金と銀、放熱と耐熱
人工衛星を見ると黄色に光るキラキラのフィルムが貼り付けられています。
それも今に始まったことではなく、昔からの宇宙機に貼り付けられています。
そのため、人工衛星と言われて、金色のボディを思い描く人は多いのではないでしょうか。
よくよく見ると、人工衛星によっては銀色に輝いていたり、一部のアンテナがあるところは白色だったり、突然黒色していたりします。
白色や黒色はともかく、銀色の部分と金色の部分は、金属微粒子が塗ってあります。
金色はポリイミドテープと呼ばれる熱に強く、強度もあるテープにアルミニウムが塗っています。
塗っているというと、ローラーとかで塗るイメージですが、蒸着と呼ばれ熱やレーザーを当てることで微粒子を吹き付け定着させる手法で貼り付けます。
ポリイミドテープは元々オレンジに近い色をしているのですが、その裏にアルミニウムが貼り付けられるので金色に見えるわけですね。
ポリイミドテープを挟むことで、強度が増し、耐熱性もあり、人工衛星内部の熱を逃がさない様に、宇宙からの熱(冷気)を受けない様にすることができます。
電子機器をはじめ、物質には適温が存在しています。その適温を超えた温度になると、故障したり、劣化したりします。
劣化を防いだり、熱が逃げすぎて冷えすぎない様に金色のフィルムを貼り付けます。
この金色のフィルムは、一枚だけでなく何十枚も重ね合わせることで、さらに効果を高めます。
重ね合わせたフィルムの中には、ポリイミドフィルムだけではなく、銀を蒸着したフィルムや、ガラス繊維を編み込んだフィルムを重ね合わせています。重ね合わせたフィルムを、多層断熱材(MLI:Multi Layer Insulation)と呼んでいます。
単に重ねるだけではなく、真空になっても破裂しない様に、孔が開いていたり、熱への影響を考慮して、糸で縫い合わせています。
一方、銀色に見えるものは、アルミ蒸着あるいは熱伝導がよい銀蒸着テープが張られています。
MLIが張られているところは、熱が逃げない様にしているのですが、逆に発熱し過ぎて機器の適温を逸脱してしまいます。
逆に熱を逃がすようにするため熱伝導の良いアルミや銀を蒸着したテープを利用しています。
発熱しやすい機器としては、蓄電池や人工性を制御する機器、ミッション機器と呼ばれる観測機器を制御する機器が熱くなりやすく、総じて熱に弱いです。
この熱を宇宙空間に放熱させるために貼り付けられています。
参考
浮いている。耐熱の考え方
放熱する際には熱を逃がしたいので、人工衛星と密着させるためにテープで貼り付けられています。
一方、MLIは熱を逃がさない、あるいは取り入れない断熱のために使用します。
密着させると熱がMLIを伝わって逃げてしまうので、なるべく人工衛星と接触しないようにします。
熱的に良いのは、人工衛星から数㎜のところで留まっていることです。
しかし現実的には何かで固定していないとMLIが吹き飛んでしまうため部分的に接触させています。
接触方法もポリイミドテープ(カプトン®テープ)で貼り付けることもありますが、面ファスナーと呼ばれる具材によって接触しています。
面ファスナーは、商標でいうマジックテープ (Magic Tape)、ベルクロ (Velcro) のことです。
もちろん通常の面ファスナーだと繊維が多いので、コンタミの原因となったり、接触力が強すぎる場合があるので注意が必要です。
面ファスナーの仕組みを確認すると、お互いの接触する部分が少なく、断熱的に有利なことが分かります。
|
参考