日本ではアメリカに比べてコストを抑えている方(特に宇宙探査)だが、宇宙開発には多くのコストがかかります。
現在でもそう考えられているのかわかりませんが、宇宙の研究開発に科学的経済的な価値があるのか多くの疑問を投げかけられた時がありました。
今回は宇宙業界で生まれて、現在一般に広まっている技術(スピンオフ)についてまとめました。
これは日本でも現在多くの宇宙関連が起業しているが、将来宇宙業界ではなく技術的に別の分野でも通用する新しい技術を手にする可能性があるとも言えます。
心臓の健康を監視する画像処理ソフトウェア
NASAのカルフォルニア州にあるジェット推進研究所の研究員によって、火星探査機オービターや無人宇宙探査機ボイジャーのミッションとして、撮影した画像を処理するためのソフトウェアを開発しました。
このソフトウェアは、1997年に設立したMedical Technologies International Inc.の医療機器に搭載されました。
医療機器では超音波技術を用いて、頸動脈の厚さを測定し、心臓発作や脳卒中を引き起こす前に動脈硬化を検出できるような機能を持つことができました。
2次元シンボル(QRコード)認証システム
現在はスマートフォンに標準装備されている2次元シンボル認証システムですが、NASAで開発された技術です。
NASAのマーシャル宇宙飛行センターにより、スペースシャトルの部品を識別し、情報を追跡させるため、従来のバーコード認識システムより正確に読み取れ識別でき、追跡するためのシステムとして開発されました。
スペースシャトルのシステムは数十万の部品で構成されており、品質保持のために製造履歴や使用実績のデータをすぐに確認できるように部品にマーキングする技術が必要でした。
しかもスペースシャトルが晒される環境のため、マイナス250度からプラス2000度を超える環境下でも識別できる必要がありました。
従来のバーコード認識システムでは、部品が小さい、特殊形状、高温環境などの理由によりバーコードラベルを保持することが困難な状況にありました。
現在、2次元シンボルと呼ばれているVeriCodeがカリフォルニア州にあるVeritec、Inc.で開発されバーコードよりも多くの情報を、小さい空間に収め、部品の表面に容易にマークすることが可能となりました。
バーコードと同じサイズで100倍の情報を収めることができるVeriCodeは、CCDカメラより容易に精度も高くスキャンでき、人的エラーを減らすことも可能としました。
デジタルマンモグラフィ
光を電荷に、そして信号に換えて転送する機能を持つCCD(Charge Coupled Devices 電荷結合素子)は、1969年に発明され、イメージセンサーとしてハッブル宇宙望遠鏡に搭載されました。
ハッブル宇宙望遠鏡に搭載するにあたり、超高感度のCCDの開発に努めました。
米国LORAD社(現Hologic社)は 、超高感度のCCDをさらに改良し、デジタル乳房撮影装置に採用しました。この装置はいくつかの角度から乳房の高度解像度X線デジタル画像を取得し、CCD信号を3次元画像に変換します。
変換するだけでなく、装置内で疑わしき場所を特定することができます。
従来、外科的な検出により確認していたことをより正確に、素早く、安価にすることができたのです。
また、ハッブル宇宙望遠鏡は打ち上げ直後の時点で、鏡が歪んでおり、分解能が劣化していました。そして、取得できるデジタル画像に対して、この鏡の歪みを補正するための画像処理と強調技術の開発することになりました。
この開発はハッブル宇宙望遠鏡のCCDに当たった宇宙放射線によりデジタル画像に残される小さな白点(ノイズ)を識別する方法を開発していました。
一方で、この検出する過程が、乳房X線検査で検出する腫瘍形成の初期に確認できるカルシウムなどの石灰化に非常に似ていることが分かりました。
さらに、米国のジョンズホプキンス医療機関、国立科学財団(NSF)、コダック社により、デジタル画像に対する宇宙放射線の検出および除去技術が、カルシウムなどの石灰化を今までより鮮明に識別できることに気づきました。
ハッブル宇宙望遠鏡の技術は天文学への貢献以外に医学分野でも広く使用されています。
mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com
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参考
Medical Technologies International, NASA Johnson Space Center Partner on Cardiovascular Testing for AstronautsMedical Technologies International, NASA Johnson Space Center Partner on Cardiovascular Testing for Astronauts
Electronic Fingerprinting for Industry
https://spinoff.nasa.gov/node/9846
ELECTRONIC FINGERPRINTING FOR INDUSTRY
https://er.jsc.nasa.gov/seh/pg108s95.html
Hubble X-rays aid health Technology: Space Telescope contributes to making breast exams easier.
https://www.baltimoresun.com/news/bs-xpm-1997-02-11-1997042113-story.html
"Cool" Laser Heart Surgery
https://www.nasa.gov/audience/foreducators/postsecondary/features/F_At_the_Hostipal_with_NASA.html
Combating Breast Cancer - Research & Diagnosing Technology
https://www.nasa.gov/vision/earth/technologies/combat_cancer.html