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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

人工衛星画像の分解能/解像度で見えるもの【衛星の画像分析】

人工衛星の製品仕様分解能/解像度について

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光学あるいはレーダの人工衛星でよく言われる製造仕様は分解能/解像度です。

解像度とは、地球観測衛星に載せられたセンサが、地上の物体をどれくらいの大きさまで見分けることができるかを表す言葉です。解像度が高いほど、地上の細かい様子を観測するのに優れているということになります。解像度の単位は、m(メートル)です。解像度は、分解能又は空間分解能ともいいます。
例えば、解像度が30mのセンサでは、30m以上の大きさの物体を見分けることができるということになります。

解像度(物を見分ける能力)

 

 

解像度を良くするというのは、解像度の数値を下げるということになります。

 

 また、人工衛星の解像度は画像インテリジェンスでは区分ができるようです

インテリジェンス(intelligence}という単語を使用していますが、辞典で直訳するとニュアンスが変わるようにとられられるため、そのまま使用しています。

 

0.5m以下:建物の識別、車両の認識・解像度上はNIIRS6以上。

1m:建物の識別と車両の認識。解像度上はNIIRS5。

2.5m:建物の識別、および車両の検出。解像度上はNIIRS3か、NIIRS4。

5m:建物の認識が可能だが、車両の検出はできない。解像度上はNIIRS2。

10m:大きな建物の検出が可能だが、車両の検出はできない。解像度上はNIIRS1。

 

ここで出てきているNational Imagery Interpretability Rating Scale(NIIRS)は、航空画像に対しての画像の解釈可能な評価指標として一部で使用されています。

今回は、人工衛星の光学画像に対する指標がないため、今回は航空画像の指標を流用しました。

 

この画像の解釈に関しては、解釈に利用する情報が整っている必要があるため、なんの情報もない一般人、下手をするとカメラの専門家でさえも解読・分析することはほぼ不可能です。訓練を行った専門家が判断・分析し情報にまとめていくのでしょう。

 

ただし最近では機械化学習と合わさることで、人間と同等以上の解読・分析の可能性も存在しています。

 

人工衛星の画像、すなわち人工衛星そのものの良し悪し、つまりは人工衛星システムの製造メーカーとしての質も、標準化した指標で判断されるのではないでしょうか。

もちろん、機械化学習によって構築された指標の情報が、オープンな情報となれば、という前提があるのかもしれません。

 

このようなこともあり、 人工衛星が打上げられた際に、分解能はどのくらいで、何がどの程度識別できるかということが、報道の中ではどうしても気になる人という人がいます。

人工衛星画像で、何がどこまで見れるのか、どれぐらいの性能を持っているのか。

この場合は性能というより技術力を持っているのか、ということを知りたいのだと思います。

 

一例として情報収集衛星を上げますが、ニュース記事以外で情報収集衛星の解像度が流れず、数値もおおよそで書かれているため、真偽は定かではありませんが、記事では次の通りといわれています。

光学6号機(中略)解像度は、(中略)約30センチとみられ、約60センチとされる4号機の2倍に向上。運用中の5号機とほぼ同じ(中略)。

情報収集衛星の打ち上げ成功 約30センチの高解像度、北朝鮮の監視強化へ (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

 

NIIRSの基準においては「7」で、車両はもちろんですが、小型・中型ヘリコプターの識別ができるといいます。

 

人の検出はできるでしょうが、人の認識はできないでしょう。

人の監視ができたりするレベルではないが、状況からある程度の人を推定することはできます。

 

画像から情報を分析する

これら画像の解釈は、文章の読解力と同じで、現在ある状況証拠からも推測することができます。

 

この状況証拠から分析することを、画像処理あるいは画像分析といいます。

機械化学習では、状況証拠の情報を取り入れ、検出と認識を記憶させる作業になります。

 

記憶といっても、隣接する色調や長短のバランスを数値化・数式化しており、これをモデルと呼んでいたりします。

 

近年では様々なものを識別しているのですが、画像認識技術は昔からありました。

 

自動速度違反取締装置、その中でもNシステムです。

 

オービスは車速測定を行う装置なのですが、Nシステムはカメラにて自動車ナンバーを自動で読み取るのです。NはどうもNumberからきているようです。

 

wikiによると、どうも名称が都道府県で異なっており、「車両捜査支援システム(捜査支援システム)」又は「初動捜査(初動捜査活動)支援システム」若しくは「車両ナンバー捜査支援システム」或いは「悪質重要事件(重要犯罪等)捜査支援システム」ないしは「緊急配備(緊急配備等初動捜査)支援システム」などとあり、各都道府県での情報の共有の少なさを何となく示しているような気がしてなりません。名称が異なるのに理由があるのでしょうかね。

 

このようにあるい程度フォントが決まっているとはいえ、ナンバーを自動で読み取るということは、画像認識技術に他なりません。

 

もちろん警察組織でこのような技術があるからといって、軌道上を周回する人工衛星に直接使えるわけではありませんが、使用している機種のメーカーに内在している画像認識技術は十分に流用可能ともいえます。

 

ちなみに、Nシステムを製造しているメーカーは次の通りらしいです。

Nシステムは、今回の「日新電機」や

三菱電機」(ナンバー読み取り装置の特許関連より)

三菱重工」(ポータブル型車両番号認識装置およびポータブル型車両番号認識装置による車両番号認識方法の特許関連より)

日立製作所」(車両認識装置の特許関連より)などが製作していると言われています

日新電機 「Nシステム」 | KiNiNaRu会社

 

 

現在は、人工衛星画像のビジネス化がほんのり見えてきたところです。

 

画像認識技術は、機械化学習が進んできており、初期から研究したところがノウハウにより逃げ切りそうな感じはあります。

 

単独企業の独占はぜす、全体レベルの向上という意味では、大学をはじめとした研究機関やオープンソースを使用した分析モデルなどの情報展開が望まれるところでしょうね。

 

今後、ビジネス化の問題となるのは、プライバシーの問題が発生する可能性があります。

Nシステムって合法なの!? 身近に潜むナンバー読み取り装置の是非 識者の見解は? | 自動車情報誌「ベストカー」

 

人工衛星の画像認識の知識を持っている人間であれば、人の検知はできるが、人の認識には情報が足りないことは分かっています。

 

現在の技術レベルでは、人工衛星の画像を盾に裁判での証拠はなりにくいのではないでしょうか。

 

もし、高解像度で人の顔を(真上から画像取得しているのに)認識できたり、歩き方や服装で認識できたとしても、人工衛星の性能がそこまで高いということを公表するということは、社会的に世界的にも、その人工衛星を保持している組織が非難される可能性が高いでしょう。

そのため、情報をあるていど公開しなければならない裁判では、今のところは証拠にはなりえないでしょうし、出せないでしょう。画像の合成技術もありますので。

 

そう考えると、ビジネスで使用できる衛星画像の解像度というのは、やはり30~40cmぐらいなのでしょう。

 

まあ、先のことは分かりませんが。

 

横道に逸れますが、航空画像はどうなのかという話

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では、航空画像はどうなのでしょうか。

 

航空写真・航空画像は、解像度30cmは越えられます。

人工衛星の画像と航空画像との大きな違いは、国外で各国の制空権を越えたところで画像を取得できるというのが大きいのです。

 

キラー衛星と呼ばれる衛星攻撃兵器があればという話になりますが、攻撃の先手としては画像を先に撮られてしまう可能性の方が高いのです。

 

衛星攻撃兵器としてミサイルを上げるのであれば、そのミサイルには画像を撮っている人工衛星の軌道に到達できるための、燃料を積む必要があります。

 それなりの精度の姿勢制御が可能で、おそらく第一宇宙速度以上の推進力をもつミサイルを、各組織は配備できるのでしょうか。

 

太陽同期軌道はだいたい90分で地球を1周しています。

 真上で画像を撮られたとして、チャンスは次の周回、あるいはその次の周回なのでだいたい1.2回ぐらいでしょう。

もちろん、地上局の緯度経度や受信アンテナの性能、アンテナの周辺環境によって大きく変わります。

 

ミサイル配備時に、動く人工衛星をあてる必要があるので、打上げるタイミングも10分あればよいといったところではないでしょうか、タイミングが悪ければ1分もないでしょう。知りませんが。

 

今まで衛星攻撃兵器が発動したのは世界的にも10回ぐらいと、件数が少ないのです。研究レベルといったところではないのでしょうか。

衛星を撃ち落とすための衛星攻撃兵器がミサイルだとすれば、おそらく発射準備も数か月単位で、軌道の情報を確認し、天候も考慮して抜群のタイミングで実験した思われます。

今の技術で、軌道上空にある人工衛星を数時間レベルに撃ち落とすことは、おそらく不可能な気もします。早くて数日レベル。

 

人工衛星で常に撮られ続けられ、キラー衛星を持たない国は対抗手段がないし、対抗手段があったとしても短期決着・低コストは不可能です。

 

すなわち、それなりに高い人工衛星の性能を持ってすれば、多くの面でイニシアチブが取れるのです。

 

ただ、高解像度の画像を撮ることができたとしても対外国的危険性の低く、個人のプライバシーへの意識が高い国だと、先に外国への優位性より国内への不利益、プライベート侵害の話が飛びたすことは、簡単に予想できます。

 

人工衛星の性能と画像分析の技術が向上すると、法的には問題ないのか、近いうちに似たような議論が話題になるかもしれません。

 

参考資料

en.wikipedia.org

www.globalsecurity.org

 

www.eorc.jaxa.jp

 

人工衛星の防災活用について

http://www.bousai.go.jp/kaigirep/saigaijyouhouhub/dai5kai/pdf/shiryo5.pdf

 

 人工衛星画像解析による現地調査

https://www.town.chikujo.fukuoka.jp/s021/020/040/010/chosa.pdf

 

sorabatake.jp

 

www.accumu.jp

 

shachomeikan.jp

 

industry-co-creation.com

 

 

www.wingfield.gr.jp

 

 

ja.wikipedia.org

 

 

sorabatake.jp