振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法 | Lessons Learned、失敗学、事故事例
振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法
振動試験より音響試験は物理的に難しい。
試験コンフィギュレーション上は、それほどと思うかもしれないが、小型衛星の場合はその限りでないかもしれないが、数メートル級の音響設備 を用意するなど、難しい。
それでも、ロケットは発射時などの衝撃波が加わることは明らかで、試験の必要性を迫られる。
もしかすると、小型衛星の場合は、ランダム振動条件の方が、人工衛星の負荷が大きいこともあるので、そちらで代用しているかもしれませんね。
さて、今回は専門用語が多いため、いつもより誤訳している可能性があります。
原文やJAXAの振動試験あるいは音響試験ハンドブックを確認することをお勧めします。
概要
設計と試験において推奨される手法。
宇宙機の打上げ時の機械環境は、リフトオフ、遷音速、分離により発生する動的加速度、静的加速度、音響の負荷に耐えられるように、宇宙機及び内部機器の一次および二次構造を設計します。
特に二次構造は、遷音速時に発生するMaxQ(最大空力動圧変動)やランダム振動より、リフトオフ時の音響負荷での構造破損の可能性が高くなることがあります。
実際の手法
複数の負荷(動的加速度、静的加速度、音響)による負荷は、個別に計算できます。
次に、以下にリストされている組み合わせ方法の1つを使用して、組み合わせた負荷を導き出します。
音響的に敏感なコンポーネントの場合、直接的な音響負荷も含める必要があります。
技術的根拠:
構造に負荷を掛ける振動は、次のように分類できます。
- 静的加速度を含む、通常60 Hz未満(周波数はロケットによる)のイベント(リフトオフ、分離など)による振動。
- 機械的インターフェースを介して伝達される、通常20~2000Hz程度のランダムな振動、
- ロケット打上げ時に発生する音響負荷によって引き起こされる、通常50~10,000Hzのランダムな振動。
一次構造の場合、動的加速度、静的加速度及び音響負荷が支配的ですが、後者の振動音響負荷は小さく、実際には無視されることがよくあります。
ただし二次構造の場合、音響負荷の振動の影響を大きく受けます。
ロケットにもよりますが、二次構造に対しての音響負荷は、遷音速時の動的加速度、静的加速度の負荷に匹敵するか、それよりも大きくなる可能性があります。
特に、音響的に敏感な機器(パドルなどの平面で固定箇所の少ない構造をもつ機器)には、音響環境により発生する音響励起による振動に応答し、大きな負荷を受ける可能性があります。
動的加速度と音響負荷は同等の大きさである可能性があり、リフトオフ時に両方発生します。
同時に発生しているため、それぞれの負荷に合わせて構造を設計することが難しく、複合負荷環境で評価していく必要があります。
複合環境負荷評価方法1:ベースドライブランダムとの結合過渡解析
ロケットによりますが、結合箇所との動的解析により最大60 Hzの構造荷重が予測されます。
ほとんどの場合、周波数のカットオフによって、60Hzより低くなります(STSリフトオフの場合は35 Hz)。
このような強制振動の解析は、ロケットの飛行データに基づいて調整され、負荷が実際の打上げ負荷(解析の周波数範囲内の動的および機械的に伝達されるランダム振動を含む)を確実に包括するように設定されます。
カットオフ周波数より高い周波数帯で連成過渡解析を行う場合、機械的に伝達されるランダム振動荷重は、ペイロード構造のベースドライブのランダム解析を使用して計算できます。
また基本振動は、各方向の加速度のパワースペクトル密度で算出できます。
可能であれば、飛行全体のランダム振動の最大値ではなく、ピーク時の動的加速度の時刻歴応答による入力加速度を使用して解析を実行する必要があります。
異なる方向の加速度は無相関と見なす必要があり、同時に適用することも、一度に1つの方向に適用することもできます。
ランダム解析では、一般的にピーク負荷予測としてRMSの3倍(3シグマ)を使用します。
動的解析とベースドライブのランダム解析を組み合わせたピーク負荷は、二乗和平方根(RSS)によって組み合わせることができます。
ペイロード構造への直接的な音響負荷が無視できない場合は、RSSを使用して上記の負荷と組み合わせることができます。
音響負荷を予測する方法には、低周波数の予測に限定される有限要素ベースのアプローチと、高周波数の予測に限定される統計的エネルギー法が含まれます。
複合環境負荷評価方法2:typical Mass Acceleration Curve
typical Mass Acceleration Curve(MAC)は、場所、方向、または周波数に関係なく、特定の質量のすべてのコンポーネントの上限加速度レベルです。
適用範囲は、最大約100 Hzの周波数で、最大500kgの質量に制限されます。
この曲線は、分析データと飛行データに基づいて算出でき、過渡振動と機械的に伝達されるランダム振動の両方の影響が含まれます。
つまり、曲線によって予測される荷重は、過渡振動とランダム振動の組み合わせた負荷となります。
直接的な音響負荷が無視できない場合は、RSSアプローチを使用してMAC負荷と組み合わせることができます。
複合環境負荷評価方法3:モーダルMACを使用した過渡解析の組み合わせ
ベースドライブのランダム解析は、インピーダンスの影響を考慮していないため、低めな負荷である可能性があると考えられられます。
また、有効質量が大きい振動モードで非常に影響が大きくなる可能性があります。
構造の各モードには、その有効質量に基づいた加速レベルを割り当てることができます。
割り当てる加速度レベルは、インピーダンスが考慮に入っているMACによる曲線から取得できます。
振動モードを考慮したモーダルMACは質量に適用されるMACよりもレベルが低くなります。
次に、各振動モードに対応する物理的負荷は、この加速度レベルに従い。振動モードの形状を拡縮、調整することによって導出されます。
組み合わされた負荷は、カットオフ周波数を超える過渡負荷のRSSとして取得されます。
この手法は、ベースドライブのランダム解析による手法が、モーダルMACに拡縮、調整されたモーダル負荷のRSSに置き換えられていることを除いて、方法1と同じであることがわかります。
前の2つの方法と同様に、直接音響荷重が無視できない場合は、適切な音響解析方法で計算し、RSSアプローチを使用して過渡荷重およびランダム荷重と組み合わせる必要があります。
Lessons Learned
- 非実践の場合、特に二次構造において、打ち上げ中の構造破損の可能性が高くなります。
Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。
- リフトオフ時の静的加速度、動的加速度、および振動音響の荷重負荷に対応するように、一次および二次構造コンポーネントを設計します。
|
最後に
現在では音響負荷をシミュレーションソフトに掛けることで解析することが可能です。
一方で音響の解析は難しいため、構造を模擬したモデル(SM)を利用して音響試験をすることが多いです。
音響の応答を解析や設計可能なように、荷重を組み合わせて
ただ、Base drive randomが日本語で、何を示すのか読み取れなかった。
Lessons Learnedとは
Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。
得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。
Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。
NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。
参考サイト
NASA Lessons Learned
https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html
NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)
Combination Methods for Deriving Structural Design Loads Considering Vibro-Acoustic, etc., Responses
https://llis.nasa.gov/lesson/652
宇宙機の環境試験について
https://kyutech-laseine.net/FFSEEK/20080213_9thSEEK_saitou.pdf
Vibration Engineering 振動⼯学−線形振動の基礎−
http://forth.aero.cst.nihon-u.ac.jp/lecture/vibration_engineering_2019.pdf