人工衛星が衝突しない
United Nations Office for Outer Space Affairs (UNOOSA)のサイトページによると2020年前半まで打ち上げられている人工衛星は、9,400機を越えています。
打上げられている人工衛星は、一部は地球に落下して燃焼されており、それでも軌道上にある人工衛星でも5,800機を越えています。
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多くの人工衛星は高度400kmから600kmにあり、この分の体積を計算すると637,000,000km3に及びます。
打ち上がった人工衛星は、低高度や高高度にもありますが、それらすべてを高度400kmから600kmに集合させたとします。
人工衛星の大きさは、多種多様ではあるのですが、考え方を簡単にするために10m角(1m角ではありません)であると仮定し、機数も1万機とサバを読んで計算します。
例えば、人工衛星1機が自由に使える空間は、63,700km3あります。
全ての人工衛星を集合させたとしても10,000,000m3(=10,000km3)です。
人工衛星は、空間の0.0000157%を占め、非常に小さいです。
このように空間的に余裕がありますが、宇宙軌道上にある物体は、レーダーや光学的手法により監視されています。
Space-Track.orgという組織により、公的に無料で公開されています。この情報を利用して、宇宙軌道上に浮かぶ物体の衝突や接近に気づくことができます。
衝突や接近の可能性があれば、人工衛星に搭載されている軌道制御装置の回避行動を行うことが可能です。
すなわち、衝突しない理由は、軌道上の空間に余裕があり、公的な組織によって守られているからでもあります。
例外は存在する
このように、偶然の衝突はかなり確率が低く、故意的でなければ衝突は不可能です。
逆にこれを利用すれば、地上からのミサイルにより人工衛星を破壊することが可能とも言えます。
アメリカやロシア、中国とインドは自国の人工衛星ではありますが、破壊実験を行っています。
偶然と言えど、2009年にアメリカのイリジウム衛星とロシアの通信衛星2251が衝突している事実があり、100%の回避は難しい様子です。
人工衛星同士ではないのですが、上記の破壊実験の結果、2007年の中国の破壊実験の人工衛星の残骸が、2013年にロシアの人工衛星に衝突しました。
これらの事実は、スペースデブリという言葉を広めたきっかけの一つとも言えます。
偶然とはいえリスクが高く、スペースデブリ側は軌道を変更する軌道制御装置あるいは推進装置がないため、運用側の人工衛星が必ず回避活動をしなければ衝突する危険性があります。
軌道制御装置あるいは推進装置、多くはスラスタが使われますが、人工衛星は搭載ペイロードの制限があり、運用計画で決めていた以外で使用したくありません。
余計な回避運動のために、軌道制御装置の貴重な燃料は使いたくないのです。
それゆえ、スペースデブリ除去用の人工衛星に注目されるようになってきているのです。
参照文献
Online Index of Objects Launched into Outer Space
https://www.unoosa.org/oosa/osoindex/search-ng.jspx
安全・快適な交通の確保に関する統計等
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/toukeihyo.html
2009 satellite collision - Wikipedia
2007 Chinese anti-satellite missile test - Wikipedia
インド「衛星撃墜成功」4カ国目、宇宙大国へ