往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【宇宙機と撮影】そんな細かいの見てどうするの?分解能の世界

人工衛星の画像処理のはじめに

f:id:MSDSSph:20191114005328j:plain

提供:NASA

人工衛星の画像処理には、他の画像処理の数段階前から処理を行うことになります。

 

例えば、普通にカメラ画像を取得すると、レンズの曲率の補正から色補正処理、座標情報を取得する必要があります。

 

 

 

それら諸々の処理を行った後に、スマホで撮影した時と同じようなデータを取得できるのです。

もちろん、人工衛星の画像処理で近い処理を行うことも可能であるが、リソースが限られている人工衛星に処理後と処理前の情報に入れることになります。

 

処理後の情報は消去してもよいという考え方もありますが、源泉情報が分からなければその情報がノイズなのか、ノイズではないのか判別がつかなくなってしまいます。

ただし、人工衛星内の画像処理ノウハウがあれば、省略するのも一つの手ではあります。

 

地上で処理した方や潤沢なリソースがあるため、処理も早いのです。

一方で処理もユーザが実施する場合は、このあたりも自動化という名目で人工衛星内で処理した方が良いという要望も発生することもあります。

 

一般に商業ビジネスとして出回っている人工衛星の画像は、このあたりの処理が終わったものを提供しています。多分。

 

参考

www.mizuho-ir.co.jp

 

機械学習と衛星画像の認識技術

f:id:MSDSSph:20191113001726j:plain

画像処理技術でよく言われているものは、顔認識や自動車ナンバープレート認識、郵便局の郵便番号識別、工場の品質検査、SNSの不適切画像など、画像認識が使われています。

 

画像認識は経験則の蓄積によって導き出された確率による結果が導き出されます。

画像認識に使われるプログラミング言語は、C++Pythonなどがよく聞かれますが、ここでは言葉の紹介程度にします。

 

もしかすると、数字認識でいうと日本の郵便局で仕分けの際に生まれている情報が世界一かもしれません。

 

さて、画像認識の結果は確率で導き出されるため、まだまだ人間側で判断する必要があります。

自動車の自動運転システムは、有り/無しの二択の前に、確率の高い方かつ、危険性がある一定の割合以下(おそらく0%はない)の条件で判断しているのだと思われます。

 

と、ここで分かるように画像一枚だけでは、人間側で判断するしかありません。

画像が複数枚集ってこそ機械学習といわれる処理を行うことができます。

 

従来の情報分析は、人間側が複数の画像認識に関わる情報を脳の中にインプットして判別していたといえます。

人間が確認することで自動的に処理していた事象が、機械学習ではより多くの情報をインプットしなければならないのです。

 

 

物体検出に気を付けるべきことは、多くの情報を取得することと光学装置であれば太陽光の情報による補正も考慮しなければいけません。

多くの情報を取得しなければ、軌道高度から取得した衛星画像の中であっても、例外の識別も十分にできません。

自動車の識別であっても、自動車の屋根にシールが貼っていれば自動車の車種の識別ができなくなります。逆にこれを利用して、画像認識が非常に困難な記号を貼り付けることで識別不可能にすることも可能かもしれませんが。光学装置だけではなく赤外センサやレーダーによる情報の取得も可能なのでそれも難しくなっているかもしれません。

 

参考

aize.jp

techacademy.jp

www.visco-tech.com

ai-scholar.tech

 

人工衛星の認識技術

f:id:MSDSSph:20191113001803j:plain

航空写真であれば、一人ひとりの顔は識別できなくとも、人数を把握することはできます。

人工衛星の写真であればどうでしょうか。

 

分解能1mの世界は、よく画像内で1mの対象が識別できると聞いたことがあるかもしれません。

 

識別とはその物の特性を把握できるということです。さらに言うのであれば、人であれば、一般人か、警備員か、従業員か分かるレベルです。今から右に歩こうとしている人なのか、座っている人なのかわかるレベルということです。

 

認識とは、見える物体が人なのか電信柱なのか把握できるということです。自動車なのか、トラックのコンテナなのか分かるレベルです。船舶の種類も分かれば、自動車サイズ程度であれば分かるレベルです。

 

検知とは、そこに物体があるというレベルです。車なのかトラックなのか分からないですが、道路のようなところに何かがあるということが分かるレベルです。

 

もちろん、人工衛星写真ではなく、顔認識レベルの画像であれば、その表現も違うかと思います。

もちろん、だいたいの区別である上に、定義も確定していないため、今後変わってくるかもしれませんが、多くはこのような区別がされています。

 

ここで重要となるのは目的です。

 

災害時に人が助けを求めているのを知りたければ、識別レベルまで衛星画像の分解能のレベルを持ってくる必要があります。

 

災害の影響範囲を確認したければ、認識レベルまでもっていけばいいのです。

 

災害にかかわらず、植生の変化を確認したければ、検知レベルで問題ありません。前後のデータをは必要になります。

 

もちろん、前後のデータがあればよりデータの精度が高まります。

 

多くの衛星画像ビジネスがありますが、その導入の際に、どのレベルがいいか悩むかもしれません。

もちろん、高い分解能であれば、多くの情報を取得することができます。

一方で、高い分解能を分析する能力も必要になります。

 

高い分解能は必ずしも必要はないのです。

分かりたい目的が分かっていれば、高い分解能が必要ではないことが分かります。必ずしも光学画像でなくてもいいのです、レーダーによる白黒画像でもいいのです。

前後の自然環境の影響の確認したいのであれば、余計な情報の少ない白黒画像の方が良い場合もあります。

 

高性能を突き詰めるのは、今後の技術ベースを上げていく上では必要です。

一方で、目的に合わせた必要な衛星画像を選択してビジネスに生かしてもいいのではないかと思います。

 

また、今後の宇宙ビジネスの中で、低分解能、高分解能画像で値段が変わってくることでしょう。その時に損をしない様にしていきましょう。

 

衛星画像は航空写真と同じで何が区別できるのか定量的で定性的な指標が検討されている最中です。

 

画像の指標の一つにNational Imagery Interpretability Rating Scale(NIIRS)でしたり、国土地理院の地図データの品質とその評価に関する指針などが存在しています。

 

この指標もまだまだ整備途中といえます。

 

というのも、まだ衛星画像の目的が定まっていないところが多く、何に使われるのかまとめ切れていないのですね。

 

 

いつか定量的な記事があれば、また取り上げていきます。

 

 

 参考

psgsv2.gsi.go.jp

www.globalsecurity.org

en.wikipedia.org

National Imagery Interpretability Rating Scale(NIIRS)

https://fas.org/irp/imint/niirs.htm

 

www.axis.com