宇宙機から地上の風を観測できるって知っていますか?
実は宇宙機に搭載した観測機器で測定できます。
といっても地上での観測機器と同一のものが搭載されています。
宇宙/軌道上から観測できる利点は何があるのでしょうかね。
人工衛星の有用な点は、国境を越えることと海上の観測もできるということでしょうか。
人工衛星のデータは、インフラとしても役立っており、国境を越える船舶や航空機への航行に使われています。
気象の解析にも使用され、台風の解析にも使用されています。
このように天気予報を改善するだけでなく、海洋の物理学などの学術的な研究にも生かされています。
最近では、海洋で利用される可能性のある風力エネルギーの推定などにも使用される可能性があります。
海上の風速測定:マイクロ波散乱計
マイクロ波散乱計で、風速・風向を算出している。
地上観測装置でも衛星観測装置でも変わらず、センサーから照射したマイクロ波が、海面に受けた時に後方散乱され、観測装置で受信した時の強度から風速・風向を算出しています。
海上を吹く風が弱いと水面に波があまりたたず、観測装置側にほとんど返ってこない。
逆に風が強いとき、水面に風浪が数多くできるため、マイクロ波が散乱され、観測装置まで返ってくることを利用しています。
発射するマイクロ波の入射角が20°以上の場合で、良好な解像度を得ることができる。
観測誤差を考慮し、入射角の異なる3~4つの観測値を取得することで、風速と風向の2つを算出しています。
算出手法から海面上のすぐ真上にある風というより、海面上に働く風で発生する数cmの波を観測していると考えられ、おおよそ海上10m程度の風速・風向を示しているようです。
誤差は0.2m-1以上で観測することができ、沿岸地域ではより大きい誤差が発生する。
また、強い降水域では雨粒によって生じるノイズのためデータの精度が落ちてしまう。
空間分解能25kmで、風速の精度1ms-1、風向の精度20°程度で観測可能であることが分かっている。
波浪や台風などの状況監視や、エルニーニョなどの監視にも利用されている。
大気追跡風による観測
大気追跡風は、1978年から使用されており、解析の蓄積が多く、安定した運用が実現されている。
大気追跡風とは、時間的に連続する3枚の画像をもとに、雲及び水蒸気の分布(赤外放射データ)を追跡して算出されたものである。
解析には、高度の指定や台風などのターゲットの追跡、位置情報の確定、ノイズの除去や品質評価を行っている。
空間分解能の向上とと撮像時間間隔を短くすること分析可能な地域をさらに絞ることができる。
ただし、高度推定の精度が悪いことが分かっている。
Cバンド帯によるドップラーライダーによる観測(計画)
Cバンド帯によるレーザー光を大気中に照射すると、エアロゾル(Aerosol)と呼ばれる大気中に浮遊する塵に衝突した際に、衝突しドップラー効果で周波数が変化する。
周波数の変化を観測することで、反射した時間からエアロゾルあるいは雨粒や雪片の距離を測定しつつ、エアロゾルあるいは雨粒や雪片がどの程度の速さであるかを求めることができる。
エアロゾルなどの粒子の動きは、大気の動きすなわち風により動いていることから、風の流れ(ドップラー速度)を関することができる。
ドップラーライダーの宇宙コンポーネントは、日本の組織であるNICTによって計画されている。一時期国際宇宙ステーションでNASAと協力する方向で進んでいたが、結局のところ採択されていないのが現状である。
気象庁が実施している風観測
地上の気象観測は、全国の有人の観測所や無人化した特別地域観測所、及び地域気象観測システムで実施されている。
建物の屋上に設置した風向風速計を設置して、風を観測しており、全国の空港でも空港気象観測の一つとして風を観測している。
風向風速計からは10分程度の平均値をもって、平均風速として報告されている。
最大瞬間風速については、複数個のデータを3秒間分取得し、算出している。
Cバンド帯をもつ気象レーダーの電波を用いて、降雨(雨や雪)の分布や強度以外にも、降水粒子の移動に伴うドップラー効果を利用して風を算出している。
複数台のドップラーレーダーから同一領域を観測することで、風のベクトルを求めている。
気象庁の観測に限らず、漁港や空港などでは、船やブイ、別途設備されたアンテナ、風速計などから風を観測していた。
1980年代、1990年代ではなくすでに100年以上の歴史がある。
地上から観測していたものが、海上、上空、宇宙(軌道上)にまで広がっているが、現在でも詳細に観測・解析・分析できていないのが実情である。
低軌道の高頻度の観測により精度が向上されていく気配があるのだが、最近はやりのコンステレーションによる通信衛星や光学衛星より目立っていない。
国境を越えた移動という意味では、船舶や航空機を所有・管理する企業、国家に対して重要なデータであるのだが、販売する相手が限られており、十分な利益が見込めないのか、企業側が現状で満足しているのかどちらかであろう。
静止衛星によるサービスがメインであり、低軌道衛星によるサービスを提供するメリットがあるか分析の必要はある。
日本のリアルタイム海上風
世界版リアルタイム風向きマップ
http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/gpv/wind/
日本海マリーナの波シミュレーター
https://www.umitenki.jp/tenki/2792/wave
YAHOO全国風予測
https://weather.yahoo.co.jp/weather/wind/?m=ground
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参考文献
衛星搭載マイクロ波散乱計による海上風ベクトルの観測 2002年
http://www.metsoc-hokkaido.jp/saihyo/pdf/saihyo48/saihyo48-002.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jawe/34/3/34_3_337/_pdf
Rutherford 散乱断面積
http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/People/Itoh/3.pdf
航空機搭載用マイクロ波雨域散乱計/放射計システムの開発と実験
http://www.nict.go.jp/publication/kiho/32/163/Kiho_Vol32_No163_pp127-138.pdf
衛星による海上風のリモートセンシングSEASAT-A・散乱計システムの技術とその基礎
https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1980/1980_02_0087.pdf
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1998/00821/contents/013.htm
第4章 メソ解析の改善
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1998/00821/contents/013.htm
レーザーレーダー 地球環境のリモートセンシング
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/31-03-kougi.pdf
気象庁の風観測
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jawe/34/3/34_3_322/_pdf/-char/ja
大気追跡風算出アルゴリズム 目次
https://www.data.jma.go.jp/mscweb/technotes/msctechrep58-1.pdf
大気追跡風
https://weather-models.info/latest/satellite-wind.html
宇宙からの風
https://www2.nict.go.jp/res/lidar/p7.html
空港気象ドップラーライダーによる観測
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/24_lidar/24_lidar.html
空港気象ドップラーレーダーによる観測
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/23_draw/23_draw.html#doppler
衛星搭載ドップラーライダー実現を目指して
https://laser-sensing.jp/29thLSS/29th_papers/A-3.pdf
海風はどのように測定されますか?
https://podaac.jpl.nasa.gov/OceanWinds