往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

1961年、気象・水象災害の特異性及び災害対策を人工衛星に託した夢-国立国会図書館で調べる人工衛星ー【人工衛星と文学】

無料で利用できる国立国会図書館デジタルコレクション

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国立国会図書館デジタルコレクションを知っているでしょうか?

 

日本の最大図書館がインターネット上で閲覧できるのです。

 

今回は「人工衛星」と検索して、インターネット上から無料で閲覧可能な現状最古の情報を調べてみたいと思います。

 

dl.ndl.go.jp

 

気象観測の困難さから日本は人工衛星による観測を強く希望していた 

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人工衛星と名がつくものは、人工衛星が打ち上がる前から言葉としてありました。

無料で見られるものは前回の岡山畜産便りでしたが、もう少し研究開発依りの古い情報を探してみました。

 

早速抜粋に行きます 

5.人工衛星に託した夢
 地球をとりまく広い海洋や山岳、砂漠などの無人地帯をくまなく観測網でおおうことは実際問題として非常に困難であり、これを補い方法がいろいろ考えられてきた。一つは大戦中に日本が採用した風船爆弾と同じ方式の渡洋気球を毎日数個とばして、その位置と気象観測試料を求めてゆくものであり、大気の大きな流れの研究とか、中緯度の天気予報には役立とうが、台風予報には直接の効果が少ない。つぎのハリケーン・ビーコンと呼ばれるもので、飛行機を台風眼の中まで持っていって容器を落とすとすぐその箱が開いてプラスチックの袋が現われ、ガスが充てんされて直径7mぐらいの気球になる。台風眼内の一定高度に浮遊するように調整されているこの気球の送信機から電波をとらえて、その位置を追跡してゆくものであるが、これも長距離偵察機をもたないと実行することができないし、台風眼の直径が100kmとか150kmというように大きく、しかも複雑な構造をしている場合には問題がある。
 人工衛星を使う最初の試みは1959年の春に軌道に乗せられたバンガード2号であり、人工衛星に1分間50回転ぐらいの自転を与えることによって宇宙の一定方向をたえず向くようにさせて置き、2つの光電管をつかって赤外線の変化を測定することにより雲の分布を知ろうとした。またテレビカメラを乗せて雲の分布を観測しようとする試みは、1960年4月1日に打上げられたタイロス1号によって成功した。この方法によって、台風の雲の検出もしやすく、地球上のどの部分に発生した台風やサイクロン・ハリケーンをたちどころにつかまえられよう。 

北陸沿岸海域における気象・水象災害の特異性及び災害対策の現状と問題点について、昭和36年(1961年)

北陸沿岸海域における気象・水象災害の特異性及び災害対策の現状と問題点について - 国立国会図書館デジタルコレクション

 

文献から16年以上かかった気象衛星

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1957年にソ連にて初の人工衛星が打上げられて数年。

 

上記、文献にあるように、気象観測にすでに飛行機が使用されていました。

しかし、飛行機の利用は限られており、常時、気象を観測するのは難しかったようで、軌道上から観測される気象データを期待していることがうかがえます。

 

飛行機あるいは気球を使用した気象観測という土台があったことから、人工衛星による気象観測は広く受け入れられたのかもしれません。

 

この後に、いくつかの人工衛星による気象観測データのが発表されていますが、日本独自の人工衛星のデータというより、海外の人工衛星のデータを使用した分析結果が多くを占めています。

 

日本では科学衛星として、電離層観測やプラズマ観測、熱圏観測、磁気圏観測といった人工衛星が初期に飛ばされています。

いわゆる気象観測衛星としては、静止気象衛星ひまわりが打上げられた1977年7月が最初になります。

当時は、科学技術試験衛星などとも称されることがあったようです。

 

その後、1度の失敗を挟んでいますが、2016年にひまわり9号が打上げられ、39年間も続いています。

 

気象観測と災害の重要性

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近年は、自由に使用できる人工衛星のデータから、様々な観測データの分析がされています。

 

2014年から外部に公開している日本の防災研の防災科研クライシスレスポンスサイト(NIED-CRS)が(個人的に)有名です。

 

日本では、人工衛星の観測データの公開が、2014年~2015年頃から始まりました。

 

海外では人工衛星の画像と分析レポートを公開することは多く、人工衛星の観測システムを持つ組織は、情報を積極的に公開し、健全に使用できることをアピールするとともに、分析能力を有している広告として展開しています。

 

頻度が減っていますが、日本でも災害が発生した時に、人工衛星の画像を取り扱う企業で情報を公開しています。

 

ちょうど、その傾向が大きくなった2015年に、日本の政府直轄の情報分析組織の人工衛星画像とグーグルアースを比べていたりしました。

 

当時の日本は、解像度の高さ、低さで比較していました。

 

実際の画像分析は、画像が粗かろうと細やかであろうと、情報の分析でどれだけ有用なデータを取り出せるかという分析の能力が必要になってきます。

 

ここ数年になってやっと、災害対策に対しての人工衛星活用が研究者だけではなく一般のユーザーにも広まってきています。

 

参考文献

日本の静止気象衛星のあゆみ

https://www.jma-net.go.jp/sat/himawari/enkaku.html

株式会社パスコ: 空間情報(GIS/航空測量)の総合企業

https://www.pasco.co.jp/

内閣、鬼怒川水害の情況を撮影した衛星取得画像を公開→Googleがより高解像度の画像を公開 これは「日本対Google」なのか

https://togetter.com/li/873953

防災科研クライシスレスポンスサイト(NIED-CRS):防災科学技術研究所

http://crs.bosai.go.jp/