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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

宇宙業界用語「ホステッド・ペイロード」ってなんですか?

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日本とアメリカは2020年にホステッド・ペイロード協力について合意しました。

※日本語ではホステッ「ト」ではなく「ド」です。

 

今回はホステッド・ペイロード協力の中身ではなく、ホステッド・ペイロード(hosted payload)そのものについて述べていきます。

 

[目次]

 

ホステッド・ペイロード(・サービス)とは

ホステッド・ペイロードは、相乗りともいわれることがあります。

宇宙業界の中で人工衛星に対して相乗りという言葉は大きく2つあります。

 

一つは、ロケットに搭載されるときにメインとなる人工衛星に対して、ロケットの打ち上げ能力の余剰分を利用して別の人工衛星(副衛星)を打ち上げる際に、副衛星を相乗り副衛星と呼ぶことがあります。別の呼び方ではピギーバックとも言われています。

 

もう一つが、人工衛星の内部に別の組織によるコンポーネント(モジュール/機器)を搭載し、電源や通信機を共有したうえで、人工衛星を運用することを相乗りと呼びます。

 

今回のホステッド・ペイロードは後者のことを指します。

ホステッド・ペイロードは搭載量の貸出しという意味で、相乗りと呼ばれています。

 

ホステッド・ペイロードのメリット

  • コスト面が安くなる

人工衛星は、小型化が進んだといっても数千万~十数億円の世界であることは変わりません。中・大型衛星でも数百億円以上かかります。

 

このコストを一つの組織が使用するにはまだ大きく、このことが宇宙業界に参入する組織が少ない原因の一つともなっています。

ホステッド・ペイロードの仕組みを利用することで、コスト(開発費、打上げ費)の分担が発生し、安く購入することができるようになります。

 

  • 打上げまでの時間の短縮

人工衛星は、打上げ時のロケット振動環境や軌道上での放射線対策、製造後の確認(適合)試験に時間がかかります。フルセットで実施する場合は、数年レベルで試験を行い確認していくことになります。

理想をいえば、ホステッド・ペイロードにより、試験の途中から機器を搭載する判断も可能となり、大幅な時間短縮もできます。もちろん各機器に対しての責任区分(分界点)は必要であり、お互いの機器が干渉しないことを確認する試験が必要になってきます。

と、開発面での時間短縮を上げたのですが、最も大きいのは今だに打上げ機会が限られているロケットによる軌道投入までの時期を早めることではないでしょうか。

ロケットの打ち上げ機会は、スペースXにより増えている印象を持っているかもしれませんが、まだまだ不足しているのが現状です。

次回の打ち上げに、数か月から数年レベルで人工衛星を待機させておく必要があります。

人工衛星はナマモノのように腐るわけではないのですが、清浄度管理やそのものが大きい場合であったりと、保管にも費用が掛かります。保管期間が長ければ、不測の自然災害による損傷や人的事故のリスク、電池の充電管理など実際打ち上げたときに障害になりうる事象を引き起こすことになるため、製造後の速やかな打上げが望まれます。

 

ホステッド・ペイロードは一部の機器(主に電源機器、通信機器)を共有します。

スペースデブリは、ネジ1本でも他の人工衛星を壊せるだけの破壊力を発揮します。この仕組みを使用することで、ネジ1本以上も部品を減らすことができるようになります。

 

ホステッド・ペイロードのデメリット

  • 性能や形状に制限が出てくる

空いている部分を使用するため、性能や形状に制限が出てくることです。ただし、人工衛星は古くから性能や形状に制限がある中で、小型化や工夫して搭載していたため、元々コンポーネントを製造していたメーカーからすれば、今までの人工衛星と大差ないとも言えます。

 

日本でのホステッド・ペイロード

日本では人工衛星を製造しているメーカーが少ないことから、商業的にホステッド・ペイロードを実施しているメーカーは今のところあるかもしれませんが、打上げまで済ませた人工衛星がない可能性があります。

 

近い仕組みとして、JAXAの主導する革新的衛星技術実証機になります。

同じ機体の中に、複数の実証機器を搭載し、電源機器や通信機器を共有していくこの考え方は、ホステッド・ペイロードと呼ばれてる考えに通じています。

 

ホステッド・ペイロードを進めていく上で、重要な要素は人工衛星の製造の安定性です。

 

人工衛星は、目的の違いからミッション機器と呼ばれる観測装置、通信装置なども変わっていきます。

一つの人工衛星を製造するのに、複雑なミッション機器であればあるほど開発時期が延びて置き数年、数十年に及ぶことも少なくありません。

同じようなミッション機器を次世代に搭載しようとしても、宇宙業界以外の技術革新が激しく、それに合わせてミッション機器もかつて使用した部品が使えなくなったりと、一品一様の人工衛星であることが長く続いていました。

 

最初は潤沢にあった政府資金も、世情からいくつからの目的を失い資金削減の方向に動いており、製造メーカーも統廃合が進み、コスト削減の波が幾度も来ていました。

 

そのため、世界の人工衛星メーカーは各ミッション機器に対して共通の衛星バス機器(電源装置や筐体、姿勢制御機器などのどの衛星でも共通の機能を持つ機器)を開発していった経緯があります。

同じ設計の衛星バス機器を搭載することで、設計費のコストを削減し、在庫管理や部品購入の際の輸送や書類作成コストを削減しています。

製造した衛星を輸送する際にも、独自の輸送ボックスを使いまわすなどの地道な削減を行ってきました。

このようにして(今風にいうとオールドスペースの)人工衛星メーカーの多くは生き残ってきました。

 

潤沢な資金の上に成り立っていると思われていた宇宙業界も、削減され続ける政府予算の上で、リアルタイムで最新技術のデータを作成しなかればならない厳しい事情の上で頭を悩ましてきたうえでの進んできました。

 

ホステッド・ペイロードは、コストや時間によるリスクを減らし、継続して人工衛星を製造し続けていくという組織としての安定性に一役買うことになる仕組みといえます。

 

海外のホステッド・ペイロード

ホステッド・ペイロードが明文化されたのは、2007年にアメリカより出てきました。

 

2007年当時は、というか現在でもそうですが、商業衛星でいうと通信衛星です。

 

衛星通信が民間企業で購入される時代であり、人工衛星の需要が増加すると予測されている一方で、政府資金が削減され、打上げ機会が多くなく、製造時間も数年レベルと長期になることから、リスク軽減のためにホステッド・ペイロードの考え方が出てきました。

 

その後、2010年辺りからホステッド・ペイロード・サービスとして実際にサービスが始まっています。

2010年当時はまだまだ政府関係へのサービスが主流でしたので、気象関係や軍事関係で活用されていたようで、現在もアメリカに限らず諸外国で続いています。

 

公開しているだけでも多くの人工衛星でホステッド・ペイロード・サービスが利用されており、コストを抑えたい政府や企業と、多くの衛星本体を販売したい企業の利害が一致した形となっています。

参考資料

日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくホステッド・ペイロード協力に関する書簡の交換

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000392.html

Hosted payload - Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Hosted_payload

人工衛星が何の役に立っているのでしょうか?宇宙技術のスピンオフ【基礎から知りたい】

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人工衛星は何に役立てられているのだろうか?

人工衛星って何なのか?

 

今回は初心に立ち返り、改めて人工衛星について解説します。

目次

めっちゃ高いところにある人工物、それが人工衛星

人工衛星は空に浮かぶ雲よりも高く、無重力となる宇宙空間から地球に向かい合っている存在、人工物です。

 

そもそも衛星とは、地球といった惑星などが発生する引力という引っ張る力で運動している物質のことを言います。

 

地球では月、木星ではイオやガニメデ、火星ではフォボスなどが該当します。

 

これらは天体(object)と呼ばれ、衛星の中でも天然(の)衛星などと呼ばれます

 

その衛星の中で、人間が作ったものを人工衛星と呼びます。

衛星という言葉に厳密な区切りがないため、天然衛星も衛星と呼び、人工衛星も衛星と呼びます。

 

人工衛星は惑星の引力を使って運動しています。

惑星の引力が強い地表面では、十分な運動ができないため、数百キロメートル以上も地表から離れた場所にいる必要があります。

 

スカイツリー(634メートル)よりも富士山(3,776メートル)よりも高い位置にいます。

雲の高さ(2000~10,000メートル=2~10キロメートル)よりも高く

飛行機(旅客機)(1万メートル=10キロメートル)よりも高い位置になります。

 

宇宙空間と空の境目として100キロメートルといわれています。

これは大気(空気)がとてつもなく薄くなるのがその高さであるためです。

 

この100キロメートルでもまだ引力が強くて十分に運動できません。

 

さらに上の400キロメートルに国際宇宙ステーションと呼ばれる、アメリカ、ロシア、カナダ、日本、欧州宇宙機関(ESA)が軌道上に存在しています。

 

このあたりの高さで、ある程度の期間、軌道上で運動することができます。

ただ、400キロメートル辺りは、引力や大気の影響から何もしないと何年も軌道を維持できることができないため、地球に落下していきます。

 

2017年より運用されていた180~268キロメートルの超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS/スラッツ)がありますが、同様の超低高度の人工衛星は少ないです。

 

そんな高さに人工衛星はあります。

 

身近な人工衛星

 

気象衛星(ひまわり)、GPS(衛星)といった日常で使われる言葉にあるように、様々なところで衛星が使われています。

 

衛星放送も、人工衛星を使って電波を届けている仕組みを使っていることから、衛星の名前が使われています。

 

人工衛星が止まったらどうなるでしょうか?

 

気象衛星が止まってしまったら、長期的な天気予報の精度が落ちます。

地上にある装置である程度、予報することが可能ですが、地上から離れた大気の状態を知ることができなくなります。

 

日本では台風の観測が遅れますので、農作物や家畜などの農業に大きな被害を及ぼす可能性があります。

 

海外では山火事や火山観測などに使用されているため、より人的被害が大きくなることでしょう。

 

気象衛星以外にも地球を周回している地球観測衛星もあり、これが止まってしまうと自然災害の復興や被害状況の確認など、気象衛星ではできない小回りの利いた局所的な観測の対応が難しくなります。

 

GPS衛星(あるいは地理情報システムに関わる衛星)が止まってしまったら、カーナビゲーションシステムが使えなくなります。

運送、輸送に影響が長時間化してしまい、コストも上がることでしょう。

 

船舶の場合は、GPS衛星(あるいは地理情報システムに関わる衛星)を使用しているため、海外からものを持ってきたり、送り出したりする期間が確実に伸びます。

 

実は、GPS衛星の情報で時間情報が狂わないように直しているのですが、それができなくなります。

 

衛星放送が止まってしまったら、衛星放送といってもテレビのような情報だけではありません。国際電話も止まってしまうのです。

 

これにより、僻地離島からの情報が遅れることになります。

少ない医療設備の場合は、急病患者を助ける手段が少なくなったりします。

 

また海外の情報もすぐに手に入れることが難しくなります。

海外で不足しているものや、日本国内で不足しているものの情報も遅くなっていきます。

 

現在はインターネットサービスにより、日本国内ではそこまで深刻にならないかもしれないですが、テレビの衛星放送は見れなくなります。

 

ただ、インターネットの通信負荷が大きくなるので、世界的な障害が起きる可能性もあります。

 

情報世界の世の中では、様々な計画が大きく遅延になり、かなり大混乱が発生してしまうことでしょうね。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

参考資料

人工衛星で宇宙から地球を守る・利用する

https://www.jaxa.jp/projects/sat/index_j.html

たまに出る宇宙業界用語「高精密度測位補正技術(MADOCA-ppp)」について

測位システムの高精密度測位補正技術(MADOCA-ppp)を知ろう

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GPSというと、現在の自分の位置を知る測位システムとして知られています。

 

ただし、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)に関わる人や人工衛星に関わる一部の人はGNSS(Global Navigation Satellite System)と呼んでいる人も多い。

 

GPSは測位システムの一つで、アメリカの軍事目的で運用されていた測位衛星のシリーズのことです。

アメリカ以外にもいくつかの国で打ち上げられています。

  • アメリカのGPS(Global Positioning System)-31機-
  • ロシアのGLONASS(グロナス)-27機-
  • ヨーロッパのGalileoガリレオ)-最終24機-
  • 中国の北斗(BeiDou Navigation Satellite System)-最終35機-
  • インドのIRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)-最終11機-
  • 日本のQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)-最終7機-

 

その上で、JAXAは精密衛星軌道・クロック推定ソフトウェアMADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)を開発してきました。

 

ユーザーは測位衛星より信号を受信して自身の位置情報を確認するのですが、通常の測位(単独測位)の場合、数m程度精度となります。日本の場合道路幅は3.5mなので道路をはみ出る可能性がありえます。

 

そこでいくつかの補正データに精度を上げていくのですが、その補正データをMADOCAとPPP (precise point positioning:単独搬送波位相測位) を利用してリアルタイムで数cmの精度まで引き上げます。

 

MADOCAで時刻情報の精度とpppでユーザー個別の位置情報(測位精度)を向上させていくイメージです。

 

日本のJAXAで開発されているといっても、QZSSだけではなく、GPSGLONASSGalileo、BeiDouのデータを得て、正確な推定をしています。

 

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credit:JAXA

https://ssl.tksc.jaxa.jp/madoca/public/doc/Interface_Specification_B_ja.pdf

 

このサービスはMADOCA用のアンテナを持っていれば、無償でデータを取得でき、インターネット経由でも有償で取得できるGPASと呼ばれるサービスが2020年8月1日より商用展開されています。

※アンテナの場合は、QZSSの受信範囲内(日本、ASEAN地域、オーストラリアなど)

 

サービスは農業機械をはじめ、ドローン、海上船舶、自動車に実証含めて使用されています。事業計画上は2024~2025年程度までに本格事業化していく様子です。

これはQZSSシリーズが2023年度内に7機体制を確立する予定の上での計画でしょう。

 

海外に対しては、複数回行われている日米宇宙包括対話をはじめ、2017年に欧州との日欧協力協定、2018年にインドネシア、2019年にオーストラリアとの衛星測位利用に関する協力覚書を締結しています。

ちなみに、欧州を離れた英国は現時点で独自の衛星測位システムを検討しているとのこと。

 

2010年代後半から始まったプロジェクトが10年弱の時間を得て事業化が展開されて生きています。

 

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

参考文献

GNSS特集「3分でわかるGNSS(全世界測位システム)のお話」GNSS特集「3分でわかるGNSS(全世界測位システム)のお話」

https://www.keisokuten.jp/static/sp_gnss.html

補強システムMADOCA(MSJ対応済)

https://www.magellan.jp/fundamental/117

高精度測位補強サービスへの期待〜MADOCAによる海外展開〜

https://jsapt.net/ja/post/19050003

グローバル測位サービス株式会社

https://www.gpas.co.jp/index.php

MADOCA配信サービス・VRS配信サービス(海上GPS利用推進機構)

http://www.mar-gps.or.jp/madoca/index.html

ASEAN地域における基礎データ収集および補強信号の精度評価」本田技研工業株式会社

https://www.nedo.go.jp/content/100859236.pdf

衛星測位に関する取組方針 令和3年4月 22 日 内閣府宇宙開発戦略推進事務局

https://www8.cao.go.jp/space/qzs/houshin/houshin.pdf

 

準天頂衛星「みちびき」の海洋分野での活用 促進に向けた調査研究」一般財団法人 ニューメディア開発協会 2020年3月 

https://www2.nmda.or.jp/wp-content/uploads/2020/06/2019FY-JKA_Study-group-report-on-utilization-in-the-ocean-for-Michibiki.pdf

第3回:自動運転を支える技術 (2/4) | 連載04 自動運転が拓くモータリゼーション第2幕 | Telescope Magazine

https://www.tel.co.jp/museum/magazine/japanese_spacedev/151030_report04_03/02.html

宇宙業界用語「JAXA認定品」とは

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JAXA認定品とは、人工衛星、宇宙ステーション、ロケットなどの宇宙機に使用可能な品質レベルを満たしていること部品に対して、製造する設備も含めて認定した対象の電気電子機器及び部品のことをいいます。

また、JAXAでは電気電子機器及び部品のことを認定品に関わらず総じて、EEE(Electrical, Electronic, Electromechanical)部品、あるいはトリプルイー部品と呼ぶことがあります。

 

JAXA認定品は、宇宙機に使用できる部品であるという認識があるのかもしれませんがそれだけではありません。

 

品質を維持するために、製造設備も含めて審査するのですが、JAXA以外にも公的な認定品というものは存在し、設備含めた認定を行うことがあります。

 

JAXAの認定品はそれだけではなく、製造メーカーに対して品質管理体制も求めてきている点が違います。

 

今回はそんなJAXA認定品の話です。

 

JAXA認定品取得のメーカーメリット

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JAXA認定品を取得することは、単純に宇宙機に使用できるだけではありません。

 

宇宙機に使用できる部品を生産

少量生産品の品質管理技術の取得

品質管理体制の確立

各種不具合のフィードバックと恒久処置対策の助力

 

肩苦しいメリットとしてはこのぐらいですかね。

 

メーカーにおいて品質管理は独自に構築する必要があるのですが、認定を取得していれば、対外的にも信用に値するレベルであると示すことができます。

 

ISO9001の品質マネジメント認証取得でも対外的に品質管理体制を確保していることを示しているのですが、より実用に準じた体制を構築することができます。

 

正直、認定を取得できるレベルのメーカーが宇宙機用の部品を製造するべきという話もあるかもしれません。

 

しかし、宇宙航空研究開発機構JAXA)は、独立行政法人あるいは国立研究開発法人という公共性があり、日本の経済の発展を資することを目的とすることから、必要に応じて、どのメーカーであっても、メーカー側が望むのであれば認定を取得することをサポートするという性質があります。

もちろん、中長期的に目的の細部は変わるかもしれませんが。

 

現状、認定を取得できるレベルにないメーカーであっても、その門戸を開くためにJAXAのような機関が存在しています。

 

JAXAの認定取得には、ISO9001取得は必須ではありませんが、近い性質も要求がされます。しかも、ISO9001のような自由度が狭められ、より宇宙機に対して実用的な品質管理が必要になります。

 

宇宙機は他の民間製品よりも歴史が短く、実例が現在広まっているどの製品よりもはるかに少ないといえます。

 

わずか半年前に発売した製品よりも実例が少なく、ノウハウの蓄積があっという間に抜かされてしまいます。

 

そのうえ、故障が許されない上に、新車1台と同等かそれ以上の価格の機器が、人ひとり持ち上げられる10㎏にも満たないことも過分にあります。

 

非常に扱いづらいのですが、徹底した故障リスクや性能の安定性を重視するためのノウハウが必要になります。

 

そんな稀有なノウハウを社内に蓄積することができれば、宇宙機以外のやっかいなお客にも十分対応できる社外にアピールすることができます。

 

社外からすれば、正体不明だが絶対に失敗が許されない宇宙機の認定部品を製造している企業なので、他の製品についても十分な品質管理ができているであろうという印象をつけることができます。

 

いわゆる箔をつけることができるともいえるのです。

 

JAXA認定品取得のメーカーデメリット

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一方で、デメリットもあげておきます。

 

  • 管理体制の維持
  • 不具合対応
  • 廃番の困難さ
  • 認証試験の厳しさ
  • 試験環境の構築

 

認証試験などは、現在、人体含む安全性において宇宙以外でも認証試験があり、試験数としてはあまり変わらないかもしれません。

 

ただ、試験条件が厳しいことが多いです。

軌道上という特殊な環境では、容易に温度が下は氷点下、上は100度を超えてしまいます。

人工衛星内であれば条件も緩和されますが、厳しいことには変わりません。

 

そのほかに、ロケット打ち上げ環境に耐えうる振動条件や性能の安定性が求められてきます

 

一部の条件は自動車の試験の方が厳しい場合もありますが、相対的に宇宙の方が厳しいことが多いです。

さらに、有人宇宙用はもっと厳しくなります。

 

 

認定された宇宙用部品は、単純に高品質の部品を作るだけではなく、継続して、安定した性能が出せるような体制が必要になってきます。

 

しかも少数品に対してです。

 

その分、値段は高く売り出せることはできますが、設備の維持も含まれるためなかなか高い投資になります。

 

ただ、認定品として売り出せないのですが、試験数を限定した高品質版として売り出すことは可能にはなります。

 

 

認定品で品質を求められる理由は

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認定品で特性に対しての品質が求められます。

 

製品としてだけではなく、メーカーの部品の管理体制に対してもそれなりのレベルを求められます。

 

大きな理由はトレーサビリティにあります。

 

人工衛星は何台も打上げられ、運用されます。

 

いわゆるニュースペースと呼ばれる2010年後半より台頭してきた世界中の小型衛星の製造・運用しているメーカーも継続して打上げられています。

 

今まで打上げられた人工衛星でもほんの数例をのぞいて、一度軌道上に放出されれば物理的に手を入れることはできません。

 

人工衛星によっては、内部のコンピュータのプログラムを書き換えることも可能な場合もありますが、プログラムを書き換えるぐらいです。

 

何か故障して、運用できなくなっても、人工衛星を分解して中を見ることはできません。

もしかして、ヒータの故障で必要以上の温度が掛かっている場合もありますし、人工衛星スペースデブリと呼ばれる秒速7.8kmの物体がぶつかっても見れないので分かりません。

打ち上げの衝撃で光学レンズが割れたのか、レンズの接合部が弱くて外れたのかも分かりません。

 

もちろん、電子部品のはんだによる接合が取れても、電子部品自体が異常を起こしても、そもそも部品をつけ忘れていても、打ち上がってしまったら分かりません。

 

そこでトレーサビリティ、物体の経歴を追うことが重要になります。

 

人工衛星は、1台だけではありません。

 

SpaceXが製造し運用するスターリンク衛星は別として、軌道上で同時に運用可能な人工衛星はニュースペースでも100台以下ではありますが、継続して打上げられます。

 

何か故障が発生した場合、次の人工衛星には同じ失敗が発生しない様に処置を行う必要があるのです。

 

その時に、トレーサビリティができなければ、原因を十分に追究できません。

対策処置を実施したとしても、見当違いの可能性もあります。

 

人工衛星の製造には多くの時間が掛かることから、リソースを集中しなければなりません。

不具合の総当たり対策を行っていては、時間とコストが不足してしまいます。

トレーサビリティの情報により、原因を狭める必要があります。

 

そのため、管理体制も含めて、認定品は要求するのです。

 

かつての人工衛星の製造には、1台で数十億、数百億円以上かかっていました。

時間とコストを考慮して、原因対策を絞り込むことは管理の節約になりました。

 

ただ、現在、ニュースペースによる人工衛星の製造価格は、小型であり、価格も何十分の一以下まで下がってきています。

 

あらゆる部品に対してトレーサビリティを行うよりも、製造して試験をして、実験・実証を通して、不具合の処置を行って、製造するというサイクルを繰り返した方が時間的にも短くなります。

 

コストも下がるかどうかはミッションによりけりですが、物を作った方が早い場合があります。

軌道上に突入させなくても、地上で何台も製造して試験して比較して改善点を洗い出した方が、時間的にも、コスト的にも安く済ませることも可能になります。

 

このようなニュースペースの宇宙機の製造手法により、考え方を変えられているのが現在の宇宙業界です。

 

もちろん、不慮の事故で部品が故障した場合であっても、原因追及のすることがあります。

部品自体が高価であるため予備以上の部品を購入することが困難である場合は、トレーサビリティなどを利用しているということはあります。

 

製造し運用する組織のリスク許容範囲を共有した上で、トレーサビリティの情報が必要か否か決めて進めることをお勧めします。

 

認定品を使用するか否か、試験を実施するか否かは、結局どこまでリスクを許容できるのか

チャンスが少なく、製造期間が短い場合は、性能に対して担保している認定品を選択することが多いです。

 

結局は、打上げられたら物理的に手を出せないため、基本は壊れにくい部品を使用し、壊れたとしても、なぜ壊れたか分析することがある程度可能なように、高い品質を要求がされるのです。

 

 

 

SpaceX社の通信衛星コンステレーション(スターリンク)の混信回避方法

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衛星コンステレーションが話題になって幾日、電波が混線する可能性に気づいた方がいるのではないでしょうか。

 

今回はSpaceX社の打上げている通信衛星であるスターリンクの混線回避方法について調べてみました。

 

スターリンク衛星の通信が混線する可能性

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電波は使用できる波長(周波数)が有限です。

 

スマホなどの携帯電話も周波数を変えて通信しています。

日本ではドコモやKDDIソフトバンクといった通信会社がありますが、これらの通信会社同士の通信が混線しないように使用する周波数が割り当てられます。

 

しかし電波の周波数は有限であるため、地球各地から様々な電波を使用していると、どこかで重なる可能性があります。

 

そこで、各国単位で電波が混線しないように電波を各事業者に付与して、管理します。日本では総務省がその役割を担っています。

 

しかし人工衛星は日本以外に各国の境界を越えていきます。

そこで国際電気通信連合(ITU)が各国含めた電波を管理しています。

 

それでも同じ周波数を使用することは避けられないので、ITUを窓口として各事業者が調整を行います。(周波数の国際調整)

 

例えば、スターリンク衛星の周波数Aは、アメリカでは使用する許可を得たとしても、日本ではすでに事業者Bによって使用されていることがあります。

 

そこでITUを窓口として、各国の電波を管理している官庁を通して調整を行います。

 

調整内容は様々ですが、日本の北海道の地上基地局Cで周波数Aを使用しているので、北海道の地上基地局Cが電波を受信できる仰角5度以上である北緯東経Dで電波を出さないように、と調整していきます。

 

もちろん、使用するタイミングによっては、昼は使用するので、夜は問題ない。といった場合もあります。

この場合は、事業者が同じ国内であったり利害関係になかったり、といった場合であることが多々あります。

 

とここまで書いて、KDDIau回線を通じて通信可能であるという事業化レベルまでスターリンク衛星が来ていることから、日本国内で混信対策済みということが想像できます。

 

ということで、日本国内でこのような議論をしている資料から読み取っていきましょう。

 

今後の日本での衛星コンステレーションを構築する際の、電波干渉の回避方法の参考になればと思います。

 

 

周波数帯の混信回避のため国際調整

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SpaceX社によるStarlink衛星は他の衛星への干渉を回避する能力を持っているようです。

 

日本国内に対しての電波干渉を回避するという前提で考えると、日本国内の地域をカバーしている静止衛星(観測衛星、通信衛星など)や電波天文が干渉する対象になります。

 

地上では、それ以外にも多くの帯域が使われていますが、Starlink衛星の帯域では静止衛星や電波天文となります。

 

特に静止衛星の電波に対しては、ITUの22.2条によると、非静止衛星システム(今回はStarlink衛星)は静止衛星網(固定衛星、放送衛星)へ許容し得ない混信(電波干渉)を生じてはならないとしています。混信させないように発生する電波に対して等価電力束密度(EPFD)を規定して、静止衛星側を保護しています。

 

これは既設の静止衛星に対して、Starlink衛星のような周回衛星は、同じ帯域を使用する場合、周回衛星の方が電波の制限をしなければならないというもので、これは日本に限らず世界的に決められたルールです。

 

使用する周波数も、既設の設備と同じ周波数帯を使用しても実際のところ問題はありません。

 

その理由には、電波の共用という考え方が前提にあるからです。

 

 

電波の共用とは、同じ周波数帯でも利用のタイミングや地域を制限することで干渉しない範囲で使用することができるという考え方です。

 

電波取得の際に実施する国際調整を行うのですが、既設の設備の所有事業者と調整することで電波の干渉や混信を避け、互いに利用できるように調整を進めます。

 

最近は分かりませんが、かつては周波数帯が干渉していないが、隣接している周波数帯ということで、調整の必要があるのではないか?という書簡(メール)が届いたりしたそうです。

 

電波の強さが弱い部分に対して、技術上問題はないが、こちらのチェックミスで対応しなければならないように思わせたりという攻防が行われていたとかいないとか。

 

従来人工衛星に使用されていた周波数帯は、周回衛星同士や周回衛星用地上局に干渉していたのですが、スターリンク衛星のように静止衛星などで使用される周波数帯域を周回衛星でも使用されており、かつ世界中という広範囲であるから調整もかなりの数となったことでしょう。

 

とてもタフなネゴシエータを雇ったんですかね。

 

ちなみに、周回衛星より静止衛星の方が調整に関しては少ないことが多いです。

静止衛星は地上の特定の地点に向けて通信を行うため、他の国で同じ周波数帯を使用しても、使用する地域を限定していることから干渉しないことが言えるからです。

 

日本でのスペースリンク衛星のサービス

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スペースリンク衛星は、人工衛星のネットワークを利用したインターネット通信を行うことができ、受信機さえあれば世界各地で使用することができます。

 

技術的には、各ユーザー個人で受信アンテナを空に向けて通信を行う方法と、既存の回線を利用してある特定の基地局と通信を行い基地局経由(バックホール回線)で既存の回線による通信を行う方法があります。

 

前者の場合は、次のような流れで進みます。

  1. スターリンク衛星
  2. 受信アンテナ(個人)
  3. 受信機(個人)
  4. 個人所有のパソコン/スマホ

後者(バックホール回線)の場合は、

  1. スターリンク衛星
  2. 受信アンテナ(通信会社所有)
  3. 基地局
  4. 交換局
  5. 個人所有のパソコン/スマホ

 

バックホール回線は、おそらく通信会社の提供サービス名が変わりますが、今まで使用していた使用方法に近い形で、へき地であっても、比較的安定的な通信ができるというものです。

 

サービスとして現状の4G回線や5G回線が弱い地域に対して自動的に通信衛星回線に切り替わり、多少通信速度が変わるかもしれませんが、比較的通常通りに使用できるサービスとなります。

 

 

混信の可能性のあるStarlink衛星の利用周波数

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@情報通信審議会 情報技術分科会 衛星通信システム委員会作業班(第23回)

資料23-2 小型衛星コンステレーションによる衛星通信システム(Ku帯非静止衛星通信システム)の検討状況について(更新版)

 

スターリンク衛星は、日本国内では次の周波数帯を使用します。

 

サービスリンク(Ku):

 10.7-12.7 GHz(宇宙から地球)

 14/0-14.5 GHz(地球から宇宙)

フィーダーリンク(Ka):

 17.8-18.6 / 18.8-19.3 GHz(宇宙から地球)

 27/5-29.1 / 29.5-30.0 GHz (地球から宇宙)

 

被る周波数帯は、宇宙(人工衛星)から地球へ発信する方向では、電波天文と地球探査衛星(受動)となります。

 

地球(地上局)から宇宙へ発信する方向では、周回衛星通信システムやデジタルテレビ用の通信となります。

 

これは先に記載した通り、事業者ごとに調整となっていきます。

 

何も対策しなければ、同じ周波数域の電波を受けることになります。

同じ周波数を受けるときは、相手側の電波を受けてもデータの中身までは読み取れませんが、本来受けたい電波に被さることで電波障害になります。

 

スターリンク衛星のシステムでは、電波干渉を防ぐために次の機能があります。

  1. 電波干渉を回避するために複数の場所に対してのビーム照射が可能で、かつ選択することができる機能を持っています。(Steerable beams
  2. 同じアンテナから複数のビーム照射を可能としています。(Shapeable beams
  3. 複数のビームで同じ周波数を利用可能な機能を持っています。(Frequency reuse)

 

複数の場所にビーム照射が可能ということは、技術的にはアンテナが二つ以上付いており、同じ周波数であることから同じ周波数の受信フィルタを持つ通信機を持っていることになります。

通信機の大きさにもよりますが、それなりに大きい電波増幅装置(アンプ)が付いていることになるでしょう。

 

この構造であれば、高い指向性を有した姿勢制御をする必要が無くなります。

高い指向性を持たせる場合には、姿勢制御機器を多く搭載したり、強力なホイールを持っている必要があります。

 

周回衛星であるため、通信できる時間に制限があるのですが、複数の場所にビーム照射可能であれば、単純にパス時間が延びます。

これは複数のビームで同じ周波数を利用可能という機能と合わせることで対応可能となります、

 

地上局Aと通信可能な位置から、人工衛星は移動しているため、途中で地上局Bに通信可能となり、単純に通信可能時間(パス時間)が延びるという仕組みです。

今回の混信を考えるのであれば、他の電波と干渉する角度で侵入する場合は、別の地上局に切り替えることで、通信を確保したまま混信を防ぐことができます。

 

人工衛星は、内部に搭載したGPS機器や地上局との通信で位置を3次元で確認しているのですが、混信が発生する可能性がある地上局のある地域に対してある角度で侵入する場合は、電波を発信しないなどをプログラムで防ぐことができます。

 

 

同じアンテナから複数のビーム照射を可能ということは、複数のビーム照射=複数の周波数のビーム照射が可能で、技術的には発振器の根元、あるいは増幅器の手前で切り替えスイッチがあるということなのでしょう。

通信機から両方の周波数帯を発信して、電波のフィルターで切り替えるか、二つの通信機を搭載して、スイッチによ切り替えを行うかどちらかでしょう。

仕組みとして後者の方が楽ですが、スターリンク衛星のシステムではどうなのでしょうね。

 

複数のビーム照射が可能であれば、電波干渉が起こりうる電波を使用しているアンテナを設置している地上局の地域において、別の周波数帯に切り変えることで電波障害を防ぐことができます。

 

スターリンク衛星のシステムは、3つのビーム(うち2つは同じ周波数帯)をほぼ同時に照射することで、長いパス時間と、電波干渉を防ぐ機能をもつということになります。

 

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@情報通信審議会 情報技術分科会 衛星通信システム委員会作業班(第23回)

資料23-2 小型衛星コンステレーションによる衛星通信システム(Ku帯非静止衛星通信システム)の検討状況について(更新版)

 

 

結局、スターリンク衛星の混信回避方法は?

スターリンク衛星は、念のため、小型衛星といえる大きさではありません。

通信に特化した中型衛星か、大型衛星の部類に入ります。

 

小型衛星で同様のことをするには、通信機やアンテナの搭載スペースを工夫する必要があるでしょう。

 

通信機、結構電力掛かります。

スマホでも、電波が繋がらなかったりすると無理に通信仕様として、通信強度が勝手に上がって、電力消費が大きくなるわけです。

それと同じで衛星も電力消費が大きくなり、発熱します。

 

小型衛星の場合に問題となるのは、発生電力不足、周回衛星なので夜間でも動けるための電力を保持する電池、そして発熱が問題となります。

 

故に、衛星のサイズも大きくなったのだといえます。

 

しかしこれらの問題はスターリンク衛星レベルの次の機能を持つ場合になります。

  1. 電波干渉を回避するために複数の場所に対してのビーム照射が可能で、かつ選択することができる機能
  2. 同じアンテナから複数のビーム照射を可能とする機能
  3. 複数のビームで同じ周波数を利用可能な機能

 

これらの機能を部分的に使用することで、小型衛星でも十分に対応可能なコンステレーションを構成することができることでしょう。

 

ちなみに、これらの機能はすでにSpaceX社とは別の組織で実証済みの機能です。

 

同じ機器・製造メーカーを使用しているか不明ですが、個々の技術的には実証済みの機能を組み合わせているもので、正直目新しさはありません。

 

参考文献

情報通信審議会 情報技術分科会 衛星通信システム委員会作業班(第23回)

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/digitalcontent/02kiban15_04000400.html

 

 

衛星通信システム委員会

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/idou_eisei/idou_eisei.html

衛星データで鉱物資源を調査する方法【2021年での事業レベルと研究事例】【宇宙の技術は役に立つ】

鉱物資源のリモートセンシングとは

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農業に人工衛星の観測データが使用されてきています。

農業で使用される観測データは、赤外データを使用しているのですが、同様に金属を検出することができます。

 

赤外観測装置は、物体が反射や放出された光を観測しています。

レンズに赤外領域の波長のみ受光できるフィルターでデータを取得します。

 

また、赤外データだけではなく、合成開口レーダーデータや標高データによる地形解析などの複合的な解析手段で鉱物資源の探査を行っています。

 

地表面での調査だけではなく、各地質の特徴・現象を人工衛星のある軌道上から観測できる現象を抽出するような手段で研究・開発が続けられています。

 

広義的に物理探査あるいは空中物理探査と呼ばれる手法で、航空写真や航空の電磁場、重力波を観測します。

 

人工衛星によるリモートセンシングの利点としては、次の通りです。

  1. 航空機以上に広範囲を調査することができる
  2. 繰り返しデータを取得できる
  3. 地表面の光学センサ(赤外センサ含む)のスペクトルデータを取得できる
  4. 合成開口レーダにより地形の凹凸データが取得できる

 

鉱物探査から事業化まで

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鉱物探査、いわゆる探鉱は、次のような流れで事業化まで進みます。

  1. 予備調査
  2. 概査
  3. 精査
  4. 埋蔵量評価
  5. 事業化

日本では南米大陸やアフリカ大陸で研究あるいは開発が行われているようです。

 

解析手法に関しては、他の赤外データとほぼ同じ流れを取ります。

 

鉱物探査で難しい所は、対象が酸化して物性が変わったり、混合物が混ざり込んだ形で鉱物・岩石となる可能性があります。

 

解析フローとしては、大きな流れとしては次の通りです。

  1. 大気補正
  2. 混合物や植生との評価分離
  3. スペクトルによる構成鉱物比の推定
  4. 鉱物含有量のマッピング

 

現行の小型衛星と鉱物探査について

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現在の小型衛星のコンステレーションで使用される光学観測装置は、可視光の観測装置がメインであるため、鉱物を探査するに最適化されていないことが分かっています。

 

地球上では4000を越える天然鉱物があり、それぞれ独自の化学組成となるため、抽出が可能となります。

 

赤外などのスペクトルデータから対象の物質を特定することを同定というのですが、理論式があるわけではないので、データベース化する必要があります。

 

必要な帯域である短波赤外線の周波数帯の観測装置を搭載することで、効率よく鉱物探査が可能となります。

 

短波赤外線の観測装置に関して言えば、大型衛星での知見があるためゼロではないのですが、今後加速させるには小型衛星が必要にはなるでしょう。

 

 

現在、見える形での研究レベルでは、金や銅、亜鉛や鉛、インジウムがあげられています。

 

いくつかの理由で、研究が止まっているということもあるでしょうが、最近の衛星コンスレテーションの構築と赤外センサを搭載した小型衛星での組みわせにより、より多くのデータが広く得られれば、解析も進むことでしょう。

 

近年の衛星データを使用した解析と同様に加速する可能性があります。

 

赤外領域は農業の植生の健康管理にも使用されています。

帯域の問題があり、農業と鉱物資源両方に使用することは簡単ではありません。

 

通常の光学カメラを搭載した人工衛星よりは、解像度や取得するフィルタを工夫などの技術な難易度がありますが、おそらく小型衛星の中では光学衛星、レーダー衛星の次に、通信衛星か赤外センサ搭載衛星が増えていくことでしょう。

 

現在の小型衛星にも赤外センサを搭載していますが、高い解像度を搭載して小型衛星は少ないので、狙いどころかもしれません。

 

ただ、この鉱物探査で希少金属を狙えるかどうかは、、、大事業にもなりそうなので、事業化に至るまで秘密にされそうですけどね。

 

参考文献

チリ共和国 鉱物資源リモートセンシングプロジェクト
事前調査団報告書

https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/11641487_01.pdf

Hyperspectral remote sensing in lithological mapping, mineral exploration, and environmental geology: an updated review

https://www.spiedigitallibrary.org/journals/journal-of-applied-remote-sensing/volume-15/issue-03/031501/Hyperspectral-remote-sensing-in-lithological-mapping-mineral-exploration-and-environmental/10.1117/1.JRS.15.031501.full?SSO=1

チリ・アルゼンチンにおける銅・金の探鉱権益を譲渡~JOGMECの調査成果を民間企業へ~

http://www.jogmec.go.jp/news/release/release0426.html

金属資源探査

https://www.geotechnos.co.jp/service/geology-metal.html

ナミビア共和国亜鉛・鉛・インジウムの共同探鉱契約を締結

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000059.000012624.html

資源開発における衛星地球観測の役割 資源開発における衛星地球観測の役割
とこれからの方向性 とこれからの方向性

https://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/frontier/6kai/siryo1-1-1.pdf

アフリカ金属鉱床探査に関する解析技術開発

http://www.jogmec.go.jp/metal/technology_004.html

資源探査における衛星リモートセンシング技術の進歩

https://spc.jst.go.jp/hottopics/0911inquiry/r0911_sanga.html

 

衛星画像からの地熱変質帯の抽出と熱水パス推定への応用

http://www.jsgi-map.org/geoinforum2016/22.pdf

 Mineral Exploration from Space

https://www.esri.com/about/newsroom/arcwatch/mineral-exploration-in-the-hyperspectral-zone/

Application of hyperspectral remote sensing for supplementary investigation of polymetallic deposits in Huaniushan ore region, northwestern China

https://www.nature.com/articles/s41598-020-79864-0

Mineral Exploration

https://www.isro.gov.in/Mineral_Exploration

The use of Remote Sensing Technology in geological Investigation and mineral Detection in El Azraq-Jordan

https://journals.openedition.org/cybergeo/2856

 

SpaceXのStarlink衛星でGPSのように自分の位置の特定をする新しい技術研究【応用を知りたい】

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SpaceXの外部研究者(アメリカのオハイオ州大学)によって、Starlinkによるインターネットサービス衛星によるブロードキャストされた信号を使用してGPSにように地球上の自分の位置を特定する方法を開発しました。

 

Starlink衛星は、SpaceX社によって軌道に投入され、世界中のあらゆる地域でのブロードキャストによるインターネット接続のサービスを提供しています。

 

目次

 

GPS衛星との位置の精度

Starlink衛星を6つ利用することで8メートル以下の精度で、場所を特定することを可能としました。

 

GPS衛星を利用した場合の精度は10~20メートル程度の精度ですが、現在地球の軌道上では、全地球航法衛星システムと呼ばれる衛星の種類があります。

この全地球航法衛星システムを利用することで5cm~5m程度の精度まで収束することができます。

日本では準天頂衛星みちびきが有名です。

 

この衛星システムは、搭載されている非常に正確な時間を刻む原子時計を踏査ししており、衛星の軌道上の位置と正確な時刻を地上に向けて無線信号を送信します。

この信号を複数の衛星から受信し、受信するまでに経過した時間を比較することで3次元の位置情報を計算しています。

 

GPSを利用したシステムの弱点の一つとして、地球から2万km以上離れた軌道にあります。

かなりの距離を離れているため、信号そのものが非常に弱く、偶発的な干渉や建物の影響などを影響を受けてしまします。

 

Starlink衛星は、SpaceXからのサポートを受けることなく、さらには衛星を介して送信される内部データを必要としません。

 

Starlink衛星の位置と動きに関係する情報のみで位置を特定する方法でした。

 

オハイオ州立大学の研究者によると、Starlink衛星による信号を取得した後、位置を特定するための高度なアルゴリズムを設計し、正確に機能することを示しました。

 

実証では約7.7メートルの受信アンテナの位置を特定することができました。

 

Starlink衛星以外の低軌道衛星によるコンステレーションにも同様のアルゴリズムを使用したのですが、約23メートル程度でした。

 

推定法の考え方

Starlink衛星は、チャンネル周波数と帯域幅を除いてほとんど知られていません。

そのため、Starlink衛星の信号を追跡する受信機は容易に設計することはできません。

 

そこで、無線機の電子回路を変更せずに制御ソフトウェアにより無線方式を変更することができるソフトウェア無線(SDR:Software Defined Radio)による無線周波数スペクトルの帯域をサンプリングすることで対応しました。

 

Starlink衛星のサンプリングの課題として二つあります。

(1)Starlink衛星の信号は、Ku/Kaバンドで送信されており、商用のSDRの帯域を越えている点。

(2)ダウンリンクの帯域幅が240MHzと大きくなり、これも商用のSDRの帯域を越えている点。

最初の課題は、アンテナとSDRの間にミキサー/ダウンコンバーターを使用することで解決できます。これによりSDRで取得できるサンプリング帯域幅を広げることができる。

2つ目の課題に対しては、ナビゲーションシステムには多くの情報を必要としないため、ダウンリンク信号の受信しつつ、ドップラーや位相の観測量を生成することで可能になります。

 

この手法を用いて、サンプリング帯域幅を2.5MHzに設定し、キャリア周波数をダウンリンク周波数の1つの11.325GHzに設定しました。

 

これにより、約13.3分間で位置情報を推定することができました。

 

GPS衛星の弱点

Starlink衛星は、地球の低軌道に約1,700程度の衛星を保持しており、最終的に40,000以上の衛星を軌道上に投入することを計画しています。

 

オハイオ州立大学のカサス准教授によるとStarlink衛星が増えるにつれて、この技術による位置の精度も向上する可能性があります。

この開発により、世界中のナビゲーションシステムの要となっているGPSの代替システムとして利用できる可能性があると述べています。

 

GPS衛星はすでに30年以上にわたり使用されており、多くの人に知られている既知の信号です。

 

既知の信号であるため、攻撃的なアクションに対しては脆弱性を示します。

 

また、GPS衛星そのものも、Starlink衛星の低軌道より高い高度にあるため信号が弱くなり、上手く受信することができなくなる可能性があります。

 

GPS信号に対してのジャミングは、信号を完全に停止させる可能性もあります。

特にGPSの妨害を受けた時に危険な産業は、航空や船舶、自動車といったシステムへの干渉するため、飛行機や船舶の位置をずらすことでの衝突や、自動車の進路を意図的に変えたり、ミサイルなどの攻撃対象を意図的にズラすことも技術的には、色々障害はありますが技術的には可能で、最終的に重大な事故に繋がります。

 

実際に、中国では奇妙なGPS信号の攻撃により、船舶の場所を誤認識させることに成功していたり、一部の地中海でも定期的にGPS信号に対して妨害を受けています。

 

特にアメリカ軍はGPS信号に大きく依存しています。

そのため、代替えとなるGPS技術を持ったコヒーレント・ナビゲーションシステム社について興味を示していました。

ちなみに、このコヒーレント・ナビゲーションシステム社は2015年に買収されています。

 

位置情報やナビゲーションシステムに低軌道衛星を使用するということは、1960年代に打上げられたアメリカの人工衛星のいくつかは、高度1,100kmに投入された軍の船舶や潜水艦の位置情報を提供するトランジット衛星でした。

 

ただ、強い電波により、妨害や干渉の影響を減らすことは可能ですが、約1,700個も飛び交っていても、GPSより広い地域に対して電波を送信できない(減衰する)ことがあげられます。

さらにStarlink衛星の基数を増やすことで、どこまで対応できるかにあります。

 

位置を推定する時間

6つのStarlink衛星を追跡するのに13分ほどかかったといいます。

 

現在のGPS衛星は、地上に向けて12分30秒ごとに位置データを送信しており、ほぼほぼ同等のレベルに達しています。

 

航法メッセージは、全体で25フレームの構成により作られています。一つのフレームは、5個のサブフレームから構成されています。サブフレームは300ビットで構成されており、1ビットのデータ長は20msです。1サブフレームの周期は6秒で、フレーム全体(5 サブフレーム)で1500ビットになります。したがって、1個のフレームの周期は30秒になります。全体のデータ数は25フレームですので、周期は30秒×25=12.5分になります。GPS受信機は電源投入後の初期時に、これらの必要なすべてのデータを収集するのに12.5分を要します。GPS受信機は内部のバックアップ電池により過去に収集したデータを保持しており、電源起動後にそのデータを読み出すことで、すばやく測位モードに移行します。

GPSとは | 技術 | GPS/GNSSチップ&モジュール | フルノ製品情報

 

今後の展望

ちなみに開発者の1人であるカサス氏によると、最も重要なことは、Starlink衛星の電波はプライベートなもので、内部の情報が共有されていない状態にもかかわらず、この技術が使えるということだといいます。

 

今後は4つのStarlink衛星を観測することでリアルタイムでの位置の推定の実験に進むようです。

 

この実証実験がどこまで確立されるのか、ちょっと面白いかもしれません。

 

参考資料

衛星測位システム - Wikipedia

測位技術の基礎知識 さまざまな測位方式とその精度

https://www.magellan.jp/fundamental/104

SpaceX satellite signals used like GPS to pinpoint location on Earth

https://news.osu.edu/spacex-satellite-signals-used-like-gps-to-pinpoint-location-on-earth/

アップル、GPS企業Coherent Navigationを買収

https://japan.cnet.com/article/35064669/

SpaceX’s Starlink satellites could make US Army navigation hard to jam

https://www.technologyreview.com/2020/09/28/1008972/us-army-spacex-musk-starlink-satellites-gps-unjammable-navigation/

GPSとは

https://www.furuno.com/jp/gnss/technical/tec_what_gps

Researchers use Starlink satellites to pinpoint location, similar to GPS

https://arstechnica.com/information-technology/2021/09/researchers-use-starlink-satellites-to-pinpoint-location-similar-to-gps/

NORAD Two-Line Element Sets Current Data

https://celestrak.com/NORAD/elements/

火星の未知の環境でNASAが直面した着陸時の衝突回避方法 | Lessons Learned【機械設計者向け】

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宇宙開発は数年掛かりで開発します。

しかも、打上げロケットや打上げ軌道が決まっている場合は、スケジュールをずらすことが難しいのが現状です。

数年掛かりといえど、かなりタイトなスケジュールを強いることが多いんですね。

 

そのスケジュールの中で、機能を追加させることは難しいのですが、実際よくあります。

 

初期検討では検討に入らなかった詳細な部分が実はかなりクリティカルであることもあります。

 

今回は、機能を追加して、成功した(失敗の確率を低減させた)実例を紹介します。

  

概要

火星探査機であるマーズエクスプロレーション‐ローバー(MER:Mars Exploration Rover)の設計者は、火星の風がかなり不確実であったため、水平方向の動きを直接感知する機能を追加しました。

 

火星に着陸する際に、火星の凸凹した地形に接触するリスクを減らすためにこの機能が追加されたのですが、打上げわずか1.5年までに再設計されました。

 

不確実な環境のリスクを分析し、ワーストケースを考慮して、マージンを多く取って対処するように設計しました。

 

発生の対応・処置

火星探査ローバー(MER)の大気圏突入と大気圏降下、および火星への着陸は、地域の環境条件に関して限られた知識で検討されました。

 

MERの設計者は、火星の風速とその影響に対しての情報不足に直面しました。

 

1997年7月の火星探査計画での大気圏突入、大気圏降下、火星着陸の検討で使用された火星の風の検討に使用された推定値は、フロリダのケネディ宇宙センターで風と大気圧の高度情報の記録を利用しました。

 

この地球データは、最も一般的に利用されている包括的なデータセットでした。

 

7年後、、利用可能な最も包括的なデータセットでした。

 

以降の火星探査計画において、想定される風の状態に対する火星の地形に対するモデルの情報を受けました。

 

7年後、MER EDL計画は、さまざまな想定される火星の風の状態に対する既知の火星の地形の特徴の局所的な影響の新しいモデルの恩恵を受けました。

ただし、これらのモデルは、実際の火星の天気で検証されたことはありませんでした。


火星の大気圏の下層で風向や風速が変化して(ウインドシア)、火星が下降する着陸船が斜めになった場合、降下を遅らせるためにロケット補助降下を水平方向に推進して、着陸時に地形に接触する可能性がある懸念がありました。

 

地面の落下試験では、水平方向に推進しても、岩石の衝突に耐えうるエアバック効果(衝撃吸収)が小さいことが分かりました。

そこで、斜めに落下しないように、着陸船に3つの小型の推進装置をバックシェルに追加しました。

 

3つの推進装置は、バックシェルに搭載し、水平方向に大きくブレないように、任意のタイミングで噴射するように設計しました。

 

推進装置をを制御し、風による影響をキャンセルするために、打ち上げのわずか1.5年前に、落下画像から姿勢を推定するシステムの追加を決定しました。

このシステムは、着陸前の数秒間、着陸船の水平速度を確定するために連続した3枚の写真を撮っています。

 

ローバーに搭載されている穏やかな風を感知する機能は、MER着陸の成功に寄与したことまで証明することができませんでした。

MERのオプチュニティ着陸船は、着陸した火星の平野で強い風を受けなかったため、追加で設計したシステムを起動させることはできませんでした。

 

しかし、MERのスピリット着陸船は、強風を検知し、システムを起動させました。

実際のMERによるデータから、西向きに風が吹いており、着陸時に北側に噴出しており、打ち消しています。

着陸船と探査ローバーにそれぞれ追加された機能を連携しなければ、火星表面にあるクレーターの傾斜を横切るために、エアバックを破り、ミッションに致命的な影響を及ぼした可能性があります。

 

Lessons Learned

試験や分析で、ミッション達成に対して、致命的な環境条件であったり、機器の機能に対して不確実な場合、初期検討の結果を再検討し、追加の機能を検討し、再設計(システム開発のかなり遅い段階でも)を行い、ミッション達成に向けて動いた方がいい。

 

推奨事項

主要な環境条件に対して、未知な部分を含めて厳密に評価する。

致命的なリスクがある場合、機能追加を受入れ対応することを考えてください。

最終的に、ミッション時のリスクを大幅に低減させます。

 

最後に

人工衛星の機能というのは大きく変わりません。

 

そのためにユニット化、人工衛星開発の界隈では衛星バス化が行われます。

 

宇宙業界でも未知の環境が減っていっています。

 

一方で、惑星探査系の宇宙機はまだまだ未知の環境があります。

 

地球を周回する人工衛星開発から、月面や火星などに進出する場合、この未知の環境を分析していくことが必要となります。

 

どこまで環境を想像できるのかにかかっています。

 

 

ただ、これは探査機だけではありません。

 

新しく人工衛星を開発する組織でも十分に活用した方がいいと思います。

たとえ、スケジュールが厳しくとも、致命的なリスクが発生した場合は、柔軟に取り入れるマネジメントが必要です。

 

まあ、人工衛星の製造能力や資金力が高ければ、失敗をすぐに次号機に反映していくのですが、日本では難しいかな。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Procurement of Nonconforming Titanium Alloys

https://llis.nasa.gov/lesson/1712

宇宙市場に参入!宇宙製品を展開するための技術面からの初めの一歩【基礎から知りたい】

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宇宙業界で活用されていた技術を日常品(宇宙業界では民生品)に活用していくというのが大きな流れでした。

 

2010年代後半から、逆に民生品の技術を宇宙業界に取り入れるような流れになってきました。

 

問題は、宇宙品がとても厳しいという話が広がりすぎて、新規参入する組織が少ないということなのです。

 

今回は、宇宙機に使用する製品。いわゆる宇宙市場に参入するにあたり、どのように宇宙用の製品を製造したり、営業に掛ければいいのかまとめていきます。

 

まとめ

  • 宇宙機の構成から攻める分野を決めよう
  • 類似技術を利用するにはコンポーネントやパーツの分野で挑戦しよう
  • JAXAに相談してみよう
  • 今は革新的衛星実証プログラムという機会を利用しよう
  • 展示会に出てみよう
  • 直接、営業をかけてみよう
  • JAXA共通技術文書を読み込んでみよう

 

宇宙機システムの構成から確認してみましょう

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宇宙機、主に人工衛星や探査機の構成を簡単に述べていきますので、どこに参入していけばいいか、見つけてもらえればと思います。

 

宇宙機は主に次の構成になります。

  1. 宇宙機システム(完成品)
  2. サブシステム
  3. コンポーネント(モジュール、ユニット)
  4. パーツ
  5. マテリアル

 

この中で、宇宙機システムは、製品としての最終的なシステムインテグレーターとしての立場となります。

 

宇宙機で何をやりたいのかを実現するポジションとなるため、人工衛星をとりあえず製造したいではなかなか難しいポジションとなります。

 

2020年、2021年あたりで小型人工衛星を打上げたデブリ対策衛星を製造しているアストロスケールや人工流れ星サービスを実施しているALE(エール)といったベンチャー企業があるのですが、何をやりたいかありきで進んでいた気がしますね。

 

人工衛星を製造する技術を持っているから、人工衛星で何かできることを始めてみようというところは、おそらく東大ベンチャー企業アクセルスペースになるかと思います。

カメラの大手メーカーであるキヤノンの子会社であるキヤノン電子人工衛星ありきでできる分野に参入してきているように思えますね。

 

キヤノン電子は違いますが、大学時代に人工衛星を製造していた、いわゆる大学衛星を製造していた人たちは人工衛星ありきで考えているようですね。iQPS研究所もそうかな。

 

iQPS研究所と同じレーダー小型衛星を製造しているSynspectiveあたりは、企業色が強いので前者の何かやりたいこと、市場を見据えて参入しているように見えます。

 

ここ数年で話題のスペースXのスターリンク衛星などは、自社の保有技術が使用できるから参入してきたように思えますね。

宇宙業界ではないのですが、先に出ているキヤノン電子も自社の保有技術が使用できないかということで、似た流れに乗ってきています。

 

このように宇宙関連の技術がなくとも、参入してきている企業があります。

細かい所を上げれば、まだ数社はあるのですが、とりあえず最近話題のメーカーだけあげておきます。

 

 

また、日本では黎明期から脈々と製造している三菱電機NEC人工衛星のシステムメーカーとしては大手となります。

 

いわゆる大型衛星を製造しているメーカーですね。

大型衛星は、動く金額の桁が1~2桁ほど上がり、失敗した時の損失も大きいため、日本では正直新規参入が難しいところです。

 

そもそも大型衛星を製造してほしいという企業も国内では見つけることが難しく、政府の持つ気象衛星JAXAの実用衛星、深宇宙探査機という方面になります。

 

現存の企業が宇宙業界で最終製品である宇宙機を提供するには、キヤノン電子のようにトップを含めた勢いと、類似技術を持っている強みがなければ障壁が高くて難しいようですね。

 

サブシステムについてはどうでしょうか?

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宇宙機システムと密接につながるため、システムメーカーと同じ組織内で組むことが多いようです。

小型衛星や超小型衛星では、一人あるいは二人となるところも少なくありません。

 

さらに下位構成のコンポーネント自体が少ない場合は、サブシステム=コンポーネントとなり、別会社にお願いすることも難しくはありませんね。

 

その場合は、依頼される側が宇宙事業部とかスペース事業部、一品物開発専門チームであることが多いですね。

 

民生品より特殊な条件で試験や機能を積むことがあるので、特殊チームで組み、専門的に取り扱っていくというところが多いのでしょうね。

 

正直、新規参入を考えると、宇宙機システムよりハードルが高くなります。

 

コンポーネントとの調整と、宇宙機システム側との調整が必要になり、人数が少なければ自転車操業に近くなる可能性が高そうだとだけ言っておきます。

 

宇宙機システム側からとしては、コントロールが効くようにしたいために、自社内でサブシステムチームを構築していく方がよいので、参入が非常に難しいかと思います。

 

コンポーネントとパーツから入るのが近道

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もっとも参入しやすいのが、コンポーネントとパーツですね。

 

各企業がもつコア技術から派生して宇宙製品に取り組むことは十分に可能性です。

 

姿勢制御系サブシステムのくくりでは、慣性計測装置と呼ばれる加速度センサとジャイロセンサを内蔵した装置があります。この装置で、搭載された装置の姿勢や速度、方位や位置を計測することができます。

船舶や飛行機、ドローン、おそらくはミサイルなどに使用されています。

 

姿勢をコントロールするために使用される、フライホイールリアクションホイールなどに転用することが可能です。

この装置は自動車にも使用されています。

 

電磁石も姿勢制御系に必要になります。

人工衛星の場合は、周回する惑星の重力を利用して姿勢を制御したり、人工衛星内部に発生したベクトルを打ち消すために使用されます。

電磁石はモーター駆動に始まり、スピーカーなどさまざまなものに使用されます。

もちろん、人工衛星の姿勢を制御することになるため、それなりの磁力を発生させる必要があります。

 

モータ自体も、太陽電池のパネルを展開させるパドルやアンテナを駆動させるために使われます。

モータは、大気の有無で性能が変わるため、真空の宇宙空間では大抵性能が変わります。

 

通信系サブシステムのくくりでは、携帯電話などに使用されているパッチアンテナをはじめとした、アンテナの類が転用することができます。

無線通信機器も同様に宇宙機に必ず使用されます。

 

通信機は発熱により性能に影響を受けることから、宇宙に転用するには、熱的な観点が他の機器よりも重要になります。

 

そのほかには、データ処理系サブシステムでしょうか。

データ処理系は、いわゆる組み込み系といわれ、ミドルウェア、広義的な意味でOSが対象となります。

この制御技術も必要になってきます。

 

制御技術で、データ処理系の外に上げられるのは、先に上がった姿勢制御ともう一つは電力制御です。

 

電力制御あるいは電源制御とまとめられることがあります。

組織によっては電力分配機も電源系サブシステムか計装系サブシステムに含まれます。

設備設計がこのあたりの技術に関係してくるのではないでしょうか。

そもそもの電池あるいは電力制御技術で活用することができます。

 

電源系サブシステムは、電力消費の多いヒータの制御を行うことがあり、熱制御系と組み合わせて開発することがあります。

 

電力を保持する電池ももちろん転用可能です。

電池の民生品としての利用は結構古いです。

 

計装系サブシステムは、ボトルやハーネスが採用されることがあるため、あえて宇宙品とて区分けされることは少ないです。

その中でもハーネスは耐熱耐候性でさらには真空時に被覆からガスが生じにくい材料を必要とします。

クリーンルームで使用される装置のハーネスが転用されることも少なくありませんね。

 

コネクタも、ロスを減らすため抵抗値が低いコネクタを使用することになります。

コネクタの樹脂部分からのガスにも気を付ける必要があります。

各種部品の樹脂部分は、素材から発生するガスの存在が宇宙品の評価の中で厳しい項目になるかと思います。

 

ボルトは強度の問題からSUSが使用されることが多いようです。

チタンというイメージもあるかもしれませんが、チタンは高価であるため、現在ではSUSのボルトを使用することが多いです。

もちろんアルミ合金のボルトを使用する場合もありますが、強度の問題で使用場所は少ないですね。

 

続いて熱制御系サブシステムですが、前述したヒータの外に、ヒートパイプを使用することがあります。

宇宙でのヒートパイプに封入される材料の主流は水あるいはアンモニアですね。

 

代替フロンの研究も進んでいますが、多くは水とアンモニアですね。

凝固点がかなり低く、粘性が低く、沸点が高い材料が選択されます。

 

地球を周回する人工衛星はだいたい40分~50分ぐらいで昼夜が変わります。

昼夜で-100℃から+100℃近くに変化することから、流体で安定な部材を使用せざる負えないのです。

 

熱交換効率が高くても、極端な温度変化で安定しなければなりません。

最近の開発材料は、地上の気温か高めの温度で安定なものが選択されることが多く、急激な温度変化に耐えられることが制約条件になります。

 

あとはバッテリですね。リチウムイオン二次電池です。

 

はやぶさ(1号機)では、ほぼ初めてリチウムイオン電池が採用された事例でもあるようです。

 

一通り上げていますが、さらには推進系サブシステムで推薬弁もあります。

推薬弁自体は宇宙機で軌道制御用の機器ですが、弁機構についてはエンジン類で使用されています、

 

だいたい挙げられたでしょうかね。

 

パーツとコンポーネントを採用するにあたる基準

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宇宙用製品を売り出すにはどうすればいいでしょうか?

そんなことを考えている企業があるかもしれません。

 

宇宙用には、温度のサイクルが大きく、放射線に影響を考えなければならず、強い振動や重力加速度に耐えなければならなず、高信頼性と回答する人が多いのではないでしょうか。

 

この回答では具体的のように見えて、定量的ではありません。

まずは、定量的に回答してもらえる組織に聞いてみるのがとても早いです。

残念ながら、早々回答してくれる組織は少ないでしょうね。

 

最初に確認されるのは実証あるいは実績となり、二の句を告げられなくなることも多いのではないでしょうか。

 

正直、一番早いのはシステムメーカーから宇宙製品を開発してみないかと提案をしていただくことです。

 

宇宙開発に必要な情報や試験内容、仕様を知ることができます。

 

次はJAXAに直接問い合わせるですかね。

今であれば、民間企業からの参入に力を入れていますから、協力してくれる可能性があります。

最近であれば、革新的衛星技術実証プログラムが動いているため、実証するチャンスがとても高いです。

この革新的衛星技術実証プログラムですが、どこまで続くのか分かりませんので、今の時期はとても機会に溢れています。

 

革新的衛星技術実証プログラムは、JAXA側からの技術支援を受けることができ、最終的に成功するかは分かりませんが、宇宙機としては実用レベルまで引き上げてもらえます。

 

プログラムは、だいたい2年間で完成(試作品ではなく、完成品)させる計画ですので、宇宙機の計画としてはとても速いサイクルです。

 

大型衛星の場合、5年や7年、10年以上もかけていますので、慎重にノウハウを蓄積することができるのですが、担当が変わることも少なからず発生してしまいます。

 

この革新的衛星技術実証プログラムの場合は、短時間でノウハウを蓄積することが可能です。

もちろん、すべて大型衛星のような評価ができるわけではないので、JAXA支援側との調整が重い物にはなります。

 

革新的衛星技術実証プログラムに採用されなくとも、ときおり実施している宇宙×民間の協業のような場を設けていますので、そこを紹介される場合があります。

 

その次は展示会で公開することです。

 

宇宙開発系の展示会あるいは、JAXAが出展している展示会に足を運ぶというのも有りですね。

 

メーカー営業の経験がある人は実感があるかもしれませんが、案外、展示会のつながりで引き合いに繋がることは少なくありません。

 

その場で直接打合せや情報交換も行うため、必要な情報のポイントを知ることができます。

狭い業界ですのでアナログなつながりが強かったりします。

 

最後に売り込みですね。

マーケッティングして、情報を公開していくことです。

人工衛星を製造しているメーカーや大学に問い合わせて、買ってもらえないか、営業をかけることになります。

 

実は数年前に、経済産業省で小型衛星用のコンポーネントのWEBカタログのような物を公開しています。

 

Makesat

https://makesat.com/ja/products

しかし、あまり積極的ではないようなんですよね。

 

せめて、宇宙系の商社が管理していればいいのですが、「株式会社インフォステラ」が管理しているようで、これが現在、宇宙系の地上局関連ソフトウェアを提供している企業と同名で関連性があるのかよく分からないんですよね。

いまいち活かしきれていません。

 

実際のところ、各組織内の商流ネットワークや宇宙系商社、直接の売り込みによるところが多いように思えます。

 

まだまだ障壁があると感じる人向けの公開されている宇宙仕様

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売り込みや引き合いを経験して、まだまだ足りないといわれたり、門前払いされてしまいつつも、宇宙業界に参入したい場合はどうしましょうか。

 

宇宙機システム経験者を中途採用するのが早いです。

といっても、製造期間が長いため、すべての開発フェーズを経験した人は少ないかと思います。

 

初期設計(概念設計)で考えるべきことと、完成品で考えることは、一般製品・工業製品と同じく違います。

 

その取っ掛かりとなるのは、JAXA共通技術文書です。

宇宙航空研究開発機構~安全・信頼性推進部

 

このJAXA共通技術文書ですが、JAXAの人が思っているほど広まっていません。

 

宇宙機システムメーカーでは、このJAXA共通技術文書を読んでいることが多いのです。

 

しかし、宇宙機システムメーカーが開発品をサブシステムメーカーやコンポーネントメーカーに依頼する場合は、必要と判断した部分を抜粋して仕様書にまとめているため、全貌を知ることはないですし、知る必要はないとして「見る」こともほとんどありません。

 

正直、このJAXA共通技術文書を読み込み、製造まで落とし込めれば文句はないでしょう。ただ、小型衛星や大型衛星共通の部分があるので、過剰な要求なことがあります。

 

この時に、JAXAの支援や経験者により、バランスをとらないといけないのが難しい所ですね。

 

技術文書であるので、各人工衛星に適用される固有の情報のロケット環境(振動や電磁波)や軌道条件、運用条件が定まらないと具体化できないところもあります。

 

それでも、インターネットの情報を使えば補完することは十分に可能です。

 

 

本気で宇宙業界参入を進めるのでしたら、今回紹介した方法で色々進めてみることをお勧めします。

 

業界としては、狭い業界といわれるため、最近流行のSNSでのマーケティングよりも、実際に動いてぶつかっていく営業の方が、キーパーソンに繋がることは多いです。

 

長すぎて、あまりまとまりがなかったな

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する | Lessons Learned、失敗学、事故事例【組立作業者向け】

コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する

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スマホや携帯、PCの電源のコネクタは、取付け・取り外しがし易い形状をしています。

 

宇宙では逆にコネクタが外れないようにしなければなりません。

一番の理由はロケットで打ち上げた際の振動で、コネクタが緩みます。

 

軌道上でも、寒暖差が激しいため、コネクタが収縮して緩むことがあります。

 

宇宙機で姿勢や軌道を変更する際に、人工衛星内でいくらかの振動が発生して緩む可能性があります。

 

コネクタだけではなく、コネクタが付いているワイヤのテンションが強ければ、もっと緩い振動で外れてしまいます。

 

宇宙だけではありません。

 

日常製品でも同じことが言えます。

 

PCを使用しているのでしたら、映像用のコネクタが分かりやすいかと思います。

 

衛星用のコネクタが緩んでいれば、時折、ディスプレイの映像の色が出てこなかったり、映らなかったりします。

 

宇宙機に限らず、様々な電子機器で発生します。

 

今回はコネクタの話です。

 

概要

新しく製造された電子部品の電気的な受入検査を実行しているときに、不規則な大電流が計測されました。

 

その際に、ある技術者は、何か焦げたような匂いを感じていました。

 

他のトラブルシューティングのためにコネクタを取り外したときに、コネクタのワイヤが緩んでいることに気づきました。

 

コンタクタを保護するカバーを取り外した後に、ワイヤの緩みとナット/ボルト接続部が高温特有の変色があり、過熱が確認されました。

 

ワイヤーは、銅線部分を金属金具と共に固定されており、金属金具が抜けないようにボルトに溶接されていました。

 

ボルトで溶接されているため、ネット側から取り外すことも、締めることもできず、結局コネクタ本体を交換することになりました。

 

根本原因

コネクタの製造工程内で、ボルトナットを十分に締結しているか確認されていなかったことが原因でした。

 

しかも、ナットを回転させることまではできたのですが、緩みなく締めることができなくなっていました。

 

無理にナットがハマったことによるカジリが発生したのか、ナットあるいはボルト自体が不良品であったのか、ボルトと金属金具を固定した際に溶接材が付着したのか、いくつかの要因が考えられます。

 

Lessons Learned

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。


組立時に、すでに接続済みのコネクタを外す際には、細心の注意を払って、無理な負荷を掛けることなく外し、再接続が問題ないようにする必要があります。

 

推奨事項

宇宙機の最終組み立て時、コネクタのボルトを含むトルクを掛けた部品に対して、ナットやコネクタが接続されている筐体側にも「トルクマーク、あるいは合マーク」を適用すること、検討してください。

 

宇宙業界では合マークより、トルクマークの方が通じることが多いです。

トルクマークは、ペンの場合もあれば、色付きの接着剤を塗布する場合があります。

 

次に、「トルクマーク」の目視検査することで、最終的な組立ができているのか確認することができます。

 

もしボルトが緩んでいたり、なんらかの理由で取り外した場合は、接合部のトルクマークがずれていたり、塗布した接着剤に亀裂があれば、十分な締め付けができていないことに気づくことができます。

 

接続が緩いんでいる場合は、緩んだ接続部にタグをつけるなどして、作業をするマークをつけ、トルクマークを外します。

 

処置が終わり、接続部のトルク掛けが完了し、組立て終わったら、再度、「トルクマーク」を付けます。

 

高電力が流れるコネクタは、電子機器を最初にONし、電力を供給する前に、トルクマークを含む接続の確認することが必須です。

 

今回は、目視検査を実施していましたが、コネクタカバーに隠れた緩みまでは確認できなかった事象であることも注意が必要です。

 

終わりに

コネクタ接続による失敗は、すべてを破壊する可能性があります。

 

電子機器だけではなく、最悪、作業者にダメージを受ける可能性もあります。

 

最初の試験や慣れてきた最後の試験など、十分に気を付けていきましょう。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

High electrical resistance from loose connectors

https://llis.nasa.gov/lesson/1229