衛星画像で軍事分析をしている記事から想像できること
衛星データを活用した軍事分析は昔から実施されていた
人工衛星の衛星画像データが新たに産業で使用できないか、新しい利用方法を探している中で、古くから使用されているのが軍事分析となります。
この軍事分析ですが、なかなかWEB上にありません。
が、その中でアメリカのシンクタンクである戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies:CSIS)を見ると、その分析の一端が見えます。
戦略国際問題研究所の記事から想像できたこと
今回は何を見ているのか、下地となる知識がどれほどになるのか見ていきます。
Tracking China’s Third Aircraft Carrier
https://chinapower.csis.org/china-carrier-type-002/
タイトルは、中国が3つ目の空母艦の製造を追跡していることが書かれています。
中国が3つ目の空母艦を製造していることから思い浮かぶことは何でしょうか。
成長している中国であることを、3つ目の空母艦というのは意外
空母を"新しく"作れるだけの規模になってきた
という印象が浮かぶのではないでしょうか?
さらに、少し突っ込んでみて、空母という性質上、他国での危機感という面で見ると、別の情報が欲しくなります。
例えば、空母に対する大きさ(搭載する兵器)やいつ完成するのか、といったところです。
この情報から、同等の兵器を配備するべか、短期間で製造できる兵器を数を倍増させるべきか、などの手段を取ること。
どこまで直接か分かりませんが、同兵器を製造しているメーカーの生産計画に変動していくことも想像できます。
情報に関わる組織にとっては、将来を見通す情報になります。
本記事でもそれを見越したうえでの内容と分析がされています。
続いて、分析の下地になっている知識を洗い出してみます。
- 造船会社の土地の把握
- 大型の造船では船体のブロックが分割されて製造
- 空母艦レベルのサイズ
- 船体のブロックやサイズ
- 環境シェルターによって隠ぺいされることがある
- 環境シェルターを考慮した上での施設に勤める作業員が増えている可能性
- 環境シェルターから露出されるタイミングと開発工程
- 陰からある程度の高さサイズの見積り
- 既存の造船からの形状やサイズ
- 新型の技術上製造可能なサイズの想定
- 船体に搭載される兵器を想像できること
- 航空機の発射システムに必要な装備や長さを想像できること
- 造船所の近隣の土地の開発状況を確認し、移動の可能性があること
- 近隣施設内での、他の造船の施設使用状況
- 大型造船に必要な設備(タワークレーン含む)を把握していること
- 設備による造船サイズの想定
- 既存施設の改築の有無
- 既存施設の今までの最大サイズの船
- 船の浸水方法と可能な船体サイズ
その前に事前に製造されるであろう会社の目安を別のところから入手しておくことは必要です。もちろん、ダミー情報であることも含めてです。
これらの情報は記事から推測したもので、実際、0から調査しようとなると、労力のかかる作業になることは想像できます。
時期が違う複数画像による差分情報では、施設の改築・拡張、設備の増強、環境シェルターから露出した形状を分析することはできます。
これは機械化学習作業で時間の短縮化が見込まれます。
分割されて製造されている船体や船体の想定規模、開発スケジュールや搭載兵器までは機械化学習により可能性を上げられますが、結果を導くのはアナリストの力量が多いのではないでしょうか。
さらに前提情報として、広大な土地の中で施設のアタリを付ける作業もアナリストによることでしょう。
数GBや数TBに及ぶ高解像度の画像を差分解析にあげるとなると、高い処理能力を持つ演算機も必要になります。
演算機も効率的に運用するために、まだまだこのような分析にはアナリストのような人の手が必要ではないかと想像もつきます。
設備が整っていなければ、処理に時間が掛かったり、要不要の判断に時間が掛かるならば、機械でやるより人の手の方が早い。
人の手によって場所を特定して、機械学習により抽出して、人の手によって分析した方が早いか。
場所を限定しない全方位での機械学習により抽出して、人の手によって分析する方が早いか。
将来的な事業計画を考慮してどちらがコストパフォーマンスが良いのでしょうかね。
段階的には、人の手によって場所を特定し、機械化学習により抽出して、ある程度のデータが蓄積されたところで、大容量の画像データを処理することを目指しているのかな。
衛星データの分析を公表している組織
さて、CSISだけではなく、衛星を所有しているPlanet LabとMaxarもサイト内で分析結果を紹介しています。
こちらは軍事関連というより、最近のトピックを衛星データの側面から分析するいわゆる画像アナリストの視点で紹介しています。
分析情報の公開は、社会的な貢献として公表している、と明言しています。
情報の公表によりさらにニュースサイトにも紹介され、社名とサービスを世に広げることになり、マーケティングとしても成功しているともいえます。
現在、画像分析の世界はどうなっているかというと、あちらこちらに乱立している状況です。
わずか、30分にも満たない検索作業で、末尾にあるようなWEBサイトに簡単にたどり着くことが可能です。ぜひ、分析の参考にしていただければと思います。
さて、末尾のWEBサイトは、組織内HPで分析結果を公表しているところに絞りましたが、分析結果を公表していない組織の方が大多数を占めています。
調べるのが嫌になるほどたくさんあります。
いわゆる戦国時代に入ったのか分かりませんが、もう少し落ち着いてくれば、どっかの日本のニュースサイトに「最強の衛星画像分析会社」という謳い文句で、企業が出てくるかもしれません。
ちなみに、日本では災害情報という形で公開しています。
これは分析画像とはまた別かもしれませんが、衛星画像を販売している日本スペースイメージング社やPASCO社、宇宙技術開発社、国際航業社、日本地球観測衛星サービス社等にて、ニューストピックで継続して行われています。
もちろん社会貢献を理由としてです。
画像の公開すれど、日本ではあまり分析記事が公開されていないのは、海外に比べてアナリストが少ないからかもしれません。
衛星画像が出回る業界も限られているということもあるでしょう。
人工衛星を保持している企業も少ないという理由も挙げられるでしょう。
日本でニュース記事になるのは大概外国記事の焼き回しか、分析記事の後の再解釈の転記であることが多いです。
しかも再解釈は個人ブログやSNS、noteといった個人活動によってのみ公開されています。
衛星画像は機械化学習と相性がいいといわれます。
ただ、機械化学習により解析ができるかもしれませんが、解析データを有用な情報(使える情報)にかみ砕いて、落とし込む分析と、それに見合う実益が出せていないのかもしれません。
あるいは、アナリストとなるスペシャリストが企業内で育つ前に、事業として解散してしまっているのかもしれません、想像ですけど。
企業として、コスト高めの衛星画像がないと実力が活かせないアナリストとなると、コストパフォーマンスが悪く、活躍の場は限られてしまいますからね。
日本企業からするとちょっとリスキーと感じるのかもしれませんね。
そう考えると、日本ではフリーランスあるいは副業の衛星画像アナリストとか多そうですね。
日本では商業のアナリストは必要と欲した所に現れるのですかね、それとも探し方が悪いのですかね。
特定の探し方でしか見つけられないのであれば、逆に、画像分析業者の特徴(得意分野)を集めて、分析したサイトを作れば、少しは需要があるかもしれないですね。
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参考文献
[軍事分析]
Center for Strategic and International Studies
Center for Strategic and International Studies
https://www.csis.org/web-projects
ASIA MARITIME TRANSPARENCY INITIATIVE
ChinaPower Project
Beyond Parallel - Bringing transparency to Korean Unification.
https://beyondparallel.csis.org/
European Space Imaging
https://www.euspaceimaging.com/
[軍事目的以外、ベンチャー含む]
株式会社PASCO
https://www.pasco.co.jp/topics/
日本スペースイメージング株式会社
https://www.jsicorp.jp/news.html
宇宙技術開発株式会社
https://www.sed.co.jp/contents/news.html
株式会社衛星ネットワーク(SNET)
国際航業株式会社
https://www.kkc.co.jp/release/index.html
日本地球観測衛星サービス株式会社
SatCen - Military capabilities
https://www.satcen.europa.eu/page/military_capabilities
Satellite Imagery Intelligence for Defence Operations | AIRBUS
https://www.intelligence-airbusds.com/en/8309-satellite-imagery-intelligence-for-defence-operations
Maxar
Planet Lab
Lockheed Martin
https://www.lockheedmartin.com/en-us/index.html
Earth-i
https://earthi.space/industries/defence-security-and-intelligence/
TERRA SPATIUM
RAND Corporation Provides Objective Research Services and Public Policy Analysis | RAND
Geo4i - GEOINT - IMINT
http://geo4i.com/category/uncategorized
Earth Imaging Journal
National Centre for Earth Observation (NCEO)
https://www.nceo.ac.uk/news-events/
Latest News - Geospatial Intelligence Pty Ltd
https://geoint.com.au/category/latest-news/
Sourcewater
https://www.sourcewater.com/news/
SpaceNet
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【科学で検証】太平洋戦争中、日本の軍艦が次々と沈没していったワケ(播田 安弘) | 現代ビジネス | 講談社(3/5)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75812?page=3
NRSC | NRSC Web Site
ImageSat International
https://www.imagesatintl.com/home/data-analytics/kingfisher/
Declassified Military Satellite Imagery has Applications in a Wide Variety of Civilian Geospatial Studies
HIGH-RESOLUTION COMMERCIAL IMAGERY AND OPEN-SOURCE INFORMATION: IMPLICATIONS FOR ARMS CONTROL
https://fas.org/irp/offdocs/acda.htm
EOS Blog: Read Articles On Satellite-Derived Data And Its Use
Journalism from Sky
https://www.geospatialworld.net/blogs/journalism-from-sky/
IT’S SENTIENT Meet the classified artificial brain being developed by US intelligence programs
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