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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【構造解析】構造シミュレーションでつまずくポイント

人工衛星の話があまりなかったんだけど。

構造解析用のソフトウェアについて

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Credits: NASA

いくつか解析ソフトを使用してきましたが、最近は、3DCADソフトの追加オプションでもシミュレーションができるような有償ソフトも増えてきました。

 

プロフェッショナルとか、そんな感じのライセンスだと大抵解析ソフトがついてきます。

 

解析ソフトを使用してきた身からすると、汎用性が少ないです。

多くは単純な自動メッシュの手法で計算をしていきます。

 

3DCADソフトの注意点としては、境界条件の設定が複雑だという点です。

 

 

人工衛星レベルの解析を行う場合、搭載する機器も多数存在します。

たとえば、境界条件を面で設定してしまうと、ボルト本数による負荷が分散され、弱い力が働いているかのような結果が出ることもあります。

 

質量や機器配置、ケーブル配線にシビアな人工衛星の場合、結構致命的な要素になります。

 

致命的というのは、実際に地上試験をして壊れてしまう可能性があるということです。

 

まあ、この辺りは組織の中に先人が居れば十分に伝わっていくものなのですが、突然人工衛星を製造することになったときに気づかないまま進んでしまうことがあります。

 

少し前までは自動メッシュの精度の悪さに泣かされてきましたが、近年では自動メッシュも十分な精度があります。

 

3DCADで解析ができなかったときは、組織によるかもしれませんが、解析ソフトにより、手動メッシュと自動メッシュを組み合わせつつ、境界条件を設定し、解析を続けたものです。

 

自動メッシュの精度が上がったことにより、解析への壁がなくなってきていますが、逆に境界条件の設定がシビアになってきております。

 

3DCADソフトで注意するべきは、自動メッシュによる解析の粗さというより、境界条件の設定にあります。

 

解析ソフトの場合、境界条件が設定できていないと、明らかに不自然な挙動を取ります。

3DCADソフトの場合、自分の場合かもしれませんが、解析は上手く回ります。

ただ、解析結果が少し負荷軽めに出ていることが良くありました。

 

理由はやっぱり境界条件が、多めに取られている。固定条件が多くて、負荷が分散してしまっていることが多いのです。

 

3DCADソフトの解析の苦労

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3DCADソフトで解析する場合は、楽と思われているかもしれませんが、個人的には結構苦手です。

 

3DCADの場合、ボルトやワッシャ、ケーブルなどの細かい部品も模擬しているのですが、構造解析の場合はほとんど不要です。

 

電子部品や機器の配置確認をするためだったり、治具の設置確認や設計確認にも使用するために、ファイルが重くなります。

 

そのファイルが重い所に、境界条件というさらに設定が重くなることを行い、解析結果を出力するために、さらに重くなります。

 

3DCAD用のスペックの端末で作業していても、重くなります。

 

重さとの戦いでした。

 

当時は解析ソフトのライセンスが少なく、持ち回りが多かったため、手を変え品を変えということで、手計算や3DCADによる解析をしていました。

 

正直、簡易検討レベル以上にはなりませんでしたね。

少なくとも、端末のスペックが高ければ、どうにかなったかもしれません。

 

今後、3DCADソフトで様々な計算ができるかと思いますが、十分なスペックの端末を利用することをお勧めします。

 

最初の落とし穴、物性値入力

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構造解析をはじめてした時に、よく間違えるのが物性値の入力です。

 

物性値の入力というか、単位換算になります。

 

センチをミリに直すといった、単純な作業の繰り返しですが、各物体の物性値は、まとまっていればよいのですが、各地に散らばっていることが良くあります。

各地といってもwebサイトの各地という意味ですが。

 

やはり物性値を入れるときに、一番早いのは、各ソフトウェアに標準で入っているマテリアルシートか、提供されているマテリアルシートが一番使いやすいかと思います。

 

ただ、ソフトウェアに入っているマテリアルシートにない物質を使用するときには気を付けなければいけません。

 

例えば、構造解析で使用しない物性値もマテリアルシートの中には入っているため、どの値が解析に使用されるのか把握しておかなければ、無駄に数値を集めていたりと、悪戦苦闘することでしょう。

 

と、何か脅しているような感じになってしまいますね。

 

設定が多くなると難しいのですが、例えば、梁のモデルを作成し、解析して、手計算と解析結果のオーダーがずれているか確認することで、数値の正当性を確認するという手段もあります。

 

事前に手計算を実施していれば、その値と解析結果を比べるという手法も有効です。

 

手入力で設定した値は、ヒューマンエラーに十分気を付けてかなければなりません。

 

先代や先々代から使っていた自作のマテリアルシートや設定値がある場合でも気を付ける必要があります。

 

 

 

最終的には、解析にうまく乗らせるのが難しい、板の薄い凸凹や、傷、内在している応力など取り切れないところが無数に残っています。

 

本当に解析上厳しい設計の場合、新規に実験で検証しないと、審査員に納得してもらえなかったりと、なかなか苦労することにもなります。

 

解析では世の中納得してくれない人もいるということも、頭に入れて、結果をまとめることをお勧めします。