衝撃試験は打上げ中の振動の試験ではない
人工衛星にかかる衝撃は、次のものがあります。
- 人工衛星製造施設からロケット打上げ施設までの輸送時の衝撃
- ロケットのPOGO(ポゴ)振動※と呼ばれる液体ロケット特有の衝撃
※振動ですが、数十秒の短時間振動であるので衝撃にしています。
- ロケットの1段目の分離衝撃
- ロケットの2段目の分離衝撃
- 人工衛星のロケット結合分離あるいは分離機構分離
ロケットのPOGO振動は液体ロケットの推進薬が使用されることによって変動する固有値振動数がロケット機体の固有値振動数と一致することで共振が発生し、大きな振動を発生させる振動をいいます。
POGO振動は、ロケット側に固有値振動数をずらす工夫をすることで、振幅を低減させることができます。
POGO振動は、液体ロケットの推進薬である液体燃料が減ることで共振が発生するため、液体燃料を使用しないロケットでは発生しない事象となります。
衝撃の中で輸送時の衝撃は人工衛星側、というより輸送時にエアサスを使用することで低減するといった制御できます。
POGO振動、1/2段の分離衝撃は、ロケット側にスプリングを取り付けたりすることで制御できます。
色々と衝撃がありますが、ロケット結合分離あるいは分離機構分離の衝撃が人工衛星に対しては強い衝撃となるのではないでしょうか。
そして、現在、分離機構にはいくつかあります。
- Lightband
- PAF239M、PAF-937M、PAF-1194M、PAF-166M
※PAF:Payload Attach Fitting
- E-SSOD
- J-SSOD
- N-POD
- J-POD
PODとあるのは、10cm角(1U)および2U、3Uの人工衛星を分離させる衛星です。
参考
JERG-2-130-H003 振動試験ハンドブック
http://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-130-HB003A.pdf
分離機構についてもろもろ
PAF
HⅡAロケットやH3ロケットに記載のある分離機構です。
おそらく三菱重工社製の分離機構ですね。
日本のロケットで打ち上げられた人工衛星では最も使用されているのではないでしょうか。
PAFの後に続く数字は、リング径を示していますね。
LightBand
イプシロンロケットに使われた(あるいは結合可能な)分離機構です。
外国のPSC社製ですね、HP上には3DCADモデルがあるので確認が楽にできます。
E-SSOD
E-SSOD : Epsilon Small Satellite Orbital Deployerといい、イプシロンロケット搭載用のCubeSat放出機構になります。
CubeSatで3Uまで搭載可能ですね。
J-SSOD
JEM Small Satellite Orbital Deployer: J-SSODといい、国際宇宙ステーションのきぼうで使用可能なCubeSat放出機構になります。
放出軌道は国際宇宙ステーションと同じ軌道になります。
E-SSODと同じくCubeSatで3Uまで搭載可能です。
JX-ESPC-101132 JEMペイロードアコモデーションハンドブック
http://iss.jaxa.jp/user/pdf/jem_handbook.pdf
N-POD
おそらくHⅡAロケットと結合可能な20cm角の人工衛星放出機構ですね。
J-POD
J-POD:JAXA Picosatellite deployerと呼ばれるHⅡAロケット用のCubeSat放出機構ですね。
CubeSatの1Uだけですが、4機放出することができます。
CubeSatの標準化された放出機構の中でおそらく最初に使われた放出機構ではないでしょうか。