食品とは精神安定剤の一つである
国際宇宙ステーションでは、宇宙空間という閉鎖空間以外にも、重力がないこと、昼夜がはっきりしないこと、少人数生活などのストレスを人間に加え続けます。
人間にはストレスを緩和させることのできるアクションの一つとして食事があります。
最近、ローソンの「からあげクン」が新たに宇宙食の仲間入りになるチケットを手に入れました。
宇宙食の始まりは、1961年にロシアのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた人工衛星ボストーク2号に搭乗したゲルマン・ステパノヴィチ・チトフ宇宙飛行士で、チューブに入った流動食の食事だったそうです。
その4年後、1965年にアメリカのケープカナベル空軍基地で打ち上げられたジェミニ3号の中で事件は起こりました。
ジェミニ3号に搭乗したジョン・ワッツ・ヤング宇宙飛行士がコンビーフのサンドイッチを内緒で持ち込んだのです。当時、アメリカでも宇宙食を持ち込むことでができたのですが、食品が無重力でバラバラにならない様にゼラチン質のものでコーティングされていたのですが、持ち込んだコンビーフのサンドイッチはそのような処理がされていませんでした。
この話をきっかけに宇宙食が宇宙飛行士の士気に関わるとして、宇宙食のさらなる改善に進んだそうです。
日本食の歴史については次の通りです。
宇宙日本食は実績がなかったので、保存性や栄養バランスのほかに、パッケージの耐久性を求められました。例えば、火事が起きたときにパッケージに火が移っても有害なガスが出ない、マイナス50℃くらいまで温度が下がってもパッケージが壊れない、といった条件があります。2004年から開発を始め、それをすべてクリアしました。
ロシアは缶詰がお家芸。一方、アメリカの宇宙食には缶詰がほとんどなく、アルミのパウチに入っているレトルトパックのようなものがほとんどです。日本人は、食べ物を見て楽しむ文化もあるので、パッケージを透明にして、アルミのパウチに入れる二重包装にしたのですが、この開発には大変苦労しました。
そして、宇宙飛行士の若田光一さんが2009年に4カ月間滞在し、初めて宇宙日本食を持っていくことができたのです。現在も、1食につき1パック程度、個人用の宇宙食を持っていくことができます」
参考
日本の認証宇宙食は不味くないレベルまできている
今後、宇宙旅行が現実となったときに、自分の国の味を持ち込みたいと思うかもしれません。
それは、日本人が海外に長期間滞在した時に、思わず日本の味を思い出すこともあるかと思います。
そんな時に、ぜひ持ち込んでほしいものですね。
JAXAで公開されている宇宙日本食(日本の認証基準に合格しただけで、日本特有の食ということではない)を紹介いたします。
驚くべきは食品企業だけではなく、高校で作られた食品も含まれていることですね。
- SPACEビスコ(江崎グリコ(株)
- 切り餅(越後製菓(株))
- バランス栄養食ブロックタイプ(チーズ味)(大塚製薬(株))
- イオンドリンク(大塚製薬(株))
- 白飯(尾西食品(株))
- 赤飯(尾西食品(株))
- 山菜おこわ(尾西食品(株))
- おにぎり 鮭(尾西食品(株))
- 亀田の柿の種(宇宙食)(亀田製菓(株))
- キッコーマン宇宙しょうゆ(キッコーマン食品(株)
- マヨネーズ(キューピー(株))
- 白がゆ(キューピー(株))
- しょうゆラーメン(日清食品ホールディングス(株))
- シーフードラーメン(日清食品ホールディングス(株))
- カレーラーメン(日清食品ホールディングス(株))
- レトルトビーフカレー(ハウス食品(株))
- レトルトポークカレー(ハウス食品(株))
- レトルトチキンカレー(ハウス食品(株))
- ピーチゼリー(ハウス食品(株))
- サバの味噌煮*1
- 粉末緑茶(三井農林(株))
- 粉末ウーロン茶(三井農林(株))
- 羊羹(小倉)(山崎製パン(株))
- 羊羹(栗)(山崎製パン(株))
- 黒飴(ヤマザキビスケット(株))
- ミントキャンディー(ヤマザキビスケット(株))
- わかめスープ理研ビタミン(株)
- キシリトールガム(ラウムミント)*2
- 味付海苔((株)山本海苔店)
- サバ醤油味付け缶詰(福井県若狭高校)
日本宇宙食を作りたい人に向けて
食品は主に次の項目をクリアしなければなりません。
- 衛生性(食中毒などのウィルスがないこと)
- 栄養性(360日以内の栄養要求に満足できる献立に含められること)
- 摂食に問題が生じない品質
- 日にち単位で製造日翌日を基準とした1.5か月以上の"賞味"期限
- 輸送、打上げ、軌道上に曝される圧力と温度
- 軌道上に設置されている調理設備で調理可能
※調理設備:加温機、注水/注湯機
特に衛星管理に関する資料は細かく記載する必要があります。
さらに食品業界であまり使わさない三面図や組立図を作成する必要があります。
さらに、一度登録するだけではなく、認証期間は5年間であるため更新が必要です。
更新は、認証期間終了から1年前から2か月前までです。ただし、止むを得ない理由により2か月以降でも更新が可能となります。
また、基準によると製造業者以外に、検査機関や審査機関を設ける必要があります。細かくはJAXAに問い合わせるのが早いでしょう。
ぜひ、宇宙旅行なり、宇宙ホテルなりを目指している企業は、宇宙食への取り組みも増えてきてほしいものです。