人工衛星の軌道にはジャンク軌道が存在する
宇宙活動法において、役目が終わった人工衛星は地球の大気圏に突入させる以外に墓場軌道(廃棄軌道)に再配置することとあります。
墓場軌道だと書いていて重くなってしまうため、graveyard orbit, junk orbit という呼び方から、本記事ではジャンク軌道と呼びます。どこの誰も呼んでいませんが、語感が良かったので気にしません。
ということで、今回はジャンク軌道の話です。
今回の話は、今後、たくさんの人工衛星で起こりうる人工衛星爆発の可能性がある記事に端を発します。
(中略)米連邦通信委員会(FCC)による取り決めでは、人工衛星を廃止・廃棄する場合は、機体に搭載する燃料(推進剤)をすべて排出することになっています。
(中略)すくなくとも墓場軌道へ移動しておけば、仮に衛星が爆発したとしても、静止軌道上で稼働する衛星への害はないはずです。
久々ではないかもしれませんが、墓場軌道(ジャンク軌道)という単語が出てきました。
ジャンク軌道はだいたい高度38,000~39,000km(静止軌道は高度36,000km程度)上空にあります。
すべては後続の人工衛星のためにジャンク軌道は存在します。
ジャンク軌道は宇宙のゴミ捨て場とも呼ばれています。
爆発はもちろんですが、最近、話題が燃え上がっている宇宙デブリの影響が大きいためです。
通常は、とっても頑張って、大気圏に突入させるのですが、推進力をつけなければいけません。
どうも、静止軌道上から大気圏への軌道離脱操作を行うには、約1.5km/secの速度が必要になります。
しかし、ジャンク軌道に移動させるには、100分の1以下の約11m/secの速度が必要になります。なんでも、静止軌道上で軌道を保持するのに必要な燃料のだいたい3か月分になるそうです。
すなわち、静止軌道から地球の大気圏に突入するには、34年前後の燃料が必要になるのです。
現在の小型人工衛星の構成上、多分、無理です。
惑星探査衛星とかは、数十年の活動を行っていますが、必要最低限の推進能力・推進薬しか持っていないので成り立っているのです。
一方の静止衛星はOrbital station-keeping(ステーションキーピング)を行っています。
Orbital station-keepingは、軌道を維持するために必要な機能のことなんです。
近年の低軌道の人工衛星は大きな推進力を(主にロケットペイロードの問題で)持っておらず、軌道に打ち上げた後に緩やかに地球の重力に引っ張られることが多いのです。そのため、近年の人工衛星ブームでもあまり聞かない言葉なんですね。
自分が知らないだけかもしれませんが、強力なトルクを発生させるフライホイールやコントロール・モーメント・ジャイロを使用すれば、推進系システムを搭載していない低軌道小型衛星でも軌道制御が可能で、ステーションキーピングが可能になっているかもしれません。
静止軌道でステーションキーピングが必要になる理由は、摂動が関わってきます。摂動は各学術分野でいろいろな意味にとられますが、この場合は月と太陽の重力や太陽輻射圧(Solar radiation pressure、太陽からの電磁界)の影響で発生します。
人工衛星の運用計画によって変わりますが、定期的に軌道を変更しているので、約34年間という運用に必要以上の推進薬を保持できるスペースが人工衛星の中に存在しないのです。
逆に、推進薬を持っていればステーションキーピングを継続することができ、ジャンク軌道へ移動することもないのです。
案外、静止衛星へ燃料の補充が可能な補給専門人工衛星や静止軌道の各静止衛星の推薬補給用宇宙ステーションの計画が出現するかもしれませんね。
もちろん、推進薬だけが軌道制御ではありません。
太陽帆と呼ばれる、ソーラーセイルを利用して軌道を移動するということも考えられています。
ただし、これは国際規制があるだけで罰則があるわけではないので、自由なんですね。
日本では宇宙活動法で打ち上げの設計・製造時点で縛られていますけど、打上げた後も効力があるのでしょうかね。
しかも、限界まで静止衛星軌道上で人工衛星を運用したい国や組織があった場合、簡単に踏み倒されてしまうのです。
実際、wikiによるとまだまだ打上げられた人工衛星の数が少ない2005年でさえ3分の1程度なんです。日本の気象衛星ひまわりもこのジャンク軌道を回っており、成功した部類に入ります。
宇宙デブリは増えていく一方ですね。
参考資料
http://www1.accsnet.ne.jp/~aml00731/c/orbit/Station_keeping.PDF