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振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

振動音響などの応答を考慮した構造設計荷重を導出するための組み合わせ方法

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振動試験より音響試験は物理的に難しい。

 

試験コンフィギュレーション上は、それほどと思うかもしれないが、小型衛星の場合はその限りでないかもしれないが、数メートル級の音響設備 を用意するなど、難しい。

 

それでも、ロケットは発射時などの衝撃波が加わることは明らかで、試験の必要性を迫られる。

 

もしかすると、小型衛星の場合は、ランダム振動条件の方が、人工衛星の負荷が大きいこともあるので、そちらで代用しているかもしれませんね。

 

さて、今回は専門用語が多いため、いつもより誤訳している可能性があります。

 

原文やJAXAの振動試験あるいは音響試験ハンドブックを確認することをお勧めします。  

概要

設計と試験において推奨される手法。

 

宇宙機の打上げ時の機械環境は、リフトオフ、遷音速、分離により発生する動的加速度、静的加速度、音響の負荷に耐えられるように、宇宙機及び内部機器の一次および二次構造を設計します。

 

特に二次構造は、遷音速時に発生するMaxQ(最大空力動圧変動)やランダム振動より、リフトオフ時の音響負荷での構造破損の可能性が高くなることがあります。

 

実際の手法 

複数の負荷(動的加速度、静的加速度、音響)による負荷は、個別に計算できます。

 

次に、以下にリストされている組み合わせ方法の1つを使用して、組み合わせた負荷を導き出します。

 

音響的に敏感なコンポーネントの場合、直接的な音響負荷も含める必要があります。

 

技術的根拠:

構造に負荷を掛ける振動は、次のように分類できます。

  1. 静的加速度を含む、通常60 Hz未満(周波数はロケットによる)のイベント(リフトオフ、分離など)による振動。
  2. 機械的インターフェースを介して伝達される、通常20~2000Hz程度のランダムな振動、
  3. ロケット打上げ時に発生する音響負荷によって引き起こされる、通常50~10,000Hzのランダムな振動。

 

一次構造の場合、動的加速度、静的加速度及び音響負荷が支配的ですが、後者の振動音響負荷は小さく、実際には無視されることがよくあります。

 

ただし二次構造の場合、音響負荷の振動の影響を大きく受けます。

 

ロケットにもよりますが、二次構造に対しての音響負荷は、遷音速時の動的加速度、静的加速度の負荷に匹敵するか、それよりも大きくなる可能性があります。

 

特に、音響的に敏感な機器(パドルなどの平面で固定箇所の少ない構造をもつ機器)には、音響環境により発生する音響励起による振動に応答し、大きな負荷を受ける可能性があります。

 

動的加速度と音響負荷は同等の大きさである可能性があり、リフトオフ時に両方発生します。

同時に発生しているため、それぞれの負荷に合わせて構造を設計することが難しく、複合負荷環境で評価していく必要があります。

 

複合環境負荷評価方法1:ベースドライブランダムとの結合過渡解析

ロケットによりますが、結合箇所との動的解析により最大60 Hzの構造荷重が予測されます。

 

ほとんどの場合、周波数のカットオフによって、60Hzより低くなります(STSリフトオフの場合は35 Hz)。

 

このような強制振動の解析は、ロケットの飛行データに基づいて調整され、負荷が実際の打上げ負荷(解析の周波数範囲内の動的および機械的に伝達されるランダム振動を含む)を確実に包括するように設定されます。

 

カットオフ周波数より高い周波数帯で連成過渡解析を行う場合、機械的に伝達されるランダム振動荷重は、ペイロード構造のベースドライブのランダム解析を使用して計算できます。

 

また基本振動は、各方向の加速度のパワースペクトル密度で算出できます。

 

可能であれば、飛行全体のランダム振動の最大値ではなく、ピーク時の動的加速度の時刻歴応答による入力加速度を使用して解析を実行する必要があります。

 

異なる方向の加速度は無相関と見なす必要があり、同時に適用することも、一度に1つの方向に適用することもできます。

 

ランダム解析では、一般的にピーク負荷予測としてRMSの3倍(3シグマ)を使用します。

 

動的解析とベースドライブのランダム解析を組み合わせたピーク負荷は、二乗和平方根RSS)によって組み合わせることができます。

 

ペイロード構造への直接的な音響負荷が無視できない場合は、RSSを使用して上記の負荷と組み合わせることができます。

 

音響負荷を予測する方法には、低周波数の予測に限定される有限要素ベースのアプローチと、高周波数の予測に限定される統計的エネルギー法が含まれます。

 

複合環境負荷評価方法2:typical Mass Acceleration Curve

typical Mass Acceleration Curve(MAC)は、場所、方向、または周波数に関係なく、特定の質量のすべてのコンポーネントの上限加速度レベルです。 

適用範囲は、最大約100 Hzの周波数で、最大500kgの質量に制限されます。

 

この曲線は、分析データと飛行データに基づいて算出でき、過渡振動と機械的に伝達されるランダム振動の両方の影響が含まれます。

つまり、曲線によって予測される荷重は、過渡振動とランダム振動の組み合わせた負荷となります。

 

直接的な音響負荷が無視できない場合は、RSSアプローチを使用してMAC負荷と組み合わせることができます。

 

複合環境負荷評価方法3:モーダルMACを使用した過渡解析の組み合わせ

ベースドライブのランダム解析は、インピーダンスの影響を考慮していないため、低めな負荷である可能性があると考えられられます。

また、有効質量が大きい振動モードで非常に影響が大きくなる可能性があります。

 

構造の各モードには、その有効質量に基づいた加速レベルを割り当てることができます。

割り当てる加速度レベルは、インピーダンスが考慮に入っているMACによる曲線から取得できます。

振動モードを考慮したモーダルMACは質量に適用されるMACよりもレベルが低くなります。

 

次に、各振動モードに対応する物理的負荷は、この加速度レベルに従い。振動モードの形状を拡縮、調整することによって導出されます。

組み合わされた負荷は、カットオフ周波数を超える過渡負荷のRSSとして取得されます。

 

この手法は、ベースドライブのランダム解析による手法が、モーダルMACに拡縮、調整されたモーダル負荷のRSSに置き換えられていることを除いて、方法1と同じであることがわかります。

 

前の2つの方法と同様に、直接音響荷重が無視できない場合は、適切な音響解析方法で計算し、RSSアプローチを使用して過渡荷重およびランダム荷重と組み合わせる必要があります。

 

Lessons Learned
  1. 非実践の場合、特に二次構造において、打ち上げ中の構造破損の可能性が高くなります。

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

  1. リフトオフ時の静的加速度、動的加速度、および振動音響の荷重負荷に対応するように、一次および二次構造コンポーネントを設計します。

  


 

最後に

現在では音響負荷をシミュレーションソフトに掛けることで解析することが可能です。

 

一方で音響の解析は難しいため、構造を模擬したモデル(SM)を利用して音響試験をすることが多いです。

 

音響の応答を解析や設計可能なように、荷重を組み合わせて

 

ただ、Base drive randomが日本語で、何を示すのか読み取れなかった。

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Combination Methods for Deriving Structural Design Loads Considering Vibro-Acoustic, etc., Responses 

https://llis.nasa.gov/lesson/652

宇宙機の環境試験について

https://kyutech-laseine.net/FFSEEK/20080213_9thSEEK_saitou.pdf

Vibration Engineering 振動⼯学−線形振動の基礎−

http://forth.aero.cst.nihon-u.ac.jp/lecture/vibration_engineering_2019.pdf

見て学ぶ!振動試験の動画一覧【宇宙機、人工衛星と振動試験】

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以前、展開機構のYOUTUBEをまとめていたのですが、今回は振動試験物の動画を集めてみました。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

振動試験をはじめて実施することになった方へ何かしら参考になればと思います。

動画紹介なので、ちょっと重い。

 

人工衛星の試験


BepiColombo horizontal vibration test


BepiColombo vibration test


Vibration test of the CHEOPS satellite


BepiColombo vertical vibration test


KIZUNA(WINDS) MBA PFT sinusoidal vibration test きずな/JAXA


ExoMars EDM Structural Model undergoing X-axis vibration testing on the QUAD shaker


ExoMars Rover STM vibration test


Top Deck Antenna Vibration Test (11/2010)


Rover Shakedown

小型衛星の振動試験


LightSail-A random vibration test


Vibration Testing Arkyd 6 at Planetary Resources


CubeSat EPS and Battery NASA GEVS Vibration test


九州工業大学 100周年衛星 「鳳龍」振動試験


FM振動試験 2013_12_26

 

輸送梱包試験の様子


【KIBO ROBOT PROJECT】ロボット宇宙飛行士になるための12の試練 その8:振動試験


Mechanical Vibration Test Machine

 


Vibration Tester 505 V4 Full Video Guide by PackTest.com


振動試験システム


【業界初】3軸同時振動と衝撃を同時に発生させる輸送包装試験機が誕生!


JBL 包装試験 - 落下試験 振動試験 圧縮試験 恒温恒湿

飛行機の振動試験


Solar Impulse - Ground Vibration Tests


October 2017 - Ground Vibration Tests


X-56 Full-Body Ground Vibration Tests

自動車振動試験


電気サーボモータ式2・4ポスター振動試験機

振動試験実験例


共振現象


Natural Frequency Vibration Test


Noordwijk shake


棒の共振【物理実験 説明つき】


「振動試験」のスローモーション映像


振動試験PRビデオ 株式会社ケミトックス

振動試験治具一例


都産技研 振動試験機・恒温振動試験機 [実証試験S] の紹介

ボルトの緩み試験


ノルトロックワッシャー/ユンカー振動試験での他製品比較検証


ロックン・ボルト振動試験

振動試験実例


Vibration Testing and Shock Testing Capabilities Overview


VAIOの振動試験


VAIO Zの加圧振動試験/本体ひねり試験

地震再現振動試験


耐震試験・振動試験:兵庫県南部地震(1995年)再現


耐震試験・振動試験:新潟県中越地震(2004年)再現


耐震試験・振動試験:東日本大震災(2011年)再現

色々な振動の世界


[Simcenter] Ground Vibration Testing Master Class 2018


振動の世界 東京文映製作


3.11 東北地方太平洋沖地震発生時の新宿高層ビル群(Earthquake in Japan)

 

NASA施設内でのリチウムイオン電池の火災は数日間施設が停止する惨事となった | Lessons Learned、失敗学、事故事例

リチウムイオン電池の火災

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リチウムイオン電池の爆発事故は、世界各地で発生していますが、宇宙船のエネルギー貯蔵システムとしてリチウムイオン電池を使用しているNASAでも発生しています。

 

今回は地上設備で発生したリチウムイオン電池の火災についてまとめたLessons Learnedを紹介します。

 

ついでに、YOUTUBEに発火の様子と、危険行動も記載されていたので載せておきます。

最初の破裂音注意ですね。

www.youtube.com

  

概要

NASAのジェット推進研究所の地下室で特性試験を行っているリチウムイオン電池は、過熱、発火、爆発し、有毒ガスがビルの上層階2階にまで吹き込み、数日間の避難を余儀なくされました。

 

電池の危険性評価を実施し、研究としての電池試験と、その保管が安全基準に準拠していることを確認した上で、排気システムが建物全体に煙を拡散する可能性を再評価し、宇宙空間で使用される電池の試験構成の改善に影響を与えました。

 

発生経緯

2009年10月20日のリチウムイオン(Li-ion)電池の試験中に、電池が過熱し、発火し、NASA 研究所(カリフォルニア工科大学ジェット推進研究所(JPL)の高層オフィス)の建物に取り付けられたバンカー内の密閉されたスチールロッカー内で爆発しました。

  

バンカーは、このような電池の火災の影響を抑えることを目的として特別に設計されていました。

 

電池試験装置に隣接するロッカーは、初期火災により加熱され、一部が燃え尽きました。

 

試験に供していた電池は、定格30V、容量15Ahのリチウムイオン電池で、特定のプロジェクトのための試験体ではありませんでした。

 

試験用電池は、一般的なロッカーと同様に、2枚の金属板で構成された板金ロッカーの中に保管されていました。

 

ロッカーは、施設の床に6個セットで配置され、配線はロッカーの背面に開けられた開口部を通って配線されました。

 

この出来事は、電池が同じ試験コンフィギュレーションで、18か月間試験に供した後に火災が発生しました。

 

電池の火災が発生すると、煙探知器が火災警報器を作動しました。建物にいた人は、怪我をすることなく、建物から避難しました。

 

JPLの消防施設では、リチウムイオン電池の火災に適した消火器を用いて対応したため、2次的な被害は発生しませんでした。

 

電池用バンカーは、建物の換気用空調口の近くにあったため、リチウムイオン電池の燃焼による煙と有毒ガスが建物の残りの部分に排出されました。

 

大気質サンプルが分析され、有毒ガスなどにより建物全体で修復されるまで、建物全体に数日間に入ることもできませんでした。

 

 発生原因

バッテリー火災は、電池の充放電を制御する試験装置と接続されている端子電圧の誤った測定によって引き起こされました。

 

端子の接続を通して、80個のセル内の温度が上がり、電池の内圧が上昇し、爆発と火災につながるまで、試験用電池に充電され続けられました。

 

JPLの故障調査によると、根本原因として試験担当者の不十分な知識と経験不足に起因すると考えました。

 

原因は、欠陥のある地上試験装置の使用と、電池への熱保護が不十分であることでした。

 

隣接する施設の汚染の原因は、施設の換気および吸気システムの設計に起因するものでした。

 

Lessons Learned

電池の試験と保管のリスクは、研究開発中の電池の取り扱い方法も、フライト品(宇宙用)に使用する電池の取り扱いと同様に管理し、安全基準を満たす必要があるといえます。

 

JPLには、試験担当者がリスクの評価に関して認識していない、またはトレーニングを受けていないため、他の研究開発試験においてリスクがある可能性があります。

 

今回の電池試験は研究開発活動であり、厳密に管理されているフライト用(宇宙用)ハードウェアの検証ではありませんでした。

 

電池の故障は試験中に発生することがあるため、電池の火災は珍しいことではありません。

 

ただし、今回の事故につながった危険な電池試験の試験手順には、適切な故障への保護・制御が取り付けられていませんでした。

 

その結果、火災警報器によりビル全体の避難を引き起こすことになりました。

バンカー内の電池火災による燃焼生成物が、オフィスビルの上層階まで換気口を通って入り込みました。

  

この施設の教訓に加えて、この事件は同様のリチウムイオン電池を使用したいプロジェクトへ試験構成の改善を示しています。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。


リスクの重要度により、試験品の種類(今回の場合は電池の種類)と試験の種類に対して、各々の危険性評価を実施しすること。

 

さらに、試験施設の運用前安全性評価を行い、必要に応じて補強を行うこと。

 

リスクを評価し、リスクの制御方法を施設管理者に連絡してください。

  

電池の試験手順と保管方法は、人員、施設、設備の安全を保証し、安全基準に準拠している必要があります。

  

危険物を取り扱う、または保管する場所から、建物の換気システムの吸気口を再評価し、リスクがない事を確認してください。

 

今回のようなリチウムイオン電池の使用を検討するNASAのプロジェクトでは、電池試験の構成の改善を検討する必要があります。

  

直前に家訓する項目として、冗長電圧タップの動作を確認してください。

(電池には冗長電圧タップはありません。重要なことは、作業者は機器が故障したことを認識し、機器が修理または交換されるまで試験から除外してください。)

 

完成時の電池の熱伝導率(あるいは温度計測)の実装を検討してください。

(電池に内蔵される機能ではありません。作業者は、電池の熱管理が将来の試験で考慮事項であることを認識し、適切な試験コンフィギュレーションの構築/換気規定で対応する必要があります。)

  

ワーストケースでの熱環境、充電制御機器やセンサーの故障ケースなど、電池の充放電時に対応できる機能を実装してくだしさい。

 

電池の充放電サイクル全体で発生する、ワーストケースでのリスク評価を実施し、各イベントに対して適切な緩和策が実施されていることを確認してください。

 


 

最後に

リチウムイオン電池の火災は増え続けています。

 

リチウムイオンが広がるにつれて制御されていると思いきや、数が増えているのでその分事故件数も増えているようです。

 

電池に対する取り扱いは、社会の電池に対する事故が増えるにつれて、宇宙業界でも取り扱いが厳しくなります。

 

打ち上がってしまえば、問題はないのですが、多くの場合は、ロケット搭載時の安全基準により対応を迫られるものです。

 

厳しい厳しいと名高い、安全審査の主要目的はロケット搭載時への作業人員への事故や火災を防ぐことにあるので、しっかりと取り組むべき項目ではあります。

 

リチウムイオン蓄電池は世に出てから、20年も経過しておらず、危険性も知られる物品です。

 

 

今後、適切な管理の上、宇宙用に活用してほしいものです。

 

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リチウムイオン電池からの火災に注意しよう

 

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

 

案外成功体験というものは、組織の中でノウハウとして蓄積されず、個人の中でされることが多いです。

 

本人は今までのノウハウから自然と身についていることだとしても、他の人が同じノウハウを共有しているとは限らないため、言語化して残しておくことは重要です。

 

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。

  

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Lithium-Ion Battery Fire

https://llis.nasa.gov/lesson/3516

ロケット打上げまでの1年以上かけて人工衛星との準備を行ったことで不慮のイベントにも対処できた事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

 プロジェクトから得たロケット打上げまでの1年以上におよぶ準備計画の重要性

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-KSC-2009-4762

 

2020年の3月に制定されたJAXA共通技術文書の存在を知っているでしょうか?

 

JERG-2-701 運用準備標準のことです。

JAXA内ではJERGのことをジェルグと呼んでいるところもあります)

 

JAXA衛星の運用準備の流れが書かれています。

 

一方で、ここまで準備をしている組織がJAXA衛星以外に日本にあるかといえば微妙なところです。

 

というのも、長らく日本では打上げ・運用はJAXAがほとんど実施してきたため、特別に標準を作ることもなく、JAXAあるいはプライムメーカーのノウハウが多かったのではないでしょうか。

 

現在は大学衛星を始め、多くの組織が運用準備を行っています。

 

この標準が作られたきっかけとしては、革新的衛星技術実証1号機をアクセルスペースが担当したことにあるのかもしれませんね。

 

最近の人工衛星は、ロケット側に人工衛星を預けて、打上げを待つということが多く、JAXAの区分で言うと、いわゆる副衛星の方式で打ち上げられていることが多いです。

 

そのため、今回のLessons Learnedのように、ロケット側と情報を密に共有していくというプロジェクトは少なくなっているかもしれませんね。

 

このLessons Learnedと先の運用準備標準を合わせて読んでおけば、ある程度のテーラリングは必要ですが、運用に臨むに至って何か不足がないかを確認するには役に立つのではないでしょうか。

 

概要

広域赤外線探査衛星(Wide-field Infrared Survey Explorer:WISE)は、4か月のミッション運用期間で、ミッション機器の性能を維持するための15K(258℃)という極低温まで冷やすという運用を行うため、複雑なミッションとなりました。

 

WISEの打ち上げ準備は、打ち上げの1年以上前より慎重に計画され、打上げに伴う様々な環境変化に対応することができました。

 

WISEは、不測の事態の発生とロケット打上げに関わる不確実性に対して準備し、打ち上げ直前に予期しない事態に対して、ロジスティクス(=物流、人員計画)な課題に検討しました。

 

打ち上げロケットチームとと人工衛星開発チームの文化や、エンジニアリングの違いを想定し、通信回線を確立し、避けられない打ち上げの課題を管理していきました。

 

事象

NASAのジェット推進研究所(JPL)は、WISEのプロジェクトによって、人工衛星の開発から運用計画、システムレベルでの技術レビューなどで得たLessons Learnedをまとめていく流れを確立しました。

 

2009年12月14日に打ち上げられた広域赤外線探査衛星(WISE)は、高精度の赤外線望遠鏡を搭載し、地球からの全天の画像を取得することで、宇宙全体の何億もの天体を画像に納める・分析することを目的としていました。

 

プロジェクトは、2010年1月26日に、打ち上げ後評価レビュー(Post Launch Assessment Review:PLAR)を実施し、4か月のWISEのミッション期間(2009年8月14日から12月14日)から学んだ教訓を詳細に議論しました。

 

PLARでは、いくつかの大きな課題があったが、WISEのミッションが非常にうまく成功したことが報告されました。

 

この成功は、打ち上げの1年以上前にヴァンデンバーグ空軍基地(VAFB)で打ち上げに関わる詳細な計画を検討し準備を始めるというWISEプロジェクトの決定が、部分的に影響していました。

 

打ち上げの1年以上前から、詳細な打上げ計画を検討し準備を始めることが必要と考えられたのは、理由があります。

 

WISEの打ち上げでは、ミッションに使用される大量の危険な液体/固体水素および気体/液体ヘリウムを含む極低温機器を安全に操作するという非常に困難な課題に直面していたためです。

 

さらに、WISEの顧客に対して、打ち上げ時に、より優先的に観覧場所を与えられることがありました。

 

そのため、WISEプロジェクトで利用可能な打ち上げ施設のリソースが十分ではない可能性があり、多くの調整時間を必要としました。

 

また、WISEには、地上支援装置(GSE)リソースの不足、極低温処理・管理用のスペース、発射台での作業スペース、水素などの供給スペースなど、発射遅延の可能性のある課題をがあり、事前に取り組むために、より早く取り組む必要がありました。

 

長期間に及ぶWISE打ち上げ準備により、人工衛星チームとロケット打上げチームは、計画外の外部イベント(VAFBでの山火事、ペイロード処理施設(PPF)の空調ユニットの誤動作によって引き起こされる温度と相対湿度の変動、発射台の長時間停電)にも計画の致命的な遅延なく対応することができました。

通年のロケット打上げ準備があったとしても、リスク削減を行い、打上げの調整を行いました。

 

これらの結果、ミッションの成果として、ロボットや有人の宇宙船ミッションの打ち上げミッションが、一般的にも使用可能な多くの観測結果を得ることができました。

  

事象の対応・処置

宇宙船が打ち上げ施設に到着すると、プロジェクトマネージャーは主に次のことに関心を持つ可能性があります。

 

  • 全体的なスケジュールと不測の事態
  • 主要な決定とミッションリスク評価
  • 施設の状況


WISEの場合は、打ち上げの準備において、プロジェクトマネージャーでは制御不可能な様々な環境に変化に、すぐに対応する必要がありました。

 

にもかかわらず、次の管理項目に注視したことで、WISEが高いパフォーマンスを保ったままミッションを成功するに至りました。

 

  • 操作管理期間の延長に関わるリスクを軽減

WISEの打上げは、延長され、24時間年中無休で危険な極低温操作を管理するために、通常より厄介なことになりました。

 

そのため、さらに長期間、不測の事態に対応するために訓練を受けた適切なスタッフが必要となりました。


人工衛星チームと打上げロケットチームは、打ち上げ施設が必要に応じて柔軟に機能することを期待していませんでした。


そのため彼らは、緊急時対応計画を作成し、計画に沿って対応を実践しました。その計画の中で打ち上げ時のリスクは、ミッションリスクとは別に管理されていました。


WISEプロジェクトは、ロケット打上げのカウントダウン手順を繰り返し、いつでも実施できるようにトレーニングを開催しました。

 

  • 不確実性を積極的に管理

ロケットの打ち上げ期間の不確実性には、打ち上げロケットの状態維持と準備、作業ルール、および人員の確保が含まれていました。

 

人員の確保の中には、第三者的な視点で確認するため、JPLスペシャリストも含まれていました。

 

スペシャリストの確保は、打上げの飛行プロジェクトとVAFB、NASAケネディ宇宙センター、および人工衛星の安全性に影響を与える可能性のある発射施設の問題を含む請負業者の発射支援要員との間の衝突を解決する上で非常に重要であることが分かりました。

 

それでも、緊急時対応計画のの中で最も重要な不確実性は、打ち上げの天候であることが多いです。


  • ロジスティック(=物流)な課題を管理

スタッフの確保は、ロケット打上げ直前に発生する予期しないロジスティックの課題に対応するために、WISEプロジェクトによって事前に割り当てられました。

 

たとえば、メディアやJPLプロジェクトの管理には、打上げコントロールルームの座席やその他の施設の確保が必要でした。

 

さらに、他のプロジェクトスタッフとその家族や友人も、立ち上げ前日にVAFBでの活動に参加しました。

 

その他の打ち上げ直前には、後方支援として、レンジセキュリティ(=警備)、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社関係者、KSC、およびJPLとの調整が含まれます。

 

  • 組織の文化とエンジニアリングの違いを想定

ロケット打上げ対応担当者と、人工衛星がロケットから放出された直後を対応する担当者の両方が、打上げ後の段階である人工衛星喪失の可能性が高いクリティカルフェーズを無事に成功させるために、チームを構成していました。

 

ロケット打上げ対応担当者と人工衛星の担当者は、共にリスクを評価し、問題を解決するための異なるアプローチ、異なる視点で検討し対策を行いました。

 

たとえば、打ち上げ操作の時間間隔によって、打上げ担当者はシミュレーションや試験よりも、リアルタイムの分析に大きく依存しています。

 

オンサイトのWISE(=人工衛星)の担当者は、打ち上げ期間までの間に新たな技術問題の可能性と、性能維持に関する情報を収集し、非常に敏感に管理していました。

 

JPLの技術部門は、プロジェクトの要求に応じて分析支援を提供しました。

 

人工衛星に搭載している液体/固体水素および気体/液体ヘリウムが入ったタンクの環境を維持するために、人工衛星よりも高い大きなシュラウド(保温用タンク)を配置するなどしました。

 

  • 組織的および人から人へのコミュニケーションの確立

WISEの立ち上げ打ち上げ期間には、複数の請負業者とNASA組織、および米空軍が関与していたため、組織全体のすべての担当者との毎日のコミュニケーションを維持することが重要でした。

 

具体的には、各重要な決定は、噂を払拭することに注意を払いながら、フロアの全員に伝えられ、ミッション全体をサポートしました。

 

  • 打ち上げの不安を管理

WISEの打上げが近づくにつれ、人員のエッジネスが著しく増加しました。

 

この環境では、人事のやりとりが常に専門的であり続けることを保証することが不可欠になりました。

 

不安を軽減する手段の1つは、重要な位置にいる各チームメンバーにバックアップチームメンバーが割り当てられるようにすることでした。

 

チームメンバーは、必要に応じてお互いに連携が取れるようにクロストレーニングが実施されました。

 

 

 

WISEは、予想どおり、ギリギリの問題に遭遇しました。

 

ロケット(Delta-II)の第2ステージのタンク「ディンプル」、慣性測定装置(IMU)とリアクションホイールの速度の急上昇を示す宇宙船のテレメトリー、ロケットのバーニアエンジンのスルーレートの異常です。

 

ただし、これらの異常は処理でき、長期間の打ち上げの準備は、打ち上げを成功させるのに十分であることが証明されました。

 

Lessons Learned

JPLおよびNASAペイロードの打ち上げウィンドウの期間は、通常、多くの軍事および商業ミッションよりも狭くなっています。

 

安全で成功した打ち上げキャンペーンを確実にするために、名目上および偶発的な操作の注意深い計画が必要です。


Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

打上げ時の計画をなるべく早く計画することです。

 

打ち上げの1年以上前に詳細な打ち上げキャンペーンの運用計画を開始するというWISEプロジェクトの決定は、とても効果的であることが証明されました。

 

オンサイトチームの適切な人員配置とトレーニング、カウントダウン手順の実践、異常なイベントへの対応の計画と実行の対応が充分にでき、打ち上げ時のリスクを軽減します。

 

不測の事態に対応するためのバックアップ計画とリソースを使用して、スケジュールされた運用上のニーズよりもはるかに早くリソースを準備することにより、不確実性を管理します。

 

土壇場でのロジスティックの課題に対応する準備ができている専任のスタッフを提供します。

 

常駐の打ち上げ支援担当者が提唱する、ペイロード(=人工衛星)の安全性に関連する技術的決定を検証するために必要な情報を持っている主要なスペシャリストを特定します。

 

打ち上げ現場の担当者に、さまざまなエンジニアリング文化と慣行を認識させることができ、打ち上げリスクの評価を検証します。

 

貢献している組織全体のすべての打ち上げ担当者との日々のコミュニケーションを維持し、重要な決定を伝え、不安を払拭します。

 

プロ意識を確保し、重要なポジションのバックアップを提供することにより、カウントダウンの減少に伴う不安のレベルの上昇を緩和します。

 

 


最後に

人工衛星の総合システムにおける運用前の準備は、いつでも大変です。

 

決められた期間で、パソコンや複写機、ネット回線の準備を始め、すべてを構築する必要があります。

 

プラントや工場建築現場であれば、作業員のプレハブ小屋を作り、必要な作業部屋を確保し、必要な物品を入れ込むなど多少慣れているかもしれません。

 

その中で、場合によってはセキュリティを確保する必要があり、複雑になっていきます。

 

ある程度、型が決まれば、今回のLessons Learnedのように運用直前の準備を始めたら、そろそろ人工衛星打上げの準備だと感じる組織もあるかもしれませんね。

 

このLessons Learnedでは、人工衛星の打上げに関わる事象は、完全にはシステマチックにも自動にもならず、かなり生ものであることを意識させられます。

 

1年近く前から、違う組織文化であることを認識しつつ、対立が起きないように、コミュニケーションを深めていく。

 

この仕事は、空港の運営にも同じことがいえるかもしれませんが、人員は縮小されても、人の手によって回すしかないのだなと感じます。

 

Lessons Learned 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

 

案外成功体験というものは、組織の中でノウハウとして蓄積されず、個人の中でされることが多いです。

 

本人は今までのノウハウから自然と身についていることだとしても、他の人が同じノウハウを共有しているとは限らないため、言語化して残しておくことは重要です。

 

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。

参考サイト

JAXA共通技術文書

https://sma.jaxa.jp/TechDoc/

JAXA-JERG-2-701 運用準備標準

https://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-701.pdf

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Lessons Learned on the WISE Launch Campaign from the Post Launch Assessment Review (PLAR)

https://llis.nasa.gov/lesson/3496

WISE / NEOWISE

https://solarsystem.nasa.gov/missions/wise-neowise/in-depth/

広域赤外線探査衛星 - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E5%9F%9F%E8%B5%A4%E5%A4%96%E7%B7%9A%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E8%A1%9B%E6%98%9F

運用の準備

https://www.satnavi.jaxa.jp/basic/satlife/preparation.html

リアクションホイールは摩耗して寿命を削るため使用管理が重要である | Lessons Learned、失敗学、事故事例

限られた宇宙船リソースとしてリアクションホイールを管理する(2002)

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宇宙船と言えば国際宇宙ステーションISS)が有名です。

 

ISSの大きさは大人用サッカー場と同じ広さです。

 

ただ、居住空間となると地上のように面積では出せず、体積で表すと935m2程度で、だいたいジャンボジェットの客席部分と同じ体積と言われています。

 

ジャンボジェットじゃあ、飛行機をよく使う人か航空業界の人しか分かり難いので、だいたい中学高校の教室の5教室分より少し大きいぐらいです。

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https://www.sekisuihouse.com/nattoku/koubou/seminar_event/public/back_paper/239.pdf

 

意外と広い感じがしますね。

 

この大きさのバランスを取るために、巨大なコマのように回転するリアクションホイールが使用されています。

 

回転することで発生する遠心力によってバランスを取っているのですが、今回はこのリアクションホイールが故障した時の経過と管理手法のLessons Learnedを出していきます。 

 

概要

土星探査衛星「カッシーニ」は、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)により開発され、1997年に打上げられ、2017年9月に運用を停止した人工衛星です。

 

問題が起きたのは、2年半の運用後に、3つのリアクションホイール(reaction wheels :RWA)のうちの1つのリアクションホイールのベアリングケージにおいて、不安定な傾向が発生しました。

 

NASAのジェット推進研究所は、RWAの性能をトレースして、RWA使用の制限しました。

 

RWAの不安定な傾向を監視するソフトウェアツールの使用、異常な挙動を特定するため、RWAのトルク推定器を使用するなど、RWAを管理し、機器の寿命を短くする摩耗の兆候に対応しました。

 

発生経緯

1997年10月に打ち上げられた土星探査機カッシーニの姿勢制御は、3つのリアクションホイールが使用され、バックアップを1基搭載しています。

また、巡航フェーズでは、ほとんどの間、スラスターによって姿勢制御を実行していました。

 

2002年10月に、RWAの3基目(RWA-3)の内部にある2つのベアリングの少なくとも1つでベアリングケージにおいて、不安定な挙動が確認されました。

 

RWAは、2000年3月の姿勢制御で、宇宙空間で初めて使用されましたが、使用されて2年半、不安定な挙動が確認された後からは必要な場合にのみ使用される運用がなされました。

 

発生の対応・処置

RWAの性能は、打上げ後のトルク値の特性評価によって継続的にトレースしていたので、問題を検出することができました。

 

取得したデータを確認し、断続的なRWA-3のベアリングケージの不安定な挙動が9か月間も示されたのちに、2003年7月にRWA-3はバックアップ(RWA-4)に交換されました。

 

残りのリアクションホイールにはほとんど影響はありませんでしたが、同一のベアリングと潤滑剤を使用しており、RWA-3で観察されるベアリングケージの不安定な挙動の可能性があります。

 

したがい、土星探査衛星「カッシーニ」では、RWAの性能低下を管理するために次の手順を実行しました。

 

  1. 主要ミッション中でRWAを使用して科学観測を実施するため、ミッション外のフェーズではRWAの使用を最小限に抑えることとしました。
  2. NASAのジェット推進研究所が開発したRAWの挙動最適化ツール(Reaction Wheel Bias Optimization Tool:RBOT)を使用して、最適なRWAバイアス率を分析し、問題のあるrpmの低い領域内のRWAの実行時間を最小限に抑えました。
  3. RWA(現在バックアップとして機能しているRWA-3を含む)の性能を監視し、その挙動の分析を継続します。

 

ベアリングケージの不安定性は、ノイズやベアリングの抗力トルクの大幅な増加、および過度の抗力トルクの「粗さ」によって予測されます。

 

故障メカニズムは、ベアリングケージの振動を促進し、ベアリングのある潤滑剤(オイル)の局所的な加熱と反応を引き起こし、最終的にはベアリングの早期故障を引き起こします。

 

宇宙船のRWAのベアリングケージの不安定性は珍しいことではなく、姿勢制御にRWAを使用する将来のプロジェクトでも同様の問題が発生する可能性があります。

 

Lessons Learned

宇宙船の運用に不可欠な機器であるため、RWAは異常な数値や寿命を消耗する摩耗の兆候がない場合でも、使用頻度は限定しておく必要があります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

リアクションホイールの使用を管理すること。

  1. RWAの寿命に対する潜在的な兆候を特定するために、受入試験(地上試験)からミッション運用全体に渡り、RWAの性能データを取得し続けることです。
  2. RWAの性能データが、RWAの寿命に影響する可能性があることを示している場合は、ミッションへの影響を軽減するための対策を講じます。例えば、ミッションの終了時に怪しい挙動を示すRWAの使用を減らし、金属同士の接触しやすい低速回転領域でベアリングを操作しないようにします。
  3. 低速回転領域内でのベアリングの動作時間を最小限に抑えるために、RWAの挙動を管理するために、地上ソフトウェアツール(RBOTなど)の使用を検討してください。
  4. 運用制御用のソフトウェアにリアクションホイールの抗力トルク推定を実装して、ケージの不安定性などの異常なベアリング抗力状態を特定します。推定された抗力トルクによって姿勢制御トルクを捕捉することで、宇宙船全体の姿勢性能に対するそのような条件の潜在的なリスクを軽減します。(全地球航法衛星ガリレオ土星探査衛星カッシーニの両方の姿勢制御ソフトウェアは、この補正を実行するように設計されています。)

 

 

 

 


 


最後に

駆動機構というものは、故障が多く、取り扱いが難しいのは地上でも変わりません。

 

人工衛星駆動機構というと、今回話に上がったリアクションホールや同じ姿勢制御機器であるCMG(コントロールモーメントジャイロ)、さらにはアンテナや太陽電池パドルの駆動機構があげられます。

 

これらの故障は、人工衛星寿命に影響されるもので、アンテナの場合、通信不能となるため、ミッションを実行できないばかりか、コントロールもできなくなります。

太陽電池パドルの場合は、太陽光に向けることができず、人工衛星の電力不足を招きます。

 

そのため、機器の受入試験やシステム試験ではその性能を確認し、適切に動作できるか確認する項目でもあり、下手に破損させると修理に時間もかかるため、予備品が作られることもあります。

 

実際のところ、駆動機構を持たない人工衛星が最も安定しており、衛星寿命が長くなる可能性が高いのですけどね。

 

 

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

 

案外成功体験というものは、組織の中でノウハウとして蓄積されず、個人の中でされることが多いです。

 

本人は今までのノウハウから自然と身についていることだとしても、他の人が同じノウハウを共有しているとは限らないため、言語化して残しておくことは重要です。

 

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。

 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Manage Reaction Wheels as a Limited Spacecraft Resource

https://llis.nasa.gov/lesson/1598

宇宙ステーションの生活と宇宙食と宇宙飛行士

https://www.sekisuihouse.com/nattoku/koubou/seminar_event/public/back_paper/239.pdf

JAXA SPACE PHOTO MUSIUM

https://iss.jaxa.jp/gallery/sp-museum/c01_iss/#:~:text=ISS%E3%81%AF%E5%AE%87%E5%AE%99%E7%A9%BA%E9%96%93%E3%81%AB,%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%95%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

学校施設の換気設備に関する調査研究報告書[第4章]機械換気設備の計画事例:文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/04062201/024.htm

センサー工学

http://dezima.ike.tottori-u.ac.jp/yokota/index.php?plugin=attach&refer=%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E8%B3%87%E6%96%99%E3%81%AE%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&openfile=%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5%E5%B7%A5%E5%AD%A62%E5%9B%9E%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E5%9B%9E%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E8%B3%87%E6%96%99.pdf

解像度30cm級地球観測衛星WorldviewLegionとRGTシステム

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA23878

 

Maxar Technologies社(旧DigitalGlobe社)は、現在商業衛星で最も解像度の高い30㎝級の地球観測衛星WorldViewシリーズの製造・運用を行う企業です。

 

WorldViewシリーズは、日本の防衛省でも使用されている人工衛星です。

 

このWorldViewシリーズに新たなラインナップが追加されるということで少し調べてみました。

 

 

WorldView LegionはNRO

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e001799

 

現在、Maxar社は、WorldView-1、GeoEye-1、WorldView-2、WorldView-3の4つの衛星を運用しています。

 

これに対して、2021年に打上げ予定のWorldView Legionを計画しています。

2021年初めに2基打上げ、2021年終わりに4基打ち上げる計画のようでしたが、COVID-19の影響で少し遅れているようです。

 

WorldView Legionは6つの人工衛星コンステレーションにより、地球上の中緯度の範囲を、一日15回も同じ場所を観測できるレベルまで引き上げるそうです。

 

人工衛星等間隔に配置できれば、1時間36分ごとに観測できることになります。

 

いくつかの記事の中では、30cmの高解像度画像を収集する能力を現状の3倍以上にすることが可能であるといいます。

 

この人工衛星の計画は、NROと2019年5月に画像調査に関する契約をBlackSky社、Planet社と同時に締結した際に、2019年1月の時点で提案したものだそうです。

 

このように従来から衛星画像を利用する客先の要求が、近年の人工衛星開発の流れから、より高まっており、継続的でかつ、多様なスペクトル帯域を要望しているためだといわれています。

 

 

Remote Ground Terminal (GRGT)とArmy Geospatial Center

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-0003356

 

あらかじめですが、Army Geospatial Center (AGC)とアメリカ国家地理空間情報局(NGA)は違います。

 

アメリカ陸軍の地理空間機能を開発しているところで、国防総省にも情報を提供しているところで、NGAは国防総省外局で、かつ国家情報機関の一つです。

 

Maxar社は、2020年にAGCと契約を結び、Remote Ground Terminal (RGT、リモートグランドターミナル、遠隔地上端末システムかな?)と呼ばれる遠隔地への地理情報を提供できるシステムの構築支援を実施することになりました。

 

RGTの利点は、小型の中継アンテナを使用せず、直接人工衛星からデータを取得することです。

 

リアルタイムでデータを取得し、分析し、配布することができます。

 

アメリカ陸軍では、商用画像を、無処理の生データを内部のシステムで処理して、より素早く分析し、各地へ配布を可能にしています。

 

現在使用している商用画像は、WorldView-1、-2、GeoEye-1、及びRADASAT-2から直接取得しています。

 

地上局は、2.4m級のアンテナと市販の画像処理ソフトを用いて、画像を標準形式(NITF及びSICO)に処理しています。

 

試験では、画像をアンテナで受信してから、内部の処理ソフトで処理を行い、端末をもつユーザーに対して配布するまで、25分とかからなかったことが分かっています。

 

そもそもの要求としても、受信してから生データを処理するために、15分以内という要求があるようです。

送信にも電子メールから、ファイル転送、Powerpointなどの一般的な方法で配布されているようなのは驚きですね。

 

現在のように購入を依頼して、数日後にデータを取得する現在のシステムよりも、とてもシステマチックです。

 

日本でもこのようなシステムを構築できれば、国防的には優位ですが、現在の宇宙関連企業とどのように連携するのかが問題ですね。

 

企業と衛星画像(光学や合成開口レーダ)の優先的取得契約を結ぶか、専用衛星を打上げるか、衛星のミッションの一部として入れ込み、独立してデータを取得できるシステムを構築するか。

 

優先的に取得するには、直接データをダウンロードするシステムを構築するには、運用システムを国防関連施設に構築することになるのですが、面倒そうですね。

 

おまけのMaxarとAWSの連携

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA23357

 

おまけですが、Maxar社では、このWorldViewシリーズと並行して、アマゾンの提供するAmazon WebServices(AWS)とアメリカ海洋大気庁(NOAA)と提携して、天気予報のプロジェクトを進めています。

 

3社の技術を生かして、天気予報のデータ処理は平均100分程度かかるところ、53分で算出するシステムを構築しています。

 

Maxar社の地球を周回する4つの衛星から、毎日300km2の画像を収集し、NOAAの気象データサービスと連動させ、AWSクラウドサービスと組み合わせる処理フローを構築しているシステムとのことです。

 

スーパーコンピュータで処理していたことが、クラウドを使用することで運用処理コストを大幅に下げている例にもなります。

 

このクラウドサービスを構築しているAWSですが、ブロードバンドインターネットを提供する3000基の人工衛星によるProject LEO Kuiperも構築を進めているようです。

 

Project LEO Kuiperの打上げは、Blue Origin社のロケットを利用することが様々な記事で示唆されていますが、人工衛星はどこで製造されるのか興味はあります。

 

Maxar社ではないようですが、Amazonは新たに人工衛星製造メーカーを要するのでしょうかね。

 

Blue Origin社と提携されている衛星運用会社Telesatになるのでしょうか。

 

 

参考文献

リモートセンシング分野における海外の動向

https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-minsei/minsei-dai22/siryou2-1-1.pdf

NASA's GRO Remote Terminal System (GRTS)

http://researchandideas.com/index.php?title=NASA%27s_GRO_Remote_Terminal_System_(GRTS)

NRO Cracks Open Commercial Imagery To More Providers

https://breakingdefense.com/2020/04/nro-cracks-open-commercial-imagery-to-more-providers/

GEOSPATIAL SERVICES

https://www.maxar.com/products/geospatial-services

What's driving Maxar's takeover of analytics venture -- Washington Technology

https://washingtontechnology.com/articles/2020/07/07/maxar-vricon-inside.aspx

Maxar eyes September 2021 launch for WorldView Legion satellites - SpaceNews

https://spacenews.com/maxar-q3-2020/

Army Geospatial Center - Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Army_Geospatial_Center

Army Taps Maxar To Establish Remote Ground Terminal For Easier GEOINT Access - Potomac Officers Club

https://potomacofficersclub.com/army-taps-maxar-to-establish-remote-ground-terminal-for-easier-geoint-access/

Army Remote Ground Terminal

https://www.agc.army.mil/Media/Fact-Sheets/Fact-Sheet-Article-View/Article/480926/army-remote-ground-terminal/

Army Geospatial Enterprise Home Page

https://www.agc.army.mil/Army-Geospatial-Enterprise-Home-Page/

Sources Sought for Remote Ground Terminal (RGT), USACE Army Geospatial Center

https://www.instantmarkets.com/view/ID185461631854521820371734062281463161989

Maxar, NOAA, AWS Join Hands To Accelerate Weather Predictions Via Computing Solutions

https://www.cloudmanagementinsider.com/maxar-noaa-develop-high-performance-computing-solution-using-aws/

Amazonの衛星ブロードバンド計画「Project Kuiper」をFCCが承認。3236衛星を運用

https://japanese.engadget.com/amazon-project-kuiper-083015846.html

アマゾン、3000基超の衛星によるブロードバンド提供目指す「Project Kuiper」を計画

https://japan.cnet.com/article/35135297/

Telesat LEO contenders pitch Canadian production to sweeten deal

https://spacenews.com/telesat-leo-contenders-pitch-canadian-production-to-sweeten-deal/

電子部品のための電子回路の設計とワーストケース解析を行うためのアプローチ方法 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

電子部品のための電子回路の設計とワーストケース解析

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人工衛星は軌道上に打上げられると修正を加えることができません。

 

宇宙という、日常でも、多くの機械が動く工場の中とも違う環境下で回路が動くことになります。

 

機能を満たすことはもちろん、性能の範囲内での動作確認は、通常の産業製品でも実施されます。

 

宇宙業界でも、性能の範囲以内で動作確認をするのですが、宇宙という環境では地上で再現することが難しく、たまに想像の片隅にもなかった事象が発生します。

 

 

どこまで想像できるのかが、設計のカギとなるのですが、その想像の一つにワーストケースを想定して試験することがあります。

 

今回は、そのワーストケースの考え方の教訓がありましたのでまとめてみます。

  

概要

電子回路の設計と試験の推奨手法であるワーストケース解析( Worst Case Analysis:WCA)は、各回路と各アセンブリ(ユニット部)が、部品性能の変動の中で、現実に起こりうる最も極端な値の組み合わせ測定を行い、要求されている電気的性能を満足するかを解析する回路解析に対する体系的なアプローチ手法です。

 

実施しない場合は、体系的なワーストケース解析による情報がないため、プロジェクト全体の回路設計の整合性が成立しない可能性があります。

 

This lesson learned is based on Reliability Practice number PD-ED-1212, from NASA Technical Memorandum 4322A, Reliability Preferred Practices for Design and Test.

 

メリット 

 ワーストケース解析は、部品の受ける環境や各部品の組み合わせて、電子回路を設計・分析することです。

すべての組み合わせで、求める電気的性能要件を満たしていることを検証することで、システムが成功する可能性を最大化させます。

 

実施方法

最悪ケースは、様々な条件に基づき、例えばハードウェアの劣化や部品の仕様外の範囲に陥ることを考慮して評価します。

 

電子回路の場合、通常の分析では、温度や初期のばらつき、経年劣化、放射線及びその他の影響が考慮されます。

 

設計・分析者は、特定ミッションの運用環境と寿命に関する部品の性能を算出し、調達した部品の初期のばらつきと組み合わせて、運用ケースや最悪条件の部品の変動値を習得し、データベースを作成します。

 

設計・分析者は、従来の電気回路解析手法を用いて、各回路や各回路ユニットが、現実に起こりえる最も極端な状態を再現し、要求された特性を満たしているかどうかを判断します。

 

技術的根拠

従来の信頼性の実施は、部品の修復不可能な故障を最小限に抑えること注力されます。

 

一方で重要なのは、基本的な人工衛星システムの制御とミッションの実行(観測機器の稼働や通信機の動作)が、意図された精度、再現性、及び安定しているものかを保証することです。

 

これらを維持するには、設計検証に統一的で規則的で体系的アプローチが必要不可欠となります。

 

再現性のある均一の動きを実現するには、すべての設計・分析者が共通の部品性能のデータベースを使用することで実現できます。

 

分析①は、アセンブリに始まり、サブシステム及びシステム要件にトレーサビリティが可能で、定性的及び定量的な回路を含む一般的な分析を達成できます。

 

また、分析②として、極地統計分析(Extreme Value Analysis:EVA)または二乗和平方根(Root Sum Squared:RSS)のアプローチを使用して、統計レベル(2ςまたは3ς)での回路性能の変動に起因する統計学的な信頼度の明示あるいはレベルも必要になります。

 

さらに分析③としては、部品をランダムに組み合わせて繰り返して測定するモンテカルロ法を使用します。

 

これらの3つのアプローチの想定的なメリットを比較して、インプットとアウトプット、及び導出される情報の違いをまとめることができます。

 

例えば、ハードウェアの故障に関わるアプローチについてはEVAを適用することをお勧めします。

 

RSSモンテカルロ法を用いた手法は、同じ統計レベルで使用された場合、お互いにおぼ等しい結果を導き出せると考えられています。

どちらの方法も、保持可能で再構成可能な機器に安全に使用できますが、人工衛星や宇宙船などの保守不可能なハードウェアに許容される最低レベルの信頼性を検討する上でも使用されます。

2つの方法は、EVAが実施できない場合にのみ適用される必要があります。

 

3ςの端部で、その特性を満たせない回路は、機能的な意味でも高い信頼性があるとは言えません。

 

 

ワーストケース解析を実施することでプロジェクトにおけるメリットを生かすには、回路の中でクリティカルとなる「弱い繋がり」を防ぐために、システム全体で保証する必要があります。

 

重要な回路の場合、基本設計フェーズにあるPreliminary Design Review(PDR)の段階で概念設計が成立していることを検証するために、事前に検証しておくことが必要になる場合があります。

 

最も有効なタイミングとして、ワーストケースは詳細設計と同時に実施され、Critical Design Review (CDR)の前に、実現可能であることを確認し終えている必要があります。

 

実施しない場合の影響

初期の電子回路設計は、経験則と、初期の部品のばらつきのみに注目されていました。

 

これは、搭載機器が極端な温度や長寿命で仕様の範囲に留まらないことが多いために、不十分な検証内容であることが分かりました。

 

より規則性のあるアプローチで進めていきましたが、設計・分析者が個々に実施しているため、部品の性能の基準に一貫性がありませんでした。

 

単体試験や総合試験での失敗数は減少しましたが、それでも許容困難なレベルであり、特に大規模なシステムは、個々の設計により変更される一貫性のないリスクレベルに苦労させられていました。

 

ワーストケースが最初に実施されたのは、1965年頃で、有能な回路設計者による体系的なアプローチ方法により、リスクレベルがかなり減っていることが分かっています。

 

体系的なワーストケース解析による情報がないと、初期設計の長期的な整合性が成立しない可能性があります。

 

ハードウェアの認定試験で故障し、設計変更となる可能性がとても大きくなります。

 

ハードウェアの受ける環境が、従来の環境とは違うにも関わらず、過去の環境を情報のままハードウェア設計を使用すると、ワーストケース解析が文書化されていない場合、よりリスクが高くなります。

 

Lessons Learned

体系的なワーストケース解析による情報がないと、初期設計の長期的な整合性が成立しない可能性があります。

 

ハードウェアの認定試験で故障し、設計変更となるとても可能性が大きくなります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

電子部品の受けうる環境における部品性能の変動の中で、現実に起こりうる最も極端な値の組み合わせ測定を行い、要求されるシステムの寿命において許容可能な範囲内で動作するように、すべての回路を設計します。

 

 

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最後に

ワーストケース解析は、1969年という、人工衛星開発における比較的初期の時から注目されていたようですね。

 

現在における解析の基礎となるモンテカルロ法RSSなどがあげられています。

 

実際、JAXAモンテカルロ法などで検索すると、いくつかの情報を得ることができます。

 

ただ、電子部品の故障解析や初期解析として、これらの情報にたどり着けるかは怪しい所です。

 

故障が発生し、必要な時にこれらの浮かび上がような気がしています。

 

多くの場合は、口伝や過去資料に埋もれて、実際の設計を行う場合に、抜けてしまう要素な気がしています。

 

熟練の設計者であれば、経験的に実施することが分かっているため注意は必要ではないのですけどね。

 

多くの引継ぎ資料で、ワーストケース解析の手法について残しておくと、より組織としてのノウハウが向上していきそうな気がします。

 

Lessons Learned

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Design and Analysis of Electronic Circuits for Worst Case Environments and Part Variations

https://llis.nasa.gov/lesson/1804

電波収集衛星(SIGINT衛星)をさらに考えてみる

 

海外のSIGINT衛星

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-200907160005HQ

 

日本の防衛白書の中に電波収集衛星という言葉があります。

このため主要国は、C4ISR機能の強化などを目的として、軍事施設・目標偵察用の画像収集衛星、弾道ミサイルなどの発射を感知する早期警戒衛星、電波信号などを収集する電波収集衛星、各部隊間などの通信を仲介する通信衛星や、艦艇・航空機の測位・航法・時刻同期や武器システムの精度向上などに利用する測位衛星をはじめ、各種衛星の能力向上や打ち上げに努めている。

令和2年版防衛白書 第2節 宇宙領域をめぐる動向 宇宙領域と安全保障

電波収集衛星と言われて何を思い浮かべるでしょうか。

 

少しまとめてみました。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

今回は、海外の電波収集衛星にはどれだけのプロジェクトがあるのか羅列してみます。

 

電波収集衛星を単語で調べると、SIGINTという言葉が出てきます。

Signal Intelligence(信号諜報)をSIGINTと称してており、人工衛星の場合は、SIGINT衛星と呼ばれることがたまにあるようです。

 

アメリカのSIGINT衛星は、ネット上での俗称としてMentor(メンター)でしたり、過去はOrion(オリオン)と呼ばれています。

初期のプロジェクトとしてもPoppy(ポピー)に始まり、Canyon(キャニオン)やVortex / Chalet(ボルテックス/シャレー)、Mercury(マーキュリー)といったプロジェクトで打ち上げられていきました。

 

今回の防衛白書にある電波収集衛星の目的に近いと個人的に思っているアメリカ海軍広域海上監視システム (Naval Ocean Surveillance System:NOSS)も存在しています。

2つの衛星で構成され、超長基線電波干渉法(Very Long Baseline Interferometry:VLBI)と呼ばれる手法により対象物の位置を追跡します。

人工衛星そのものも高速で回転しているため、追跡対象の電波に対してドップラーシフトも考慮する必要はあります。

 

アメリカ以外にもフランスやインドで人工衛星保有しています。

 

フランスでは、Essaim(エッサイム)という質量120kg、低軌道の小型衛星の4基のコンステレーションで上げられます。最近の計画としてCapacitÉdeRenseignementÉlectromagnétiqueSpatiale(CERES)も存在しています。

 

インドでも4基のコンステレーションを行っているEMISATがあげられます。

質量220kg、低軌道750kmで、複数基の小型の衛星であることから低価格で実現しており、複数の衛星で検出する電波などの目的を変えているようです。

 

ロシアや中国でもいくつかの衛星がSIGINT衛星だといわれています。

 

アメリカにしろフランスにしろ、国全体として保有しているだけで、管理している組織が違うこともあり、一貫したミッション、目的であるかは不明なところです。

 

そもそもSIGINT衛星は光学衛星よりも情報が出てこないのでよく分からないところがあります。

 

 

 一方日本で、SIGINT衛星はあまり聞きません。(なので、今回のような記事が書けるのですが)

 

電波収集衛星と 範囲を拡大して考えると、自動船舶識別装置(Automatic Identification System:AIS)の電波を受信するAIS受信システムを搭載の小型衛星SDS-4が あげられます。現在は、スカパーJSATに運用を移管済み。 

 

衛星システム製造したのは、メーカーではなくJAXAとなります。(なので以前の記事には記載していませんでした。)

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

同型のAISシステムは、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)にも搭載され、2021年打上げの先進レーダ衛星にも搭載予定です。

こちらは、三菱電機が衛星システム製造メーカーとして製造しているようです。

 

ちなみに、人工衛星によるAISシステムは、2008年Orbcomm社が商用のサービスを提供して以降、exactEarth社が参入しています。

 

スカパーJSATも、SDS-4によるAISデータと衛星画像データを組み合わせた船舶の自動検出サービスを始めています。

 

防衛白書にある電波収集衛星は、どのような人工衛星の形態をとるのか

f:id:MSDSSph:20201106005423j:plain

Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-s61e0021

このような海外・国内事情を考慮して、防衛白書にある電波収集衛星は、どのような人工衛星の形態をとるのでしょうか。

 

電波収集としていることから、電波傍受解析の面が強いCOMINITシステムではなく、ELINTやFISINTの方が可能性が高いでしょう。

 

不審船舶の監視や海上遭難対応、ミサイル・ロケット信号の監視といった面で使用されるのではないでしょうか。

 

衛星本体はどんなサイズになるでしょう

予算が付けば、アメリカの所有するNOSSと同様のシステム(複数の大型衛星)を構築することができるでしょう。

 

予算が付かなければ、フランスやインドのような100kg以上500㎏未満の複数の小型衛星となるでしょう。

 

大型でも小型でも複数基としているのは、AIS信号受信だけではなく、VLBIにより対象物の3次元的な位置空間を把握する必要があると考えているためです。

 

AIS信号は現在、多くの船舶に搭載されていますが、小型船舶への搭載義務がないことや、操作して信号を切ることも可能です。

多くの船舶から送信されるため電波干渉も発生しているのようなので、AIS信号だけに頼るシステムは作らないのではないでしょうか。

 

軌道はどのような軌道を取るでしょうか。

大型衛星であれば、軌道制御も可能で、長期間同じ位置にいられる静止軌道を取るのではないでしょうか。

ただ、近年小型の軌道制御機器もあることから、小型衛星による静止軌道の可能性も0とは言い切れません。

 

低軌道による周回軌道を取る場合は、大型衛星の場合も、小型衛星の場合もどちらもあり得ます。

 

あとは予算と配備計画によるところが多いと思います。

 

小型衛星であれば短期間製造が見込まれますが、いくつか機能を限定した特化型の人工衛星の可能性があります。

大型衛星であれば、小型衛星より製造期間が長いですが、多くの機能を持ち、小型衛星よりも軌道維持のための燃料を搭載できることから軌道寿命や衛星寿命も長い可能性があります。

 

防衛省通信衛星の運用経験もあることから、最初から大型衛星の可能性は捨てきれません。

ただ、予算次第では小型衛星のコンステレーションを配備する可能性が高いような気もします。どうなんでしょうね。

 

製造メーカーはどうなるのでしょうか?

防衛関係ですと、海外の人工衛星製造メーカーを使用することが少ないと思われる人もいますが、現在配備しているXバンド通信衛星はいくつかが海外製です。

なので海外メーカーで製造される可能性はあります。

 

日本となると、どこが候補にあがるでしょうか?

 

防衛省では人工衛星を開発から予算を付けるところはあまりない印象があります。

開発要素が少なく、確実に、計画的に製造・生産できるメーカーが候補に挙がるのではないでしょうか。

 

そのため、現在のベンチャー企業では、もともと電波収集用のアンテナの開発や運用経験が少ないことから、大手2社の三菱電機NECが候補にあがる気がします。

 

将来は分かりませんが、現在の状況では、海外メーカーか日本の大手2社になる気がします。

 

 

製造される人工衛星のポイント

f:id:MSDSSph:20201106005653j:plain

Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-s37-96-009

 

日本でSIGINT衛星を作るのには、キューブサット級の超小型人工衛星はかなり難しいでしょう。

 

理由の一つとして、通信系の電力が不足すると予想されるからです。

  

通常の人工衛星でも、通信系はバッテリーに次いで、電力系ユニット、ミッション機器やコマンド及びデータ処理とならび、消費電力を使います。

 

人工衛星は地上と通信ができなければ、(バッテリー次第ですが)打上げ後、数日と持ちません。

そのため、機器冗長系はなくとも、アンプ(増幅器)やフィルタや送受信切り替えのためのダイプレクサを搭載しており、人工衛星全体としても消費電力の比率が高い特徴があります。

 

 

人工衛星の構成によっては、ミッション専用にデータを送信するためのアンテナが搭載されることもあります。

 

アンテナと通信機をキューブサット級に搭載するには、それこそコンステレーションの必要があるでしょう。

 

人工衛星システム全体の成立性を考えるのであれば、50cm級以上の小型衛星の方が実現性が高い気がします。

 

 

機能を分割し、収集する周波数のアンテナをそれぞれ人工衛星1基あるいは2基に搭載すればバランスが取れるのではないでしょうか。

 

小型衛星であれば、構成のバランスを考えて、人工衛星1基で3つ以上の周波数帯を扱うことが可能でしょう。

 

 

 通信機だけではなく、運用するための電力を確保するために、太陽電池セルパネルのパドルも必要になるでしょう。

 

人工衛星には、太陽電池セルパネルを搭載したパドルがなく、人工衛星の外壁面に太陽電池セルを貼り付けている衛星もありますが、通信機を複数台搭載するなど、電力消費が激しいと、電力的に成立できません。

 

パドルを始め展開機構はロケット環境により故障する可能性があるため、技術的にやや難しくなります。

 

地上での振動試験で展開機構で破損したり、軌道上で展開機構が動かずに、衛星寿命がとても短くなった人工衛星もいくつか存在しています。

開発のハードルが少し高くなります。

 

 

すぐに考え付くのは、通信系の構成と消費電力の成立性が課題となります。

あとは、受信した電波のデータを人工衛星内に格納する機能も必要になります。

 

 

追加機器や要素として、小型衛星では通信系の構成も含めると難しいですが、軌道制御機器があります。

 

軌道制御機器(スラスター)を追加すれば、目的の衛星に、より接近することが可能となります。

 

これらは検討項目としては単純ですが、派生していくつかの細かい課題を解決していけば、電波収集衛星の完成に至ることができると思います。(そりゃそうだ)

 

もちろん、前提条件として、周波数帯域、頻度、地域の項目には目安を立てておく必要はあります。

でないと、大規模な構成になり、予算内にも開発スケジュールにも対応できないでしょう。

 

通常の人工衛星の運用と同じく、想定する地上局や新規の地上局開発、さらにはロケットの確保も考えると、、、

 

さて、どのような人工衛星を打上げる予定ないのか、あるいはそのまま破棄されるのでしょうかね。

  

参考資料

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https://mark20x.blogspot.com/2018/12/isros-emisat-electronic-spy-in-space.html

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https://medium.com/@cryptonomad.info/signals-intelligence-operational-platforms-by-nation-7dc14906ebe4

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https://www.airforce-technology.com/projects/ceres-sigint-satellite-system/

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https://en.wikipedia.org/wiki/Poppy_(satellite)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC_(%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F)

Orion (satellite) wiki

https://en.wikipedia.org/wiki/Orion_(satellite)

Orion (spacecraft) wiki

https://en.wikipedia.org/wiki/Orion_(spacecraft)

ネメシス (人工衛星) wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%A1%E3%82%B7%E3%82%B9_(%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F)

アメリカ海軍広域海上監視システム

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E5%BA%83%E5%9F%9F%E6%B5%B7%E4%B8%8A%E7%9B%A3%E8%A6%96%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

American Geosynchronous SIGINT Satellites

https://fas.org/spp/military/program/sigint/androart.htm

エッサイム (人工衛星)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%83%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A0_(%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F)

Canyon

https://www.globalsecurity.org/space/systems/canyon.htm

VLBIとは

https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/vlbi-about.html

超長基線電波干渉法

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E9%95%B7%E5%9F%BA%E7%B7%9A%E9%9B%BB%E6%B3%A2%E5%B9%B2%E6%B8%89%E6%B3%95

ISRO's EMISAT: Electronic Spy in Space

https://mark20x.blogspot.com/2018/12/isros-emisat-electronic-spy-in-space.html

EMISAT (Electromagnetic Intelligence-gathering Satellite)

https://directory.eoportal.org/web/eoportal/satellite-missions/content/-/article/emisat

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https://en.wikipedia.org/wiki/Signals_intelligence_operational_platforms_by_nation

A radiotelescope in the sky: the USA-202 ORION satellite

https://satelliteobservation.net/2017/09/24/a-radiotelescope-in-the-sky-the-usa-202-orion-satellite/

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小型実証衛星4型「SDS-4」とは

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海事の国際的動向に関する調査研究事業報告書(海上安全) 別冊 AISの国際的動向

https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/00037/contents/0003.htm

船舶運航リスク・非常時の対応 海上安全と海洋環境保護への宇宙の利用

http://www.marine.osakafu-u.ac.jp/osakafu-content/uploads/sites/368/Risk-control-of-ships-Distress-communications-GMDSS-2017-0119.pdf

次期Xバンド衛星通信整備事業に関する基本的な考え方

https://www.mod.go.jp/j/procurement/release/pfi/xband/pdf/xband.pdf

電波収集衛星(SIGINT衛星)とはいったい何だろうか?

電波収集衛星についてまとめてみる

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-s77e5022

 

日本の防衛白書の中に電波収集衛星という言葉があります。

このため主要国は、C4ISR機能の強化などを目的として、軍事施設・目標偵察用の画像収集衛星、弾道ミサイルなどの発射を感知する早期警戒衛星、電波信号などを収集する電波収集衛星、各部隊間などの通信を仲介する通信衛星や、艦艇・航空機の測位・航法・時刻同期や武器システムの精度向上などに利用する測位衛星をはじめ、各種衛星の能力向上や打ち上げに努めている。

令和2年版防衛白書 第2節 宇宙領域をめぐる動向 宇宙領域と安全保障

 電波収集衛星と言われて何を思い浮かべるでしょうか。

 

何も思い浮かびません。

 

電波信号などを収集するといわれると、電波傍受というという言葉が出てきます。

 

単純には、地上から発せられる電波の情報を宇宙空間で受信し、保管して、地上に受信した情報を送信します。

 

電波と言っても様々な情報を含んでいます。

衛星通信情報はもちろんですが、航空無線、GPS電波、空港無線、船舶無線、潜水艦通信などがあげられます。

 

無線通信を傍受しても、機微な情報を扱う場合は暗号化されており、いくつかの手順を踏まないと復号(暗号を解読)することはできません。

 

長中期的に考えるのであれば暗号の解読手段に使えるかもしれません。

長期間のデータの蓄積があれば、各国のデータの癖を知ることができるかもしれません。もちろん、癖が解読できなければ、無駄に終わるかもしれません。

 

データの癖と言っても、電波の波や各アンテナの種類とかそういうわけではなく、電波にデータをのせるときに、ある程度の規則的な並びにする必要があります。その規則的な並びを便宜上、データの癖としています。

 

さらに、現在は地上からの電波だけでなく、宇宙空間から、人工衛星が地上に向けて発信する電波にも注目されています。

 

宇宙からの電波、広大な宇宙空間から飛んでくる電波をどう捉えるのか、不思議に思うかもしれません。

技術的な話とか無視して考えると、スマホGPS電波を受信しているようなもので、宇宙空間からでも、地上に送信される途中の人工衛星からでも、地上局からでもでも、時には驚くほどタイミングよく受信することはできるのです。

 

宇宙空間からの電波は、地上で飛ばされている電波よりは、ある程度人工衛星の周回軌道とアンテナの設置している地上局、打上げロケット軌道、あとは広域の受信機があれば、案外、電波を受信できるのです。

 

 

さて、技術的には電波収集が可能なのですが、どのようなことに使われるのでしょうか。

 

むしろ、自衛的な方向で、電波収集衛星が何に使われるのか。

 

過去、現在において、どのようなシステムが動いているのか、その辺りから調べてみました。

 

Signal Intelligence:SIGINTとは?

 

電波収集衛星を単語で調べると、SIGINTという言葉が出てきます。

Signal Intelligence(信号諜報)をSIGINTと称しています。

 

SIGINTとは、人工衛星のプロジェクトを示しているわけではなく、電波・信号に対する諜報活動そのものを示していることが多く、航空機や地上受信局、船舶、潜水艦も電波・信号を諜報する機能を持っていれば、その範囲に入ります。

 

 

 SIGINTは、3つのカテゴリに分けられます。

  1. Electronic Intelligence (ELINT) 
  2. Communication Intelligence (COMINT)
  3. Foreign Instrumentation Signals Intelligence (FISINT)

 

ELINTは、信号の取得・記録と分析を行います。

電波の周波数や変調方式、帯域幅、電力レベルなどのデータを取得分析します。

取得した情報で電波を識別し、さらに別のアンテナで同じ電波を受信することで発信側の位置の特定や妨害用の電波を構築することもできます。

 

COMINITは、信号の分析と復調を行います。

 取得した電波を復調し、元のデータを読み取ります。

 

FISINTは、通信信号ではなくビーコン信号や、ロケットやミサイルのテレメトリ信号の取得と分析を行います。

 

さらにカテゴリを分けられそうですが、電波収集衛星は、これら(あるいはいずれか)の機能を持つ衛星と言えるでしょう。

 

電波収集衛星は、地球観測衛星のミッションである地球の光学画像を取得し分析するよりは、おそらく技術的には難しいような気がします。

ただ、画像を分析するときに主観が入らない分、やや機械的に分析できるため、主観が入らない分、ある程度正確に情報を分析できるかもしれません。

 

軌道で考えてみる人工衛星のSIGINTシステム

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA03015

 

低軌道(low Earth orbit:LEO)の周回衛星の場合を考えてみます。

 

周回衛星の場合は、情報量や通信機の性能、地上局の配置によりますが、地上との通信は、1回だいたい5~20分程度しか、タイミングがありません。

 

もちろん、電波は回り込む性質があるため、人工衛星は地平線から観測できないところから地上に向けて、早めに電波を送信しているため、もっと長く観測できるでしょう。

 

問題はどれだけ対象の衛星に近づけられるかと、短時間であるために収集する周波数帯域をどのように限定して取得するかに絞られるのではないでしょうか。

 

宇宙軌道上では、真空に近く、電波として有利な空間だといえ、電波は伝搬減衰を受けたり、指向性も持つ場合があるため、接近することが最も有効に電波を取得できる手段と言えます。

 

また、1つのアンテナや通信機(送受信機)では、すべての周波数帯域を同時に収集できるわけではありません。

 

地上でもベクトル・シグナル・アナライザ1台では、同時に信号を取得することはできず、スイープを掛けて信号を受信していますからね。

 

それぞれの周波数帯域に合わせたアンテナと通信機を用意できれば問題ないのですが、限られた人工衛星内部のスペースを考慮すると、あらゆる周波数に合わせたアンテナと通信機を搭載することはできません。

 

軌道上でなくとも、地上でもあらゆる周波数に合わせたアンテナを同じ場所に準備しておくことは、普通に難しいです。

 

話は少しずれましたが、これらの課題を解決した上で、低軌道の周回衛星では、日本上空の空間であれば、1時間間隔で継続して観測したいという希望はかなえられます。

 

軌道の間隔を調整する必要はありますが、10基もあれば技術的に可能ということも考えれば、取得したい周波数帯域とタイミングが合えば、実現可能なシステムであることは予想が付きます。

 

COMINITのようなシステムは、人工衛星の軌道を制御して対象の人工衛星に接近し、送受信するであろう地上局を想定してタイミングを合わせるという課題が解決できれば、可能です。

 

この周回衛星への接近がかなり難しいという話もありますが、軌道制御が可能な人工衛星が複数基打ち上げていたり、打上げ時にかなり近い軌道に放出できれば、実現性は高くなります。

 

ELINTとFISINTのようなシステムは、COMINITのようにデータを取得して解析するだけの情報量を収集する必要はないので、比較的構築しやすいシステムといえます。

 

 

次に、静止軌道にある人工衛星を考えてみましょう。

 

周回衛星のようなタイミングの制限はなく、ほぼリアルタイムでデータを取得できます。地上局位置関係にもよりますが、火星のような長距離でもないので遅延も0.1~0.5秒以下でしょう。

 

人工衛星からは、地球の表面の約3分の1をカバーしており、地上局に対して継続的にデータを取得することができます。

 

これは電波を送信する側も、傍受する側も、受け取る側にもメリットです。

安定した電波を時間を掛けて分析でき、傍受できるというメリットです。

 

静止軌道人工衛星は、ある程度の軌道制御は必要ですが、地上のある地点・広い空間の固定された方向でアンテナが向けています。

 

日本上空に配置すれば、地上から軌道上に漏れ出る電波を常に取得することができるのです。

 

そのため、ELINTとFISINTだけでなく、COMINITのようなシステムも周回衛星よりも、分析を考えず、電波を取得するということに関しては、やや容易です。

 

アンテナや人工衛星に搭載するデータ取得装置、通信機の性能を高くすることで、周回衛星の電波も収集することが可能です。

ただ、指向性アンテナを採用している衛星に対しては、そうそう収集できないでしょうけど。

 

指向性の高いアンテナとは3次元に広がる電波をある方向に集中して送信することが可能なアンテナシステムです。電波の低い電力レベルであっても地上局で受信を可能とし、電波を拾いにくいため傍受を難しくします。

 

電波収集という方面に対して、かなり近接していないと受信できず、衛星によっては近づいたときに軌道制御機器を使うことで収集衛星から逃げることも可能で、防御に強いアンテナシステムとなり、傍受側は工夫が必要になります。

 

久々に続きます。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

 

参考資料

What is SIGINT? 

https://mark20x.blogspot.com/2018/12/isros-emisat-electronic-spy-in-space.html

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ISRO's EMISAT: Electronic Spy in Space

https://mark20x.blogspot.com/2018/12/isros-emisat-electronic-spy-in-space.html

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海事の国際的動向に関する調査研究事業報告書(海上安全) 別冊 AISの国際的動向

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船舶運航リスク・非常時の対応 海上安全と海洋環境保護への宇宙の利用

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次期Xバンド衛星通信整備事業に関する基本的な考え方

https://www.mod.go.jp/j/procurement/release/pfi/xband/pdf/xband.pdf

振動試験時における「オーバーシュート」(目標値を越える振動の負荷)の注意 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

振動試験時における「オーバーシュート」(目標値を越える振動の負荷)の注意

f:id:MSDSSph:20201003183125j:plain

Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-AFRC2020-0012-13

振動試験装置にはオーバーシュートと呼ばれる事象が発生します。

 

オーバーシュートは、振動の入力レベルを越えた値が発生することを指しています。

 

加振の制御方法によっては、ある程度のオーバーシュートは発生します。

しかし、ある程度のオーバーシュートが発生することを知らないまま、振動試験装置を使用すると、初動で大きな加振レベルが発生することに驚くことでしょう。

 

後述のLessons Leandでは振動試験装置を扱う上での注意点がまとめられていますので、その前に、オーバーシュートを防ぐ方法の紹介します。

 

  1. 振動試験装置の設置環境条件で特性が変わることもあるため、使用する振動試験装置に熟知した作業者が運転する
  2. 低加振レベルを長時間負荷し続けることになるが、設計の上限を理解した上で、徐々に加振レベルを上げていく。
  3. 本加振前に、オーバーシュートの兆候が見られたら、時間経過による"ならし"を行い、振動レベルの挙動が安定するまで待機する。
  4. 低加振レベルにおいても、長時間、異常な振動レベルの挙動を見せる場合は、一度停止し、供試体のトルク確認や固定方法を見直す。
  5. 異常な挙動が、加速度センサーあるいは加速度センサーのケーブルによるものではないか、確認する。

 

 

概要

宇宙機の筐体・ハードウェアの認定試験及び受入試験において、振動試験はとても重要です。

 

打上時や軌道上に放出された後に故障するか確認するため、打上げ時の機械環境を模擬することになり、宇宙機の筐体・ハードウェアに対して大きな負荷を与えることにあんります。

 

基本的に、振動試験では負荷を掛けても壊れないという考えのもと実施されます。

 

付与される振動に対して、筐体・ハードウェアの設計・製造が耐えられなければ壊れます。

 

しかし、実際のプロジェクトにおいては、適切な設計を行い耐えられるように製造されているため、振動試験に掛けても異常や故障はなく、筐体・ハードウェアに十分な強度があることを確認する試験となっています。

 

また、振動試験装置も十分に強度がない対象を試験するように設計されている話ではないのです。

  

発生タイミング

 全球降水観測(GPM)のミッション用電力制御機器の振動試験時に、オーバーシュートが発生した。

Lessons Learned

 

  1. 試験装置のシャットダウン(緊急停止)は、振動試験装置の一般的な保護システムであり、試験対象(供試体)に想定以上の(設計上、耐えられない)衝撃を付加与える可能性があります。
  2. 振動加振パラメータ(振動テーブル)へのランダムな振動の入力は、特定の条件では過度の加速度を負荷する可能性があります。
  3. 加振におけるオーバーシュートは、加振レベルを徐々に上げていき、目標となる加振レベルに到達する前に発生し、振動試験装置の計測範囲を越えた振動レベルによるオーバーシュートによる負荷を引き起こすること多いです。
  4. オーバーシュートが発生する小さな兆候や、振動試験装置の計測範囲を越えた負荷は、供試体に対して深刻な問題が発生していることを示すことがあります。
  5. 異常に対する兆候、またはオーバーシュートの発生を想定した試験手順がない場合は、試験の目的を達成せず、無駄に終わる可能性があります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

    1. 可能な限り、試験装置の緊急停止を防ぐためにあらゆる注意を払ってください。軌道上に放出されるハードウェア(フライト品、FM品)を試験するときは、試験装置の保護よりも、ハードウェア(フライト品、FM品)の安全性を優先するようにしてください。
    2. ランダム振動試験を実施する場合は、ランダム信号の不連続性に基づいて、許容レベルを狭くし過ぎて、試験がシャットダウンしないことを確認してください。
    3. 振動試験装置に供試体を配置し、振動試験装置のシステムに電源を入れた瞬間から、リアルタイムの加速度測定値が取得できることを確認してから、試験を開始してください。
    4. 振動試験装置の不具合と計測範囲外に及ぶ加振レベルの挙動に注意してください。怪しい挙動が確認された場合は、無理に試験機を使用しないでください。
    5. 故障や異常を予期して、すべての試験に参加し、発生した事象を分析して学ぶ準備をしましょう。

 

最後に

たまに使用するというレベルではなく、熟知した作業者がいる場合は、おまかせしていてもオーバーシュートに関しての知識があるため、問題はないでしょう。

 

しかし、作業者の都合やスケジュール、コストにより対応できないこと、自分でやるしかありません。

 

手順書があったとしても、もしかすると、オーバーシュートという表現がないかもしれません。

手順の中には、オーバーシュートを防ぐ手順があるかもしれませんが、知っている場合と知らない場合では、作業のタイミングが変わり、より安全に試験を実行することができます。

 

振動といえば、共振現象が有名です。

データを見ただけでは、オーバーシュートを共振現象と勘違いして、試験をやり直したり、異常データと切り捨てたりする可能性もあります。

 

共振現象は供試体由来によるもので、オーバーシュートは振動試験装置の制御由来によるものという明確な違いがあります。

 

まあ、振動試験装置にも共振となる周波数帯があるため注意は必要です。 

Lessons Learned

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Understand What 'Cleaning' Means In The Context Of The Flight Item

https://llis.nasa.gov/lesson/18601

JERG-2-130-HB003 振動試験ハンドブック

http://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-130-HB003B.pdf

オーバーシュートを抑えたい

https://www.chino.co.jp/support/technique/controllers_index/control_controllers/pid_method/#Overshoot