各種環境試験(振動試験、熱試験用真空チャンバー、電波試験、電磁適合性試験)の保守
試験装置の保守メンテナンスは、装置そのものを長期間使用させることと同時に、新たに設備投資をすることなく、一定の成果を出すためにコスト面でも非常に重要な要素となります。
近年、日本各地で人工衛星開発をする企業が出ています。
人工衛星及び人工衛星に搭載される機器の開発には環境試験が付いて回り、衛星機器関連メーカーと試験機は切り離せない存在となっています。
一部の試験装置は、地方自治体の管理する試験装置を使用することで、各機器の評価を行っていますが、各組織で試験装置を保持することも多くなっています。
今回、近年の小型衛星での使用はもちろん、大型衛星でもコンポーネントで使用される小型振動試験設備を運用保守してきた宇宙航空研究開発機構(JAXA)から、保守管理に関するレポートを軽くまとめていきたいと思います。
振動試験機のクリティカルな部分
振動試験機は、いくらか小型化していますが、次の要素で構成されています。
- 振動発生器
- 水平振動台・垂直振動台
- 電力増幅器
- 冷却装置
- クーリングタワー
- 制御装置
- データ計測。解析装置
- 計算機
この中から特に故障および修理・保全コストが掛かるものを上げました。
振動発生器:分解点検
- ベアリング
- アマチャ/テーブル
- 励磁コイル
- 消磁コイル
水平振動台:機能点検・試験前点検
- ベアリング
- ブルノーズ
垂直振動台:機能点検・試験前点検
- ベアリング
- 空気発条
冷却装置:機能点検
- ヒートエクスチェンジャー水漏れ
- 空冷用ブロワ
冷却塔:隔週日常点検
- 密封型水冷棟
冷却塔:機能点検
- 冷却水ポンプ
分解点検は、通常の作業メンバーでは対応不能ですが、日常点検や試験点検で発見できることも多いです。
故障が発生すると、試験が止まり、大抵、連続稼働しているときに故障が発生します。
多くはベアリングやポンプといった駆動部分が故障することからも、日常点検から劣化を確認しておく必要があります。
施設の装置の場合、ベテランの操作メンバーが対応することが多いです。
ベテランの操作メンバーの場合は、新品で故障が発生していない正常な状態を知っていることから、異常な挙動に気づきやすいです。
こういった保守メンテナンスで重要なのは、何が正常で、何が異常であるか気づくことです。
作業点検リストに、「異常がないこと」といったあやふやなチェックリストを作成していないでしょうか。
定量的な数値を示せない場合は、写真などを使用してチャックすると効果的です。
新たに入ったメンバーが対応しても、異常な状態を判断する基準を作っておく必要があります。
故障した時に、「なぜ異常に気付かなかったのか」と問ても満足な答えは返ってきません。
常時異常な値であっても、ギリギリ動いていたなんていうことはよくあります。
もちろん、上記に上げられるように、分解点検しないと気づかないポイントもあります。
案外こういった試験は、連続して実施することが多く、十分な検査・点検の時間が取れないこともあります。
現在、新たに振動試験装置などの環境試験装置の導入している組織では、年間の試験回数を想定し、点検間隔などを考慮しましょう。
まとめ
これらの情報は、試験機器製造メーカーに対して、設置時や初期動作確認時などに、事前に故障した場合に聞いておくポイントリストとしても使用できます。
もちろん、製造メーカーが保全・メンテナンスをしなければ十分に修正できたのか判断できないこともあるので注意が必要となります。
逆にメーカー保証として事前に聞いておくには有用な情報となるのではないでしょうか。
Ⅰ(破局) 供試体の破損もしくは深刻なスケジュールインパクト(復旧まで 6 日以上)
Ⅱ(重大) 重大なスケジュールインパクト(復旧まで 2 日以上 5 日以内)
Ⅲ(局所的) 軽微なスケジュールインパクト(1 日以内に復旧可能)
Ⅳ(無視可能) 機能制限等により試験続行可能
参考資料
宇宙機環境試験設備の保全有効性評価による費用対効果最大化に向けた取り組み