を始め、多くの組織が運用準備を行っています。

 

この標準が作られたきっかけとしては、革新的衛星技術実証1号機をアクセルスペースが担当したことにあるのかもしれませんね。

 

最近の人工衛星は、ロケット側に人工衛星を預けて、打上げを待つということが多く、JAXAの区分で言うと、いわゆる副衛星の方式で打ち上げられていることが多いです。

 

そのため、今回のLessons Learnedのように、ロケット側と情報を密に共有していくというプロジェクトは少なくなっているかもしれませんね。

 

このLessons Learnedと先の運用準備標準を合わせて読んでおけば、ある程度のテーラリングは必要ですが、運用に臨むに至って何か不足がないかを確認するには役に立つのではないでしょうか。

 

概要

広域赤外線探査衛星(Wide-field Infrared Survey Explorer:WISE)は、4か月のミッション運用期間で、ミッション機器の性能を維持するための15K(258℃)という極低温まで冷やすという運用を行うため、複雑なミッションとなりました。

 

WISEの打ち上げ準備は、打ち上げの1年以上前より慎重に計画され、打上げに伴う様々な環境変化に対応することができました。

 

WISEは、不測の事態の発生とロケット打上げに関わる不確実性に対して準備し、打ち上げ直前に予期しない事態に対して、ロジスティクス(=物流、人員計画)な課題に検討しました。

 

打ち上げロケットチームとと人工衛星開発チームの文化や、エンジニアリングの違いを想定し、通信回線を確立し、避けられない打ち上げの課題を管理していきました。

 

事象

NASAのジェット推進研究所(JPL)は、WISEのプロジェクトによって、人工衛星の開発から運用計画、システムレベルでの技術レビューなどで得たLessons Learnedをまとめていく流れを確立しました。

 

2009年12月14日に打ち上げられた広域赤外線探査衛星(WISE)は、高精度の赤外線望遠鏡を搭載し、地球からの全天の画像を取得することで、宇宙全体の何億もの天体を画像に納める・分析することを目的としていました。

 

プロジェクトは、2010年1月26日に、打ち上げ後評価レビュー(Post Launch Assessment Review:PLAR)を実施し、4か月のWISEのミッション期間(2009年8月14日から12月14日)から学んだ教訓を詳細に議論しました。

 

PLARでは、いくつかの大きな課題があったが、WISEのミッションが非常にうまく成功したことが報告されました。

 

この成功は、打ち上げの1年以上前にヴァンデンバーグ空軍基地(VAFB)で打ち上げに関わる詳細な計画を検討し準備を始めるというWISEプロジェクトの決定が、部分的に影響していました。

 

打ち上げの1年以上前から、詳細な打上げ計画を検討し準備を始めることが必要と考えられたのは、理由があります。

 

WISEの打ち上げでは、ミッションに使用される大量の危険な液体/固体水素および気体/液体ヘリウムを含む極低温機器を安全に操作するという非常に困難な課題に直面していたためです。

 

さらに、WISEの顧客に対して、打ち上げ時に、より優先的に観覧場所を与えられることがありました。

 

そのため、WISEプロジェクトで利用可能な打ち上げ施設のリソースが十分ではない可能性があり、多くの調整時間を必要としました。

 

また、WISEには、地上支援装置(GSE)リソースの不足、極低温処理・管理用のスペース、発射台での作業スペース、水素などの供給スペースなど、発射遅延の可能性のある課題をがあり、事前に取り組むために、より早く取り組む必要がありました。

 

長期間に及ぶWISE打ち上げ準備により、人工衛星チームとロケット打上げチームは、計画外の外部イベント(VAFBでの山火事、ペイロード処理施設(PPF)の空調ユニットの誤動作によって引き起こされる温度と相対湿度の変動、発射台の長時間停電)にも計画の致命的な遅延なく対応することができました。

通年のロケット打上げ準備があったとしても、リスク削減を行い、打上げの調整を行いました。

 

これらの結果、ミッションの成果として、ロボットや有人の宇宙船ミッションの打ち上げミッションが、一般的にも使用可能な多くの観測結果を得ることができました。

  

事象の対応・処置

宇宙船が打ち上げ施設に到着すると、プロジェクトマネージャーは主に次のことに関心を持つ可能性があります。

 

  • 全体的なスケジュールと不測の事態
  • 主要な決定とミッションリスク評価
  • 施設の状況


WISEの場合は、打ち上げの準備において、プロジェクトマネージャーでは制御不可能な様々な環境に変化に、すぐに対応する必要がありました。

 

にもかかわらず、次の管理項目に注視したことで、WISEが高いパフォーマンスを保ったままミッションを成功するに至りました。

 

  • 操作管理期間の延長に関わるリスクを軽減

WISEの打上げは、延長され、24時間年中無休で危険な極低温操作を管理するために、通常より厄介なことになりました。

 

そのため、さらに長期間、不測の事態に対応するために訓練を受けた適切なスタッフが必要となりました。


人工衛星チームと打上げロケットチームは、打ち上げ施設が必要に応じて柔軟に機能することを期待していませんでした。


そのため彼らは、緊急時対応計画を作成し、計画に沿って対応を実践しました。その計画の中で打ち上げ時のリスクは、ミッションリスクとは別に管理されていました。


WISEプロジェクトは、ロケット打上げのカウントダウン手順を繰り返し、いつでも実施できるようにトレーニングを開催しました。

 

  • 不確実性を積極的に管理

ロケットの打ち上げ期間の不確実性には、打ち上げロケットの状態維持と準備、作業ルール、および人員の確保が含まれていました。

 

人員の確保の中には、第三者的な視点で確認するため、JPLスペシャリストも含まれていました。

 

スペシャリストの確保は、打上げの飛行プロジェクトとVAFB、NASAケネディ宇宙センター、および人工衛星の安全性に影響を与える可能性のある発射施設の問題を含む請負業者の発射支援要員との間の衝突を解決する上で非常に重要であることが分かりました。

 

それでも、緊急時対応計画のの中で最も重要な不確実性は、打ち上げの天候であることが多いです。


  • ロジスティック(=物流)な課題を管理

スタッフの確保は、ロケット打上げ直前に発生する予期しないロジスティックの課題に対応するために、WISEプロジェクトによって事前に割り当てられました。

 

たとえば、メディアやJPLプロジェクトの管理には、打上げコントロールルームの座席やその他の施設の確保が必要でした。

 

さらに、他のプロジェクトスタッフとその家族や友人も、立ち上げ前日にVAFBでの活動に参加しました。

 

その他の打ち上げ直前には、後方支援として、レンジセキュリティ(=警備)、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社関係者、KSC、およびJPLとの調整が含まれます。

 

  • 組織の文化とエンジニアリングの違いを想定

ロケット打上げ対応担当者と、人工衛星がロケットから放出された直後を対応する担当者の両方が、打上げ後の段階である人工衛星喪失の可能性が高いクリティカルフェーズを無事に成功させるために、チームを構成していました。

 

ロケット打上げ対応担当者と人工衛星の担当者は、共にリスクを評価し、問題を解決するための異なるアプローチ、異なる視点で検討し対策を行いました。

 

たとえば、打ち上げ操作の時間間隔によって、打上げ担当者はシミュレーションや試験よりも、リアルタイムの分析に大きく依存しています。

 

オンサイトのWISE(=人工衛星)の担当者は、打ち上げ期間までの間に新たな技術問題の可能性と、性能維持に関する情報を収集し、非常に敏感に管理していました。

 

JPLの技術部門は、プロジェクトの要求に応じて分析支援を提供しました。

 

人工衛星に搭載している液体/固体水素および気体/液体ヘリウムが入ったタンクの環境を維持するために、人工衛星よりも高い大きなシュラウド(保温用タンク)を配置するなどしました。

 

  • 組織的および人から人へのコミュニケーションの確立

WISEの立ち上げ打ち上げ期間には、複数の請負業者とNASA組織、および米空軍が関与していたため、組織全体のすべての担当者との毎日のコミュニケーションを維持することが重要でした。

 

具体的には、各重要な決定は、噂を払拭することに注意を払いながら、フロアの全員に伝えられ、ミッション全体をサポートしました。

 

  • 打ち上げの不安を管理

WISEの打上げが近づくにつれ、人員のエッジネスが著しく増加しました。

 

この環境では、人事のやりとりが常に専門的であり続けることを保証することが不可欠になりました。

 

不安を軽減する手段の1つは、重要な位置にいる各チームメンバーにバックアップチームメンバーが割り当てられるようにすることでした。

 

チームメンバーは、必要に応じてお互いに連携が取れるようにクロストレーニングが実施されました。

 

 

 

WISEは、予想どおり、ギリギリの問題に遭遇しました。

 

ロケット(Delta-II)の第2ステージのタンク「ディンプル」、慣性測定装置(IMU)とリアクションホイールの速度の急上昇を示す宇宙船のテレメトリー、ロケットのバーニアエンジンのスルーレートの異常です。

 

ただし、これらの異常は処理でき、長期間の打ち上げの準備は、打ち上げを成功させるのに十分であることが証明されました。

 

Lessons Learned

JPLおよびNASAペイロードの打ち上げウィンドウの期間は、通常、多くの軍事および商業ミッションよりも狭くなっています。

 

安全で成功した打ち上げキャンペーンを確実にするために、名目上および偶発的な操作の注意深い計画が必要です。


Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

打上げ時の計画をなるべく早く計画することです。

 

打ち上げの1年以上前に詳細な打ち上げキャンペーンの運用計画を開始するというWISEプロジェクトの決定は、とても効果的であることが証明されました。

 

オンサイトチームの適切な人員配置とトレーニング、カウントダウン手順の実践、異常なイベントへの対応の計画と実行の対応が充分にでき、打ち上げ時のリスクを軽減します。

 

不測の事態に対応するためのバックアップ計画とリソースを使用して、スケジュールされた運用上のニーズよりもはるかに早くリソースを準備することにより、不確実性を管理します。

 

土壇場でのロジスティックの課題に対応する準備ができている専任のスタッフを提供します。

 

常駐の打ち上げ支援担当者が提唱する、ペイロード(=人工衛星)の安全性に関連する技術的決定を検証するために必要な情報を持っている主要なスペシャリストを特定します。

 

打ち上げ現場の担当者に、さまざまなエンジニアリング文化と慣行を認識させることができ、打ち上げリスクの評価を検証します。

 

貢献している組織全体のすべての打ち上げ担当者との日々のコミュニケーションを維持し、重要な決定を伝え、不安を払拭します。

 

プロ意識を確保し、重要なポジションのバックアップを提供することにより、カウントダウンの減少に伴う不安のレベルの上昇を緩和します。

 

 


最後に

人工衛星の総合システムにおける運用前の準備は、いつでも大変です。

 

決められた期間で、パソコンや複写機、ネット回線の準備を始め、すべてを構築する必要があります。

 

プラントや工場建築現場であれば、作業員のプレハブ小屋を作り、必要な作業部屋を確保し、必要な物品を入れ込むなど多少慣れているかもしれません。

 

その中で、場合によってはセキュリティを確保する必要があり、複雑になっていきます。

 

ある程度、型が決まれば、今回のLessons Learnedのように運用直前の準備を始めたら、そろそろ人工衛星打上げの準備だと感じる組織もあるかもしれませんね。

 

このLessons Learnedでは、人工衛星の打上げに関わる事象は、完全にはシステマチックにも自動にもならず、かなり生ものであることを意識させられます。

 

1年近く前から、違う組織文化であることを認識しつつ、対立が起きないように、コミュニケーションを深めていく。

 

この仕事は、空港の運営にも同じことがいえるかもしれませんが、人員は縮小されても、人の手によって回すしかないのだなと感じます。

 

Lessons Learned 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

 

案外成功体験というものは、組織の中でノウハウとして蓄積されず、個人の中でされることが多いです。

 

本人は今までのノウハウから自然と身についていることだとしても、他の人が同じノウハウを共有しているとは限らないため、言語化して残しておくことは重要です。

 

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。

参考サイト

JAXA共通技術文書

https://sma.jaxa.jp/TechDoc/

JAXA-JERG-2-701 運用準備標準

https://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-701.pdf

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Lessons Learned on the WISE Launch Campaign from the Post Launch Assessment Review (PLAR)

https://llis.nasa.gov/lesson/3496

WISE / NEOWISE

https://solarsystem.nasa.gov/missions/wise-neowise/in-depth/

広域赤外線探査衛星 - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E5%9F%9F%E8%B5%A4%E5%A4%96%E7%B7%9A%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E8%A1%9B%E6%98%9F

運用の準備

https://www.satnavi.jaxa.jp/basic/satlife/preparation.html

リアクションホイールは摩耗して寿命を削るため使用管理が重要である | Lessons Learned、失敗学、事故事例

限られた宇宙船リソースとしてリアクションホイールを管理する(2002)

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宇宙船と言えば国際宇宙ステーションISS)が有名です。

 

ISSの大きさは大人用サッカー場と同じ広さです。

 

ただ、居住空間となると地上のように面積では出せず、体積で表すと935m2程度で、だいたいジャンボジェットの客席部分と同じ体積と言われています。

 

ジャンボジェットじゃあ、飛行機をよく使う人か航空業界の人しか分かり難いので、だいたい中学高校の教室の5教室分より少し大きいぐらいです。

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https://www.sekisuihouse.com/nattoku/koubou/seminar_event/public/back_paper/239.pdf

 

意外と広い感じがしますね。

 

この大きさのバランスを取るために、巨大なコマのように回転するリアクションホイールが使用されています。

 

回転することで発生する遠心力によってバランスを取っているのですが、今回はこのリアクションホイールが故障した時の経過と管理手法のLessons Learnedを出していきます。 

 

概要

土星探査衛星「カッシーニ」は、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)により開発され、1997年に打上げられ、2017年9月に運用を停止した人工衛星です。

 

問題が起きたのは、2年半の運用後に、3つのリアクションホイール(reaction wheels :RWA)のうちの1つのリアクションホイールのベアリングケージにおいて、不安定な傾向が発生しました。

 

NASAのジェット推進研究所は、RWAの性能をトレースして、RWA使用の制限しました。

 

RWAの不安定な傾向を監視するソフトウェアツールの使用、異常な挙動を特定するため、RWAのトルク推定器を使用するなど、RWAを管理し、機器の寿命を短くする摩耗の兆候に対応しました。

 

発生経緯

1997年10月に打ち上げられた土星探査機カッシーニの姿勢制御は、3つのリアクションホイールが使用され、バックアップを1基搭載しています。

また、巡航フェーズでは、ほとんどの間、スラスターによって姿勢制御を実行していました。

 

2002年10月に、RWAの3基目(RWA-3)の内部にある2つのベアリングの少なくとも1つでベアリングケージにおいて、不安定な挙動が確認されました。

 

RWAは、2000年3月の姿勢制御で、宇宙空間で初めて使用されましたが、使用されて2年半、不安定な挙動が確認された後からは必要な場合にのみ使用される運用がなされました。

 

発生の対応・処置

RWAの性能は、打上げ後のトルク値の特性評価によって継続的にトレースしていたので、問題を検出することができました。

 

取得したデータを確認し、断続的なRWA-3のベアリングケージの不安定な挙動が9か月間も示されたのちに、2003年7月にRWA-3はバックアップ(RWA-4)に交換されました。

 

残りのリアクションホイールにはほとんど影響はありませんでしたが、同一のベアリングと潤滑剤を使用しており、RWA-3で観察されるベアリングケージの不安定な挙動の可能性があります。

 

したがい、土星探査衛星「カッシーニ」では、RWAの性能低下を管理するために次の手順を実行しました。

 

  1. 主要ミッション中でRWAを使用して科学観測を実施するため、ミッション外のフェーズではRWAの使用を最小限に抑えることとしました。
  2. NASAのジェット推進研究所が開発したRAWの挙動最適化ツール(Reaction Wheel Bias Optimization Tool:RBOT)を使用して、最適なRWAバイアス率を分析し、問題のあるrpmの低い領域内のRWAの実行時間を最小限に抑えました。
  3. RWA(現在バックアップとして機能しているRWA-3を含む)の性能を監視し、その挙動の分析を継続します。

 

ベアリングケージの不安定性は、ノイズやベアリングの抗力トルクの大幅な増加、および過度の抗力トルクの「粗さ」によって予測されます。

 

故障メカニズムは、ベアリングケージの振動を促進し、ベアリングのある潤滑剤(オイル)の局所的な加熱と反応を引き起こし、最終的にはベアリングの早期故障を引き起こします。

 

宇宙船のRWAのベアリングケージの不安定性は珍しいことではなく、姿勢制御にRWAを使用する将来のプロジェクトでも同様の問題が発生する可能性があります。

 

Lessons Learned

宇宙船の運用に不可欠な機器であるため、RWAは異常な数値や寿命を消耗する摩耗の兆候がない場合でも、使用頻度は限定しておく必要があります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

リアクションホイールの使用を管理すること。

  1. RWAの寿命に対する潜在的な兆候を特定するために、受入試験(地上試験)からミッション運用全体に渡り、RWAの性能データを取得し続けることです。
  2. RWAの性能データが、RWAの寿命に影響する可能性があることを示している場合は、ミッションへの影響を軽減するための対策を講じます。例えば、ミッションの終了時に怪しい挙動を示すRWAの使用を減らし、金属同士の接触しやすい低速回転領域でベアリングを操作しないようにします。
  3. 低速回転領域内でのベアリングの動作時間を最小限に抑えるために、RWAの挙動を管理するために、地上ソフトウェアツール(RBOTなど)の使用を検討してください。
  4. 運用制御用のソフトウェアにリアクションホイールの抗力トルク推定を実装して、ケージの不安定性などの異常なベアリング抗力状態を特定します。推定された抗力トルクによって姿勢制御トルクを捕捉することで、宇宙船全体の姿勢性能に対するそのような条件の潜在的なリスクを軽減します。(全地球航法衛星ガリレオ土星探査衛星カッシーニの両方の姿勢制御ソフトウェアは、この補正を実行するように設計されています。)

 

 

 

 


 


最後に

駆動機構というものは、故障が多く、取り扱いが難しいのは地上でも変わりません。

 

人工衛星駆動機構というと、今回話に上がったリアクションホールや同じ姿勢制御機器であるCMG(コントロールモーメントジャイロ)、さらにはアンテナや太陽電池パドルの駆動機構があげられます。

 

これらの故障は、人工衛星寿命に影響されるもので、アンテナの場合、通信不能となるため、ミッションを実行できないばかりか、コントロールもできなくなります。

太陽電池パドルの場合は、太陽光に向けることができず、人工衛星の電力不足を招きます。

 

そのため、機器の受入試験やシステム試験ではその性能を確認し、適切に動作できるか確認する項目でもあり、下手に破損させると修理に時間もかかるため、予備品が作られることもあります。

 

実際のところ、駆動機構を持たない人工衛星が最も安定しており、衛星寿命が長くなる可能性が高いのですけどね。

 

 

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

 

案外成功体験というものは、組織の中でノウハウとして蓄積されず、個人の中でされることが多いです。

 

本人は今までのノウハウから自然と身についていることだとしても、他の人が同じノウハウを共有しているとは限らないため、言語化して残しておくことは重要です。

 

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。

 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Manage Reaction Wheels as a Limited Spacecraft Resource

https://llis.nasa.gov/lesson/1598

宇宙ステーションの生活と宇宙食と宇宙飛行士

https://www.sekisuihouse.com/nattoku/koubou/seminar_event/public/back_paper/239.pdf

JAXA SPACE PHOTO MUSIUM

https://iss.jaxa.jp/gallery/sp-museum/c01_iss/#:~:text=ISS%E3%81%AF%E5%AE%87%E5%AE%99%E7%A9%BA%E9%96%93%E3%81%AB,%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%95%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

学校施設の換気設備に関する調査研究報告書[第4章]機械換気設備の計画事例:文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/04062201/024.htm

センサー工学

http://dezima.ike.tottori-u.ac.jp/yokota/index.php?plugin=attach&refer=%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E8%B3%87%E6%96%99%E3%81%AE%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&openfile=%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5%E5%B7%A5%E5%AD%A62%E5%9B%9E%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E5%9B%9E%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E8%B3%87%E6%96%99.pdf

解像度30cm級地球観測衛星WorldviewLegionとRGTシステム

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA23878

 

Maxar Technologies社(旧DigitalGlobe社)は、現在商業衛星で最も解像度の高い30㎝級の地球観測衛星WorldViewシリーズの製造・運用を行う企業です。

 

WorldViewシリーズは、日本の防衛省でも使用されている人工衛星です。

 

このWorldViewシリーズに新たなラインナップが追加されるということで少し調べてみました。

 

 

WorldView LegionはNRO

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e001799

 

現在、Maxar社は、WorldView-1、GeoEye-1、WorldView-2、WorldView-3の4つの衛星を運用しています。

 

これに対して、2021年に打上げ予定のWorldView Legionを計画しています。

2021年初めに2基打上げ、2021年終わりに4基打ち上げる計画のようでしたが、COVID-19の影響で少し遅れているようです。

 

WorldView Legionは6つの人工衛星コンステレーションにより、地球上の中緯度の範囲を、一日15回も同じ場所を観測できるレベルまで引き上げるそうです。

 

人工衛星等間隔に配置できれば、1時間36分ごとに観測できることになります。

 

いくつかの記事の中では、30cmの高解像度画像を収集する能力を現状の3倍以上にすることが可能であるといいます。

 

この人工衛星の計画は、NROと2019年5月に画像調査に関する契約をBlackSky社、Planet社と同時に締結した際に、2019年1月の時点で提案したものだそうです。

 

このように従来から衛星画像を利用する客先の要求が、近年の人工衛星開発の流れから、より高まっており、継続的でかつ、多様なスペクトル帯域を要望しているためだといわれています。

 

 

Remote Ground Terminal (GRGT)とArmy Geospatial Center

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-0003356

 

あらかじめですが、Army Geospatial Center (AGC)とアメリカ国家地理空間情報局(NGA)は違います。

 

アメリカ陸軍の地理空間機能を開発しているところで、国防総省にも情報を提供しているところで、NGAは国防総省外局で、かつ国家情報機関の一つです。

 

Maxar社は、2020年にAGCと契約を結び、Remote Ground Terminal (RGT、リモートグランドターミナル、遠隔地上端末システムかな?)と呼ばれる遠隔地への地理情報を提供できるシステムの構築支援を実施することになりました。

 

RGTの利点は、小型の中継アンテナを使用せず、直接人工衛星からデータを取得することです。

 

リアルタイムでデータを取得し、分析し、配布することができます。

 

アメリカ陸軍では、商用画像を、無処理の生データを内部のシステムで処理して、より素早く分析し、各地へ配布を可能にしています。

 

現在使用している商用画像は、WorldView-1、-2、GeoEye-1、及びRADASAT-2から直接取得しています。

 

地上局は、2.4m級のアンテナと市販の画像処理ソフトを用いて、画像を標準形式(NITF及びSICO)に処理しています。

 

試験では、画像をアンテナで受信してから、内部の処理ソフトで処理を行い、端末をもつユーザーに対して配布するまで、25分とかからなかったことが分かっています。

 

そもそもの要求としても、受信してから生データを処理するために、15分以内という要求があるようです。

送信にも電子メールから、ファイル転送、Powerpointなどの一般的な方法で配布されているようなのは驚きですね。

 

現在のように購入を依頼して、数日後にデータを取得する現在のシステムよりも、とてもシステマチックです。

 

日本でもこのようなシステムを構築できれば、国防的には優位ですが、現在の宇宙関連企業とどのように連携するのかが問題ですね。

 

企業と衛星画像(光学や合成開口レーダ)の優先的取得契約を結ぶか、専用衛星を打上げるか、衛星のミッションの一部として入れ込み、独立してデータを取得できるシステムを構築するか。

 

優先的に取得するには、直接データをダウンロードするシステムを構築するには、運用システムを国防関連施設に構築することになるのですが、面倒そうですね。

 

おまけのMaxarとAWSの連携

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA23357

 

おまけですが、Maxar社では、このWorldViewシリーズと並行して、アマゾンの提供するAmazon WebServices(AWS)とアメリカ海洋大気庁(NOAA)と提携して、天気予報のプロジェクトを進めています。

 

3社の技術を生かして、天気予報のデータ処理は平均100分程度かかるところ、53分で算出するシステムを構築しています。

 

Maxar社の地球を周回する4つの衛星から、毎日300km2の画像を収集し、NOAAの気象データサービスと連動させ、AWSクラウドサービスと組み合わせる処理フローを構築しているシステムとのことです。

 

スーパーコンピュータで処理していたことが、クラウドを使用することで運用処理コストを大幅に下げている例にもなります。

 

このクラウドサービスを構築しているAWSですが、ブロードバンドインターネットを提供する3000基の人工衛星によるProject LEO Kuiperも構築を進めているようです。

 

Project LEO Kuiperの打上げは、Blue Origin社のロケットを利用することが様々な記事で示唆されていますが、人工衛星はどこで製造されるのか興味はあります。

 

Maxar社ではないようですが、Amazonは新たに人工衛星製造メーカーを要するのでしょうかね。

 

Blue Origin社と提携されている衛星運用会社Telesatになるのでしょうか。

 

 

参考文献

リモートセンシング分野における海外の動向

https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-minsei/minsei-dai22/siryou2-1-1.pdf

NASA's GRO Remote Terminal System (GRTS)

http://researchandideas.com/index.php?title=NASA%27s_GRO_Remote_Terminal_System_(GRTS)

NRO Cracks Open Commercial Imagery To More Providers

https://breakingdefense.com/2020/04/nro-cracks-open-commercial-imagery-to-more-providers/

GEOSPATIAL SERVICES

https://www.maxar.com/products/geospatial-services

What's driving Maxar's takeover of analytics venture -- Washington Technology

https://washingtontechnology.com/articles/2020/07/07/maxar-vricon-inside.aspx

Maxar eyes September 2021 launch for WorldView Legion satellites - SpaceNews

https://spacenews.com/maxar-q3-2020/

Army Geospatial Center - Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Army_Geospatial_Center

Army Taps Maxar To Establish Remote Ground Terminal For Easier GEOINT Access - Potomac Officers Club

https://potomacofficersclub.com/army-taps-maxar-to-establish-remote-ground-terminal-for-easier-geoint-access/

Army Remote Ground Terminal

https://www.agc.army.mil/Media/Fact-Sheets/Fact-Sheet-Article-View/Article/480926/army-remote-ground-terminal/

Army Geospatial Enterprise Home Page

https://www.agc.army.mil/Army-Geospatial-Enterprise-Home-Page/

Sources Sought for Remote Ground Terminal (RGT), USACE Army Geospatial Center

https://www.instantmarkets.com/view/ID185461631854521820371734062281463161989

Maxar, NOAA, AWS Join Hands To Accelerate Weather Predictions Via Computing Solutions

https://www.cloudmanagementinsider.com/maxar-noaa-develop-high-performance-computing-solution-using-aws/

Amazonの衛星ブロードバンド計画「Project Kuiper」をFCCが承認。3236衛星を運用

https://japanese.engadget.com/amazon-project-kuiper-083015846.html

アマゾン、3000基超の衛星によるブロードバンド提供目指す「Project Kuiper」を計画

https://japan.cnet.com/article/35135297/

Telesat LEO contenders pitch Canadian production to sweeten deal

https://spacenews.com/telesat-leo-contenders-pitch-canadian-production-to-sweeten-deal/