往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

コンステレーション衛星の考え方の一つ【宇宙機と宇宙機群】

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衛星コンステレーションを聞いたことがあるでしょうか。

 

特定の目的あるいはミッションを達成するために、複数機の人工衛星群を示しています。

 

個々の人工衛星は、軌道上でそれぞれ運用されるのですが、特定の目的あるいはミッションにおいて、協調したシステムを構成するものを指しています。

 

強調したシステムと称していますが、複数機の人工衛星がそれぞれの機能を補うシステムと考えてもらえると理解がしやすいかもしれません。

 

例としては、ある瞬間の人工衛星画像を取得したい場合、1機の人工衛星では限定的な領域しか撮影できませんが、複数機使用することでより広域の領域を取得することができます。

撮影地点と地球を挟んで対向している地点を撮影することができます。

ただし、光学衛星の場合、地球の反対側は夜なのでうまく映らないかもしれません。

 

観測だけではなく、通信の世界でも考えられています。

 

2019年、現在で話が上がるコンステレーション用衛星は、商業を考慮するならば最初に可能な限りの機能を確認する検査試験を実施した方が有利な気がします。

 

人工衛星は実績を重視しすぎる世界ですので、トライ&エラーの確認タイミングである検査試験を早めに行い、不具合や改善点を早めに出し、後続の人工衛星で反映させていきます。

 

早く不具合を確認できた方が、後続への影響は少なくて済みます。

 

例えば、太陽の活動時期が活発で太陽フレアによる宇宙線によって機器が動かなくなったとき、後続機では故障した機器を変更するか、宇宙線に強い部品を適用して搭載するなどの対策が早くできます。

 

コンステレーションは複数回に分けて人工衛星を打上げるために、理想となる環境(例えば、一日に何百回も同じ地点が取れる環境)が整うのに時間がかかります。

 

その分のリスクをどう考えるかによります。

ただ、待ちの時間まで企業が経営的に耐えられるかの体力も必要にもなります。

 

fanfun.jaxa.jp

 

最近、コンステレーションで盛り上がっているStarlink衛星がありますが、打上げ数が多すぎることから天体観測への懸念が上がり続けています。

 

Starlink衛星に限らず、過去から天体観測の人から多すぎる人工衛星への報告がありました。

ただ、Starlink衛星が世界的にも有名になったために、ここぞとばかり言い始めたということだといえます。

 

もしかすると、多くの天体観測の人は増える人工衛星に対してもう諦めているのかもしれません。

主張し続けていることで、いくつかの牽制にはなりますが、数と資金面で、現時点で天体観測という分野はあまり強くはありません。

 

人工衛星の増加により天体観測の分野は否応にも宇宙機をより強く意識しなければならなくなりました。

 

天体観測の一つに流星群の観測も、人工衛星で人工的流れ星に模擬できることから、自然に発生する流星群の希少性もでてくるでしょう。

 

地上からの人工衛星観測技術もより高まっていくかもしれません。

www.amro-net.jp

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、後半では今までのコンステレーション衛星についてまとめていきます。

 

衛星コンステレーションといわれて、最初に思い出したのが、双子衛星の存在です。

ドイツ航空宇宙センターであるDLRが関わってきている衛星で、TerraSAR-XとTanDEM-Xというものです。

 

それぞれ2007年と2010年に打ち上げられ、ある一定の距離感を保ちながら異なる角度で画像を取得することで立体的な地形図データを取得できるというものでした。

画像はXバンドの合成開口レーダーでいわゆるSAR衛星でした。

jp.techcrunch.com

www.restec.or.jp

 

お互いにあるミッション(達成目的)に対して、機能を二分し、それこそ協調しながら運用している様は、まさしくコンステレーションといえます。

 

ここで明確にしておきたいのは、2基であっても、衛星コンステレーションといえるということです。

ただ単純に同等機能の人工衛星を軌道に送り込むことは、気象衛星ひまわりのように予備機あるいは後続機という形になり、必ずしも衛星コンステレーションとは言えないのです。

 

気象衛星の中でも、2基以上の衛星を使用し、2つの以上の視点(機能)で観測している場合は、コンステレーション呼んでもおかしくはありません。

まあ、あまりその辺りの定義の切り分けが明確になっていないのは確かです。

 

ちなみに、各国の人工衛星のコンスレテーションについては2018年11月20日内閣府で展開されている”宇宙産業政策の検討の視点”に記載があります。

念のため、下記に記載しました。

https://www8.cao.go.jp/space/comittee/sangyou-dai1/siryou4-3.pdf

 

QuickBird衛星、WorldView-1衛星、WorldView-2衛星によるコンステレーション

  • Digital Globe社は、3機の高分解能光学衛星(QuickBird衛星、WorldView-1衛星、WorldView-2衛星)を運用し、ほぼ毎日、同一地域の撮影が可能。
  • 3機の衛星の撮影計画を同一システムで一括コントロールすることにより、広範囲、多地域でのコンステレーション撮影を実現。
  • 衛星の軌道高度を高くすること、及び衛星の撮影機動性を高めることの組み合わせにより、衛星の再訪時間を短くして、撮像頻度を確保。(WorldView-2)

IKONOS衛星、GeoEye-1衛星によるコンステレーション

  • Digital Globe社(旧GeoEye社)は、2機の高分解能光学衛星(IKONOS衛星、GeoEye-1衛星)のコンステレーションを運用。
  • 2機の衛星を同一軌道上で180°反対側を周回させる運用。
  • 日本では、11日中6~7日上空を通過し、高頻度撮影が可能。

RapidEye衛星のコンステレーション

  • DLR(ドイツ航空宇宙センター)及びRapidEye AG社は、5機の同一仕様の小型光学衛星(RapidEye衛星)のコンステレーションを運用。
  • 5機の衛星を同一軌道上で均等に配置。
  • 高頻度撮影(同一地域を毎日撮影)が可能。広範囲の撮影(1日に400k㎡以上の画像収集)が可能。

TerraSAR-X衛星とTanDEM-X衛星によるコンステレーション

  • DLR及びInfoterra社は、2機の同一仕様のXバンド合成開口レーダー衛星
  • (TerraSAR-X衛星、TanDEM-X衛星)のコンステレーションを運用。
  • 2機の衛星は、数キロから200m未満に至るまでの距離で編隊飛行を行う軌道。
  • インターフェロメトリック(干渉)SARによる高分解能データを取得

SPOT-6衛星、SPOT-7衛星、Pleiades-1A衛星、Pleiades-1B衛星によるコンステレーション

  • CNES(フランス国立宇宙研究センター)及びSPOT Imarge社は、4機の光学衛星(SPOT-6衛星、SPOT-7衛星、Pleiades-1A衛星、Pleiades-1B衛星)のコンステレーションを運用予定(SPOT-7衛星は、2014年打上げ予定。その他の衛星は打上げ済み。)。
  • SPOT-6衛星とSPOT-7衛星、Pleiades-1A衛星とPleiades1B衛星を、同一軌道上で、それぞれ180°反対側を周回させる運用。
  • 高分解能(0.5m)のPleiades衛星と、広観測幅(約60km)のSPOT衛星の組み合わせ。
  • 同一地域を1日1回撮影可能。
  • 毎日広範囲(約600万km2)を撮影可能。

Cosmo-SkyMed衛星のコンステレーション

  • ASI(イタリア宇宙機関)及びe-GEOS社は、4機の同一仕様のXバンド合成開口レーダー衛星(COSMO-SkyMed-1、-2、-3、-4)のコンステレーションを運用。
  • 4機の衛星を同一軌道上で運用。
  • 16日間の回帰日数で、軌道・撮影角度・撮影方向を統一したデータを最大4回撮影可能。

RADARSAT衛星のコンステレーション

  • CSA(カナダ宇宙庁)は、RADARSAT-2の後継として、衛星データの観測頻度を確保し、海洋監視、災害対策、環境モニタリングなどの利便性を向上するため、3機の
  • Cバンド合成開口レーダー衛星(RADARSAT Constellation)によるコンステレーションを運用予定(2018年に打上げ予定。)。
  • 同一地域で1日平均1回(1日1回のデータ取得について全世界の約95%をカバー)のデータ取得が可能。
  • また、上記のRADARSAT Constellation衛星には、合成開口レーダーとは別のペイロードとして、カナダ国防省が独自にAIS(船舶自動識別システム)受信機を搭載し、運用する計画。

 

 

en.wikipedia.org

 

関連資料

超小型衛星によるリモートセンシング第4回超小型衛星網による地球観測 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/37/5/37_456/_pdf