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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

インドの銀行での取り組み(農家事業性評価) 衛星データとの関わり方事例

農家の事業性評価ができる衛星データ

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人工衛星が農業で使用されている例を紹介します。

 

インドの銀行では、農家に資金を貸し出す際に、農家の所有する土地を審査し、収入を予測し貸し出しているようです。

 

土地の審査は銀行で実施しているようで、土地の審査を人工衛星で取得したデータを分析して、評価し、審査しようというのが今回の取り組みのようです。

 

インドで4番目に大きな銀行のICIC Bankが採用したものです。

衛星データを使用した銀行は、インドでは初めてで、世界的にも数少ない事例です。

 

農家にどれだけお金を貸し出せるかを信用評価(power credit assessment of farmers)といっています。

日本語でよい言葉が見つからなかったので、農家の事業性評価としています。

 

農業はインド経済の約15%程度を占めており、インドの銀行では通常、融資を行う際に農地の収入予測を行います。

灌漑システムや作物の品質、土壌評価するため、銀行職員が各地に移動して評価を下します。

 

通常の融資の審査では最大15日間の審査期間が必要になるところを、数日以内に短縮できるとのことです。

 

特にコロナウィルスによって移動制限がある昨今では、銀行職員が該当の土地に訪問することなく、遠隔地から土地に関するデータを取得し、技術的に分析することができる利点があります。

 

銀行職員の旅費や調査費を減らしつつ、技術的な分析データを銀行内部に蓄積できます。

 

日本の農業ではどんな場合に使えるのか?

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日本では銀行が農家に融資を行う場合は、インドの銀行のように銀行が個別で評価することは少ないです。農業の専門家はいないでしょうから。

 

そこで、認定農業者あるいは認定新規就農者であることが求められることが多いです。

 

認定農業者制度は、農業者が農業経営基盤強化促進基本構想に示された農業経営の目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画を市町村等(複数市町村で農業を営む農業者が経営改善計画の認定を申請する場合は、営農区域に応じて都道府県又は国が認定)が認定し、これらの認定を受けた農業者に対して重点的に支援措置を講じようとするものです。

認定農業者制度について:農林水産省

 

認定農業者あるいは認定新規就農者は各市町村で受け付けていることから、市町村の職員か委託業者が実施していることでしょう。

 

この際に実施する評価作業に使用することが可能になります。

 

このように、日本において、インドの銀行と同じように日本の銀行では同じ方法で活用することは難しいですが、地方自治体での認定農業者の認定作業を短縮あるいは技術的で客観的な評価をすることができるかもしれません。

 

 

新規参入する際に、使用する土地の評価が可能となり、土地のせいで失敗することは少なくなるかもしれません。

 

なんだかんだで、農業は難しい所があるので、新規参入に対しては何とも言い難い所はあります。

 

まあ、新規参入は融資というより投資側になるかもしれませんけれどね。

 

ただし、新規サンユウではなく、長い間、農業を続けていた農家であるならば、大災害で被害にあったときに、このようなデータがあれば、短期間の融資に対しては優位に働くかもしれませんね。

 

問題は、融資や投資、認定をする側が衛星データに関する知見を持っていることが、より速やかな仕組みづくりになると思いますけどね。

  

ちなみにインドの一部の州ではMaha Agri Techプロジェクトという名で、州による衛星データを使用した作物栽培が2019年から始まっています。

 

農業評価に使われる衛星データ

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さて、インドの銀行(ICIC Bank)が取得する予定の農業に関する技術データはどんなものがあるのでしょうか

 

ICIC Bankは、宇宙技術と気象情報を商用利用することを専門とする企業と提携しているようです。

 

作成レポートとしては、土地、灌漑、作物のパターンなど、40を超えるパラメーターをまとめたレポートのようです。

 

さらに、地区レベル、村レベル、および個々の土地でまとめあげ、過去及び将来の農業収入、収穫のタイミング、収入源の見積もりを提供し、評価モデルに取り組んでいます。

 

主要な衛星データのいくつかは次のとおりです。

  • 過去数年間の降雨量と気温のデータ
  • 過去数年間の土壌水分レベル
  • 地表水の利用可能性
  • 作物名、暫定的な種まきや収穫の周期、作物の健康状態と収量を含む作物種子の傾向
  • 緯度、経度、土地の境界など、農地の場所の詳細
  • 倉庫の場所

 

ICIC Bankでは、すでに500以上の村で採用され、国内63000以上の村をカバーする予定だそうです。

 

 


 

参考情報

ICICI Bank | ICICI Bank introduces use of satellite data to power credit assessment of farmers

https://www.icicibank.com/aboutus/article.page?identifier=news-icici-bank-introduces-use-of-satellite-data-to-power-credit-assessment-of-farmers-20202508150716236

India's ICICI Bank uses space images for farm loans to cut costs

https://www.reuters.com/article/us-icici-bank-satellite-images-idUSKBN25L17B

認定農業者制度について

https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_seido/seido_ninaite.html

農業で融資を受ける!審査の3ステップから主な融資7選と有利な条件

https://no-chi.com/agricultural-finacing/

JAの農業融資

https://www.jabank.org/loan/nougyo/

地銀等の農業融資への取組みとその特徴

https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0906re1.pdf

Maharashtra, India to Use AI and Satellite Imagery to Improve Farm Yields – OpenGov

https://opengovasia.com/maharashtra-india-to-use-ai-and-satellite-imagery-to-improve-farm-yields/