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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

宇宙の知られざる古参メーカーSony!? Sonyの宇宙関連製品を振り返ろう!

SONYの宇宙関連製品

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www.sony.co.jp

SONYが宇宙関連事業に向けて動き始めたので、SONYに関わる宇宙に関わった製品を振り返ってみます。

 

SONY製品は、 ネットに広まっている情報から次の製品が宇宙で使用されています。

 

製品のまとめはこちら

  1. TC-50(テープレコーダー)
  2. HB-G900AP(パーソナルコンピュータ/エミュレータ)
  3. リチウムイオン電池【現:村田製作所
  4. ビデオカメラ/ハイビジョンカメラ(宇宙船内のカメラ)
  5. 「α7S II」「FE PZ 28-135mm F4 G OSS」 (宇宙船外のカメラとレンズ)
  6. 「Mighty Morphenaut: Multiplayer Collaboration in VR」(宇宙飛行士訓練趣味レーション)
  7. 「SOLISS」(光通信機器)
  8. 「全地球衛星測位システム(GNSS)受信LSI」(電波の受信部品)

 

1960年代 テープレコーダー

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それでは初めに、宇宙開発時代はいつ頃から始まったのでしょうか?

 

ロケット実験時代まで遡るとさすがにやり過ぎなので、人工衛星打ち上げから行きましょう。

最初の人工衛星は1957年10月に打ち上がりました。

それから多くの宇宙開発に関わる実験が行われ、人類初の月への有人宇宙飛行計画であるアポロ計画が開始されます。

最初の有人飛行ミッションであるアポロ7号は、1968年10月に打ち上がっています。

 

宇宙開発が盛り上がり、最初の人工衛星が打上げられて10年以上経過して打上げられたアポロ計画の中にSONYの製品が使用されました。

 

アポロ計画の中で月に上陸した実績のあるアポロ7号。

 

アポロ7号の乗組員に装備され、共に宇宙を旅して月にたどり着いたのが、当時世界最小モデルのカセットテープレコーダーであるSONY製の「TC-50」でした。

 

これがおそらくSONY製品と宇宙の最初の関わりだったのではないでしょうか。

 

SONY(当時、東京通信工業)の創業が1946年。

 

日本初のテープレコーダを開発したのが1950年でしたので18年後。

ウォークマンが発売される11年前の出来事でした。

 

この「TC-50」は、翌1969年5月に打上げられたアポロ10号の乗組員にも装備されました。

 

1980年代から1990年代 パーソナルコンピューター

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その後、しばらくの間、音沙汰がなかったのですが、とある宇宙船の写真の中にSONY製品が現われます。

 

MSX2規格のパーソナルコンピューターである「HB-G900AP」がソ連の宇宙ステーションであるミール(Mir)の中に搭載されている姿が確認されたのです。

 

写真から1996年ということが分かっているのですが、それ以前の情報がありません。

いつごろかミールに搭載されていたかは分かってはいません。

 

ミールは、1986年2月に打上げられ、2001年3月まで使用された宇宙ステーションです。

 

HB-G900APの発売は1986年ですので、写真の1996年までの10年間のいづれかのタイミングでミールに搭載されていたようです。

 

2000年代 リチウムイオン電池 デジタルビデオカメラ ハイビジョンカメラ 

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1996年から4年後の2000年11月にDefence Evaluation and Research Agency:DERA(英国の政府機関、2001年解散)で開発された宇宙技術研究用小型衛星であるSTRV-1CとSTRV-1Dに搭載された電源(ソニー製の一般向け電池をもとにした電池)に使用されました。

 

記事にあるようにそのままの製品を使用した訳ではないようですが、(当時)ソニー製の電池が使用されています。

因みに、ソニーリチウムイオン電池を製造していたソニーエナジー・デバイスリチウムイオン電池の製造部門は、2017年までに村田製作所に譲渡されています。

 

STRV-1C/1Dの技術を利用しているのか分かりませんが、(当時)ソニー製のリチウムイオン電池は、 2001年10月に打上げられたESA(欧州宇宙機関)の技術実証衛星PROBAや、2003年6月に打上げられた同じくESAの火星探査衛星マーズ・エクスプレス(Mars Express)でも使用されました。

 

2000年代では、リチウムイオン電池の他に、ビデオカメラが国際宇宙ステーション(ISS)に持ち込まれています。

 

どのタイミングかは不明ですが、VX-1000、DCR-PD100、DSR PD-150P、DSR-PD1Pが使用され、ハイビジョンカメラ(HDTV)として、HVR-ZIJが国際宇宙ステーションに持ち込まれ、多くの宇宙飛行士に使用されました。

 

2010年代(その1) デジタル一眼カメラ 宇宙飛行士訓練シミュレーション

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宇宙飛行士が使用するビデオカメラ以外に、2016年12月に打上げられた4K 動画が撮影できる「α7S II」が、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の船外スペースに専用ユニットと共に設置され、4K動画の地球を撮影しています。

 

専用ユニットは、上下左右に動かせることができ、様々な角度から地球や宇宙を撮影できるようです。(以前は上下左右に動かすことができなかった。)

 

専用ユニットにそのまま搭載されています。専用ユニットは明星電気製。

 

レンズもソニー製の「FE PZ 28-135mm F4 G OSS」を使用しています。

 

 

因みに、ソニーの販売しているデジタル一眼カメラαは、2006年3月末にコニカミノルタのαマウントシステムを用いていたデジタル一眼レフカメラシステムの一部資産をソニーへ譲渡された技術の流れを汲んでいます。

 

SONYYOUTUBEに、動画がありましたので紹介しておきます。

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SONYではないのですが、翌2017年6月に打上げられたスキャナーやカメラシャッター機構部品を組立て製造しているキヤノン電子が製造した「CE-SAT-I」には「EOS 5D marK Ⅲ」が搭載されています。

3年を経過した現在も稼働しており、民生機カメラの宇宙軌道上の実績が着々と積まれているところです。

後続のCE-SAT-IIBは、キヤノンの「EOS M100」、「PowerShot G9X MarkII」が搭載され理予定です。

 

JAXAと組んでいたSONYですが、その1年前の2015年にNASASONYが組んでいます。

 

NASAのジェット推進研究所と、ソニー・コンピュータエンタテインメント アメリカ(SCEA)のPlayStation Magic Labによって、2016年10月に発売されたPlayStation4とPlauStation5用のVRシステムである「PlayStation VR」技術を用いてNASA宇宙飛行士向けの訓練シミュレーションを「Mighty Morphenaut: Multiplayer Collaboration in VR」が開発されました。

 

ポイントは、ロボットアームを遠隔操作するときに発生する時間差も再現したとことにあるそうです。

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2010年代(その2) 長距離空間光通信機器 GNSS受信LSI

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今まで既存の製品を使用されてきたSONYですが、2016年にはJAXAと株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所ソニーCSL)は「長距離空間光通信を実現する光通信モジュールに関する研究」を契約し、2019年9月に打上げられました。

 

装置の名前は小型衛星光通信実験装置「SOLISS」(Small Optical Link for International Space Station)で、SONYの研究開発してきた、CDやMD、DVD、Blue-rayに使用される光デスク技術が使用されています。

 

設置されたのは「α7S II」と同じ、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の線外実験プラットフォームに設置されました。

 

国際宇宙ステーションに搭載された「SOLISS」から1550nm帯のレーザーを発振して、NICT保有する宇宙光通信地上局との通信実験が行われました。

 

2019年10月に通信を確立し、2020年3月には100MbpsのEthernetにより高画質データ転送を受信することに成功しました。

 

「SOLISS」はSONYが宇宙用に開発した最初の宇宙機器かもしれません。

しかも、通常打上げる人工衛星の機器よりも、安全に関する審査の厳しい国際宇宙ステーションに搭載できる宇宙機器を開発したことで、かなりの宇宙に対する知見が蓄積されたのではないでしょうか。

 

 

宇宙関連であれば、SONYスマートフォンなどのモバイル機器向けの全地球衛星測位システム(GNSS)受信LSIも販売しています。

GNSSは、人工衛星を利用して位置を計測するシステムのことで、GPSGNSSに含まれます。

 

GNSS信号LSIは、おおまかに表現すると、宇宙軌道上にあるGPSなどの測位衛星からの信号を受けて、位置情報を算出することができる電子部品です。

 

2013年2月に発表され、2020年8月でも継続して、新製品が作られているようです。

 

おわりに

人工衛星には、通信衛星放送衛星、気象観測衛星、測地衛星、地球観測衛星、科学衛星など、その目的に応じていろいろな種類があります。

 

今までのソニー製品の宇宙活用をみると、通信衛星地球観測衛星への事業展開を考えているような気がします。

 

人工衛星の開発とするのか、人工衛星コンポーネントとするのかは分かりませんが。

 

まあ、キヤノン電子のように電子部品やコンポーネントも自前で確保できれば、他の衛星システムメーカーよりも安く作れるかもしれません。

 

小型衛星サイズなら可能なのかな?

 

参考資料

世界のソニーが掲げる、IoT時代の新戦略。技術の粋を集めたSPRESENSE™の挑戦「ビジネス×オープンプラットフォーム」

https://www.aps-web.jp/magazine/8122/#JAXA

SONY TC-50 オーディオの足跡・別館

https://audio-heritage.jp/RADIO/SONY/portable/tc-50.html

TC-50 SONY

https://www.sony.co.jp/Fun/design/history/product/1960/tc-50.html

SONY TC-50 TC-1000 Nagra SN

http://tasan.blog47.fc2.com/blog-entry-1938.html

ソニー - Wikipedia

MIR-1997_SONY-HB-G900

https://sansimeracomputers.wordpress.com/2014/02/05/sony-hitbit-msx/mir-1997_sony-hb-g900/

MSXシリーズ なつかしのパーソナルコンピュータ

http://www.eonet.ne.jp/~taknet21/natsukashipc/msx/msx.html

ミール - Wikipedia

Sony HB-G900P

https://www.msx.org/wiki/Sony_HB-G900P

航天機構 過去ログ

http://www2a.biglobe.ne.jp/~mizuki/lifelog/4.htm

HB-G900AP(MSX2

http://www.progettoemma.net/mess/system.php?machine=hbg900ap

Guidelines on Lithium-ion Battery Use in Space Applications(宇宙用途でのリチウムイオン電池使用ガイドライン)

https://ntrs.nasa.gov/citations/20090023862

 STRV-1 - eoPortal Directory - Satellite Missions

https://directory.eoportal.org/web/eoportal/satellite-missions/s/strv-1

宇宙探査を支えるバッテリー技術

https://www.gs-yuasa.com/jp/technic/vol2_2/pdf/002_2_001.pdf

宇宙ではどんなカメラを使っているのですか

https://iss.jaxa.jp/iss_faq/env/env_012.html

α (カメラ) - Wikipedia

カメラ事業、フォト事業の終了と今後の計画について

https://www.konicaminolta.jp/about/release/2006/0119_04_01.html

CP+2017 - ソニー、最新「FE 100mm STF GM」で美ボケ・ポートレート試写 (2) ワイヤレスシンクの撮影体験も | マイナビニュース 

https://cameota.com/sony/18313.html

α7S IIは、国際宇宙ステーション船外で、民生機として世界初

https://www.sony.jp/ichigan/a-universe/news/100/

ソニー、「α7S II」がISS船外で4K記録した映像を公開

https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1072767.html

 当社製の超小型人工衛星「CE-SAT-I(シーイー・サット・ワン)」にて撮影した新たな画像「ネオワイズ彗星(C/2020 F3)」を公開しました

https://www.canon-elec.co.jp/news/post-4996/

 

NASA Looks to PlayStation VR to Solve Key Challenge of Space Robot Operation

https://www.roadtovr.com/nasa-sony-playstation-vr-remote-robot-operator-training/

JAXAソニーCSLによる国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟を利用した
距離空間光通信軌道上実証の実施について

https://www.jaxa.jp/press/2019/07/20190729b_j.html

 

「省電力・超小型・高性能」の半導体技術が、宇宙産業の未来を変える!?

https://www.sony.co.jp/SonyInfo/technology/stories/SIF_space/

 

小型光通信実験装置「SOLISS」が宇宙と地上間の双方向光通信に成功

https://www.sonycsl.co.jp/press/prs20200423/

LSIGNSS受信LSI|製品情報|ソニーセミコンダクタソリューションズグループ

https://www.sony-semicon.co.jp/products/lsi/gps/

業界最小10mWの低消費電力を実現 スマートフォンなどモバイル機器向け GNSS(全地球衛星測位システム)受信LSIを商品化

https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201302/13-022/

ソニー宇宙ビジネスに参入へ 民間の宇宙開発競争は本格化するか?

https://www.zaikei.co.jp/article/20180424/438470.html

人工衛星にはなぜいろいろな形があるのですか?

https://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/62.html#:~:text=%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F%E3%81%AB%E3%81%AF%E9%80%9A%E4%BF%A1,%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%8C%E7%95%B0%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82