往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【宇宙機と法律】軌道に人工衛星を送り届けるときに必要な規則

国際周波数調整と宇宙物体登録条約

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人工衛星を飛ばすときに開発者に関係ある法律は、電波法というか無線通信規則にある国際周波数調整と宇宙物体登録条約です。

電波法は総務省管轄なのですが、宇宙物体登録条約で登録される人工衛星登録簿は文部科学省で作成し、外務省から連絡するという流れを取っています(した)。

 

 いまは宇宙二法の兼ね合いで、人工衛星登録簿の作成については、変わっているかもしれません。

国内のロケットの打上げや、人工衛星の管制局を国内に設置する場合は、内閣総理大臣の監督下の元となるので、もしかすると人工衛星登録簿は内閣府で作成しているのかもしれません。そのまま文部科学省が実施している可能性もありますが。

 

 さて、従来は総務省に電波法関係で、無線局を開設する際に、その流れで国際調整の話していたのではないでしょうか。

 

さらにその流れで宇宙物体登録条約に必要な情報も提供していたのではないでしょうか。

 宇宙物登録条約の情報は次の通りです。

  • 打上げ国の国名
  • 宇宙物体の適当な標識又は登録番号
  • 打上げの行われた日及び領域又は場所
  • 次の事項を含む基本的な軌道要素
    周期
    傾斜角
    遠地点
    近地点
  • 宇宙物体の一般的機能」

 

 WEB内を調査しても、総務省(あるいは各地方総合通信局)との調整の話は出てきても、文部科学省といったワードがないことから、申請者の情報は総務省を通して関係各省庁に連絡していた可能性があります。

 

過去、JAXAだけの人工衛星活動だったものが、(BS放送用やCS放送用)放送衛星を打上げたり、(気象衛星)運用多目的衛星を打上げたり、実証衛星を打上げたりと、小型衛星の打上げが増えてきた背景もあり、内閣府で総括する流れになったのかもしれません。

 

ちなみに、ITU国際調整と呼ばれる周波数の管理は、ITUと呼ばれる国際電気通信連合という国際組織が行い、宇宙物体登録条約の管理は、国際連合(United Nations)が行っていますので、詳細は各公式サイトからン情報を確認するのが良いでしょう。

年々規則の整備が多くなっているので。

 

 参考

 

宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第2版

宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第2版

 

 ja.wikipedia.org

www.jaxa.jp

宇宙物体登録の現状と日本の選択肢

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/housei/dai2/siryou2.pdf

人工衛星の登録に関する国内手続きについて

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/housei/dai2/siryou4.pdf


宇宙法について

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提供:NASA

色々理由はあると思いますが、無法のまま進めると一々、特例だったり、煩雑な事務作業や調整作業が多くなります。

省庁の人間は人事異動が数年おきに発生するため、より時間がかかるのかもしれません。

 

人工衛星を打上げたいときに各調整が不十分であるために、使用できなかったりすることが発生しないようにということなんだと思います。

 

もしかすると、国内的にもグレーなまま進んでいた人工衛星やロケットのプロジェクトがあったのかもしれませんね。

 より迅速に対応するために法整備がすすめられたと考えておきましょう。

 

 

宇宙活動法は、おそらくJAXAで今まで実施してきた人工衛星のプロジェクトマネジメント的な開発の流れを落とし込んで、明文化したのだと理解しています。

 同じくロケットについても、今までの調整方法から変わらず、法律としてシステム化されたのだという理解です。

 

今まで組織内ルールであったものを法律化したということになるのかな。

蓄積されたノウハウから、この部分だけ押さえておけば、問題は少なくて済むという部分をピックアップした方向ですね。

 

簡単にいうと、今まで人工衛星やロケットの企業が独自に実施していた開発内審査を法律化して、国が管理し始めたということなのかもしれませんね。

内閣府が審査するといっても、オブザーバーとしてJAXAが後ろにつくのだと思いますけど。

 

まあ、JISやISO規格に似たものだと受入れるのが早いと思います。

 

成立時に最もインパクトのある項目として挙げられていたのは、保証の問題でした。

おそらく人工衛星やロケットの打上げの中で一番もめていた内容だったのではないでしょうか。

 

人工衛星とロケットで、どちらがどの割合だけ保証するのか。

その辺を知る人たち、あるいは実体験した人たちが、揉める=時間がとられることがないようにしたのでしょうね。

 

さて、海外では2011年の時点で既に以下の16か国での宇宙関係の国内法が進められているのです。

オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、韓国、ロシア、南アフリカスウェーデンウクライナ、イギリス、アメリ

 

現在も運用しているかはともかく、80か国近い国々が人工衛星を打上げています。

多くの国は国が主体となって進めてきたのでしょう。

ですが、上記16か国のいくつかは、商業利用やリモートセンシングと呼ばれる人工衛星データ活用に対する取り決められていました。

 

日本国内は2017年に施行(?)された衛星リモートセンシング法や宇宙活動法と比べて遅れてしまっています。2019年に改正されたドローン規制法(2015年施行(?))と比べると、その重要性に対するアピールが伝わらなかったのかもしれません。

 

ただし、日本国内ではドローン規制法は大きな事案が発生したため、急速に進められたなどの理由があるのかもしれませんね。

 

 

 参考

www8.cao.go.jp

 ドローンと法規制

http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201801_05.pdf

repository.exst.jaxa.jp