https://images.nasa.gov/details-PIA23878
Maxar Technologies社(旧DigitalGlobe社)は、現在商業衛星で最も解像度の高い30㎝級の地球観測衛星WorldViewシリーズの製造・運用を行う企業です。
WorldViewシリーズは、日本の防衛省でも使用されている人工衛星です。
このWorldViewシリーズに新たなラインナップが追加されるということで少し調べてみました。
WorldView LegionはNRO
https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e001799
現在、Maxar社は、WorldView-1、GeoEye-1、WorldView-2、WorldView-3の4つの衛星を運用しています。
これに対して、2021年に打上げ予定のWorldView Legionを計画しています。
2021年初めに2基打上げ、2021年終わりに4基打ち上げる計画のようでしたが、COVID-19の影響で少し遅れているようです。
WorldView Legionは6つの人工衛星コンステレーションにより、地球上の中緯度の範囲を、一日15回も同じ場所を観測できるレベルまで引き上げるそうです。
人工衛星を等間隔に配置できれば、1時間36分ごとに観測できることになります。
いくつかの記事の中では、30cmの高解像度画像を収集する能力を現状の3倍以上にすることが可能であるといいます。
この人工衛星の計画は、NROと2019年5月に画像調査に関する契約をBlackSky社、Planet社と同時に締結した際に、2019年1月の時点で提案したものだそうです。
このように従来から衛星画像を利用する客先の要求が、近年の人工衛星開発の流れから、より高まっており、継続的でかつ、多様なスペクトル帯域を要望しているためだといわれています。
Remote Ground Terminal (GRGT)とArmy Geospatial Center
https://images.nasa.gov/details-0003356
あらかじめですが、Army Geospatial Center (AGC)とアメリカ国家地理空間情報局(NGA)は違います。
アメリカ陸軍の地理空間機能を開発しているところで、国防総省にも情報を提供しているところで、NGAは国防総省外局で、かつ国家情報機関の一つです。
Maxar社は、2020年にAGCと契約を結び、Remote Ground Terminal (RGT、リモートグランドターミナル、遠隔地上端末システムかな?)と呼ばれる遠隔地への地理情報を提供できるシステムの構築支援を実施することになりました。
RGTの利点は、小型の中継アンテナを使用せず、直接人工衛星からデータを取得することです。
リアルタイムでデータを取得し、分析し、配布することができます。
アメリカ陸軍では、商用画像を、無処理の生データを内部のシステムで処理して、より素早く分析し、各地へ配布を可能にしています。
現在使用している商用画像は、WorldView-1、-2、GeoEye-1、及びRADASAT-2から直接取得しています。
地上局は、2.4m級のアンテナと市販の画像処理ソフトを用いて、画像を標準形式(NITF及びSICO)に処理しています。
試験では、画像をアンテナで受信してから、内部の処理ソフトで処理を行い、端末をもつユーザーに対して配布するまで、25分とかからなかったことが分かっています。
そもそもの要求としても、受信してから生データを処理するために、15分以内という要求があるようです。
送信にも電子メールから、ファイル転送、Powerpointなどの一般的な方法で配布されているようなのは驚きですね。
現在のように購入を依頼して、数日後にデータを取得する現在のシステムよりも、とてもシステマチックです。
日本でもこのようなシステムを構築できれば、国防的には優位ですが、現在の宇宙関連企業とどのように連携するのかが問題ですね。
企業と衛星画像(光学や合成開口レーダ)の優先的取得契約を結ぶか、専用衛星を打上げるか、衛星のミッションの一部として入れ込み、独立してデータを取得できるシステムを構築するか。
優先的に取得するには、直接データをダウンロードするシステムを構築するには、運用システムを国防関連施設に構築することになるのですが、面倒そうですね。
おまけのMaxarとAWSの連携
https://images.nasa.gov/details-PIA23357
おまけですが、Maxar社では、このWorldViewシリーズと並行して、アマゾンの提供するAmazon WebServices(AWS)とアメリカ海洋大気庁(NOAA)と提携して、天気予報のプロジェクトを進めています。
3社の技術を生かして、天気予報のデータ処理は平均100分程度かかるところ、53分で算出するシステムを構築しています。
Maxar社の地球を周回する4つの衛星から、毎日300km2の画像を収集し、NOAAの気象データサービスと連動させ、AWSのクラウドサービスと組み合わせる処理フローを構築しているシステムとのことです。
スーパーコンピュータで処理していたことが、クラウドを使用することで運用処理コストを大幅に下げている例にもなります。
このクラウドサービスを構築しているAWSですが、ブロードバンドインターネットを提供する3000基の人工衛星によるProject LEO Kuiperも構築を進めているようです。
Project LEO Kuiperの打上げは、Blue Origin社のロケットを利用することが様々な記事で示唆されていますが、人工衛星はどこで製造されるのか興味はあります。
Maxar社ではないようですが、Amazonは新たに人工衛星製造メーカーを要するのでしょうかね。
Blue Origin社と提携されている衛星運用会社Telesatになるのでしょうか。
参考文献
リモートセンシング分野における海外の動向
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-minsei/minsei-dai22/siryou2-1-1.pdf
NASA's GRO Remote Terminal System (GRTS)
http://researchandideas.com/index.php?title=NASA%27s_GRO_Remote_Terminal_System_(GRTS)
NRO Cracks Open Commercial Imagery To More Providers
https://breakingdefense.com/2020/04/nro-cracks-open-commercial-imagery-to-more-providers/
GEOSPATIAL SERVICES
https://www.maxar.com/products/geospatial-services
What's driving Maxar's takeover of analytics venture -- Washington Technology
https://washingtontechnology.com/articles/2020/07/07/maxar-vricon-inside.aspx
Maxar eyes September 2021 launch for WorldView Legion satellites - SpaceNews
https://spacenews.com/maxar-q3-2020/
Army Geospatial Center - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Army_Geospatial_Center
Army Taps Maxar To Establish Remote Ground Terminal For Easier GEOINT Access - Potomac Officers Club
Army Remote Ground Terminal
Army Geospatial Enterprise Home Page
https://www.agc.army.mil/Army-Geospatial-Enterprise-Home-Page/
Sources Sought for Remote Ground Terminal (RGT), USACE Army Geospatial Center
https://www.instantmarkets.com/view/ID185461631854521820371734062281463161989
Maxar, NOAA, AWS Join Hands To Accelerate Weather Predictions Via Computing Solutions
Amazonの衛星ブロードバンド計画「Project Kuiper」をFCCが承認。3236衛星を運用
https://japanese.engadget.com/amazon-project-kuiper-083015846.html
アマゾン、3000基超の衛星によるブロードバンド提供目指す「Project Kuiper」を計画
https://japan.cnet.com/article/35135297/
Telesat LEO contenders pitch Canadian production to sweeten deal
https://spacenews.com/telesat-leo-contenders-pitch-canadian-production-to-sweeten-deal/