往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【宇宙機と擾乱】常に動くということは常に振動が発生する

光学機器に対する振動

f:id:MSDSSph:20191113214531j:plain

人工衛星ではいくつかの微小振動が発生します。

その中で擾乱について取り上げます。まずは、JAXAの定義によると次の通りです。

衛星内の微小振動環境に影響を及ぼす内力のうち、意図した制御力、制御トルク以外のものを内部擾乱(internal disturbance)と定義する。ここで内力とは衛星内の要素間で相互に働く力とトルクの総称である。

意図して制御された力は、例えば推進装置や姿勢制御に使用する電磁力トルカ、リアクションホイールにより管理して発生させた力を指します。

 

微小振動でよく言われるのが人工衛星の望遠鏡で、光学機器であるカメラは、ミッション内容により高い指向精度、指向安定度が要求されているのがその理由です。


指向精度、指向安定性は画像品質の一つである分解能にも影響されます。

分解能とはさまざなま定義がありますが、画像としての分解能は情報の細かさという理解で問題ありません。情報の細かさを向上させるためにセンサー精度を向上させたり、レンズの集光性をあげるなどの行い、最終的に撮影対象の識別をできる情報の基礎になります。

 

撮影の際に様々なものが影響されますが今回は人工衛星内部の振動について紹介します。

 

カメラを搭載するから擾乱を必ず制御しなければならないというものではありません。


擾乱を制御するには人工衛星に搭載する機器に仕組みを追加する必要があるのが理由の一つですが、衛星画像のデータの情報の目的次第です。

 

衛星画像で人の姿を確認したり、自動車や飛行機の識別まで管理するとなると、高い分解能が必要になります。

しかし、カメラそのものの性能によりますが、災害の影響評価や施設の建築進捗、広域施設の駐車場の密度であれば擾乱を管理すれど、制御する必要性も薄れてきます。

 

参考

JERG-2-152A 擾乱管理標準

http://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-152A.pdf

repository.exst.jaxa.jp

www.kenkai.jaxa.jp

jpn.nec.comrepository.exst.jaxa.jp

www.google.comwww.nict.go.jp

指向精度と指向安定性の単純な理解

f:id:MSDSSph:20191113215115j:plain

指向精度、指向安定性とは簡単にデジタルカメラスマホのカメラを例にして話してみます。

 

通常のカメラには手振れ補正機能が搭載されています。既に当たり前のように搭載されているため、製品紹介には手振れ機能は標準搭載というイメージが強いかもしれません。

 

手振れ機能がなければどうなるか、そもそも人間は完全に筋肉を停止することが困難で、カメラ撮影時には常に動いています。

 

日中あるいは明るい所では光量により情報を取得できますが、夜あるいは暗い所では光量が少なく、取得できる情報も少なくなります。

取得できる情報が少ない中で筋肉が微動するために取得できる光量が安定せず、複数の画素で光を取得してしまい、カメラ画像がぼやけるという事象が発生してしまいます。(多分だいたい合っているはず)

 

指向精度、指向安定性とはカメラを向けるときの焦点の当て方とカメラを向けているときの安定性といえます。

 

擾乱は人工衛星に搭載される微小な振動です。人間でいうとカメラマンの筋肉の微動というわけですね。

 


擾乱を制御する技術

f:id:MSDSSph:20191113215730j:plain

提供:NASA

擾乱を発生するものとして、次のものがあります。 

制御する必要があるかどうかの境目は、指向精度、指向安定度のオーダ感によります。各オーダ感が発生擾乱と同じオーダ、あるいはそれ以上の値であれば衛星画像に影響は必ず与えられます。

 

これらの擾乱が発生際に、さらに撮影するときのカメラのデータの転写速度にも影響してしまい、画像のブレ・ズレにも関わるのでなかなか困難な問題となります。

 

擾乱を制御するにはどうすればよいか

f:id:MSDSSph:20191113214639j:plain

提供:NASA

リアクションホイールやアンテナ駆動機構を持つ場合は、地上試験で擾乱の特性を取得し、ミッション機器の固有振動数と共振して増幅しない様に、駆動のタイミングをずらしたり、駆動を制御します。

 

同じく事前に擾乱の特性を取得したうえで、駆動機構が稼働する際に、逆位相のトルクを発生させる機器を搭載して制御します。

 

駆動ステップを細かくすることで振動を低減して制御します。

 

制振材料を搭載します。

 

軌道上での対応が不可能な場合は、人工衛星内に搭載する時間やコスト、空間がなければ画像処理で補完するというのもありです。その時問題となるのは、画像処理の時間でしょう。

素早い対応が求められる際には、処理時間が1時間なのか10時間なのか全然変わります。数時間後に2枚目を撮影した際に、2つが比較できるレベルには整える必要があるでしょう。

 

初めから人工衛星内部に搭載していた方が、ユーザーとしては時間ロスを考えなくて済むのです。

人工衛星で、リアルタイムのデータ提供を行うためには、この時間ロスをどう減らすかが問題になるのかもしれませんね。

 

参考

人工衛星宇宙機の姿勢・軌道制御技術ー実用衛星ミッションを支えるキー技術の発展ー

https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2011/1109113.pdf

hinode.nao.ac.jp

repository.exst.jaxa.jp

repository.exst.jaxa.jp  

www.google.com