往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

SpaceX社が放出し続けるスターリンク衛星の衝撃【宇宙機と実証】

実証衛星が打上げられたのは2018年でした

f:id:MSDSSph:20200615213404j:plain

Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-KSC-20200429-PH-SPX01_0002

 

SpaceX社が衛星コンステレーションの実験衛星を打上げたのは2018年2月22日です。

 

もともとは2016年にMicroSat 1a、1bという人工衛星の打上げを予定していましたが、打上げを中止しました。

 

サイズとしては1.1m×0.7m×0.7mでボックス型でした。

太陽電池パネルが2つあり、ぞれぞれ2m×8mの大きさで約400㎏で、サイズとしては小型衛星の部類の入るのですが、重さとしては中型衛星と言ってもいいほどの大きさでした。

通信衛星である実証機であるため、通信機としてはKuバンドを搭載し、人工衛星の名称は、MicroSat 2a, 2b (Tintin A, B)でした。

 

その時の放出の様子は次の通り。

 

右先の方でキラキラと白く回転した物体がありますが、多分打上げ時に人工衛星を保護する機能も持つフェアリングですね。

 

実験衛星を打上げたのは、SpaceX社製造しているFalcon-9で、コスト削減のためにフェアリングも再利用することを念頭にロケットが設計されているようで

今までのロケットではフェアリングは使い捨てであったことを考えると、柔軟な発想の集団であることがうかがえますね。

 

その後人工衛星は、Elon MuskのTwitterから、実験が成功していることがつぶやかれています。

 

この実証機ですが、2020年現在も運用されているかは不明です。

 

ただ、2020年4月に軌道が落ちており、当初の高度500kmから490km未満に落ちてきているようです。

 

実証衛星のTintin A, Bは推進系のコンポーネントを搭載しており、軌道制御も可能とみられ、もっと長い期間滞在していても良いと思いますが、おそらく想像ですが廃棄の選択肢を取ったのでしょう。

 

廃棄の理由としてはいくつか考えられます。

  • 十分なデータを取得できたとも考えられますが、運用コストの削減
  • 2019年より打上げられ続けた人工衛星と物理的か電波的に干渉している
  • 2019年に打上げられた人工衛星の中には通信不能になっている人工衛星もあり軌道が落ちてきており、先んじて落下時のデータを取得しようとしている

 

その後、4~6機ほどの実証衛星を打上げる予定だったような記事もあるのですが、わずか1年半後の2019年5月にStarlink Block v0.9を60機、打上げています。

 

 

60機の同時放出衝撃

f:id:MSDSSph:20200615213639j:plain

 

60機を打上げると聞いて、複数の期間で打上げると思っていたのですが、同時に60台搭載されていたことは驚きでした。

 

実証機もそうなのですが、SpaceX社はそれまで人工衛星の形状を一切表に出さなかったために、打上げた後にSpaceX社のHPに行って感心したのを覚えています。

 

製造期間が1~2年であることも挙げられますが、プラットパネルデザインと呼ばれる、そのコンパクトな形状も衝撃を受けていました。

 

ただ、このStarlink Block v0.9には、人工衛星間のリンクやKaバンドが搭載されていないため、実質、第二の実証衛星だったとも言えます。

 

コンスレテーションと呼ばれる小型衛星の連隊、連携と取るにあたり、地上で試験するよりも軌道上で試験した方がよいと判断したのでしょう。

 

過去に数機の人工衛星コンステレーションは実施されていました。

 

そう、数機程度です。

 

なぜ数機程度であったのかというと、主に次の理由です。

  • 1機の人工衛星の製造に時間も労力もお金もかかっている。
  • ロケットに搭載できるペイロードが少ない。

 

SpaceX社は、お金の問題はともかく、人工衛星を短期間で製造しつつ、自社で製造した人工衛星に最適なロケット環境を構築することができたから、打ち上げまで漕ぎ着けたのでしょう。

 

参考資料

MicroSat 2a、2b(Tintin A、B)

https://space.skyrocket.de/doc_sdat/microsat-2.htm

SpaceX Appear to be Preparing to Deorbit Tintin Starlink Satellites

https://rocketrundown.com/spacex-appear-to-be-preparing-to-deorbit-tintin-starlink-satellites/

Nanosats Database

https://www.nanosats.eu/

SpaceX modifies Starlink network design as another 60 satellites gear up for launch

https://spaceflightnow.com/2020/04/21/spacex-modifies-starlink-network-design-as-another-60-satellites-gear-up-for-launch/

Starlink Satellite Constellation of SpaceX

https://directory.eoportal.org/web/eoportal/satellite-missions/s/starlink

Starlink - Wikipedia

 SpaceX, OneWeb, or Kepler Communications: Who Really Launched the First Ku-band Satellite?

https://spectrum.ieee.org/tech-talk/aerospace/satellites/spacex-oneweb-or-kepler-communications-who-really-launched-the-first-kuband-satellite