【宇宙機の機構物】人工衛星の展開機構には何があるだろうか
人工衛星の展開機構や駆動機構の固定と開放
ロケットから人工衛星が分離した後、太陽電池パネルやアンテナが展開、駆動するのだが、分離するまで固定していなければなりません。
固定方法にはいろいろありますが、この固定方法はロケット搭載時は確実に展開しない様にする必要があります。
確実に展開したいものを、確実に展開しない回路に搭載しておく必要があります。
ロケットによるかもしれないが、人工衛星をロケットに搭載するときは人の手によって、ロケットに締結されます。
この時に、展開機構が勝手に動作したらどうだろうか、人に当たって重傷を負う可能性があるのです。
日本では宇宙開発での唯一の死亡事故がロケットによるものです。もしかすると過労による死亡もどこかに潜んでいるかもしれないが、明確な宇宙開発の事故があるという事実はロケット関係者にとってはとても大きなものなのです。
ロケットでの事故は宇宙開発全体の遅延につながる可能性があります。
ということで、ロケットに搭載するときには展開しないような工夫を行う必要があります。海外のロケットでは条件としてはやや優しいかもしれないがそれでも展開しない様な回路は仕込んでおかなければいけないのです。
太陽電池パネル(展開機構を備える機構に対して太陽電池パドルと称するときもある)がもしロケット搭載時に展開してしまったら、小型衛星なら数キロではあるが、大型衛星では数十キロの重さをもつため、打ちどころが悪ければ重傷を負うことは想像に難しくありません。
太陽電池パネルでなくても駆動機構を持つ場合は、指や腕の引き込まれによる切断など、ライン工場でも発生しうる見るも悲惨な事故が発生してしまう恐れがあります。
そのために、展開機構は固定されておく必要があるのです。
ちなみに、YOUTUBEからかき集めた展開機構集を見たい方は次の記事を見てみてください。
mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com
参考
人工衛星に使われるニクロム線
テグスで展開物を抑え、分離放出後にニクロム線に電流を流して過熱させ、テグスを切断させる方式があります。
ニクロム線の電気抵抗が高いため、電流を流すと負荷となって過熱するのです。
とても単純で作りやす機構なのだが、欠点の一つとして過熱しやすいからと言って起動時に電力を必要となります。
ただでさえ貴重な電力を一気に使うので、展開における信頼性・再現性は重要になってきます。
再現性がなければ、テグスを切断した後に、テグスがカメラのレンズに付着して画像に常に映り込んでしまうこともあります。テグスが引っかかって、展開途中で止まってしまうこともあります。
この二つは無重力ゆえに、テグスの挙動の想像不足による安全対策の検討不足で発生してしまいます。
ニクロム線の熱が足りず、切れずに必要な展開物が展開できずに、通信不能であったり、電力不足で人工衛星が動けなくなったりするのです。
主に熱設計不足であったり、宇宙環境温度3Kを考慮せず、常温での試験のみで打ち上げてしまったりといった検討不足により失敗するという事態も起きます。
参考
人工衛星に使われる火工品(加工品ではない)
火薬によって固定個所を爆散させます。
ただし、最近のデブリ事情とは関係なく、爆散物を人工衛星近くに飛散させたくありません。
というのも、精密な光学機器にゴミとして付着したり、人工衛星の外壁に付いている機器に金属製のごみが入り込むことで。内部の回路がショートしてしまうこともありえなくはないのです。
人工衛星の火工品は、ロットカッターなどと呼ばれ、火薬により鋭利な金属を押し出し、固定箇所を切断し展開するという方式なのです。
切断後もカプセルなり、回収ブロックにより破砕物が飛散しない様にします。
ただし、火工品の部品そのものが大きくなるため、質量制限のある小型衛星ではあまり使われないかもしれません。
火工品を取り扱うには資格が必要
火工品を試験するには、火薬を取り扱う資格が必要であります。それこそ発破や花火師と同じなのである。製造することと、取り扱うことの違いはあります。
資格を取得するときは、取扱う方なのか、製造する方なのか注意して取得すること。
そして、れっきとした国家資格なのです。
資格が必要であることから、学生で小型衛星を開発する際にはハードルが高いかもしれません。
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参考
長くなったので続きます